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LAN工事するなら必見!ツメ折れ対策、フラットケーブル作成、LANコンセント敷設等を初心者向けに解説

 前回の記事「LANケーブルの自作はこうやる!ケーブルをぶった切ってちょうど良い長さに調節しよう」では、LANケーブルの作成方法などを紹介した。今回はLANコネクタで一番お悩みの多い「ツメの折れ」、「フラットケーブルの工事」、「LANローゼットやコンセントの工事」に加えて、「ケーブル敷設工事のノウハウ」を紹介していこう。

 なお、ここでは前回に引き続きサンワサプライのLANケーブル自作キットを使用している。

LAN工事に必要なツールが揃っているサンワサプライの「LANケーブル自作キット LANテスター かしめ工具 パンチダウン工具 外被剥き工具(500-LANKIT1)」。価格は1万2,800円。パンチダウン(後述)はコンセントやローゼットの工事をしない人は使わない工具

LANコネクタの折れたツメを復活

 LANケーブルの困りごとで一番多いのは、RJ45コネクタのロック用のツメが折れてしまった! というものだろう。ルーターにガムテープや輪ゴムで止めている人! 手を上げてー!

 ツメ折れだけのために、ケーブル交換したり、コネクタの交換工事をしたりするのも面倒。だからガムテープや輪ゴムに走ってしまうのだが、救世主がいるのをご存知だろうか?

 それがサンワサプライの「RJ45プラグSOS」だ。修理に当たって工具はまったく必要なし。

「RJ45プラグSOS」ほとんどのRJ45コネクタのツメはこれで直る!修理時間2秒!マジで。10個入りを700円ほどで購入できる

 以下、その使い方を紹介していこう。

(1)ツメの折れてしまったコネクタを用意して確認

部分のツメの付いていた根元が残っているのがポイント。コレさえあれば修復可能
こんな状態は滅多にないが「ツメの根元がない」場合は、前回の記事で紹介したコネクタ交換をするしかない
ショートタイプのコネクタはツメの根元が残っていても、ロックする場所がないので復活不可能

(2)修理用パーツのツメ部分をツメの根元に引っ掛ける

修理用バーツは10個入り。この際ツメが折れたコネクタを一気に復活させよう!
コネクタのツメの根元に修理パーツを引っ掛ける

(3)修理用パーツをコネクタにかぶせるようにパチン!と押し込む

コネクタにピッタリ重なりツメが復活
コネクタの根元の段差に修理パーツのロックが引っかかるので、前後にずれることもない!
引っ張っても外れないからスゴイ!

 この「RJ45プラグSOS」は神パーツなので、万が一のときに備えて用意しておくといい。

平べったいフラットケーブルを作りたい

 ドアの隙間などを通せるフラットなLANケーブルは引き回しが超便利。昔は「フラットケーブルは転送速度が遅くなる」なんて言われたが、2022年現在は体感するほど速度低下はない。ただノイズの影響を受けやすいという弱点があるので、PCが多い事務所などには不向きかもしれない。

 コネクタ取り付け工事は、通常の丸いLANケーブルとほぼ同じ手順で工事できるが、被覆の剥き方が少し違う点に注意。またフラットケーブルの電線は前回の記事で説明したが、ロードバーと呼ばれる治具が付いたコネクタを使わないと、手作業では失敗しやすいので注意。コネクタは「フラットケーブル専用のロードバー付き」のコネクタを用意すること!

フラットケーブル専用のロードバー付きのコネクタ

 なお今回使っているツールセットのワイヤストリッパは、フラット用に対応していなかったのでカシメ工具を使っている。

(1)カシメ工具をフラットケーブルの皮むきモードにする

ハンドルロックを皮むきモードに合わせる

(2)被覆は最大2cmを目安に剥く(長く剥く場合は繰り返す)

LANケーブルをフラット用の刃にあわせる。フラットケーブルは通常の丸いケーブルに比べると、外側の被覆が剥きにくい。長く剥くなら何回かに分けるといい

(3)ハンドルを軽く握って傷を入れる

フラットケーブルの中にある芯線は非常に細く、外側の被覆も薄いので皮むきが難しい。皮むきモードでも芯線を切ってしまう場合があるので、軽くハンドルを握って被覆に傷を入れる

(4)カットした場所を折り曲げて中の芯線が見えるか確認する

被覆だけに傷が入れられたら、90度に折ると中の芯線が少し見える

(5)折ったままの状態で被覆の反対側にも刃を入れる

反対側も優しくハンドルを握る

(6)手順4)と逆折にして芯線が見えるか確認

普段から電気工事をしている人でもフラットケーブルの被覆向きは独特で難しい。慣れていない方は何度も練習するか、丸いケーブルを使った方がいい

(7)ケーブルを矢印の方向にゆっくり引っ張り被覆を剥く

平らな面を左右の手でつまみ、矢印のように引っ張って被覆を剥く

(8)中から出てきた芯線を少し引っ張って、電線が切れていないかをチェック

電線を引っ張って電線が切れていないかをチェック
【チェック!】

丸いLANケーブルと違って、白い電線には色が塗られていない(筆者の知る限り)。なので隣の電線の色に対応している点に注意

 被覆を剥くと分かる通り、フラットケーブルの電線はとても細いので、通常のRJ45コネクタを使うと断線したりショート、誤配線の原因になる。必ずフラットケーブル用のRJ45コネクタを用意すること。

(9)ロードバーに電線を差し込む

 ロードバーの有無が正しく結線できるかを左右すると言っても過言ではない。それほどフラットケーブルでは「ロードバーが重要」。

前回の記事で紹介した通り、配線にはタイプAとBがあり、こちらはあまり使われないタイプA
こちらは主流のタイプB。反対側のコネクタの配線に合わせること
配線図に合わせてロードバーに電線を差し込む
配線し終えたらロードバーを根元まで差し込む
はみ出た部分をニッパでカット

(10)ロードバーをコネクタに差し込んでかしめる

かしめ工具にあらかじめRJ45コネクタを差し込んでおくと作業しやすい。続けてロードバーを差し込む。一度差し込んだロードバーを抜くと電線が抜けてしまうので注意。後戻りせずそのままかしめる
かしめ完了! フラットケーブルへのコネクタの取り付けができた

稀に使われるクロスケーブルを作る

 現在ほとんど使われなくなったが、極稀にPC2台のLANを直結してバックアップをするツールなどで使われるのが、「クロスLANケーブル」と呼ばれるもの。

 30年も昔には「ハブをカスケードにつなぐ場合(ただしカスケード接続コネクタ以外接続する場合)はクロスケーブルを使う」なんて仕様もあったが、すぐにハブが自動的にカスケード接続かどうかを判断するようになり、今はストレートケーブルでつなげられるようになった。

 クロスケーブルはPCショップなどでも未だに売られているので、細々と需要があるようだ。ここでも解説しておこう。

(1)クロスケーブルは一方をタイプA、もう一方をタイプBでつなぐ

結線図。片方はタイプAで反対はタイプBで配線するとクロスケーブルになる
実際の配線

(2)かしめて「クロスケーブル」を明記する

かしめ終わったら必ずクロスケーブルであることを明記してストレートと区別すること

(3)LANテスターで結線の確認

LANテスターで次のように結線されていればOK!
「1⇔3」「2⇔6」「3⇔1」「4⇔4」「5⇔5」「6⇔2」「7⇔7」

低ノイズにこだわったLANケーブルを作るには

 低ノイズにこだわる場合は、LANケーブルの外側をアルミでシールドしているケーブルを使うといい。ただこういったケーブルは往々にして硬く引き回しが面倒なので注意。家の中をハブから10m程度引き回す程度なら普通のケーブルで十分。

シールド付きのLANケーブル+RJ45コネクタでノイズ対策。また配線のカテゴリをワンランクアップさせてもいい。たとえば5e→6にアップしてもノイズに強くなる

 またシールドされたケーブルを使うなら、コネクタもシールドされているタイプを使うといいだろう。配線方法はこれまで説明した通りだが、最後にLANケーブルのシールド線をコネクタのシールドに触れるように結線すればいい。

ショートタイプのコネクタを使うのもあり
できるだけヨリ線をほぐさないようにしてコネクタを付けるかもノイズ低減のポイント

 LANケーブルでノイズ混入しやすい場所は、コネクタ付近のヨリ線をほぐした箇所。この箇所が長いとノイズ混入しやすくなるので、できるだけヨリ線から端子までを短くするのも手だ。

カテゴリ6を使うべきか? カテゴリ5eを使うべきか?

 一般家庭にも普及している1GbpsのLANは、カテゴリ5eとカテゴリ6が対応している。単純に考えるとカテゴリ6の方が良さそうに思えるが、実はどちらを使ってもほとんど変わりはない。

 各カテゴリの簡単なスペックをまとめたものが以下の表だ。

カテゴリ対応速度伝送帯域最大距離
5100Mbps100MHz100m
5e1Gbps100MHz100m(カテゴリ5の特性改善で1Gbpsに対応)
61Gbps250MHz100m(10Gbps LANで使うと55m)
6a10Gbps500MHz100m

 実はカテゴリ6は10Gbps LANに向けてのブリッジ(つなぎ)的な意味があり、1Gbpsで使った場合は5eに比べるとノイズ対策の効いたオーバースペック気味な規格と言える。ただカテゴリ6を10Gbps LANで使うと、最大距離55mという制限を受ける規格なのだ。

 Gigabit Ethernetでカテゴリ6を使った方がいいのは、電子機器がたくさんあるノイジーな環境。カテゴリ6ではノイズ対策が施されているので、大きなオフィスでGigabit Ethernetを敷設するならカテゴリ6がベターとなる。一般家庭のGigabit Ethernetなら、リーズナブルなカテゴリ5eで十分だ。

ローゼットやLANコンセントの敷設工事

 スイッチングハブやルーターにつながる有線LANの差込口を各デスクに設置したり、壁にLANの差込口を設けたい場合は、RJ45の差込口(メスコネクタ)を設置する。

昔の加入電話のローゼットとほぼ同じ大きさ。コネクタがRJ11→RJ45になっているだけ。大体シャッター付きが多いので、差込口を上に向けてもホコリが入らない仕様
こちらはパナソニックの壁コンセント用差込口。実は簡易パンチダウン工具がセットになっていて、工具なしでも工事が可能

 Amazonで「LAN ローゼット」や「LAN コンセント」で検索すれば出てくるはず。またLANコンセントは、ホームセンターでもよくパナソニック製が売られているのでチェックしてほしい。

【チェック!】

電源コンセントや壁スイッチのすぐ脇に設置する場合は、電気工事士の資格が必要になる場合がある(既存のコンセントやスイッチに手を付ける際)。

コンセントやスイッチと十分に離れた場所へLANの差込口を壁に埋め込む場合は、電気工事士の資格は不要。また壁に埋め込むのではなく、壁に露出ボックスという箱を取り付け、これに対してLANの差込口を設ける場合も電気工事士の資格は不要。

なお、ローゼットや壁コンセント用のLAN差込口にも、カテゴリがあるので注意。古いホームセンターだと売れ残りのカテゴリ5とかしかないときも。

(1)これまでと同様の手順でLANケーブルの被覆を剥く

ワイヤストリッパで被覆を剥く。刃の出具合を調節してハンドル握ってクルリンパ! このワイヤストリッパなかなかイイ!

(2)反対側のLANコネクタの配線タイプを調べる

 前回説明した通りLANケーブルの配線には、タイプAとタイプBがあり、現在Bが主流となっている。金属の端子側から見て、一番左に緑の電線が着ていればタイプA、オレンジの線が着ていればタイプBとなる。

ハブなどの差してあるコネクタ側の配線をまずチェック! 厳密に調べなくても金属端子側から見て左がオレンジならタイプB
あまり使われていないタイプA
通常はこちらのタイプBのはず

(3)ローゼットまたはLANコンセントを用意する

こちらはローゼット
こちらはコンセントタイプ

(4)それぞれの部品に示されているA、Bの配線図通りに配線する

電線を中央に配置して、できるだけどの線も同じぐらいの長さになるように、配線のマークに合わせて電線を差し込んでいく。パンチダウン工具の仮止め用工具を使うと便利
コンセントは上部にキャップが付いているのでこれを外す。実はこのキャップが簡易パンチダウン工具になっている
コンセントも基本的に同じ。電線を中央に通してマークされている色の部分に電線を差し込む

(5)パンチダウン工具で電線を押し込む

パンチダウン工具の先は交換することが可能。片方は○部が刃になっていて押し込みと同時に余分な電線をカット。反対は電線をカットしないので、後から配線検査ができる
パンチダウンの力は「LO」でOK。写真の向きに刃を差し込んで、グイ!と押すとバチコーン!と電線が差し込める
電線をカットしないとこんな具合
刃のある方で電線をカットするとこんな仕上がり
部品によってはパンチグ用の簡易ツールが付いてくる場合もある。パナソニックのコンセントは、キャップを差し込んで押し込む
パンチダウン工具は、アーミーナイフのように引き出して使う爪楊枝みたいなものが付いている。これは間違って配線した電線を引っこ抜いたり、電線を押し込んで仮止めする道具

(6)差込口にストレートケーブルを差し込む、反対側をLANテスターに接続して結線確認をする

ローゼットなどの差込口に「ストレート」(「クロス」ではなく普通の結線)を差し込んで、もう片方のコネクタと一緒にテスターに差し込む
LANテスターで結線確認
ローゼットはフタをすればこれで完成!

(7)露出ボックスコンセントの場合

 ホームセンターなどで露出ボックスと取り付け用のステー、カバーを購入する。

必要な部品は、「露出ボックス」「取り付け用ステー(パナソニック製なら黒い樹脂か金属のヤツ)」「カバー」。今回購入した露出ボックスは3連のコンセント用だったので、1個口用のカバーも別途購入。シリーズがいろいろあるけどパナソニック製の「フルカラー」シリーズがオススメ
【チェック!】

露出コンセントの部品はすべての上下があるので注意。「上」や「▲」「↑」マークを目印に。

取り付け用ステーにLANコンセントを固定。樹脂製だとはめ込むだけ。金属製だとマイナスドライバーでかしめる
必要に応じて露出ボックスを壁にネジ止め。石膏壁に付ける場合は「タッピングネジ」というもので4箇所固定するのがいい。次にLANコンセントを取り付けたステーを露出ボックスにセットしてネジ止め
カバーをはめて完成!
こんな感じで壁からLANに接続できる

屋内の配線が面倒なら屋外配線して屋内への引き込む

 たとえば、一戸建てに住んでいて1階から2階にLANを引きたい場合などは、階段を通すとかなり見栄えが悪いし、ドアがたくさん合って工事が面倒という場合は屋外配線がオススメ。価格は少し高くなるが屋外配線用のLANケーブルが売られているので、これで工事すればいい。

Amazonなどでも購入できる屋外配線用のLANケーブル。屋内用に比べて被覆が分厚くなっている。硬いのでちょっと引き回しが面倒

 LANケーブルは最長100mぐらいまで引き回わせるので、1Fから2Fに10~20mぐらい敷設したところでまったく問題ない。問題は屋内⇔屋外の行き来。手っ取り早いのはエアコンの穴に一緒に通してしまう方法。エアコンの電源線があるのでノイズが載る心配もあるが、筆者がやってみた感じではまったく影響がなかった。気になるなら電源線と反対外に通すなどすればいいだろう。

カラスに食われて断熱材が取れてしまっているが、エアコンの配管から出入りさせるのが簡単
これは「ガラン」と呼ばれる換気口。建屋の外側にいくつか付いていて、換気扇は壁と壁の間の換気などでも使われる。これを1個1個追っていくと室内(足元)につながるものがある

 また最近の高気密住宅には「ガラン」と呼ばれる外気の取り入れ口がある。家の外から見ると、小さな10cmほどの金属製の丸い空気穴みたいなものがいくつかあるはず。そのうちのどれかは、部屋に外気を入れる換気口になっているので、これを使って行き来するといい。ただし虫などが入ってこないように網がされている場合もあるので、面倒な工事になるかもしれない。

ドリルやホールソーで穴を開けてケーブルを通したら、エアコン用の配管パテで埋める

 もしDIYに自信があれば自分でφ15ほどの穴を開けてもいいだろう。ただし下から上に向けて角度を付けて穴を開けないと、雨水が浸入してくるので注意。

まとめ - これで君もLAN敷設工事士だ

 前後編に渡ってお届けしてきたLAN工事の決定版。いかがだっただろうか? LAN工事やケーブル敷設で何か分からないことがあれば、ぜひこのページを参照してほしい。

一長一短ある中華工具も慣れれば使える

 なお、ここでは工事用のツールで入手しやすいサンワサプライの製品を使ったが、ネットや秋葉原に行くと激安品に出会うこともある。土日アキバを散策しているときに、ジャンク箱を除いてみると面白いかもしれない。