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LAN工事するなら必見!ツメ折れ対策、フラットケーブル作成、LANコンセント敷設等を初心者向けに解説
2022年8月10日 06:37
前回の記事「LANケーブルの自作はこうやる!ケーブルをぶった切ってちょうど良い長さに調節しよう」では、LANケーブルの作成方法などを紹介した。今回はLANコネクタで一番お悩みの多い「ツメの折れ」、「フラットケーブルの工事」、「LANローゼットやコンセントの工事」に加えて、「ケーブル敷設工事のノウハウ」を紹介していこう。
なお、ここでは前回に引き続きサンワサプライのLANケーブル自作キットを使用している。
(1) LANコネクタの折れたツメを復活
(2) 平べったいフラットケーブルを作りたい
(3) 稀に使われるクロスケーブルを作る
(4) 低ノイズにこだわったLANケーブルを作るには
(5) カテゴリ6を使うべきか? カテゴリ5eを使うべきか?
(6) ローゼットやLANコンセントの敷設工事
(7) 屋内の配線が面倒なら屋外配線して屋内への引き込む
(8) まとめ - これで君もLAN敷設工事士だ
LANコネクタの折れたツメを復活
LANケーブルの困りごとで一番多いのは、RJ45コネクタのロック用のツメが折れてしまった! というものだろう。ルーターにガムテープや輪ゴムで止めている人! 手を上げてー!
ツメ折れだけのために、ケーブル交換したり、コネクタの交換工事をしたりするのも面倒。だからガムテープや輪ゴムに走ってしまうのだが、救世主がいるのをご存知だろうか?
それがサンワサプライの「RJ45プラグSOS」だ。修理に当たって工具はまったく必要なし。
以下、その使い方を紹介していこう。
平べったいフラットケーブルを作りたい
ドアの隙間などを通せるフラットなLANケーブルは引き回しが超便利。昔は「フラットケーブルは転送速度が遅くなる」なんて言われたが、2022年現在は体感するほど速度低下はない。ただノイズの影響を受けやすいという弱点があるので、PCが多い事務所などには不向きかもしれない。
コネクタ取り付け工事は、通常の丸いLANケーブルとほぼ同じ手順で工事できるが、被覆の剥き方が少し違う点に注意。またフラットケーブルの電線は前回の記事で説明したが、ロードバーと呼ばれる治具が付いたコネクタを使わないと、手作業では失敗しやすいので注意。コネクタは「フラットケーブル専用のロードバー付き」のコネクタを用意すること!
なお今回使っているツールセットのワイヤストリッパは、フラット用に対応していなかったのでカシメ工具を使っている。
(8)中から出てきた芯線を少し引っ張って、電線が切れていないかをチェック
丸いLANケーブルと違って、白い電線には色が塗られていない(筆者の知る限り)。なので隣の電線の色に対応している点に注意
被覆を剥くと分かる通り、フラットケーブルの電線はとても細いので、通常のRJ45コネクタを使うと断線したりショート、誤配線の原因になる。必ずフラットケーブル用のRJ45コネクタを用意すること。
稀に使われるクロスケーブルを作る
現在ほとんど使われなくなったが、極稀にPC2台のLANを直結してバックアップをするツールなどで使われるのが、「クロスLANケーブル」と呼ばれるもの。
30年も昔には「ハブをカスケードにつなぐ場合(ただしカスケード接続コネクタ以外接続する場合)はクロスケーブルを使う」なんて仕様もあったが、すぐにハブが自動的にカスケード接続かどうかを判断するようになり、今はストレートケーブルでつなげられるようになった。
クロスケーブルはPCショップなどでも未だに売られているので、細々と需要があるようだ。ここでも解説しておこう。
低ノイズにこだわったLANケーブルを作るには
低ノイズにこだわる場合は、LANケーブルの外側をアルミでシールドしているケーブルを使うといい。ただこういったケーブルは往々にして硬く引き回しが面倒なので注意。家の中をハブから10m程度引き回す程度なら普通のケーブルで十分。
またシールドされたケーブルを使うなら、コネクタもシールドされているタイプを使うといいだろう。配線方法はこれまで説明した通りだが、最後にLANケーブルのシールド線をコネクタのシールドに触れるように結線すればいい。
LANケーブルでノイズ混入しやすい場所は、コネクタ付近のヨリ線をほぐした箇所。この箇所が長いとノイズ混入しやすくなるので、できるだけヨリ線から端子までを短くするのも手だ。
カテゴリ6を使うべきか? カテゴリ5eを使うべきか?
一般家庭にも普及している1GbpsのLANは、カテゴリ5eとカテゴリ6が対応している。単純に考えるとカテゴリ6の方が良さそうに思えるが、実はどちらを使ってもほとんど変わりはない。
各カテゴリの簡単なスペックをまとめたものが以下の表だ。
カテゴリ | 対応速度 | 伝送帯域 | 最大距離 |
---|---|---|---|
5 | 100Mbps | 100MHz | 100m |
5e | 1Gbps | 100MHz | 100m(カテゴリ5の特性改善で1Gbpsに対応) |
6 | 1Gbps | 250MHz | 100m(10Gbps LANで使うと55m) |
6a | 10Gbps | 500MHz | 100m |
実はカテゴリ6は10Gbps LANに向けてのブリッジ(つなぎ)的な意味があり、1Gbpsで使った場合は5eに比べるとノイズ対策の効いたオーバースペック気味な規格と言える。ただカテゴリ6を10Gbps LANで使うと、最大距離55mという制限を受ける規格なのだ。
Gigabit Ethernetでカテゴリ6を使った方がいいのは、電子機器がたくさんあるノイジーな環境。カテゴリ6ではノイズ対策が施されているので、大きなオフィスでGigabit Ethernetを敷設するならカテゴリ6がベターとなる。一般家庭のGigabit Ethernetなら、リーズナブルなカテゴリ5eで十分だ。
ローゼットやLANコンセントの敷設工事
スイッチングハブやルーターにつながる有線LANの差込口を各デスクに設置したり、壁にLANの差込口を設けたい場合は、RJ45の差込口(メスコネクタ)を設置する。
Amazonで「LAN ローゼット」や「LAN コンセント」で検索すれば出てくるはず。またLANコンセントは、ホームセンターでもよくパナソニック製が売られているのでチェックしてほしい。
電源コンセントや壁スイッチのすぐ脇に設置する場合は、電気工事士の資格が必要になる場合がある(既存のコンセントやスイッチに手を付ける際)。
コンセントやスイッチと十分に離れた場所へLANの差込口を壁に埋め込む場合は、電気工事士の資格は不要。また壁に埋め込むのではなく、壁に露出ボックスという箱を取り付け、これに対してLANの差込口を設ける場合も電気工事士の資格は不要。
なお、ローゼットや壁コンセント用のLAN差込口にも、カテゴリがあるので注意。古いホームセンターだと売れ残りのカテゴリ5とかしかないときも。
(2)反対側のLANコネクタの配線タイプを調べる
前回説明した通りLANケーブルの配線には、タイプAとタイプBがあり、現在Bが主流となっている。金属の端子側から見て、一番左に緑の電線が着ていればタイプA、オレンジの線が着ていればタイプBとなる。
屋内の配線が面倒なら屋外配線して屋内への引き込む
たとえば、一戸建てに住んでいて1階から2階にLANを引きたい場合などは、階段を通すとかなり見栄えが悪いし、ドアがたくさん合って工事が面倒という場合は屋外配線がオススメ。価格は少し高くなるが屋外配線用のLANケーブルが売られているので、これで工事すればいい。
LANケーブルは最長100mぐらいまで引き回わせるので、1Fから2Fに10~20mぐらい敷設したところでまったく問題ない。問題は屋内⇔屋外の行き来。手っ取り早いのはエアコンの穴に一緒に通してしまう方法。エアコンの電源線があるのでノイズが載る心配もあるが、筆者がやってみた感じではまったく影響がなかった。気になるなら電源線と反対外に通すなどすればいいだろう。
また最近の高気密住宅には「ガラン」と呼ばれる外気の取り入れ口がある。家の外から見ると、小さな10cmほどの金属製の丸い空気穴みたいなものがいくつかあるはず。そのうちのどれかは、部屋に外気を入れる換気口になっているので、これを使って行き来するといい。ただし虫などが入ってこないように網がされている場合もあるので、面倒な工事になるかもしれない。
もしDIYに自信があれば自分でφ15ほどの穴を開けてもいいだろう。ただし下から上に向けて角度を付けて穴を開けないと、雨水が浸入してくるので注意。