Hothotレビュー
4kg超えのパソコン工房製ヘビー級ゲーミングノートを試す。デスクトップ版CPU搭載
2021年2月15日 06:55
デスクトップ向けCPU搭載のゲーミングノート
株式会社ユニットコムのiiyama PCブランド「LEVEL∞」から、17.3型ゲーミングノート「LEVEL-17FG103-i7-VWZX」が発売された。
17.3型ということでノートPCとしては大型だが、注目すべきは約4.67kgという重量。ゲーミングノートは重くなりがちだが、4kg超というのは尋常ではない。
その理由は、おもな部位にデスクトップ向けのコンポーネントを使用しているため。一般的なノートPCより高い性能を出せるのが強みで、高性能なPCをどうしても持ち運びたいというニーズに応える製品となっている。本来のゲーミング向け以外にも、自動車のセールスなどで3DCGを表示して見てもらうために使われる、とメーカーの方から聞いたことがある。
この手の製品は他社を含めて時々登場するが、ハイパワーなデスクトップPC向けのコンポーネントからは大量の熱が発せられ、排熱処理のため筐体は大きく、重くなりやすい。また大きな消費電力を賄うためにACアダプタを2個使用するなど、一般的なノートPCとは使用感も大きく異なる。
そんな本機の仕上がりはどうか、実機をお借りしたので試していく。
基本性能だけでなく端子類や拡張性の高さも魅力
「LEVEL-17FG103-i7-VWZX」のスペックは下記のとおり。
【表1】LEVEL-17FG103-i7-VWZXのスペック | |
---|---|
CPU | Core i7-10700(8コア/16スレッド、2.9~4.8GHz) |
チップセット | Z490 Express |
GPU | GeForce RTX 2080 SUPER(8GB GDDR6) |
メモリ | 16GB DDR4-2666(8GB×2) |
SSD | 500GB(M.2 NVMe) |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 17.3型非光沢液晶(300Hz、G-SYNC対応) |
解像度 | 1,920×1,080ドット |
OS | Windows 10 Home 64bit |
汎用ポート | Thunderbolt 3、USB 3.2 Type-C、USB 3.1 Type-C、USB 3.1×3 |
カードスロット | SDXC |
映像出力 | HDMI、Mini DisplayPort×2 |
無線機能 | Wi-Fi 6、Blunetooth 5 |
有線LAN | 2.5GBASE-T |
その他 | 前面100万画素カメラ、マイク、音声入出力など |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 398×322×50.2mm |
重量 | 約4.67kg |
税別価格 | 29万2,980円 |
CPUはCore i7-10700、チップセットはZ490でデスクトップPC向けのコンポーネントを搭載。GPUはGeForce RTX 2080 SUPERと、すでにGeForce RTX 3000番台が登場しているので1世代遅れとなるが、それでも性能は十分に期待できる。
もう1つ特筆すべきは液晶だ。17.3型のフルHDで、300Hzの高リフレッシュレートに対応している。NVIDIA G-SYNCにも対応しており、ゲーミングディスプレイとしても高い性能を有している。
2.5GBASE-T対応の有線LANとWi-Fi 6対応の無線LANによるネットワーク機能も充実。映像出力はHDMIと2つのMini DisplayPortのほか、Thunderbolt 3とDisplayPortマークのついたUSB Type-Cポートもある。
ストレージは500GBのNVMe SSDのみで少々物足りないが、カスタマイズで増量できる。最大3基のNVMe SSDを内蔵できるようで、その気になれば2TB×3という構成も可能だ。
ノートPCの限界を超えたグラフィックス性能
続いて実機のテストを行なう。まずはベンチマークテストを試していく。利用したのは、「PCMark 10 v2.1.2506」、「3DMark v2.16.7117」、「VRMark v1.3.2020」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「Cinebench R23」、「CrystalDiskMark 8.0.1」。
本機はプリインストールされているソフト「Control Center 3.0」を使って、動作モードを変更できる。標準は「エンターテイメント」で、ほかに「パフォーマンス」、「省電力」、「静音」の計4つが用意されている。ベンチマークテストは、「エンターテイメント」と「パフォーマンス」の2通りで実施した(バッテリ関連のテストは「エンターテイメント」のみ実施)。
エンターテイメント | パフォーマンス | |
---|---|---|
PCMark 10 v2.1.2506 | ||
PCMark 10 | 6,883 | 7,151 |
Essentials | 9,794 | 9,831 |
Apps Start-up score | 14,301 | 14,317 |
Video Conferencing Score | 7,191 | 7,301 |
Web Browsing Score | 9,136 | 9,091 |
Productivity | 8,826 | 9,773 |
Spreadsheets Score | 10,023 | 12,034 |
Writing Score | 7,773 | 7,938 |
Digital Content Creation | 10,236 | 10,328 |
Photo Editing Score | 14,096 | 14,067 |
Rendering and Visualization Score | 13,415 | 13,645 |
Video Editing Score | 5,672 | 5,741 |
Idle Battery Life | 6時間4分 | |
Modern Office Battery Life | 4時間59分 | |
Gaming Battery Life | 1時間42分 | |
3DMark v2.16.7117 - Time Spy | ||
Score | 10,417 | 10,406 |
Graphics score | 10,571 | 10,573 |
CPU score | 9,627 | 9,556 |
3DMark v2.16.7117 - Port Royal | ||
Score | 6,631 | 6,639 |
3DMark v2.16.7117 - Fire Strike | ||
Score | 22,181 | 22,086 |
Graphics score | 25,505 | 25,222 |
Physics score | 24,094 | 24,428 |
Combined score | 10,580 | 10,639 |
3DMark v2.16.7117 - Wild Life | ||
Score | 57,615 | 57,239 |
3DMark v2.16.7117 - Night Raid | ||
Score | 55,310 | 55,373 |
Graphics score | 120,992 | 118,539 |
CPU score | 13,569 | 13,776 |
VRMark v1.3.2020 - Orange Room | ||
Score | 12,540 | 12,423 |
Average frame rate | 273.37FPS | 270.83FPS |
VRMark v1.3.2020 - Cyan Room | ||
Score | 10,646 | 10,029 |
Average frame rate | 232.08FPS | 218.63FPS |
VRMark v1.3.2020 - Blue Room | ||
Score | 3,461 | 3,442 |
Average frame rate | 75.45FPS | 75.04FPS |
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(高品質) | ||
3,840×2,160ドット | 4,641 | 4,706 |
1,920×1,080ドット | 9,875 | 10,158 |
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(最高品質) | ||
1,920×1,080ドット | 16,624 | 16,863 |
ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4(簡易設定6) | ||
1,920×1,080ドット | 72,827 | 70,522 |
Cinebench R23 | ||
CPU(Multi Core) | 10,651pts | 12,474pts |
CPU(Single Core) | 1,256pts | 1,272pts |
ベンチマークテストの結果は、同様のCPUやGPUを搭載したデスクトップPCとほぼ同等となっている。デスクトップ向けコンポーネントを使用しているから当然のように思えるかもしれないが、ノートPCでは排熱処理が格段に困難になるため、パフォーマンスが低下していてもおかしくない。その点、本機は問題なさそうだ。
性能をフルに発揮しているGeForce RTX 2080 SUPERのおかげで、グラフィックス周りのスコアはノートPCとしてはかなり優秀だ。先日発表されたノートPC向けのGeForce RTX 3080を搭載したものと比較しても、同等かそれ以上の性能を発揮しており、最高のグラフィックス処理能力を求めるなら本機に分がある。
ゲーム系のベンチマークテストを見るに、フルHDならまったく問題ない性能を発揮しており、300Hzの液晶パネルを活かせるだけの性能は十分にある。また「VRMark」でもっともヘビーな「Blue Room」でも75fps以上の値が出ており、VRのデモ用に持ち運ぶPCとしても優秀だ。
「エンターテイメント」と「パフォーマンス」の差は確認できなかった。冬季で室温が20℃弱と低めだったのも影響しているかもしれないが、動作中のCPUとCPUのクロックにも違いは見えないので、それほど大きな差が出ることはなさそうだ。ただ「Cinebench R23」のマルチコアのテストだけは、なぜか2割近くの性能向上が見られた。
ちなみに4つのモードのうち、「静音」だけは高負荷時でもファンの回転音がきわめて小さくなる。静かな状態で可能なかぎりの性能を出したいというときに使えそうだ。なお4つのプリセット以外にも、GPUの手動設定によるオーバークロックや、ファンの回転速度の調整もできる。
バッテリ持続時間は、アイドル時で6時間4分、オフィス使用想定で4時間59分と、大型のわりに実用的な持続時間となっている。ゲーミングに関しては1時間42分となっているが、バッテリ使用時は処理能力が大きく落ちる。
「3DMark」の「Time Spy」では、「エンターテイメント」設定でスコアが2,750となり、グラフィックスのスコアは約4分の1だった。CPU、GPUともクロックがかなり低く抑えられているのが原因のようだ。3Dゲームなど高い性能が必要な状況では、ACアダプタ必須と考えておくほうがいい。
ストレージはIntel製SSD「SSDPEKNW512GB」が使われていた。シーケンシャルリードで1.8GB/s台と、最近のNVMe SSDとしては物足りない数字だが、ランダムアクセスも十分速く、実使用上で遅いと感じることはないだろう。
大型筐体でサウンドや熱伝導などにメリット
続いて製品の各所を見ていきたい。17.3型液晶搭載で約4.67kgとされる筐体は、やはり大きい。持ち上げようとしたときのズッシリした重みも、畳んで手で掴もうとしたときの厚み(50.2mm)も、昨今のノートPCのイメージからはかけ離れていて驚いてしまう。とは言え、持ち運びに困難なほどでもなく、筐体もしっかりしていて不安感はない。
液晶は、額縁部分が左右は約8mm、カメラを内蔵した上部が約10mmと十分に狭い。液晶部分の厚みも約7mmと薄いのもいい。ただねじる動きにはたわみやすく、天板を押さえると少しへこむ。筐体が重くがっしりした手触りなので、天板も同様にがっしりしたつくりのほうが安心感はあると思う。
リフレッシュレート300Hzの液晶パネルは、ゲームはもちろん、Webブラウザのスクロールやマウスカーソルの移動など、あらゆる描画が滑らか。高速なスクロールでも残像が気になるようなことはなく、応答速度も十分速い。
また明るさも十分で、暗めの画面が好きな筆者は明るさを50%にしても明るすぎると感じられるほどだ。色味もしっかりしていて、視野角もあらゆる角度で良好。液晶の質はかなり高い。
キーボードはテンキーつき。文字キーはほぼすべて正方形のキートップ形状だが、右側のキーはやや縦長になり、テンキーはすべて縦長。キーボードの左右にはまだスペースに余裕があるので、もう少しがんばってほしいところだ。キー配置はオーソドックスなので、あまりテンキーを使わないのであれば違和感なく使える。
キータッチは軽いクリック感があるが、とてもソフトで音も静か。表面がマット加工され、しっとりした質感なのもあり、静音キーボードとして作られている印象がある。またフルカラーのキーボードバックライトを搭載しており、プリインストールされているソフトで1キー単位の調整が可能だ。同じく付属のソフトでキーボードやマウスのマクロ設定等もできる。
LED装飾はほかにも、背面にLEDバーがある。こちらも同じソフトで光り方をカスタマイズできる。LEDはキーボード部を含めてオフにもできる。LED以外の装飾は少なく、天板にロゴがある程度で、ほかは黒で統一されている。天板はフラットで、全体的におうとつも少なく、LED装飾がなければビジネスに使って差し支えない落ち着いたデザインだ(サイズ的な意味で驚かれるかもしれないが)。
タッチパッドはかなり大きめで、左上にはWindows Hello対応の指紋認証リーダを備える。認証も支障なくスムーズだ。
端子類を見ると、左側面にUSB Type-Aが2基と、ヘッドフォン端子、マイク端子が独立して用意されている。SDカードスロットも左側面。右側面にはUSB Type-Cが2基とType-Aが1基。マウスなどのゲーミングデバイスは今のところUSB Type-Aでの接続がほとんどなので、ヘッドセットと合わせて左側に集約し、右側にマウス操作用のスペースが作れるよう考えられている。なお背面にはThunderbolt 3を含めた映像出力端子が計4基用意されている。
スピーカーは前面左右に1基ずつ、斜め下を向いて配置してある。さらに底面の右側にはサブウーファーも装備。音を聴いてみると、筐体に振動が伝わるほどしっかりした低音が出ている。中高音は若干こもり気味かなと思うが、落ち着いた音で聞き疲れしない。人の声もしっかりと聞き取れており、全体のバランスがとてもよい。
ゲームはもちろん、ちょっとした音楽鑑賞に使ってもいいかなと思えるくらいで、ノートPCとしては破格の高音質だ。大型の筐体を使ったメリットがおおいに現われている。なおスピーカーが斜め下向きになっていることもあってか、机など硬い平面に置かないと音がしっかり出ない。膝上などに置いていると、音がくぐもって聞こえるので注意。
排熱処理は、底面から吸気、側面後方と背面から排気というエアフロー。底面は半分ほどがメッシュになっており、広く空気を入れようという意図が見える。そのおかげか、低負荷時にはほとんどファンノイズが聞こえないくらい静かだ。オフィスワークにも何ら問題なく使用できる。
しかし高負荷時、とくにCPUに高負荷がかかると、とたんにファンの回転音が鳴り響く。けたたましいと表現せざるを得ない大音量で、ヘッドフォンなしでゲームを遊べる状況ではない。デスクトップPCとして見てもハイエンド級のパーツを使っているため、相当パワフルな排熱処理が必要になるのは当然で、この騒音はやむを得ない。先述のパフォーマンス設定などを使ってうまくコントロールしたい。
キーボードへの熱伝導は、ほとんど感じられない。リストレスト部は冷えているし、キートップは全面にわたってほんのり温かさが感じられるかどうか。不快感はほぼない。キーボードの脇となる筐体の端は少し温かいので、あえて排気部分に近いところにキーを配置しないことで快適性を高めているようだ。また筐体が分厚いことも、排熱処理部分と距離を取れるというメリットになっているようだ。
ACアダプタは280W出力のものが2本で、計560Wとなる計算。こちらもデスクトップPCと同等レベルだ。試しにACアダプタを1つだけ挿してみたが、充電されなかった。重量はケーブルも含めて実測で1つ1,042g。これが2つ必要になるので、本体との合計で7kg弱となる。
狙いはニッチだがゲーミングノートとしての完成度は高い
本機はデスクトップ向けCPUをノートPCの筐体に入れ込むという色物的存在。価格も税別で30万円弱と高価なので、ニッチなターゲットに向けたものであるのは間違いない。
本機のニーズを考えると、何かしらの理由でデスクトップPC(もしくは単体ディスプレイ製品)が選択肢に入らないことが大前提だろう。たとえば自宅に自宅と職場に高性能なPCが必要だが、デスクトップPCを2台使うより、ノートPC1台で統一環境があったほうが便利で安上がり……という発想はあり得る。
その上で、最高の性能を目指したいなら本機が選択肢に入る。とくにゲーミング環境を重視したいのであれば、本機は高い処理能力だけでなく、17.3型で300Hzの液晶や、高音質なスピーカー、熱伝導が少なく快適なタッチのキーボードなど、ゲーミングマシンとして性能面でも使用感でも満足度が高い。
キーボードバックライトや背面のLED装飾など、ゲーミングPCらしい派手さもあるが、設定で切ってしまえばほぼブラック単色の地味な外見になるので、ビジネスでの使用にも支障ない。
本機のデメリットは大きさと重さだが、約4.67kgという重さはほかと比べて重いだけで、片手で持てないほど重いわけでもない。それにスピーカーの音質などで良いほうに働く面もある。仕事にも遊びにも、とにかく高性能なノートPCが欲しいというニーズに、意外と幅広く対応できる1台に仕上がっている。