笠原一輝のユビキタス情報局

第11世代Coreに強化された「Surface Laptop Go 2」レビュー。大きな性能向上を確認

Surface Laptop Go 2

 Microsoftが「Surface Laptop Go 2」を発表した。最大の特徴は、プロセッサが第11世代Core(Tiger Lake)世代のCore i5-1135G7へと強化されており、CPU性能やGPU性能が強化されていることだ。価格は従来の最小モデルの価格が549ドル(税別)だったのが599ドル(税別)へと約50ドル上がっているが、これは最小モデルのストレージ構成が64GBから128GBへと引き上げられているためで、基本的には価格据え置きと考えていい。

 このSurface Laptop Go 2は本日6月7日から販売開始になっており、本記事では日本マイクロソフトより貸し出しを受けたSurface Laptop Go 2(Model 2013、Core i5/8GB/256GB/セージ)を利用して、そのレビューをお届けしていきたい。

CPU/GPUが大きく強化されたCore i5-1135G7

新色のセージのSurface Laptop Go 2

 今回発表されたSurface Laptop Go 2の概要は、以下の発表概要の記事に詳しくまとまっているので、詳しくはそちらをご参照いただきたい。

 簡単に言ってしまえば、外形やディスプレイ、基本的な構造などはそのままに、SoCが第10世代Core(Ice Lake)から第11世代Core(Tiger Lake)に強化され、新しいカラバリとしてセージ(グリーン系)が追加されたという製品になる。

 SoCが最大の強化点になるので、以下初代Surface Laptop Goに搭載されていたCore i5-1035G1との違いを表にしてみた。

【表1】Core i5-1135G7とCore i5-1035G1の違い
Core i5-1135G7Core i5-1035G1
世代第11世代第10世代
開発コードネームTiger LakeIce Lake
CPUコア・アーキテクチャ名WillowCoveSunnyCove
CPUコア数/スレッド4コア/8スレッド4コア/8スレッド
L3キャッシュ8MB6MB
ベース周波数2.4GHz1GHz
Turbo時最大周波数4.2GHz3.6GHz
GPUIris Xe GraphicsUHD Graphics
GPUアーキテクチャXe-LPGen 11
EU8032
GPU最大周波数1.3GHz1.05GHz

 両者の最大の違いはCPUの世代。Core i5-1035G1はCove系の初代となるSunny Coveアーキテクチャで、Core i5-1135G7は同じクロック周波数でも高い性能を発揮するCove系第2世代のWillow Coveになっている。CPUコア、スレッドはどちらも4コア/8スレッドで違いはないが、L3キャッシュはCore i5-1135G7が8MBとやや増加している。

プロセッサはCore i5-1135G7

 また、クロック周波数は第11世代CoreになるCore i5-1135G7の方がベースクロック、ターボ時の最大周波数ともに高くなっている。ただし、これはPCメーカーがTDP(熱設計消費電力)を28Wに設定した設計した場合の値になる。

 今回のSurface Laptop Go 2の実機で、デバイスをチェックするツールなどを使って調べてみると、PL2(ターボ時最大の設定)が20W、PL1(ほぼTDPと同じ)が15Wに設定されていることが分かった。そう考えると、TDP 28Wに対応した熱設計が必要なフルスペックの性能は出ない可能性が高いが、ハイエンド向けではなくローエンド向けの製品と位置づけられる本製品では妥当な設計だと言える。

 言うまでもなく、TDP 28Wに対応するには放熱機構が大きくなって重量も増えるし、コストも上がってしまい価格が上昇してしまうからだ。

 内蔵GPUも、従来のIntel IGPの延長線上にあるGen 11(11世代目のIntel IGP)ベースのCore i5-1035G1に対して、Core i5-1135G7は、IntelがXeの開発コードネームで開発してきた最新GPUの統合型版となるXe-LPに強化されており、アーキテクチャ的にも大きく進化。EU(Execution Unit)と呼ばれるGPUの演算器も数が、32から80へと大きく強化されている。これにより、特にGPUに関しては大きな性能向上を期待できる。

一般消費者向けモデルもSecured-core PC対応

日本語キーボードとタッチパッド。基本的には従来モデルのそれを踏襲しており、バックライトはなし

 CPU以外の部分に関しては基本的に従来のSurface Laptop Goを踏襲している。ディスプレイに関しては、メーカーやパネルもまったく同等の12.4型PixelSenseディスプレイ(1,536×1,024ドット、10点マルチタッチ対応)となっている。

 キーボードやタッチパッドも同様で、日本語キーボードは「A」/「あ」キーをスペースキーの左右に備えた最新のキーボードになっているほか、電源スイッチを兼ねている指紋センサーは、ログイン時など指紋センサーを使う時には周囲のLEDが光って指紋センサーが使える状態であることを示す点など、全機能的にもデザイン的にも大きな違いはない。

キーピッチは従来モデルと同じ18mm程度
タッチパッドは100×66mm
本体の左側面にはUSB Standard-A(USB-A)、USB Type-C(USB-C)、3.5mmオーディオジャック
本体の右側面にはSurface Connect端子
付属のACアダプタは39W、USB Type-C端子はUSB PDに対応しており汎用のUSB ACアダプターも利用できた
ACアダプタの重量は209g
本体の実測重量は1.125kgとスペック通りだった
指紋センサー、指紋センサーが使えるときには写真のようにセンサーの周りのLEDが点灯して分かりやすい

 また、本体の左側にUSB Standard A(いわゆるUSB-Aポート)、USB Type-C(USB-C)、3.5mmのオーディオ端子があり、左側にSurface Connect(ACアダプタやSurface Dockを接続するためのSurface専用端子)が用意されている点などにもまったく変わりがない。正直、Surface Laptop Goを持っているユーザーが、黙って同じ色の本体に買い換えたとしても、他人は外観からその違いを見つけるのが難しいと考えられる(もちろん気がつかれないことを筆者が保証するわけではないので、家庭平和のためにも黙って買い換えないことをお勧めするが……)。

Secured-core PCに対応

 ただ、実際には外見では分からないが、前述のCPUは大きな違いだし、もう1つの大きな違いとしては今回のモデルからSecured-core PCに対応している点が挙げられる。このSecured-core PC対応は、法人向け製品だけが対象だと思っていたのだが、今回の実機で確認したところ、一般消費者向けモデルも対応していることが分かった。

 BIOSセットアップの中に「Secured-core PC」という項目が用意されており、それが標準で有効になっていたほか、Windowsセキュリティからも「Secured-core PC」に対応していることが確認することができた。

 Secured-core PCは、Windows 11に用意されている新しいハードウェアベースのセキュリティ機能が標準で有効になっている、という目印になる。Windows 11にはVBS(Virtualization-Based Security)、HVCI(Hypervisor-Enforced Code Integrity)、DRTM(Dynamic Root of Trust for Measurements)などのハードウェアを活用したセキュリティ機能が標準搭載されているが、現在販売されているWindows 11プレインストールのPCではそうした機能すべてが有効になっている訳ではない。

 しかし、Secured-core PCでは、そうした機能をプレインストールのOSイメージの段階ですべてオンにしており、ユーザーがPCをアクティベーションするだけでそれらの機能が有効になるようになっている。なお、Secured-core PC自体に関しては以下の記事をご参照いただきたい。

 Secured-core PCではユーザーが難しいことを考えなくても(詳細を知らなくても)、より高いセキュリティ性を実現することが可能になるため、それが標準で有効になっていることはユーザーにとって歓迎して良いと言えるだろう。

 なお、今回レビューに利用した機材は新色の「セージ」になっていた。セージとは乾燥したセージ葉の色という灰緑色で、グリーンとはいえ、かなりシルバーに近いようなグリーンになっている。濃い緑が好きな人には物足りないかもしれないが、落ち着いた緑が欲しいという人にはよい選択肢になるのではないかと感じた。

初代Surface Laptop Goに比べてCPUもGPUも性能が強化、特にGPU強化の影響が大きい

 それでは、SoCがCore i5-1135G7に強化されたことが性能面にどういう影響を与えているか、ベンチマークのスコアでチェックしていこう。今回は初代Surface Laptop Goのレビュー記事で利用したPCMark10、3DMarkのスコアに、今回Surface Laptop Go 2で計測した結果を重ねて見ていくことにしたい。同時にSurface Pro 7(Core i7-1065G7搭載)のスコアも記載している。

 厳密に言えばSurface Laptop GoやSurface Pro 7は記事の時点からはドライバやWindows 11へのアップデートなどもあって性能向上があると考えることが可能だが、大枠はそんなに変化はないと考えられるので、あくまでSurface Laptop Goのリリース時点での性能と、Surface Laptop Go 2の性能を比較している、そうお考えいただきたい。なお、初代Surface Laptop Goのレビュー記事などはこちらをご参照いただきたい。

【グラフ1】PCMark10 Extended/総合
【グラフ2】PCMark10 Extended 部門別結果

 これを見て分かるように、第11世代Coreと8GBメモリのSurface Laptop Go 2が、第10世代Coreと16GBメモリの「Surface Pro 7」という1世代前の上位グレードを上回っている。詳細を見て行くと分かるが、ゲーミング性能やコンテンツクリエーション系の結果が特に伸びていることが分かる、つまりGPUの性能が伸びていることがこうした結果をもたらしているわけだ。

【グラフ3】3DMark FireStrike
【グラフ4】3DMark FireStrike Physics score

 そうした傾向は3DMark FireStrikeでも見てとれる。GPU性能がものをいう総合結果(グラフ3)では第11世代Coreを搭載したSurface Laptop Go 2が、それに対してCPUの性能がモノをいうPhysics scoreではSurface Pro 7が上回っている。つまり、Surface Pro 7との比較では、CPUが上回るまではいかないが、GPUは上回っているという傾向だ。

 なお、Surface Laptop Goとの比較ではいずれも大きく上回っており、特にGPUの性能が大きく向上したことがその理由になるが、より快適に利用することができるということができるだろう。

一般消費者向けなら8GBモデルを、法人向けモデルなら16GBモデルがおすすめ

外箱

 以上見てきたように、Surface Laptop Go 2は初代のSurface Laptop Goのプロセッサ強化版という位置づけの製品だ。第11世代Coreベースで、かつGPUのEUが大幅に増やされているCore i5-1135G7に強化されたことで、特にGPUの性能強化は著しく、1世代前の上位グレードになるSurface Pro 7よりも高い性能を発揮する。

箱の中

 気になる価格だが、一般消費者向けは3つの構成(CPU/メモリ/ストレージ)と4種類のカラバリ、法人向けは4つの構成と4種類のカラバリになる。

【表2】一般消費者向けSKU
CPUメモリストレージOSOfficeカラー価格(税込)
Core i5-1135G74G128GBWindows 11 HomeOffice Home and Business 2021プラチナ9万5,580円
Core i5-1135G78GB128GBWindows 11 HomeOffice Home and Business 2021プラチナ/セージ/アイスブルー/サンドストーン10万9,780円
Core i5-1135G78GB256GBWindows 11 HomeOffice Home and Business 2021プラチナ/セージ/アイスブルー/サンドストーン12万2,980円
【表3】法人向けSKU
CPUメモリストレージOSOfficeカラー参考価格(税別)
Core i5-1135G74G128GBWindows 11 Proプラチナ8万4,800円
Core i5-1135G74G128GBWindows 10 Proプラチナ8万4,800円
Core i5-1135G78GB128GBWindows 11 Proプラチナ/セージ/アイスブルー/サンドストーン9万6,800円
Core i5-1135G78GB256GBWindows 11 Proプラチナ/セージ/アイスブルー/サンドストーン10万8,800円
Core i5-1135G716GB256GBWindows 11 Proプラチナ13万2,800円

 なお、最小モデル(Core i5/4GB/128GB)は、米国モデルは599ドル(税別)なので、日本並みに消費税の10%(なお米国では消費税は州により異なる)だとすると、約659ドルとなり、6月7日朝時点での為替レート(1ドル=131.85円)で計算すると、8万6,889円になる。

 米国モデルはMicrosoft 365 Homeがプリロードされている(インストールはされている)が、別途ライセンスを購入しないといけないため、実質的にOfficeアプリは付属していない。一方、日本向けのモデルは商用(ビジネスパーソンなどが自分のビジネスのために使うこと)利用可能なOffice Home and Business 2021(PIPCライセンス、バンドルされている本体だけで利用できるライセンス)が付属することを考えれば、かなりお買い得な価格設定と言える。

Office Home and Business 2021(PIPCライセンス)が付属する

 もちろん、筆者もそうだが、Microsoft 365を別途契約している個人事業主や中小企業にとってはOffice Home and Business 2021は必要ないというのはその通りで、その場合には法人向けモデルを選択するといい。Amazonのビジネス向けサイトなどでは個人事業主でも確定申告書類などを提出することでアカウント作成が認められ、法人向けのSurfaceを購入できる。

 また、法人向けSurfaceはMicrosoft 365 Personal(3万8,284円)を強制的に選択しなければしないと買えないという仕組みはいかがなものかと思うが、Microsoft Storeからも購入することはできる。しかし、多くの個人事業主や法人などはビジネス向けのMicrosoft 365などを既に契約していると考えることができるので、Microsoft Storeでのユーザーの必要ない“強制選択”は早くやめていただいて、個人事業主や中小企業でも買いやすいようにシステムを改善して欲しいと切に願いたい。

 さて、今回のSurface Laptop Go 2のモデルを眺めていると、率直に言って、最小モデルの4GBのモデルがWindowsのアプリケーションを多数走らせる用途などに向いているかと言われればそうではないと思う。こうした最小モデルは、学校などでWebブラウザだけで運用するというところ専用と考えて良いと思う(そういうニーズは今でもあるからだ)。

 それに対して、業務で生産性を上げたい、そうした用途に使うのであれば最低でも8GBや16GBが必須だというのが今のコンセンサスだと思う。その意味では、一般消費者が購入するのであれば8GBモデルを、法人などが購入するのであれば16GBを搭載したモデルがおすすめだ。

 上位モデルのSurface LaptopやSurface Proなどの8GB、16GBモデルよりは安価な10万円台前半で購入できるので、この価格帯で製品を探しているユーザーにおすすめしたい。

Surface Laptop Go 2