買い物山脈

筆者にとって4台目となる「ThinkPad X1 Carbon」。これまでのモデルとの違いは?

製品名
ThinkPad X1 Carbon Gen 11(21HNCTO1WWJP6)
購入価格
25万2,098円
購入時期
2023年12月26日
使用期間
約1カ月
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです
「ThinkPad X1 Carbon Gen 11」

 昨年(2023年)暮れ、仕事で使っているメインマシンであるレノボ「ThinkPad X1 Carbon」を、それまでの第9世代モデル(Gen 9)から、第11世代モデル(Gen 11)へと買い替えた。本来ならば買い替えるべき性能差も機能差もないのだが、従来使っていたGen 9を修理に出すことになったため、修理完了後はGen 9をバックアップに回すことを前提に入れ替えを行なうことにした。

 本稿ではその「ThinkPad X1 Carbon Gen 11」を、Gen 9との比較を中心に紹介する。筆者はGen 9と11の間に存在するGen 10は利用経験がないため、本稿でGen 9からの進化ポイントとして紹介している変更点の中には、Gen 10ですでに実現していた仕様が含まれている可能性があるので、予めご了承いただきたい。

実に4台目となるThinkPad X1 Carbon

 14型ながら約1.2kgという軽量筐体が特徴の「ThinkPad X1 Carbon」を購入するのは、筆者にとって今回が4回目となる。同モデルは年に1度のモデルチェンジが行なわれており、これまで使っていたGen 9の前はGen 7を使用していたので、実質2年に1回のペースで買い替えていることになる。

 もっとも、ThinkPad X1 Carbonの指名買いだった前回までと異なり、今回はかなり機種選択に悩んだ。理由の1つは価格の上昇で、従来はBTOで標準的なオプションにLTEモジュールを追加しても20万円以内に収まっていたところ、今回はメモリこそ増量したもののLTEオプションや顔認証対応カメラを外しても、割引後価格が25万円を超えてしまっている。

 悩んだ理由のもう1つは、先日発売されたPFU「HHKB Studio」の存在だ。筆者がThinkPadにこだわるのはトラックポイントを搭載しているためだが、その同等品であるポインティングスティックを搭載するHHKB Studioがあれば、トラックポイント非搭載のノートPCと組み合わせ、ほぼ同じ操作性を実現できる。つまり無理にThinkPadにこだわる必要がない。

 ただし実際にHHKB Studioを使ってみた結果、少なくとも初期ファームの段階では、ポインタが不意に動くなど、代替として使うには難しいという結論に至った。今後のアップデートで改善する可能性はあるが、現時点で乗り換えるのは高リスクと判断し、従来と同じThinkPad X1 Carbonの最新モデルを選んだ、というのが機種決定に至る経緯だ。

左が本製品(Gen 11)で、購入時価格25万2,098円。右がこれまで使用していたGen 9で、2021年11月時点の購入時価格は19万0,905円。メモリを追加しているなどの違いはあるが価格の上昇は明らかだ
インカメラ部を重ねたところ。従来のGen 9(手前)にあった顔認証対応のインカメラをオプションから外し、一般的なインカメラのみとした
PFU「HHKB Studio」との組み合わせを前提に、トラックポイント非搭載のノートPCと組み合わせることも検討したが、最終的に見送ることに
最終的にチョイスしたのは、CPUがCore i7-1355U、メモリ32GBというスペック。リモートデスクトップを使うため、Windows 11はProへとアップグレードしている。マルチタッチは非対応
初期状態ではCopilotがタスクバーにピン留めされている。従来との相違点の1つだ

外観はほぼ同一。メモリは32GBの選択が容易に

 さて本製品の特徴だが、筆者がこれまで使っていたGen 9と、外見周りでの変化はほぼ皆無だ。キー形状などで多少の変化はあるのだが(後述)、過去のモデルチェンジ時に行なわれた、画面のアスペクト比が16:9から16:10となって画面が縦方向に伸びたり、側面にあった指紋センサーがキーボードと同じ面に移動するといった、ドラスティックな変化はない。

 一方で、従来は対象モデルが限定されていたメモリ32GBのオプションが、今回のGen 11では選択しやすくなったのは大きな違いだ。筆者がこれまで使っていたGen 9は16GBで、今回は迷わず32GBを選択した。パフォーマンスにどの程度の差が出るかは、のちほど詳しく見ていく。

 なおこれまで必ず選択していたLTEのオプションは、今回選択したモデルはBTOで選択肢がなく、搭載を見送っている。筆者の場合、コロナ禍を挟んでワークスタイルが大きく変化し、必ずしもLTEが必要ではなくなったので問題はないのだが、人によっては困るケースもあるかもしれない。

 側面のポートについては、左側面にはThunderbolt 4×2と、USB 3.1に対応したUSB Type-Aポート、さらにはHDMI端子を搭載する。右側面には、USB Type-Aポートが1つと、イヤフォンジャックを搭載する。これら左右側面ポートの配置は従来とは変わっておらず、ポートの並び順や間隔も違いはない。

画面を閉じた状態での比較。左がGen 11、右がGen 9。相違点はない
底面の比較。右(Gen 9)はファンの汚れが目立つのは差し引いていただくとして、シルク印字の内容を除いて相違点はない
左側面の比較。上がGen 11、下がGen 9(以下同じ)。ポート配置はまったく同一だ
右側面の比較。Gen 9はLTE対応モデルのためカードスロットがあることを除けば、相違点はない
正面の比較。インカメラの仕様が異なるため中央部のモールド周りが異なるが、厚みなどは同一
背面の比較。こちらもまったく同一だ

キーボードの配置は変更なし。ただし嵐の前触れ?

 続いてキーボードについて。日本語JISの配列については変更点は一切ない。これまではキーの手前がやや丸みを帯びていたのが、一部のキーにおいて直線的なデザインに改められているのが目立つ程度で、打鍵感にも違いはない。ポインティングデバイスについても同様だ。トラックパッドは基本オフにして使っているので評価保留としておく。

 指紋センサーについても変化はない。ThinkPad X1 Carbonの指紋センサーは、世代が変わるたびに本体の側面からキーボードの手前、さらにキーボードの上と、搭載位置がダイナミックに変化しているが、本製品の指紋センサーの位置はGen 9と同じ、キーボードの右上となっている。

 こうした配置のせいもあって、指紋センサーは天地が狭く、指を上下にスライドさせなくてはならないなど、使い勝手はお世辞にもよくない。筆者はデスク上での利用時には別の生体認証を使っており、この指紋センサーを使う機会はほぼないのだが、たまに使うと認識に失敗してイライラさせられることが多い。後述するように次期モデルのGen 12では改良が加えられているようなので、そちらに期待したい。

Gen 11のキーボード。トラックポイントとトラックパッドの両方を備えているのが、他社のノートPCにはみられない特徴だ。指紋センサーはキーボード右上にある
Gen 9のキーボード。配列自体は今回のGen 11と同じだ
もっともキー形状をよく見ると、機能周りのキーは下部が直線的なデザインに改められている。上がGen 9、下がGen 11
トラックパッド部は、これまでモデルチェンジのたびに上部キーの高さなどに変化が見られるが、このGen 11とGen 9については違いがない。幅は110mmと変化なし
指紋センサーは横長で、正方形のパッド状だったかつてのモデルに比べると触れにくく、認識率も高くない

 なお、すでに海外で発表されている本製品の次世代モデル(Gen 12)は、キーボードの左下のFnとCtrlキーの場所が入れ替わっているほか、PrintScreenキーが複数キーによるショートカットへと置き換わり、それによって減ったキーの代わりに指紋センサーが配置されるなど、キーボード周りで大掛かりな変更が行なわれている。

 本稿執筆時点ではまだ日本向けモデルが発表されておらず、日本語JISキーボードでの配置が不明なため評価ができないのだが、指紋認証センサーは面積の拡大により使い勝手の向上が期待できる一方、キー配置の変更などにより、日本語入力での使い勝手は逆に悪化する可能性もある。今回筆者がGen 12を待つことなく、Gen 11に買い替えた理由の1つでもある。いずれ機会があれば使い比べてみたい。

海外では発表済みの次期モデル(Gen 12)では、CtrlキーとFnキーが左右で入れ替わっている。また指紋センサーは下段右端、上下左右キーの左側に配置されている(画像はLenovo公式サイトより)
Gen 12は電源ボタンがかつてのように側面に配置されるなど、左右のボタンやポートの配置が大幅に改められている(画像はLenovo公式サイトより)

ベンチマークのスコアは10~15&程度向上

 さてパフォーマンスについてだが、複数のベンチマークアプリを試した限りでは、Gen 9からは10~15%程度のスコアの向上が見られる。

 このスコアの伸びは、ビジネス向けのベンチマークアプリでも、ゲーミング用のベンチマークアプリでもほぼ同等なので、純粋にCPU性能の向上(Core i7-1165G7→Core i7-1355U)と、メモリ容量の増加(16GB→32GB)によるものと見ていいだろう。

PCMark 10。スコアはGen 9が「4960」、Gen 11が「5642」(13.75%増)
PCMark 10 Extended。スコアはGen 9が「4690」、Gen 11が「5408」(15.31%増)
Procyon「Office Productivity Score」。スコアはGen 9が「4815」、Gen 11が「5287」(9.80%増)
3DMark「Time Spy」。スコアはGen 9が「1567」、Gen 11が「1816」(15.89%増)
3DMark「Fire Strike」。スコアはGen 9が「4409」、Gen 11が「5179」(17.46%増)
3DMark「Night Raid」。スコアはGen 9が「14490」、Gen 11が「16504」(13.90%増)
3DMark「Wild Life」。スコアはGen 9が「11035」、Gen 11が「12187」(10.44%増)
FINAL FANTASY XIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク。スコアはGen 9が「3789」、Gen 11が「4330」(14.28%増)
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク。スコアはGen 9が「1232」、Gen 11が「1235」(0.24%増)
BLUE PROTOCOL Benchmark。スコアはGen 9が「2194」、Gen 11が「2612」(19.05%増)

 またタスクマネージャーでCPUやメモリの使用率を見ても、負荷は明らかに低くなっている。特にメモリについては、仕事で使う約20個のWebサイトをブラウザで同時に開いた場合、従来のGen 9は使用率が65%程度まで跳ね上がっていたのが、本製品であればせいぜい50%程度。全ページを開き終わるまでの所要時間も明らかに短い。

 その一方、底面のファンが回る頻度は、従来よりも高いようだ。従来のGen 9は画像処理ソフトで複数のファイルを同時に開くなど、よほどのことがなければファンは回らなかったが、本製品ではブラウザで複数のタブをまとめて開くだけで、ファンが回り始めることがある。それほど騒々しくはないのだが、従来のGen 9に慣れていると違いを感じる。

本 製品は内部構造は従来のGen 9とほぼ同じと考えられるので、CPUの性能向上によって発生しやすくなった熱を効率的に逃がすには、ファンを回す頻度をより高くするしか方法がないのだろう。このあたり、構造も見直されたであろう次期モデル(Gen 12)でどのような変化が見られるのかは、1つのチェックポイントと言えるだろう。

次世代のGen 12ではさらに大きな変化が?

 以上のように、性能面では若干の向上は見られるが、筆者のようにやむを得ない事情がある場合を除けば、わざわざGen 9→今回のGen 11へと買い替える必然性は感じない。手元にGen 9、あるいはその後継であるGen 10があるのならば、そのまま使い続ける方向で問題ないはずだ。

 もっとも筆者個人は、実際に使っていても満足感は高い。従来のGen 9では、ある画像処理アプリを長時間立ち上げたままにしていると、新しいファイルを開けなくなる問題があったのだが、本製品ではそれが解消されているからだ。発生するのはこのアプリだけで、ほかにさしたる問題はなかったのだが、筆者的には非常にストレスだったので、日々快適さを実感している。

 ともあれ、次世代のGen 12では、このGen 9からGen 11まで共通して採用されていたフォームファクターが一新されており、性能面にせよ使い勝手にせよ、より明確な違いがあると考えられる。モデルチェンジ後は従来モデルがしばらく併売されることを考えると、Gen 12が国内で投入されたあと、このGen 11の価格が見直されるかも気になるところだ。

画面を斜め方向から見た時の明るさの比較。輝度自体は奥のGen 9のほうがわずかに明るく感じられるのだが、斜め方向から見た時は違いはほぼない