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Chromebook活用術【ビジネス編】PCとの使用感の違いや、おすすめアプリを紹介

写真はASUS「Chromebook CX9

 家電量販店でも専用の売り場が常設されるなど、すっかり定着を見せつつあるChromebook。PCと同等のブラウザ体験が可能で、さらにAndroidアプリ対応でタブレット的にも利用できるというハイブリッドなChromebookは、PCとタブレットの良さを兼ね備えた独自の魅力を持っている。

 今回はChromebookをビジネスという視点とエンタメという視点でどのように活用できるのかを、具体的なアプリや使用方法を交えてレビューする。前編ではビジネス用途に特化したChromebookの利便性を紹介する。

PCとほぼ同等のChromeブラウザ

 Chromebook最大の特徴とも言えるChromeブラウザは、基本的にPCとほぼ同等の機能を搭載しており、操作感はPCと変わらない。ブラウザアプリの機能が制限されるスマホやタブレットと異なり、PCとほぼ変わらないブラウザ体験がChromebookの大きなメリットだ。

PCとほぼ同等の機能を備えたChromeブラウザ

 また、Slackについては細かい点でPCと動作が異なり、複数のワークスペースにログインしている場合は画面左側にワークスペース一覧が表示されるという、SlackのPC向けアプリと同じ動作になっている。PC用のアプリがインストールできないChromebookにとって、ブラウザでPC用アプリ同等のUIが利用できるのは地味ながら便利なポイントだ。

Slackは左側に参加しているワークスペースが一覧表示される

 FirefoxやVivaldiといったほかのブラウザもAndroidアプリとして利用は可能だ。ただし、表示はスマホやタブレット向け表示が基本になる点に加えて、拡張機能が利用できないなど制限もある。また、Webサイトへのリンクを選択した際にChromeではなくスマホのブラウザアプリで開かれてしまうこともあるため、基本的にはChromeブラウザをメインで利用するのがいいだろう。

Androidアプリの「Vivaldi」ブラウザを表示。見た目はPCのブラウザに近いが、設定メニューや拡張機能の非対応など制限がある

ファイルのアップロードとダウンロード、クラウドストレージ連携も対応

 ファイルのダウンロードやアップロードもPC同等の操作感で、画像や動画だけでなくドキュメントファイルやZIPファイルなども利用できる。ZIPファイルの解凍機能も標準で備えており、ファイルのフォルダ管理も可能だ。また、Googleドライブにも対応しており、ダウンロードしたファイルを直接Googleドライブに保存できる。

ファイルのダウンロード画面

 DropboxやOneDriveなどGoogle以外のクラウドストレージはアプリをインストールすると利用可能だが、ダウンロードしたファイルをクラウドストレージへ直接保存することはできない。「ファイル」アプリにはDropboxやOneDriveが表示されるので、ダウンロードしたファイルをドラッグ&ドロップでコピーする、という一手間をかければ、Googleドライブ以外のクラウドストレージも併用できる。

「ファイル」アプリからDropboxなどのクラウドストレージにもアクセスできる

 Googleドライブ以外のクラウドストレージをメインで利用したい場合、ダウンロードしてコピーというのが手間に思う人にとっては、「MultCloud」というサービスがおすすめ。これは異なるクラウドストレージのファイルを同期してくれるサービスで、Googleドライブの特定フォルダに保存したファイルを自動でDrobpoxに保存してくれる。ただし、クラウドストレージとは別のサービスを介してコピーすることになるため、利用については各自で判断してほしい。

異なるクラウドストレージを同期できる「MultCloud

Web会議も主要サービスをサポート。ただし背景効果は限定される場合も

 リモートワーク時代における必須のビジネスツールとなりつつあるWeb会議については、当然のことながらGoogle Meetはフル機能を利用可能。ブラウザに加えてChromebook用アプリも用意されており、背景効果も利用できる。

Google Meetはブラウザベースの専用アプリが用意されている

 そのほかの主要なWeb会議サービスでは、ZoomはChromeの拡張機能として利用するChromeOSアプリとPWA(Progressive Web Apps)アプリの2種類が用意されているが、ChromeOSアプリは2022年11月5日までサポートを続け、その後はPWAアプリのみをサポートする。今から利用する場合はPWAアプリがお勧めだ。

 ChromeOSアプリは背景効果が利用できないが、PWAアプリは背景効果が利用できるなど機能面でも優れている。

 MicrosoftのTeamsもブラウザやAndroidアプリから利用が可能。ただしこちらは背景効果が利用できない。

Zoomは専用のChrome拡張機能が用意されている

【お詫びと訂正】初出時に、Zoomの背景効果を利用できないとしていましたが、PWAアプリではサポートされていました。お詫びして訂正させていただきます。

 自宅などプライベートな場所を表示せずに済む背景効果はリモートワークにおいて重要な機能ではあるものの、使えないものがあることに注意したい。

文字入力は標準IMEのみ。多彩なキーボードショートカットで利便性向上

 文字入力は基本的に標準でインストールされているIMEのみが利用可能。ATOKなどのサードパーティーIMEはAndroidアプリとしてインストールは可能だが、物理キーボードでは利用できないほか、一度物理キーボードを利用すると外部IMEの設定がリセットされて再度設定が必要など、実利用には向いていない。

 キーボード上部には各種機能のショートカットボタンが用意されているが、こちらはPC同様ファンクションキーに置き換えられるほか、検索キーと一緒に押すことでファンクションキーとしても利用できる。また、カタカナ変換は「Ctrl+i」、英文字変換は「Ctrl+p」、半角変換は「Ctrl+o」というショートカットキーも用意されている。

Chromebookのキーボード最上段は各種機能のショートカットが用意されている

 個人的に便利に使っているキーボードショートカットが「Alt+@」と「Alt+[」で、ウィンドウを画面の左半分または右半分にリサイズできる。ブラウザでWebサイトを見ながら原稿を書きたい、といったマルチタスク時に便利だ。キーボードショートカットは「Ctrl+Alt+?」で確認できるので、必要なキーボードショートカットを覚えておくと作業効率も高まるだろう。

Alt+@、Alt+[で2つのブラウザを並べたところ

テキストエディタはオンラインやアプリを用途ごと使い分け

 テキストエディタはChromeブラウザの拡張機能「Text」が標準で用意されており、テキストファイルの新規作成や保存、読み込み、テキスト内検索など基本的な機能は備えている。ただしSJISでエンコードされたテキストファイルは文字化けするなど動作に不安な面もあるため、テキストエディタを活用したい場合はほかのサービスやアプリを併用したい。

Chrome拡張機能として利用できるテキストエディタ「Text」

 筆者のおすすめは「Simplenote」というWebサービス。ユーザー登録が必要でブラウザベースで利用するテキストエディタだが、シンプルで軽く、インターネットに接続した状態であればオフラインとほとんど変わらない感覚で利用できる。

ブラウザベースのテキストエディタ「Simplenote

 ローカルできるテキストエディタアプリは多機能な「Jota+」がおすすめだ。テキストエディタの基本的な機能は一通り揃っているほか、Dropboxなどのクラウドストレージとの連携機能も備えている。Androidアプリのためマルチタスクでアプリを切り替えたりするとデータが失われることもあるため、こまめなデータ保存や自動保存機能なども併用しよう。

テキストエディタアプリ「Jota+

WordなどOffice系ドキュメントは利用に制限あり。GoogleドキュメントならOK

 ブラウザやWeb会議、文字入力は好みの問題はあれどPC同等に利用できるのに対して、ドキュメントファイルや画像、動画などのコンテンツは、PCと異なり扱うのに多少の工夫が必要になる。

 ドキュメントファイルの場合、PDFは閲覧だけであればChromeブラウザはもちろんAndroidアプリをインストールすればほぼPCと利用感は変わらない。

Androidアプリ「Adobe Acrobat Reader」でPDFを表示

 課題はWordやExcel、PowerPointといったMicrosoft系のドキュメントファイルだ。ChormebookにはPC向けアプリは当然ながらAndroidアプリも利用できないため、互換性に課題のあるサードパーティーアプリか、機能が制限されるWeb版を利用することになる。

WordなどOffice系のAndroidアプリはChromebookにインストールできない

 上記の理由からOfficeドキュメントを多用するビジネス環境では正直Chromebookをメイン利用するのは難しいのが正直なところ。ただ、閲覧と簡単な入力程度であれば、Web版のWordやExcelでも十分だ。また、GoogleドキュメントはChromeブラウザからPCとほぼ同等の機能が利用できるので、Googleドキュメントをメイン利用しているユーザーであれば問題はないだろう。

ブラウザから利用できる「Word Online」
元々ブラウザベースのGoogleドキュメントならChromebookでも問題なく利用できる

基本的な画像編集はビューワで完結。高機能な画像エディタや動画編集も可能

 画像ファイルは標準のビューワでリサイズやトリミングなど一通りの機能を備えているが、ピクセルを細かく指定するような編集はできない。こうした細かい作業が必要な場合は、別途サービスやアプリが必要だ。

標準のビューワアプリで基本的な画像編集が可能

 編集機能に優れているのはオンラインで利用できる「Pixlr」だ。Photoshopのオンライン版と言われるほど多機能で、ピクセル単位での指定はもちろん、レイヤーなどにも対応している。ただし画像をオンラインにアップロードする必要があるため、セキュリティ面で利用できないユーザーもいるだろう。その場合は「Photo Editor」というアプリがおすすめ。Pixlrと比べて独自のUIに慣れる必要はあるが、ピクセル単位での画像編集をローカルで行なえる。

ブラウザベースの多機能な画像エディタ「Pixlr
ピクセル指定など細かい編集が可能な画像エディタアプリ「Photo Editor

 動画編集機能はGoogleフォトから利用可能。トリミングやサイズ変更、色合いの調整や手書きでのメモなど充実した機能が用意されている。また、Androidアプリかつ基本的には有料になるものの「Adobe Premiere Rush」や「PowerDirector」といった動画編集アプリも利用できるため、PC並みとまでは言わないものの、かなり充実した動画編集環境が用意されている。

Googleフォトアプリでトリミングなど簡単な編集が可能
より高度な編集が可能な「PowerDirector

外部モニターやスマホ連携などChromebookがより便利になる機器連携

 Chromebookをより便利に使うためにおすすめなのが外部機器や周辺機器との連携だ。1台でも十分に効率の高いChromebookだが、外部機器と連携することでさらに便利になる。

 ほとんどのChromebookはUSB Type-C経由での映像出力に対応しており、デュアルモニターでの利用が可能だ。PC向けモニターはもちろん、モバイルモニターを併用すれば、外出先でも本格的な作業環境を構築できる。モバイル用の軽量Chromebookとモバイルモニターの組み合わせは、機動力の高い外出作業マシンとしても非常に魅力的だ。

USB Type-Cケーブルで接続するだけでデュアルモニターに

 Androidとの連携機能も充実している。ニアバイシェアは、iPhoneやMacBookなどのApple製品に搭載されている「AirDrop」のGoogle版ともいった機能で、AndroidとChromebookでファイルの高速ワイヤレス転送が可能だ。スマホで撮影した写真をChromebookで使いたい、という時に重宝する。

ChromebookとAndroidでファイルをワイヤレス転送できる「ニアバイシェア」

 さらにAndroidとChromebookを連携しておくとさらに便利な機能も用意されている。ChromebookからAndroidのテザリングをオンにできるインスタントテザリング、Androidに届いたSMSをChromebookで見る機能、AndroidとChromebookでChromeブラウザの閲覧履歴を同期できる機能などだ。同じGoogle製ということもありAndroidとの連携機能は非常に充実しているため、Androidユーザーはぜひ連携機能を活用してほしい。

スマホのテザリングやSMS通知をChromebookから利用できる連携機能

 Chromebookの一部機種はペン操作にも対応しており、手書きメモや手描きイラストはもちろん、ペンを使ったスクリーンショットやレーザーポインター機能なども利用可能。ほとんどのペン対応機種は4,096段階の筆圧感知や傾き検知などの機能を搭載しているため、マンガを書くのは厳しいが手書きメモ程度であれば十分に利用可能だ。

Chromebookのペン対応モデル(写真はASUSの「Chromebook Detachable CM3」)
ペン操作で利用できるショートカットと各種機能

 前編ではビジネス利用をテーマにChromebookの使い方を紹介した。後編ではエンタメ利用での使い方と、ビジネスやエンタメといった利用シーンに合わせたChromebookの選び方を紹介する。