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黒神話:悟空もレイトレで動作!薄~いGeForce RTX 4070搭載PC「MINISFORUM AtomMan G7 Ti」

 MINISFORUMの「AtomMan G7 Ti」は、CPUにCore i9-14900HX、GPUにGeForce RTX 4070 Laptop GPUを搭載するスリムなゲーミングPCだ。9月10日出荷予定で、メモリ32GBと1TBのSSDを搭載した構成で価格は23万6,900円からとなっている。今回出荷に先立ってサンプルを入手したので、簡単にレポートしていこう。

従来のDeskMini NUCXI7およびNUCXI5をほぼ踏襲

 同社は2022年に「DeskMini NUCXI7/NUCXI5」という製品をリリースしており、今回の製品と同様に“ゲーミングノートから液晶とキーボードを省いたような構成”とすることで、比較的高いスペックを薄型筐体に収めた。

 しかしこの際は、CPUに第11世代Core、GPUにGeForce RTX 3070 Laptop GPUを搭載したもので、既に第12世代Coreがリリースされていた時期だったので周回遅れ感は否めなかった。それがAtomMan G7 Tiでは、CPUが第14世代Core、GPUもGeForce RTX 4070 Laptop GPUと最新(一応Core Ultraはあるがゲーミング向けではないため)となり、性能が大幅に向上した。

 その一方で筐体は従来をほぼ踏襲。右側面はほぼメッシュの通気口で、別途スタンドにネジで固定して縦置きにする仕様も同じだ。パッと見た感じ、前面に主張が弱いRGB LEDライティングが搭載されたところぐらいが違いとなる。厚めの17型ゲーミングノートを閉じて縦置きにして使ったらこんな感じになるだろう。

AtomMan G7 Tiの本体
左側面のロゴはMINISFORUMに。ちなみに従来はドクロだった
右側面はほぼ吸気口
背面と上部に吸気口

 なお、本体サイズは公称値で32.5×236×396.5mmとなっているが、幅と奥行きが“スタンド抜き”、高さは“スタンド込み”の数値でややこしい。スタンド自体は幅80mm、奥行き260mmで従来と変わらず、実質本体の厚みが26.5mmから32.5mmに増加した点が違いとなるわけだが、スタンドが必須な本製品にとって「NUCXI7/NUCXI5が収まっていたスペースにAtomMan G7 Tiが収まらない」というのはまずないだろう。

 このため「ちょっとした隙間に本体が入る」のが特徴。たとえばそれほど広くない机の上でウルトラワイドモニターやデュアルモニターを置いたら、デスクトップPCを置くスペースは相当限られてしまうのだが、本機ならモニターの裏や、それこそ机の足と壁の隙間といったデッドスペースでもスッと収まるので解決できる。

上部に電源ボタンとモード切替ボタン。その下に存在が薄いRGB LEDライティング
本体だけの幅は32.5mm。NUCXI7/NUCXI5の26.5mmから増えた
モニターの裏や机の足と壁の隙間といったデッドスペースにスッと収まるスリムさが魅力的

 このスリムさこそが本機の最大の武器であり、「性能的にはミドルクラス、つまりゲーミングノートの性能で十分なんだけど、好きなキーボードとマウス、それから大型のモニターを使いたい。でもPCを設置する場所を抑えたい」といったニーズに、本製品はピッタリなわけだ。

【表】試用機のAtomMan G7 Ti主な仕様
CPUCore i9-14900HX
メモリDDR5-5600 32GB
SSDPCI Express 4.0 SSD 1TB
GPUGeForce RTX 4070 Laptop GPU
OSWindows 11 Pro
インターフェイスUSB4、USB 3.1、USB 3.0×2、HDMI 2.1、Gigabit Ethernet、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4、音声入出力
本体サイズは32.5×236×396.5mm

従来より騒音は高め?動作モードはゲーム性能にも影響

 CPU/GPUともに従来から進化して性能が高まっているわけだが、これに伴い消費電力や発熱も増加した。具体的に言えば、従来は230WのACアダプタを使用していたのだが、本製品は279.3Wのタイプとなった。また先述の通り、筐体の厚みも6mm程度増した。

付属ACアダプタは279.3W

 このため騒音もやや増加している。従来モデルはゲームをプレイしていてもそこそこ静かで、2段階ある動作モードのどれを選んでもそこまで動作音が気にならなかったのだが、本機は標準の「オフィスモード」でもゲームプレイ中はそこそこ風切り音がして、より高性能な「ゲームモード」に切り替えると、一般的なゲーミングノートと変わらないぐらいの騒音になった。

 ただ、そのほとんどは風切り音で、不快な軸音は皆無。深夜など静かな環境ではそこそこ気になるかもしれないが、日中エアコンが効いている時間帯などではそこまで気にならなかった。静音性で言えば、先立って投入された「AtomMan G7 Pt」の方に一日の長があるが、後述するがGPUの性能的にワンランク上のクラスと言っていいほど高いものになっているので、そこは性能とのトレードオフだ。

 ちなみにAtomMan G7 Ptの動作モードはCPUの電力だけが変化していたが、本機はGPU電力も連動する。具体的には、標準のオフィスモードではCPUのPL1が55W、PL2が85W、GPUが負荷時105Wで動作するが、ゲームモードではそれぞれ90W、115W、135Wまで引き上げられる。このため動作モードは特にGPUが要となるゲーム性能に影響する。最新ゲームをプレイするのであれば、ゲームモードにしたほうが無難だ。

【表】動作モードの電力制限
動作モードオフィスモードゲームモード
CPU PL155W90W
CPU PL285W115W
GPU(実測)105W135W

 インターフェイスは前面が上から順にUSB 3.0、SDカードスロット、3.5mm音声入出力、USB 3.0。背面が上から順にDC入力、USB4、HDMI出力、USB 3.1、Gigabit Ethernetとなっている。「ミニPC」として考えると控えめだ。このほか、Intel BE200によるWi-Fi 7とBluetooth 5.4をサポートする。

前面が上(写真右)からUSB 3.0、SDカードスロット、3.5mm音声入出力、USB 3.0
背面は上(写真左)からDC入力、USB4、HDMI出力、USB 3.1、Gigabit Ethernet

 本体内部も見てみたが、ゲーミングノートと同じようなレイアウトだ。超極太のヒートパイプを含む合計5本のヒートパイプを利用した冷却機構が目立つほか、2階建てになっているM.2スロット(1基は増設可能)もユニーク。また、「EDP」、「BATT」といったeDPおよびバッテリ接続コネクタを彷彿とさせるシルク印刷があることから、ノートPCも視野に入れた基板設計であることが伺える。

本体内部の構造
5本のヒートパイプを使った冷却機構
DDR5のSO-DIMMスロット
M.2スロットは2階建てとなっており、標準で下の方のスロットが埋まっている
「BATT」といったシルク印刷があることからバッテリ接続と思わしきコネクタのパターン(未実装)があったりと、ノートPC用と思われる基板設計が

 なお、搭載されるGeForce RTX 4070 Laptop GPUは、「CUDAコア数はデスクトップ版のGeForce RTX 4060 Tiより多く、GeForce RTX 4070より少ない。ただしクロックはいずれよりも低い」という仕様。ブーストクロック×CUDAコア数という単純に計算した性能としてはGeForce RTX 4060 Tiより低く、GeForce RTX 4060より高いという辺りだ。

【表】GeForce RTX 4070 Laptop GPUの“位置付け”
GPUGeForce RTX 4070 LaptopGeForce RTX 4060 TiGeForce RTX 4070
CUDAコア数4,6084,3525,888
ブーストクロック1,230~2,175MHz2,540MHz2,480MHz
メモリGDDR6 8GBGDDR6 8GB/16GBGDDR6/6X 12GB
メモリバス幅128bit128bit192bit

最新タイトル「黒神話:悟空」もプレイできる性能

 最後にベンチマークを行なって行こう。今回もCPUを計測する「Cinebench R23」、PC全体の性能を計測する「PCMark 10」、GPU性能を計測する「3DMark」、そして実ゲーム性能を反映する「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」を利用した。比較用としてAtomMan G7 Ptの結果も入れた。

 まずはCinebench R23の結果だが、マルチコアではいかに24コアと物理コア数が多いCore i9-14900HXだといえども、同じ高性能コアが16コアあるAtomMan G7 Ptに後塵を拝する結果となった。ゲームモードだとしてもAtomMan G7 Ptの静音モードと同等レベルである。しかしゲーム性能に影響するシングルコアでは、最高2,008と優秀なスコアを残している。

Cinebench R23の結果

 PC全体の性能を計測するPCMark 10では、どの動作モードでも9,000を超えるAtomMan G7 Ptとは対象的に、8,000台にとどまってしまっている。

PCMark 10の結果

 しかし3Dやゲームとなると結果は一変。一般的な3Dではあまり差がないが、レイトレーシングが含まれたり最新のグラフィックスを反映したテストでは、AtomMan G7 Ptより性能が40%~50%ほど高い結果を残す。

3DMark Time Spyの結果
3DMark Night Raidの結果
3DMark Fire Strikeの結果
3DMark Wild Lifeの結果
3DMark Port Royalの結果
3DMark Steal Nomad Liteの結果
3DMark Steal Nomadの結果
3DMark Speed Wayの結果
3DMark Solar Bayの結果
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク

 実際に最新の話題作「黒神話:悟空」でもベンチマークをしてみたが、DLSSのパフォーマンスモードやフレーム補間を駆使することで、4K解像度/各種エフェクト最高(影/反射/光は最低)、フルレイトレーシングが最高の状態でも、60fpsでプレイできた。また、AtomMan G7 Ptの方とほぼ同じ条件でテストすると、4倍から8倍もの差が付く。Radeon RX 7600M XTではまずフルレイトレーシングを諦めた方が良い。

 AtomMan G7 Ptで60fpsを出したい場合、レイトレーシングをオフにした上で各種エフェクトを中に設定する必要があるので、そのグラフィックスは雲泥の差。このタイトルは特にGeForce向けの最適化が入っているというのもあるのだが、リアルタイムレイトレーシング対応の最新ゲームを高画質で堪能したいのであれば、AtomMan G7 Tiのほうがおすすめだと言える。

黒神話:悟空 ベンチマークツール

AtomMan G7 Ptとは異なる方向性

 本製品の投入をもって、MINISFORUMのゲーミング向けの「AtomMan G」シリーズはAMD+AMDとIntel+NVIDIAの2ラインナップとなった。価格も近しいのだが、AtomMan G7 PtはどちらかといえばCPU性能とコンパクトさ重視、AtomMan G7 TiはどちらかといえばGPU性能とスリムさ重視のモデルだと言えるだろう。普段遣いよりもゲームをプレイする時間が多いのなら、本機のほうを考慮したほうがいいだろう。

 さて直近の動向だが、黒神話:悟空の登場により、今中国系のミニPCメーカーはGeForce RTX搭載に気合いを入れているようだ。今回ご紹介したAtomMan G7 Ti以外にも、2社からGeForce RTX 4060搭載のコンパクトPCが登場する予定となっている。ちょっと前まではRadeon RX 7600M XTを搭載したGPUドッキングステーションが多かったのだが、黒神話:悟空の空前のヒットにより、今年(2024年)後半はGeForceが話題の中心となりそうだ。

ブックサイズの高性能ゲーミングPC「AtomMan G7 Ti」のスゴさをライブ配信で体験!【8月27日(火)21時より】

「AtomMan G7 Ti」のレビュー配信をライブ配信でお届けします。サイズ感、特徴、ベンチマークテスト結果の解説、実動デモとさまざまな角度から評価。高性能ミニPCの最前線をご堪能ください。解説は劉デスク。MCはPADプロデューサーの佐々木です。