藤山哲人と愛すべき工具たち
USB Type-C壁コンセントを使ってみた!面白コンセントのカスタマイズも
2021年6月30日 09:50
最近ビジネスホテルや喫茶店でよく見かける壁コンセントのような埋め込み式のUSBコネクタがある。さらには喫茶店などでも100Vのコンセントだけでなく、USBのコンセントも見かける。
これまでUSBの充電と言えば、いわゆるUSBってヤツの「Type-Aコネクタ」で2.1A(10.5W)程度しかなかったが、最近USB PDに対応した5/9/12Vに切り替え可能な超高速充電USBコンセントが登場し始めた。
一方、スマホもMicro USBからType-Cコネクタに切り替わり、ほとんどが超急速充電に対応になった。数年前から超急速充電対応のスマホはあったものの、その規格がスマホのSoCを作るQualcomm方式とUSB規格方式で戦っていたので普及が遅れていたが、最近ようやく規格が統合されたので普及の兆しが見え始めたと言える。
そんな時代背景があり、USBコンセントにもようやくType-Cコネクタが登場。現在購入できるのは、Type-Aのみの2.1A規格に加えて、エレコムから出ているType-C+Aコネクタ搭載の15Wタイプと、パナソニックの18Wタイプがある。
今回はType-Cコネクタを備えたパナソニックの可変電圧式USB壁コンセント「「WN1477」」を使って、俺だけの情報コンセントを作ってみよう!なお壁コンセントに埋め込む場合は、 電気工事士の資格が必要になるので注意してほしい 。
会社や学校のマドンナもコロッ♪と落とせる情報コンセント
今回作るのはコレ!「俺様専用 情報コンセント」だ。USBコンセントに有線LANコネクタも装備した近未来情報コンセント!カッチョE!こんなのはノマドの集まるカフェにも、アパホテルにも付いてない夢のパソコン用コンセントだ。裏に磁石をつければ、会社のデスク回りに「これみよがし」に付けて自慢できる。
なんと言ってもこのUSBコンセント「WN1477」は、パナソニックから発売されたばかりのUSB PD対応品だ。これまでは電圧が5V固定で、電流が2.1Aだか2.4Aだかで競っていた高速充電器。しかしコイツは5/9/12Vの可変電圧だから、電圧を高くすることで電流を少なくし、ケーブルの抵抗による損失を防ぎ無駄なく高速充電が可能だ。
そう、学校や会社のマドンナ(久しぶりに聞いた単語!)がスマホの電池切れで困っていれば「ココ、空いてますよ♪」と誘って“マドンナ・ホイホイ”。一度USBコネクタを挿入すれば、たくましいチャージ力とテクニックで女性はメロメロだ。ひ弱な従来式USB ACアダプタを使う元彼から彼女をNTR!
「リケジョ」(理系女子)なら、俺の「CAT6の有線LANコネクタ」にベタ惚れだ。「不安定ですぐ切れる11g(5GHz帯)より、セキュアでぶっとい俺の(回線)を使ってみないか?」という一言で彼女の瞳はハート♪。一瞬でGit(ソース管理システム)から全ソースをチェックアウトしてEclipse(コンパイラ)でフルビルド(ゼロから実行形式を生成)して女心を鷲づかみだ。
電圧を高くすると何で急速充電できるの?
工作のメインとなるのは、コンセント埋め込み型高速USB充電ポートだ。これまでもパナソニックは、コンセント埋め込み式をいくつもリリースしている。社名こそ刻印されていないがカフェの机にあるUSB充電ポート、空港の充電ポート、ホテルの充電ポートは筆者が調べた限り、ほとんどがパナソニック製だ。ただこれらは、一般的な5V/2.4A(電圧固定タイプ)が出力できるものだった。
しかし5月に発売された新型の「WN1477」シリーズは、USB PDに対応し、これまでの5V/2.4A出力の充電器との互換性を保ちながら9V/2Aや12V/1.5A(いずれも電力的には18W)という電圧可変の急速充電モードに対応している。
なぜ同じ電力なのに充電が速いか?を説明すると長くなるので、ざっくり概要のみ説明しよう。電線が発熱して電気的なロスを起こすのは「電流」なので、充電時は電流を小さく、電圧を高くした方がロスが少なくなるというためだ。これは次のジュール熱の公式となっている。
〔熱量〕=〔電流〕×2×〔抵抗〕×〔時間〕
つまり「電圧」は発熱に影響しない!という不思議な現象だ。一方スマホを充電するのは〔電力〕=〔電圧〕×〔電流〕。モバイルバッテリでもお馴染みの5V×「mhA」や「W」だ。
先の公式では「電圧」は熱(ロス)に影響することがないので、同じ電力を送るなら「電圧を上げて電流を低く」すれば熱損失が少なくなる、というマジックを使っているのがUSB PDの充電だ。しかも急速充電できるので時間も少なくなるから、さらに熱のロスも減る!天才かよっ!っていうぐらいのアイデアだ。
実はこの方法、家のコンセントは100Vなのに、送電線の電圧は27~50万Vと異様に高いのと同じ。発電所から家まで100Vで送ると膨大な電流になるので、送電線が電熱線になっちゃう。だから電圧を高く、電流を低くして送電し、熱として失われる送電ロスを少なくしているのだ!
パナソニックのUSBコンセントは9Vモードで急速充電!
USBコネクタから出力される電力は、Type-AとType-Cで異なり、次のようになっている。
- Type-A:5V/3A、9V/2A
- Type-C:5V/3A、9V/2A、12V/1.5A
今回はType-Cコネクタでスマホ(AQUOS R2 SH-03K)を充電してみた。このスマホは可変電圧のUSB PDに対応した機種となっている。バッテリ残量30%程度から充電してみたところ、最初は5V/2.4Aで充電し始めたが、すぐに9V/2Aモードへ移行した。
実際には8.85V/1~1.6Aで安定して急速充電を行なっていた。ただしこれはあくまでも一例。スマホの電池残量や本体温度、充電器側のコンディションなども反映され、電圧と電流を切り替えるので再現性はほとんどなし。ただ確実に言えるのは、一般的な充電器の5V/2.1Aで充電するより、20~30%ほど速く充電できるという点だ。
コンセント埋め込み型高速USB充電ポートは、12V/1.5Aモードも持っているが、今回はこのモードへの移行は見られなかった。
このようにUSB PDに対応した機器を接続すると、充電器が出力できる電力と充電側が求める電力を互いに通信し合って、安全かつ最適な電圧と電流で充電が可能になる。従ってUSB Type-Cコネクタで充電できるノートPCやタブレットでも利用可能だ。
これまでのACアダプタのように「これは○○のACアダプタ」、「コレはアレ用」と区別しなくてイイ未来がすぐそこにキター!
作り方は自作PCよりカンタン!
ここでは壁コンセントとして埋め込むのはではなく、露出ボックスというコンセントを後付けで増設するタイプ(テープルタップ感覚)のものを作っていこう。繰り返しになるが、壁コンセントに埋め込む場合は、 電気工事士の資格が必要なので注意 。
最低限用意する部品は、以下の通り。全てパナソニック製だ。
型番 | 価格 | ||
---|---|---|---|
露出ボックス(3個用) | WVC7003W | 500円ぐらい | |
埋込取付枠(樹脂) | WN3710 | 50円ぐらい | |
埋込USBコンセント | WN1477SW | 7,000円ぐらい | |
LAN用コンセント(CAT6) | NR3170W | 1,100円ぐらい |
(1)電線の被服剥き
機器の裏に実寸のストリップゲージ(被服を剥く長さ)が印刷されているので、これに合わせて剥く。利用する電線は屋内配線用の単芯1.6~2φの電線なので注意。テーブルタップなどで使われる細い線が束ねられたヨリ線は利用できない。
(2)白の電線を「N」の刻印の穴に、黒を反対に差し込む
コンセントは交流とは言え工事では白と黒の電線を区別する。たまに白黒反対になってる場合もあり「本当に電気工事士がやったんかい?」というものがある。「L」もしくは「B」が黒、「N」もしくは「W」が白い電線。
(3)LANコネクタの配線
LANコネクタの配線は色々なサイトで紹介されているのでサクッと。LANケーブルの外側の被服を剥くと4本のツイストペアケーブル(2本のねじり線)が出てくる。
4本の電線の色は決まっていて、緑、オレンジ、青、茶の4色。それぞれに対応する白地に緑、オレンジ、青、茶の線が入った電線とペアになっている。
コネクタ裏のカバーを外すと電線を差し込めるようになっているので、それぞれ対応した色の部分に電線を差し込む。最後にカバーそのものが電線を押し込む工具になっているので、しっかり電線を押し込んで工事終了だ。
(4)埋込取付枠にUSBコンセントとLANコネクタを差し込む
埋込取付枠には「上」と刻印がされている。露出ボックスに取り付ける時に向きに合わせて、埋込取付枠にUSBコンセントとLANコネクタを差し込む。樹脂でできているのでパチン!とはめ込むだけでOKだ。
また、はめ込みは「上」と刻印されている裏側からすること。ここでは樹脂製の埋込取付枠を使っているが、もっと安く仕上げたい場合は金属製のものもある。こちらはLANコネクタなどを差し込んだら、マイナスドライバーでツメを押し出し固定する。
(7)埋込取付枠を露出ボックスに取り付け
USBコンセントなどが付いた埋込取付枠を、露出ボックスにはめ込む。露出ボックスにも上下を示す刻印がされているので向きを合わせて取付枠をはめ込み、仕上げに露出ボックスに添付されているネジで固定する。
コンセント1口1口をカスタムできる
パナソニックのコンセントは、1口1口カスタマイズできるところがスゴイ!例えばアース付きの3穴コンセント。PC用のテーブルタップだとたまに見かけるが、壁コンセントがアレになっているところはまずない。
でもパナソニックの屋内配線用の部品を使うと、壁コンセントを1つだけアース付きコンセントにできる。残る2つは普通のコンセントとアースにしたりなんてことも。
また露出ボックス2つ分で、合計6個のコンセントを自在にカスタマイズすることも。これならUSBコンセントとLANコネクタ、さらに通常の電源コンセントにしたり、スイッチを付けてコンセントのオン/オフをできるようにするなんてことも可能だ。
もしUSB壁コンセントの待機電力(ほとんどないけど)が気になるという場合は、スイッチを付けて使わない時は元の電源を切ってしまうこともできるし、通電している時はランプを点灯させるなんてこともできる。
テーブルタップ感覚の情報コンセントをカスタマイズ!
自分専用のテーブルタップ感覚の情報コンセントを作りたいという人もいるだろう。そんな時は、屋内配線用の単芯ケーブルは硬いので、2sq(許容電流 17A)のヨリ線(VFF)を使い、コンセントプラグを付けて延長ケーブルっぽいものも作れる。
ただUSBコンセントや普通のコンセントの穴に挿せるのは単芯の電線のみ。そこでヨリ線を単芯に変える棒型圧着端子を使うといい。圧着する専用工具が必要になるが、家に1個あると便利な工具なので買っちゃって損はない。
使う棒端子は棒の太さが1.6~2φ、長さが11~16mm(長い場合は12mmにカット)、差し込む電線が2sqに対応したものを選ぶといい。比較的入手しやすいのは「ニチフ」というメーカーの「TC-2-16S」という根元が絶縁された棒端子。長さ16mmなので先端4mmをカットする必要があるがポピュラーで、ホームセンターでも見かける。
露出ボックスと反対側は、普通のコンセントプラグを付ける。せっかくなのでこちらもニチフの丸型裸端子「R2-4」を使うといい。あとはコンセントプラグを付ければ、自分オリジナルのテーブルタップだ。
【注意】コンセントプラグが最大15A(1,500W)で、USBコンセントが35W(VA)なので、1,400W以下で使うこと。