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水冷なんて単なる飾り……じゃない!GeForce RTX 4060を詰め込んだ驚異のミニPC「GEEKOM MEGAMINI G1」
2024年10月9日 06:17
GEEKOMの「MEGAMINI G1」は、派手な見た目が特徴のゲーミングミニPCだ。「ミニPC」と言うにはやや大きいかもしれないが、フットプリントは20cm四方以下であり、卓上に置いても十分邪魔にならないフットプリント。これにCore i9-13900HとGeForce RTX 4060を搭載し、これを派手な水冷クーラーで冷却をしているのだから、PCの中でもかなり異色の存在だ。
日本ではMakuakeを介してクラウドファンディングを行なっており、リターンが得られる出資額はCore i7-13620H/メモリ32GB/1TB SSDの構成で22万9,900円から、Core i9-13900H/メモリ32GB/2TB SSDの構成で24万9,900円からとなっている。今回は後者をベースとしたサンプルが到着したので、レビューしていこう。
ド派手な水冷で全体を超強力に冷却
MEGAMINI G1でまず目を引くのはなんといってもその水冷機構だ。TECNOと共同開発したこの水冷クーラーは、26dB未満の静音性、2L/分の流量、360mlのクーラントリザーバー、毎分8回のサイクルによって、最大250Wの放熱能力を実現。この高いスペックを筐体の容積を5.7Lに収めた。米国で水冷技術に関する特許も取得したという。
今回サンプルを分解できていないので、具体的な構造は直接確認できないのだが、公式サイトの図を確認する限り、基板を底面に搭載し、その上に水冷機構を載せた構造になっているようだ。冷却液がCPU/GPU上を通ったあと、後部のラジエータと上部のラジエータを通り、後部は120mmファン、上部のサイズは不明ながらファンで冷却している。ラジエータの面積は6,888平方mmだという。
冷却機構の性能もさることながら、派手な見た目で独自性を誇張しているのもユニーク。前面と側面に透明なアクリル窓を備え、内部が覗けるようになっているほか、そのアクリルのフレームにアドレサブルRGB LEDを搭載。また、4本の透明なチューブで冷却液の流れがそのまま視認できる構造や、RGB LED付きの120mm角ファンを備えるなど、デスクトップに置いた際の存在感は抜群だ。
本体上部にもライトブルーに光るイルミネーションが仕込まれており、起動中だけでなく、サスペンド時も常時発光。さらに、前面上部には超小型の単色ディスプレイも搭載されていて、稼働中CPUやGPUの負荷や温度、メモリの使用量を順次表示して監視できるようになっている。
現時点ではRGB LEDの発光パターンや、小型ディスプレイの表示内容をカスタマイズするユーティリティは提供されておらず、固定となっている。
強力な水冷を搭載しているので、騒音や冷却性が気になるところだが、入手したサンプルはポンプの音が甲高く、上部の隙間から漏れ出てくるため、特にアイドル時で騒音が目立った。ただ、開発チームによれば、現在このポンプの騒音を改善できるよう調整している最中とのことなので、発売時には改善されることだろう。
その一方で負荷時は120mm角ファンによる風切り音が目立つようになるが、サイズを考えれば及第点といったところ。先日レビューしたACEMAGICの「M1A TANK 03」ほど静かではないのだが、MINISFORUMの薄型の「AtomMan G7 Ti」よりは高音成分が抑えられているため、こちらのほうが個人的には“好ましい”と感じた。
それよりも「すごい」と感心させられたのは圧倒的な冷却性だ。冒頭で述べた通り、入手したサンプルはCore i9-13900Hを搭載しているのだが、一般的なミニPCであればCinebench R23などの負荷時は90℃前後が当たり前であるのに対し、本機は継続負荷時で50℃程度に抑え込んでいる(PL2の瞬間最大でも70℃程度)。「黒神話:悟空」といったGPU高負荷タイトルを走らせても、GPU温度は60℃前後と、5.7Lという容積を考えれば驚異的な結果となった(室温27℃の環境)。
Core i9-13900Hの最大動作温度は100℃、GeForce RTX 4060の最大動作温度は90℃なので、本機はかなり余裕を持って冷却していることが分かる。特に、Core i9-13900Hでこのような温度を見たのは初だったのでなかなか衝撃的だった。これならばもう少しポンプを遅くして騒音を減らす余裕が残されているだろう。
なお、水冷となると気になるのは液漏れだが、同社によれば極端に大きく揺らしたり倒したりすることがなければ問題はないとのこと(とは言え水冷PCをそこまで乱暴に扱うユーザーはいないとは思うが)。また、3年間の保証を添付することで、ユーザーの安心感を高めている。
モバイルCPU+デスクトップGPU
本機はCPUにモバイル向けであるCore i9-13900Hを採用している一方で、GPUにはデスクトップ向けのGeForce RTX 4060を採用している。この構成は、先日レビューしたACEMAGICの「M1A TANK 03」に大変よく似ているため、「M1A TANK 03のCPUをそのまま置き換えたらこうなりました」という印象を受けるかもしれない。
しかし実際のところはかなり構成が異なる。一番目立つところは、M1A TANK 03はすべてのディスプレイ出力がIntel Xe Graphicsからであるのに対し、MEGAMINI G1は2基あるHDMIポートがGeForce RTX 4060からの直接出力である点だ。このためM1A TANK 03のようにGPU性能がスポイルされることなく、GeForce RTX 4060の素の性能が出せる。これは後述するベンチマークからも明らかである。
CPU | Core i9-13900H(14コア/20スレッド) |
---|---|
メモリ | DDR5-5200 32GB(16GB×2) |
GPU | GeForce RTX 4060 |
SSD | 2TB NVMe SSD(PCI Express 4.0) |
OS | Windows 11 Pro |
インターフェイス | OCuLink、USB4、USB 3.2 Gen 2 Type-C、USB 3.2 Gen 2×5、USB 2.0、HDMI 2.0出力×2、2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 7(MediaTek Wi-Fi 7 MT7925)、Bluetooth 5.4、SDカードスロット、音声入出力 |
本体サイズ | 166.7×166.9×160.9mm |
インターフェイス類も異なっており、MEGAMINI G1は背面にUSB4、USB 3.2 Gen 2 Type-C、USB 3.2 Gen 2、USB 2.0、HDMI出力×2、OCuLinkを備えている。このうちUSB4とUSB 3.2 Gen 2 Type-Cに関してはDisplayPort Alt Mode出力のサポートも謳われているが、筆者手元のサンプルでは後者からのディスプレイ出力ができなかった。なお、USB4のディスプレイ出力はIntel Xe Graphicsから行なわれている。
前面にインターフェイスに関して、MEGAMINI G1はUSB 3.2 Gen 2×4とやや多く、それに加えて3.5mmの音声入出力がある。USBポートの向きは、M1A TANK 03が背面と前面とでは上下逆さまであるのに対し、MEGAMINI G1は統一されているといった使い勝手への配慮が見られる。SDカードスロットは本体左側面に搭載されている。
Makuakeの製品情報では、無線LANモジュールがIntelのWi-Fi 6E、Bluetoothはバージョン5.2になるとされているが、サンプル機はモジュールがMediaTekのWi-Fi 7 MT7925が採用されていて、Bluetooth 5.4だった。また、USB 3.2 Gen 1ポート(つまりは5GbpsのUSB 3.0)があるような表記も見受けられるが、実際はすべて刻印にある10Gbpsを達成できるUSB 3.2 Gen 2だった。このあたりは製品版でどうなるか気になる。
なお、M1A TANK 03はメモリの換装やSSDの増設がツールレスで行なえるという特徴があったが、MEGAMINI G1はそもそもネジすら見せない構造となっており、基本的にユーザーによる増設/換装は考えていないようだ(一応、底面からメモリ/SSDへのアクセスは可能)。購入時に後悔しないスペックのものを選ぶことが前提で、増設してもUSB SSD程度に留めておくことをおすすめする。
ちなみに今回のサンプルに付属していたACアダプタは330Wタイプだが、330Wの割にはかなり小型だった。ただこれは欧州向けモデルであり、日本国内向けは別途用意されるだろう。
GeForce RTX 4060の性能が十分に引き出せる
最後にベンチマークを行なっていきたいが、まずは本機で設定されているパラメータ類について説明しておこう。
CPUの電力制限だが、標準ではPL1が45W、PL2が115Wと比較的高く設定されている。また先述の通り放熱にも余裕があるためか、BIOSでPL1を100Wまで引き上げるプリセットも用意されていた。ただ、M1A TANK 03のようにダイヤルでユーザーが積極的に変えるようなところにあるわけではないし、GEEKOMとしては製品情報で特に謳われておらず、試作機だけの仕様の可能性もあることから、今回はテストから省くことにする。一方GPUについてテストしたところ、消費電力が概ね仕様通りの115W前後で推移した。
今回使用したベンチマークは、CPU性能を計測する「Cinebench R23」、PC全体の速度を計測する「PCMark 10」、3D関連性能を計測する「3DMark」。そしてゲームベンチとして、「ファイナルファンタジーXIV 黄金のレガシー ベンチマーク」、「黒神話:悟空」内のベンチマーク。比較用としてM1A TANK 03(ビースト)とAtomMan G7 Tiの結果を並べた。
結果は概ね想定通りで、以前レビューした2機種のちょうど間の性能といったところ。今回のテストでは、GeForce RTX 4060から直接出力が行なわれているHDMIポートにモニターを接続したのだが、高いフレームレートを達成できる3DMarkのNight RaidやWild Lifeといったベンチマークで、Intel Xe Graphicsを経由して出力するM1A TANK 03に対してのアドバンテージ顕著となった(+6割強のスコア)。
いずれにしても、本機はGeForce RTX 4060の性能を十分に引き出せる構成だと言ってよく、このクラスのGPUを想定したゲームタイトルであればスムーズにプレイできるだろう。
GeForce RTX 40搭載ミニPCは静音性か、見た目か、絶対性能か
MEGAMINI G1をもって、2024年のGeForce RTX 40シリーズ搭載ミニ(もしくはスリム)PCの役者が3つ揃った。一番最初に紹介したMINISFORUMのAtomMan G7 Tiは、第14世代CoreでGeForce RTX 4070 Laptop GPUなので一番性能が高いが、負荷時の騒音は一番目立つ。M1A TANK 03は第12世代Coreでやや古く、GeForce RTX 4060での描画がIntel Xe Graphics経由で出力されるので高フレームレートには向かないが最も静かだ。
その中間に位置するのがMEGAMINI G1だが、コストパフォーマンス的な意味でAtomMan G7 Tiよりも高価な点をどう見るかで評価が分かれるかもしれない。ただ、AtomMan G7 Tiは地味なデザインでTVやモニターの裏といった隙間に隠しておくのにちょうどいいのに対し、MEGAMINI G1はこれでもかというぐらいに強い主張のRGB LEDライティングと鑑賞に堪えるギミックで、卓上の目立つところに設置せざる得ないもの。つまり両極にあるデザインであり、競合する製品だとは言えないところもある。
ともあれ、ユーザーとしては何よりもGeForce RTX 40シリーズを搭載したミニPC(?)がまた1つ増えたのはうれしい。「性能的にはGeForce RTX 4060で十分だけど、大きなデスクトップPCを置くスペースもない。でも、ゲーミングノートみたいに決められたキーボードやディスプレイでゲームをプレイするのが嫌」というユーザーは、検討してみてはいかがだろうか。
話題の水冷ミニPC、GEEKOM「MEGAMINI G1」をライブ配信で解説します。個性的なモデルが多いミニPCのなかでもインパクト抜群の本機が動く様を4K高画質でお届けします。解説は劉デスク。