福田昭のセミコン業界最前線
Sandiskとキオクシア、QLC方式3D NANDフラッシュの信頼性を大幅に高める技術を開発
2026年5月25日 06:25
半導体メモリ技術の研究開発に関する国際学会「国際メモリワークショップ(2026 IEEE 18th International Memory Workshop)」(IMW 2026)がベルギーのルーベンで2026年5月10日から13日(現地時間)に開催された。最終日の技術講演会が完了した後には、チェアパーソンによる恒例の閉会挨拶(クロージング・リマークス)が実施された。
参加者の42%を欧州、41%をアジアが占める
閉会挨拶では今回の参加登録者数と、次回の開催地を公表することが恒例となっている。参加登録者数は296名となり、前年のモントレー開催に参加した201名から、約1.5倍に増えた。欧州開催としては過去最多の参加者数である。
参加登録者数を地域別にみると、開催地である欧州の比率が最も大きい。42%を占めた。僅差でアジアが41%と高い。アジアから欧州までは距離的には近くないにも関わらず、多くの参加者があったことは意外だった。この件に関しては、米国における入国管理の厳格化が、アジアの一部地域からの渡航先を米国から欧州に変更させたという見方があった。北米からの参加者数は16%、そのほかの地域が1%である。
次回(2027年)の開催地は米国カリフォルニア州モントレーであることが公表された。日程と会場はこの時点では明らかになっていない。最近のスケジュール通りなら、開催は2027年5月中旬になるものとみられる。
過去の現地レポートでは紹介していなかったが、実は閉会挨拶の後に最優秀論文(一般の部と学生の部)の表彰がある。今回は一般の部で日本人が最優秀論文賞(ベストペーパーアワード)を受賞したのでご紹介したい。SandiskのTakayuki Gyakushi氏らが講演・発表した研究論文「Novel Channel Backside Engineering for Highly Reliable QLC Operation in 3D Flash Memory(3D フラッシュメモリの高信頼QLC動作に向けた新しいチャンネル裏面エンジニアリング)」(論文番号2.3)が選ばれた。
3D NANDフラッシュの書き換えとデータ保持のトレードオフ関係
ここからはIMW 2026の最優秀論文に選ばれたSandiskの研究成果「Novel Channel Backside Engineering for Highly Reliable QLC Operation in 3D Flash Memory(3Dフラッシュメモリの高信頼QLC動作に向けた新しいチャンネル裏面エンジニアリング)」(論文番号2.3)の概要をご紹介したい。論文著者はGyakushi氏を含む6名、その中で4名がSandisk、2名がキオクシアに所属する。
3D NANDフラッシュメモリ(以降は「3D NANDフラッシュ」と記述)は、数多くのセルトランジスタを垂直に積層することによって記憶密度を高めている。セルトランジスタの積層数(ワード線の積層数)は、100を超える。
セルトランジスタの構造は水平方向(ウェハ表面と平行な方向)でみると、外からワード線(WL)金属(ゲート電極)、酸化膜(ブロック絶縁膜)、窒化膜(電荷(キャリア)捕獲膜)、酸化膜(トンネル絶縁膜)、多結晶シリコン膜(チャンネル膜)、酸化膜(コア絶縁膜)となっていることが多い。データの書き込み(プログラム)および消去(イレーズ)は、窒化膜とチャンネル膜の間で、トンネル絶縁膜を介して電荷(電子あるいは正孔)をやり取りすることで実施する。
3D NANDフラッシュでは多値記憶方式(1個のセルトランジスタに複数のしきい電圧をプログラムする方式)を標準的に採用している。商業的に量産されているのは、TLC(3bit/セル)方式とQLC(4bit/セル)方式だ。特にQLC方式は1個のセルトランジスタに4bitと多くのデータを記憶することから、大容量フラッシュストレージの主力記憶媒体となっている。
ただしQLC方式では、書き込むしきい電圧が15段階ときわめて多い。プログラムするしきい電圧を細かく制御し、プログラム後は書き込んだしきい電圧を長期間にわたって維持しておく必要がある。
ここで生じる課題が、書き換え(消去とプログラム)の繰り返しによるデータ保持期間の短縮だ。書き換えサイクルによってセルトランジスタのしきい電圧のばらつきが拡大し、初期状態(Fresh)と比べて多値記憶の読み出しマージンを削ってしまう。
そもそも3D NANDフラッシュは、100層を超えるワード線積層構造の低層階と高層階では、セルトランジスタを構成する薄膜群の膜厚が異なる。高層ビルにたとえると、高層階では壁が厚く、低層階では壁が薄くなりやすい。このため低層階ではトンネル絶縁膜が薄いことが多い。トンネル絶縁膜が薄くなると、保持中の電荷がチャンネル層に逃げやすくなる。
チャンネル裏面に酸化層と窒化層を設ける
この問題を緩和するために、Sandiskとキオクシアの共同研究チームは、セルトランジスタの構造を変更することを試みた。具体的には、多結晶シリコン膜と酸化膜(コア絶縁膜)の間に、酸化膜と窒化膜を挿入した。これらの層を「チャンネル裏面(CBS: channel-backside)酸化/窒化層」と呼び、セルトランジスタ構造を「MANOSON(Metal-AlO-Nitride-Oxide-Semiconductor-Oxide-Nitride)」と名付けた。
新しいセルトランジスタ構造では、消去動作によって窒化膜の電荷(通常は電子)が放出され、その一部がチャンネル裏面の窒化膜に捕獲される。この結果、セルトランジスタのしきい電圧がわずかに上昇する。同じセルにデータを書き込むと再び窒化膜に電荷が注入される。そして消去動作によってチャンネル裏面の窒化膜に放出電荷の一部が捕獲される。この繰り返しによって、しきい電圧が少しずつ上昇していく。
ここで重要なのは、チャンネル裏面の酸化膜の存在である。ワード線の位置(高低)によって膜厚が異なることはすでに述べた。チャンネル裏面の酸化膜も高層階で厚く、低層階で薄い。チャンネル裏面の酸化膜が厚いと、消去動作で放出された電荷がチャンネル裏面の窒化膜に捕獲される確率が減少する。
しきい電圧の変化(上昇)は低層階で大きく、高層階で小さくなる。この結果、書き換えサイクル後に長時間のデータ保存を経たときの、しきい電圧のばらつきが減少する。ばらつきの違いは、しきい電圧の高いデータ(S12~S15)をプログラムしたときに大きくなる。またS15のデータを室温保存したときの比較では、高層階よりも低層階のセルでしきい電圧の低下がより抑制される。
書き換えサイクル後のデータ保存による読み出し余裕(マージン)で比較すると、従来のMANOSセルに比べ、1万時間の保存期間によるマージンは15%向上した。また従来と同じマージン幅であれば、データ保存期間は従来のMANOSセルに比べて5倍に延びるという。
このセルトランジスタ構造が実際の3D NANDフラッシュ製品に採用されているのか、あるいは採用される予定があるのかは不明だ。今後の行方を見守りたい。























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