山田祥平のRe:config.sys

Windows 10 May 2021がやってきた

 恒例のWindows更新がシーズンインした。すぐに更新するか、しばらく様子を見るか、その結果が悲喜こもごもであるだけに決断は難しい。

始まったWindows Update

 Windows 10 May 2021の配信が始まった。新旧とりまぜ、手元の複数台のPCでWindows Updateをトライしたところ、多くの製品で、その場で更新された。時間もそれほどかからなかった。

 今のところ大きな問題はなさそうだ。ちなみに、レノボの「ThinkPad X1 Nano」とNECパーソナルコンピュータの「LaVie Z」(かなり古い)については、この記事を書いている時点で未だ更新がない。また、Microsoft Surfaceもまだなのだが、検証用に更新アシスタントを使って手動アップデートしてしまった。そのほか、日本HPのElitebook、パナソニックのレッツノート、FCCLのLIFEBOOKなど主要ベンダーの製品で更新が始まっていて無事にアップデートができた。

 春と秋、年に2度ある恒例の機能アップデートではあるが、今回については目立った機能拡張は提供されない。大きな機能追加は、Windows Helloが2台目のカメラをサポートするようになったことくらいだ。

 この追加機能は便利なはずだ。というのも、ノートPCに内蔵されている認証用のカメラは、液晶を開いた状態でないと使えない。ところが、ノートPCに外付けのディスプレイをつなぎ、ノートPCのパネルを閉じた状態で使っている場合、カメラが顔をとらえることができないので認証ができない。だが、2台目の外付けカメラが存在する場合、そちらを優先して使うことができるようになったらしいのだ。

 ただ、手元の環境では以前は使えていたIRカメラがなぜか使えなくなってしまっていて、まだ、この機能を試せていない。

 また、原因がはっきりしないのだが、Outlookで新規の予定表を作成しようとするとエラーが出てしまう不具合が発生した機体があった。Officeの再インストールやファイアウォールのチェックなど、かなり調べてみたのだが原因が不明で、結局、回復機能を使って個人用データを残して21H1としての初期状態に戻し、Officeアプリを再インストールしたところ、問題は解消したので、21H1が直接の原因ではないようにも見える。

 いずれにしても、今回のアップデートは地味ではあるが、このところの安定して稼働するWindowsをさらに安定させ、安心、安全にPCを使えるOSとしてのWindows 10の本領発揮といったところで印象は悪くない。

各社が積極的に配信をスタート

 MicrosoftがWindows 10を最後に、従来、数年ごとに提供してきた大きな刷新はもうないという方針で最初のバージョンをリリースしてから6年が経過した。本当ならWindows 11とかWindows 12といったピカピカのWindowsがリリースされていてもいいくらいの時間が過ぎている。だから、Threshhold1としてリリースされた初代のWindows 10から比べれば、もう別物のようなWindowsになっている。

 MicrosoftはWindowsのバージョンアップによるビジネスチャンスを捨ててしまったことになるが、その代わり、多くのユーザーが常に最新のWindowsを使うようになり、5年前、3年前といったバージョンで止まっているバラバラのWindows環境を一掃することができた。ほとんどのユーザーが同じ版、違っても1年程度のタイムラグで最新OSを使うのが当たり前になったのだ。

 スマートフォンなどで使われているOSのAndroidやiOSは、最初から基本的に無償で新たなバージョンが提供されてきた。アップグレードのために代金を払ってスマホに新しいOSを購入するようなことはない。ただ、バージョンアップの提供については、デバイスのメーカー次第なので、その提供時期はまちまちだし、アップグレードが提供されない場合もある。

 Windowsの更新も、最終的に提供のタイミングを判断するのはデバイスベンダーだ。でも、Windows 10である限り、ずっと更新は続くはずだ。手元の環境で、レノボやNECパーソナルコンピュータの製品に更新が提供されていないのは、不具合が発生しないかどうかの検証がまだ終わっていないからなのだろう。念には念を入れて石橋を叩いて渡る的な方針だ。

 全ベンダーの機器を揃えて、どの製品にいつ更新が提供されるのかをチェックするのは難しいが、今回の更新は、それほど大きな機能追加がないせいか、各社ともに積極的な印象がある。

メーカー製のPCはメーカーが更新のトリガーをひく

 その更新をいつするか。

 更新アシスタントを使えば、よほどのことがない限り、強引に21H1をインストールすることもできる。よほどのことが起こることがわかっている場合は、更新アシスタントでもアップデートを拒否される。

 ただ、問題が起こる可能性はゼロではない。やはり、メーカー製のPCを使っているのなら、メーカーがトリガーをひき、Windows Updateの更新項目として出現するのをおとなしく待っているのが無難だ。

 順調に動いていて、新たな機能も特に必要としていないのなら、触らぬ神に祟りなしで、そのままにしておきたいという気持ちもわかるが、いつかはどこかのタイミングで更新が必要になる。

 もっとも更新は予期していても余裕がないときに降りてくる。

 急いで作業しなければならない案件があってPCを開いたら、いきなり更新が始まってしばらくの間PCが使えないという経験に心当たりがあるかもしれない。再起動についてはPCを使っていない時間を設定できるのだが、作業操作が重くなったりする不便は受け入れざるをえないかもしれない。

 こうした不便を回避するために、直近で更新が配布されることがわかっているのだから、時間に余裕があるときに、手動で設定のWindows Updateを開いてみて、更新が提供されていないかどうかをチェックするようにしよう。そして更新があれば、その場ですませてしまえばいい。今すぐ何かやらなければならないことがあるのに更新が同時進行というのはいい気持ちはしないのだが、作業が終わって一息ついたところで、更新をチェックし、何かあればその場でアップデートというなら、待つ気持ちにも余裕が生まれる。

2台あれば憂いなし

 多くのエンドユーザーは、1台だけのPCのオーナーであり、もしそのPCに不具合が発生した場合、いろいろなことができなくなってしまう。今は、たいていの場合、スマホが手元にあるだろうから、なんらかのトラブルがあったときにも解決策を検索するといったことができるのが救いだが、理想的にはPCは2台以上を手元に置き、片方は予備として放置するのではなく、同時に併行して使い続けるのが望ましい。そういう意味では、PCが壊れたときに買い換えるのではなく、まだ使えるときに、新しいPCを購入し、新旧のPCを併行して使うというのがいい。そして、次の買い替えタイミングで、ところてん方式で旧PCを引退させる。

 教育現場でのPC利用も本格化し、ビジネスの現場も家庭に拡張して私物のPCで業務をこなすのも当たり前になりつつある。PCは1家に1台の装備ではなく、1人1~2台が求められる装備になりつつある。

 本当は、もうちょっと早期に、こうした環境が当たり前になっていれば、コロナ禍の今を、もっとうまく乗り切れたのにと思うと、もっと声高に叫べなかった過去の自分がちょっとなさけなくなる。