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“何でもやってくれる”AIエージェント「OpenClaw」を試して知った魔力と怖さ
2026年6月15日 09:54
ある日編集部から「ミニPCを送るからOpenClawをいろいろ試してくれないか?」という依頼が届いた。筆者としては当初「ふ~ん」という感じではあったが、試してみるとかなり便利だと気づかされた。本稿では安定運用できるまでの苦労、権限を渡してしまう利便性と怖さ、最終的にはあまりの使い勝手のよさに専用ミニPCを購入しようかと検討するにいたるまでのレポートをお届けしたい。
すでに説明不要な気もするが、「OpenClaw」はローカルPCに導入して使うAIエージェントだ。チャットで指示を出すだけで、Web検索、ファイル操作、メール確認、原稿作成の補助、コードの生成など、さまざまな作業を任せられる。
最近はChatGPTやGeminiといった生成AIを業務に使うことが珍しくなくなったが、OpenClawは単に質問へ答えるだけではない。こちらのPCや外部サービスと連携し、必要に応じて実際に手を動かしてくれる。仕事も遊びも幅広く手伝い、相棒になってくれるわけだ。
※この記事では「OpenClaw v2026.5.5」を使って検証しています
セキュリティリスクを考えて専用PCと専用アカウントを用意
今回はOpenClaw専用のミニPCと各種アカウントを用意した。理由は単純で、OpenClawは「PCの中で作業できるAI」だからだ。チャットAIのように質問へ答えるだけなら、ブラウザ上で完結する。しかしOpenClawは、設定次第でファイルを読み、コマンドを実行し、GmailやDiscordなど外部サービスとも連携する。便利さの源泉はそこにあるが、同時にリスクもある。
専用PCにしておけば、AIに触らせる範囲を絞りやすい。原稿、写真、請求書、個人用ファイル、未公開資料などが大量に入ったメインPCではなく、OpenClaw専用PCに必要なファイルだけを共有フォルダやクラウドストレージ経由で渡す。
そうすれば、万一AIが意図しない操作をしても、影響範囲を小さくできる。アカウントを用意するのも同じ理由だ。AIエージェントにさまざまなアクセス権を渡すことを考えると、このひと手間は保険としてかなり意味がある。
なお、今回使用したミニPCは「GEEKOM AI PC IT15」だ。CPUにCore Ultra 9 285H、メモリ32GB、SSD 2TBと十分なスペックを備えている。OSはWindows 11 Proだ。
Windows 11への導入はPowerShellの実行ポリシーでつまずく
まずはWindows 11環境への導入からだ。OpenClawはNode.js環境で動作するため、最初に公式サイトからLTS版をインストールしておく。Node.jsはJavaScriptの実行環境で、OpenClaw本体や関連ツールを動かす土台になるものだ。そのうえでPowerShellを管理者権限で開き、以下のコマンドを実行する。
iwr -useb https://openclaw.ai/install.ps1 | iex
OpenClawのインストール用プログラムをダウンロードして実行するというものだ。本来であれば、このあと自動的に初期設定用のウィザードが起動し、利用するAIモデル、認証方法、ワークスペース、チャットでやり取りするためのインターフェイスなどを順番に設定できる。
ところが、筆者の環境ではウィザードが自動起動しなかった。そこで、PowerShellから手動で初期設定を開始する以下のコマンドを実行した。
openclaw onboard
しかし、PowerShell上で「このシステムではスクリプトの実行が無効になっているため、~」というエラーが表示された。
これはWindowsのPowerShellで意図しないスクリプト実行を防ぐための制限だ。早速困ったが調べたところ、同じPowerShell上で以下のコマンドを実行して回避した。
Set-ExecutionPolicy -Scope Process -ExecutionPolicy Bypass -Force
このコマンドは、「このPowerShellウィンドウの中だけ、スクリプト実行制限を一時的に回避する」というもの。Windows全体の設定を恒久的に変更するわけではなく、そのPowerShellウィンドウを閉じれば効果は消える。
そして、再び「openclaw onboard」を実行したところ今度は問題なく初期設定は行なえた。設定手順については、すでにさまざまなメディアで紹介されているのでここでは割愛する。
この段階ではAPIとしてGoogle系のサービスとの相性も期待してGeminiを選択。OpenClawへ指示を出したり、報告を受け取ったりするためのインターフェイスにはDiscordを選択した。メインPCやスマホにも導入しているので、使いやすいからだ。
最初の会話で「フランクな口調」を選んだのが意外に効いた
OpenClawの初期設定では、AIエージェントの振る舞いや話し方もある程度決められる。筆者は最初のやり取りで、フランクな口調を選択した。
これは筆者にはかなり合っていた。業務用ツールとして考えると、丁寧で事務的な口調の方がよさそうにも思える。しかし、実際に使ってみると、気さくにやり取りできる方が依頼や修正を出しやすい。「これ調べて」「この文章にこういう内容を追加して」「そうじゃなくて、こういう方向で直して」といった雑な相談を気分的に投げやすくなる。
一方で、最初の時点で安全面のルールも明示した。特に重要だと考えたのが、「何かを削除する際には必ず確認を入れる」という指示だ。OpenClawは、設定次第でローカルファイルや外部サービスにアクセスできる。便利な反面、誤って必要なファイルを削除されたり、意図しない操作をされたりすると困る。
AIエージェントを仕事で使うなら、この手のルールは最初に決めておくべきだろう。それでも指示を100%守る保証はないし、万が一外部からの攻撃も考えられるので、専用PCとアカウントの使用は重要だ。
最初はGeminiを選んだが、エラーが続いてChatGPT PlusのOAuthへ
OpenClawは、利用するAIモデルを選べる。筆者は最初、APIとしてGeminiを選択した。Googleのモデルは性能面でも魅力があり、GmailなどGoogle系サービスとの親和性も期待したからだ。
しかし、相性を期待して選んだものの、原因不明の505エラーが多発したことから、検証をスムーズに進めるために実績のあるChatGPT Plus(OAuth)へ切り替えた。認証後はかなりスムーズに動作し、日々の作業を継続的に任せられるようになった。ちなみに、OAuthはAPIの従量課金ではなく月額定額で外部アプリなどを利用するための認証プロセスのこと。
ここで気になるのが、ChatGPT PlusのOAuth利用枠でどの程度まで使えるのか、という点だ。OpenAIによると、Plusプランは「週に数回の集中的なコーディングセッション向け」という位置づけだ。
具体的な目安としては、ローカルメッセージの5時間あたりの利用上限がモデルごとに示されており、以下のようになっている。
- GPT-5.5
15~80メッセージ/5時間 - GPT-5.4
20~100メッセージ/5時間 - GPT-5.4-mini
60~350メッセージ/5時間 - GPT-5.3-Codex
30~150メッセージ/5時間
ローカルメッセージとクラウドタスクは5時間枠を共有し、追加で週単位の上限がかかる場合もある。
これは単純に「1回の発言=1メッセージ分」ではなく、タスクの複雑さ、参照するファイルの量、作業時間、利用モデルなどによって消費量は変わる。小さな確認や短い文章作成なら消費は軽いが、大きなコードベースを読ませたり、長時間の作業を継続させたりすると、同じ1回の依頼でも枠の消費は多くなる。
なお、筆者の使い方では、3週間ほど複数の作業をこなしても、ChatGPT PlusプランのOAuth枠に収まっている。
具体的には、気になるコンテンツのピックアップ、日々の必要な情報のチェック、Gmailと連動した要約、過去原稿からのテンプレート作成、取材のスケジュール調整、OpenClaw自身の設定相談などを任せた。
毎日長時間酷使するというよりは、必要なときに数回頼む使い方だったこともあり、Plusの範囲で十分回せている印象だ。このままヘビーに使うようになったら、ChatGPTのAPI利用も検討したい。
Gmail連携は想像以上にスムーズ。だからこそ少し怖い
OpenClawで特に便利だったのが、Gmailとの連携だ。筆者はPCパーツ関連の情報をメールで受け取ることが多い。新製品の案内、メーカーからのニュースリリース、イベント情報、キャンペーン情報など、毎日すべてを丁寧に読むのは意外と大変だ。
OpenClaw自体は、チャットからさまざまなツールを呼び出して作業できる。Gmail連携では、Google Workspace系の操作に対応したCLIツール「gog」を使う形にした。
gogはGmail、Googleカレンダー、Google Drive、Google Docs、Google Sheetsなどをコマンドラインから扱うためのツールで、OpenClawから呼び出すことで、メール検索や要約の材料取得に使える。
筆者の用途では、毎日届くメールの中からPCパーツ関連の情報を拾い、新CPUや新GPUの発表、マザーボードやSSDの新製品、イベント情報などを短く整理してもらうようにした。ライターとしては、取材や記事化のきっかけを逃しにくくなるのが大きい。
ただし、今回はテストのため一部メルマガの受信や、要約してほしいリリース情報の転送という形を取った。
なお、OpenClawに頼む際は、単に「メールを見て」ではなく、目的をはっきり書くと精度が上がる。たとえば「過去24時間のGmailから、PCパーツ関連のプレスリリースや新製品情報だけを拾い、製品名、メーカー、概要、記事化の優先度、URLを箇条書きでまとめて」といった具合だ。条件を明確にしておけば、ノイズの多いメールの中から必要な情報を抽出しやすくなる。
ただ、Gmail連携の場合、AIがメール本文を読めるということは、未公開情報、個人情報、取引先とのやり取りにもアクセスできることになる。
メール検索や要約だけなら便利だが、同じ仕組みを使えばメールの下書き作成や送信にもつながる。送信や返信のように外部へ情報が出る操作については、必ず確認を行なう運用にしておきたい。
原稿執筆の依頼にも使える。ただし「たたき台」と割り切るのが重要
ライターとして気になるのは、やはり原稿執筆への活用だ。OpenClawには、過去原稿を読ませたり、ベンチマーク結果のCSVファイルを渡したりしながら、記事の構成案や下書きを作らせることもできる。
ここで意外と重要だったのが、AIに丸投げするのではなく、「どう渡せば理解しやすいか」をOpenClaw自身に質問することだ。たとえば、ある媒体向けの記事を作るなら、「筆者の原稿の流れを理解するには、過去原稿を何本くらい渡せばよいか」「ベンチマーク結果はどの順番で並べたCSVにすればよいか」「CPU、GPU、メモリ、ストレージ、消費電力などの項目名はどう表記すると読み取りやすいか」といったことを事前に相談する。
ベンチマーク結果なら、ただ数字を並べるだけではなく、製品名、比較対象、テスト条件、解像度、画質設定、スコアの単位、数値が大きいほどよいのか小さいほどよいのか、といった情報が重要になる。
OpenClawに確認すると、「列名は分かりやすく統一する」「テストごとに単位を明記する」「比較対象は同じ順序で並べる」「平均値と個別スコアを混在させない」といった形で、AIが読み取りやすいデータの渡し方を整理してくれる。
これはかなり実用的だった。人間同士でも、資料の渡し方が悪いと解釈にズレが出る。AIも同じで、材料の整理が甘いと、もっともらしいが要点を外した文章になりやすい。逆に、目的、読者、媒体、文字量、構成、比較対象、データの意味をきちんと渡せば、下書きの完成度はかなり上がる。
実際に原稿執筆を依頼すると、OpenClawはそれなりに整った文章を出してくる。見出しがあり、前後の流れもあり、ベンチマーク結果にも触れている。ただし、完成した原稿をそのまま使えるかというと、そうではない。しっかり構成されているように見えて、似たような話を繰り返したり、ただ数字を順番に並べたり、こちらが本当に書きたいニュアンスとは違う方向にまとめたりと、いかにもAIらしい挙動もみられる。
筆者としては、OpenClawに書かせたものを完成原稿として扱うのではなく、あくまでたたき台として使うのが合っていた。「そうじゃないんだよなぁ」と思いながら、結局は自分で全部書いていく。
だが、完全にゼロから白紙に向かうよりも、たたき台があった方が修正点や足りない要素が見えやすい。AIの文章にツッコミを入れながら、自分の原稿へ作り替えていく感覚だ。
そして、AIは正しいわけではない。ベンチマーク結果の読み取りを間違えることもあるし、製品仕様を取り違えることもある。インタビューの要約では、実際には話していないことを、文脈から補って書いてしまう可能性もある。これは非常に危険だ。
そのため、インタビュー原稿や発言要約を依頼する場合は、「文字起こしに書かれている内容以外は絶対に使わない」「推測で補完しない」「発言者が明示されていない内容は断定しない」「不明点は不明と書く」といった指示が重要になる。AIは自然な文章を作るのが得意だからこそ、事実と推測の境界を曖昧にしやすい。仕事で使うなら、内容の確認作業は絶対に必要だ。
コンテンツのピックアップや日々のチェックも相性がよい
OpenClawを3週間ほど使う中で、原稿関連以外にもいくつかの継続的な作業を試した。
1つは、気になるコンテンツのピックアップだ。筆者はPCパーツに加えて、格闘ゲームの「ストリートファイター6」が好きなので、過去24時間で注目度の高かったストリートファイター6関連の動画・配信のピックアップを任せてみた。単に検索結果を並べるだけでなく、こちらの興味に合わせて「これは見ておいた方がよさそう」といった形で要点をまとめてくれるのが便利だ。
このほか、筆者が逃して悔しかった餓狼伝説のBGMを含むファイティングパスが再配信されないか定期的にチェックを依頼した。逃したくない情報のチェックをサラッと丸投げできるのはAIの強みといえるだろう。
導入のハードルを下げるならBeelinkのLobster Redシリーズに注目
3週間ほどOpenClawを使ってみて感じたのは、これは単なるチャットAIではないということだ。もちろん、まだ荒削りな部分はある。環境によってはインストールやAPI設定でつまずくし、モデルや認証方法によって安定性も変わる。セキュリティ面の不安も完全には消えない。
そこで、導入をちょっとラクにする方法も紹介しておこう。多彩なミニPCを手がけているBeelinkからUbuntu環境にOpenClawをインストール済みのLobster Redシリーズが登場している。ローカルLLMを導入済みの「Option A」、外部AIサービスを利用する「Option B」、そしてWindowsとUbuntuのデュアルOSの「Option C」の3種類を用意。ここでは、Option AのモデルからCPUにRyzen AI 9 HX 370を採用するBeelink「SER9 Pro AMD Ryzen AI 9 HX 370」を紹介しよう。
まず目を引くのがOpenClawのマスコットであるロブスターにちなんだロブスターレッドカラーを採用した本体だ。Option Aは最初からローカルLLMが実装され、AIが完全にデバイス上で動作するため、外部にデータが漏洩する心配が低く、APIの利用料などを発生させずに使えるのが大きな強み。なるべく安全にOpenClawを試してみたい人にはうってつけといえる。
うまく使えば日々を充実させる相棒に
OpenClawは、ライターのように、情報収集、整理、文章作成、確認作業が多い仕事との相性はよい。AIに最終原稿を書かせるというより、調査や整理、下書き、構成作り、日々のチェックを任せる。人間は判断、取材、検証、表現の部分に集中する。この分担ができると、作業全体の負担はかなり軽くなる。
ChatGPT PlusのOAuth枠でも、筆者のような使い方ならしばらくは十分に試せる。よりヘビーに使うならAPI課金も視野に入るが、まずは現在の契約範囲で導入し、どの作業に効くのかを見極めるのがよさそうだ。
と、3週間ほどOpenClawを使ってきたが、何か作業を行なう際にまずはOpenClawに聞こうという流れが完全にできてしまった。ミニPCならスペースを取らず、消費電力も小さめなのでOpenClaw専用のPCとしてピッタリだ。今回はお試しだったが、本格的に導入しようとミニPCの物色を始めた筆者なのであった……。気になった人は、危険性もしっかりと把握しつつ、OpenClawを試してみてはどうだろうか。




































