Hothotレビュー

ノートPCから液晶を省いたような薄~い「MINISFORUM DeskMini NUCXI7」、想像以上に高い性能と使い勝手

MINISFORUM「DeskMini NUCXI7」

 ノートPCを閉じたままにして、外部ディスプレイとキーボードとマウスを組み合わせ、デスクトップPC的に使っている人もいるのではないかと思う。筆者もしばらく前はそうだった。ただ、ノートPC側のディスプレイを使わず、持ち運びもしないのであれば、普通のデスクトップPCでいいよな、と考えるのがたぶん一般的だ。

 ところが、そこで「ならばディスプレイを取っ払ってしまおう!」という斜め上の発想に行き着いてしまったようなPCが登場した。香港に拠点を持つPCメーカーブランドMINISFORUMが新たに発売した「DeskMini NUCX」シリーズだ。同シリーズの上位モデルである「NUCXI7」をお借りすることができたので、紹介したい。

「DeskMini NUCXI7」のパッケージ
【緊急配信決定】超薄型ゲーミングデスクトップPCを動画でもチェック!~10月17日(月)21時より

 超薄型筐体のゲーミングデスクトップPC「MINISFORUM DeskMini NUCXI7」をライブ配信で解説します。本記事を執筆した日沼 諭史氏が、性能評価、実機動作デモを交えてお届け。その薄さと性能から生み出される新たなユーザー体験をチェック!

ミドルクラスのディスクリートGPUを搭載するハイパフォーマンス機

開封したところ。梱包はシンプル

 「DeskMini NUCX」シリーズは、薄型のキットPC。第11世代Core i5搭載の「NUCXI5」と、同Core i7を搭載する「NUCXI7」の2つのモデルをラインアップし、GPUにGeForce RTX 30シリーズを搭載するパワフルなPCとなっている。今回お借りした試用マシンは第11世代Core i7-11800H(8コア16スレッド、最大4.60GHz、Tiger Lake)にGeForce RTX 3070 Laptop GPU(GDDR6 8GB)が組み合わされたもので、メモリは16GB(DDR4)、ストレージは512GB(NVMe SSD)だ。

パッケージ内容。ACアダプタは230W

 公式ECサイトでは、CPU/GPU違いの2モデル(Core i5搭載機はRTX 3060となる)から選べるほか、メモリとストレージを最小16GB+256GBから最大32GB+1TBまでカスタムして注文でき、Windows 11 Pro 64ビットがプリインストールされた状態で出荷される。

 独自のソフトウェアは特に見当たらず、素のWindows 11のようだ。また、メモリ/ストレージ非搭載のベアボーンも選択可となっている(この場合はOSは付属しない)。2022年10月11日現在はキャンペーンが実施されているのか、およそ2割引の11万5,590円~17万5,590円と、わりとリーズナブルな価格で販売されている。

試用機のスペック

 しかしなんと言っても目を引くのは筐体デザインだろう。まるでモノリスのごとくそびえ立つ筐体は、正面から見るとまさしくノートPCのような薄さで、実測してみると約26.5mm。高さと奥行きは約385×236mm(スタンド装着状態で約390×260mm)、重さは実測2,435gと、17型クラスのゲーミングノートのようなサイズ/重量感だ。

 中身としても、最新世代ではないとはいえ45Wと高いTDPのCore i7-11800Hであること、GeForce RTX 3070 Laptop GPUというノートPC向けのGPUとなっていることなどから、デスクトップPCというよりどちらかというとハイパフォーマンスなゲーミングノートPCの趣が強い。

ノートPCからディスプレイを取っ払ってしまったような薄い筐体
底面に付属のスタンドを装着する
左側面
右側面(背面側から)
幅は約26.5mm
重さは2,435g

 インターフェイスは本体前後に設けられている。前面にはUSB 3.2 Type-A(最大10Gbps)×3とSDカードスロット、3.5mmヘッドセット端子があり、背面にはThunderbolt 4(USB Type-C)×1とHDMI 2.1対応の映像出力、2.5GbE対応イーサネットポートを装備。

 スペックシート上では、HDMIは最大4K 60Hz、Thunderbolt 4はDisplayPort Alternate Modeにより最大8K 60Hzでそれぞれ出力可能となっている(HDMIでの4K 60p出力は確認済み)。ネットワークは有線LAN以外にWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)にも対応し、Bluetooth 5.3が利用可能だ。

前面インターフェイス。USB Type-A×3にSDカードスロットもある
背面インターフェイス。HDMI出力とThunderbolt 4に、2.5GbE対応LANポートがある
PS4 Proと並べてみた。のっぽ感はあるが、スリムなので圧迫感はあまりない

決してイロモノではない、合理的で扱いやすいデザイン

 本体片面には大きなドクロマークが描かれているが、反対側はハニカム形状の吸気孔がほぼ全面に広がっていて、上面と底面、そして背面2カ所の計4カ所から排熱される。このあたりは付属スタンドを使って縦置きすることが前提になっているからこその構造とも言え、平置きして使うことになるノートPCには真似できない大胆なエアフロー設計のように思う。

片側のほぼ全面が吸気孔
背面のほかに、上面と底面からも排気する

 実際、エアフローに余裕があるのか稼働中に聞こえる冷却ファンの音はおとなしく、電源を入れた直後は本当にオンになったのか判別がつかないほど。ゲーム中など高負荷状態になるとさすがにファンノイズが聞こえてくるが、それでも高音成分のないサーという風が通り抜けるような音で、十分に静音と言える範囲だ。ゲームのBGMや効果音の妨げにはなりにくい。

 その上で、前面の電源ボタン下には高負荷処理向けに冷却モードを変更するボタンが存在し、これをオン(ゲームパッドアイコンが点灯状態)にすることで全体的なパフォーマンスが5~10%程度アップする。が、それでも冷却ファンのノイズレベルには大きな差はなかった。

電源ボタンの下には冷却ファンの動作モードを変更するボタン。ゲームパッドアイコンが点灯している状態が冷却強

 ちなみに本体を平置きすることは不可能ではないが、当然ながら吸気孔のある側を下にして置くのは、吸気を妨げることになるのでNG。ドクロマーク側の面もしばらく稼働していると多少の熱をもつことから放熱板的な役割もありそうだし、ロゴが隠れてしまうこともあって、こちらを下側にするのもなんとなく気が引ける。やはりスタンドで縦置きするのがベストだろう。

 でも、だからといって縦置きで困るようなシチュエーションはあまりないようにも思われる。極端な薄型のおかげで、縦に細長い隙間にも余裕で収められるのがなんと言っても大きい。デスクトップPCだといくら小型の筐体であってもそれなりの幅を占有してしまうが、本製品はノートPCを立てかけられるような隙間さえあればスッと差し込むようにして置いておける。

デスクトップPCなら絶対に置けないだろうスペースにもスッと入り込む

 もしデスクが狭くてディスプレイ左右にスペースがないときは、ディスプレイ裏に設置してもいいかもしれない。デスク周りに大きなPCを置く余裕がなくとも、やはりハイパフォーマンスなデスクトップPCレベルの環境を諦め切れない……という向きにもマッチするのではないだろうか。

 フォルムもPCらしくなく、どことなくAV機器っぽさがあってリビングに置いても違和感なし。低ノイズなので、リビングのTVに接続して音楽・動画再生用のメディアセンター的な使い方をしてもいいだろうし、コンソールゲーム機のようなノリでPCゲームを楽しむこともできてしまう。GPUはノートPC版とはいえミドルクラスのRTX 3070/3060なので、GPU処理が重要な画像・動画編集などのクリエイティブ用途にも適しているだろう。それでいてノートPCのようなモビリティ性能を秘めているわけで、長期滞在するワーケーション先に気軽に持ち込んで仕事するのにもよさそうだ(ディスプレイや入力デバイスは別途必要になるが)。

リビングの55型TVの下に置いてみた。Nintendo Switchと比べるとやはり大きいが……
正面にまっすぐ向けると目立たない。驚くべき前面投影面積の少なさ!

ベンチマークはノートPCを明らかに凌駕するスコアを叩き出す

 そんなわけで、ベンチマークテストも走らせてみた。おなじみの「PCMark 10」と「3DMark」に加えて、ゲームパフォーマンスを測るために「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、「アサシン クリード ヴァルハラ」、「ELDEN RING」、「エーペックスレジェンズ」を実行している。本体前面の冷却モードボタンはゲームパッドアイコンが点灯している状態(冷却強)とした。

PCMark 10
3DMark
CrystalDiskMark
スペック上はPCIe 4.0にも対応するとしているが、このマシンではPCIe 3.0相当のエントリー向けSSDを使用しているようだ
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
アサシン クリード ヴァルハラ。ゲーム内に用意されているベンチマークテストを実行。
エーペックスレジェンズ。「トレーニング」モードで一定のルートを移動したときの約2分間の平均フレームレートを計測
ELDEN RING。馬に騎乗して一定のルートを走行したときの約2分間の平均フレームレートを計測

 「PCMark 10」および「3DMark」は、過去にPC Watchで紹介された同等のハードウェア構成のノートPCと比べると、それらを軒並み上回る良好な結果となった。おおむね5~10%程度高いスコアをマークしており、Core i7-11800HとGeForce RTX 3070 Laptop GPUの地力の高さに加え、それを安定的に動作させる冷却性能の高さが影響しているのかもしれない。

 「ファイナルファンタジーXIV」や「アサシン クリード ヴァルハラ」といった3Dゲームのベンチマークにおいても、スコア/フレームレートはかなり高い。デスクトップPC用のCPU/GPU並み……とはいかないまでも、並みのゲーミングノートPCを凌駕するレベルのパフォーマンスを発揮しているのは間違いのないところ。4K解像度だとさすがに力不足を感じそうだが、「ファイナルファンタジーXIV」ならストレスなく楽しめそうだ。

 さらに念のためベンチマークテスト中のCPUおよびGPUの温度と、GPUの動作周波数の推移もチェックしてみた。「HWMonitor PRO」を使い、室温24℃で「3DMark」の「Time Spy Extreme Stress Test」(フルHD解像度環境)を約30分間繰り返し実行したときの状況をグラフ化したのが以下となる。

3DMark Time Spy Extreme Stress Test

 GPUはテスト開始後からゆっくり温度が上昇し、だいたい75℃前後をピークに動作。動作周波数は1,500MHz付近で安定しており、テスト終了後は速やかに元の50℃前後に戻っている。長時間のゲームプレーでもほとんど性能低下なく遊べるだろう。

メモリ、ストレージの増設も可、幅広い用途に使えそうな1台

 あくまでもキットPCなので、CPUやGPUのアップグレードはまずできないけれど、メモリとストレージ(M.2 SSD)の増設・交換は可能な仕組みになっている。将来容量不足に陥ったときにも改善の余地が残されているのは、こういったコンパクトで特殊な形状のキットPCでは珍しいかもしれない。

スタンドを取り外したところに見える3本のねじを外す
すると吸気孔側のパネルを取り外せる
ぎっしり詰まっているかと思いきや、意外と内部には余裕があるようだ
DDR4-3200のSO-DIMMが2個装着されていた。交換は簡単そう
NVMe SSDは1つ装着済みで、さらにもう1つ追加が可能

 奇をてらったような雰囲気はありつつも、実際のところはデザイン/性能ともに洗練された完成度の高いPCに仕上がっていて、その薄さによって置き場所をあまり選ばないという小回りと使い勝手の良さを兼ね備えているのも、いい意味で期待を裏切るものだった。クリエイティブ作業を含む仕事用や趣味用のPCとして、あるいは家族共用のリビングPCとして、真っ当に使える新たな選択肢が現れたな、という印象だ。