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LANケーブルなんて自分で作ればいいじゃない。ジャストな長さでケーブルを作る方法

 いくら無線LANが高速になっても、LANケーブルによる有線接続がなくなることはない。ルーターやスイッチングハブなどのネットワーク機器同士は有線接続が必要になるし、オンラインゲームやWeb会議のような用途では安定して通信できる有線接続にアドバンテージがある。

 そんなLANケーブルが必要になる場面で気にしておきたいのが“長さ”。ちょうどいい長さのLANケーブルで接続すれば、無駄のない、美しい配線が可能になる。ただ、市販のLANケーブルでぴったりの長さのものがあるとは限らない。見栄えにこだわりたいなら自作するのが近道だ。

 LANケーブルを自作するには専用工具が必要になるため、ハードルが高いと感じる人がいるかもしれない。でも、実は意外とお手頃なコストで、あまり手間をかけずに自作できる。今回は最大10Gbpsの転送速度に対応するカテゴリ6AのLANケーブルの自作を前提に、それに必要な最低限のアイテムと作成の手順を紹介しよう。

LANケーブルの自作に最低限必要なアイテム

 LANケーブルの自作に最低限必要なもの、それはズバリ下記の5つだ。

  1. LANケーブル(500円くらいから)
  2. 自作用LANコネクタ(10個セット1,500円前後)
  3. ニッパまたはハサミ(数百円)
  4. かしめ工具(5,000円前後)
  5. LANケーブルテスター(3,000円前後)

 1つ目はLANケーブルを作るには当然ながら必須のもの。既存の長いLANケーブルをカットして活用するのもいいし、自作用として市販されているものを使う方法もある。ただし、既存のLANケーブルの場合、径の細いタイプやフラットタイプのケーブルは工作に適さないため注意が必要だ。

まずはLANケーブルがないことには始まらない

 なお、自作用のLANケーブルは、ネット通販で手に入るものは大抵100メートル巻など、個人だと使い切るのが難しい量だったりする。100メートルもあれば一生涯LANケーブルを購入しなくてもよくなりそうなので、家の中でLANケーブルをかなり這わせているという人にはいいかもしれない。

数年前に購入したLANケーブルがまだ大量に残っていたので、今回はこれを使用する

 2つ目のLANコネクタは、今回はブーツ(根本の保護カバー)がセットになった貫通型というものを利用する。後ほど画像を交えて説明するが、ケーブルの芯線をコネクタに差し込んだ時に先端で行き詰まるのではなく、そのまま貫通するので、芯線の並びが正しいかどうかの確認がしやすいタイプだ。

貫通型のLANコネクタはパーツが少なく扱いやすいのもメリット
今回使用したLANコネクタはこちらの商品

 これに対して、ロードバーと呼ばれる小さなガイドパーツ付きの自作用LANコネクタもあり、50個セットや100個セットがかなり安価に手に入る。が、作成の手間が少し増えたり、工具が追加で必要になる場合もあるので注意しよう。

ロードバー付きの貫通型ではないLANコネクタと別売のブーツ。このタイプは芯線を正しく差し込む難易度がやや高く、写真のものはラジオペンチなどの工具も必要になる

 4つ目の「かしめ工具」は、LANケーブルの自作には不可欠な専用工具。LANコネクタの端子部分をかしめる(ケーブル芯線と端子を圧着する)のに使うもので、ほかにケーブルをカットしたり、被覆を剥いたりする機能も備えるマルチツールとなっていることが多い。

LANケーブルの自作に必須のかしめ工具

 最後の「LANケーブルテスター」は、LANケーブル完成後の通電確認に使う。結線ミスが分かるのであると心強いが、工作で必須になるものではない。PoE(Power over Ethernet)のように電力供給を行なうLANケーブルでは、結線ミスで機器が故障する可能性がないとも言えないので注意。

通電確認に使用するLANケーブルテスター

 芯線の並びが正しく、テスター上できちんと通電しているようであれば、少なくとも機器が故障するようなことはないと思われるので、価格も比較的安いし、安全のためにも用意しておきたいところだ(ただし、実際の通信時に影響が出る微妙な接触不良などはテスターでは検出できないことがある)。

LANケーブルの自作にとりあえず必要なアイテムはこれだけ!

LANケーブルの自作の手順

 それではこれら5つのアイテムだけを使用して、LANケーブルを作成していこう。手順は以下の通りだ。

1. かしめ工具のカッターを使い、ケーブルを欲しい長さのところでカットする

加工時に先端をカットすることも考慮して、欲しい長さより7~8cmほど余裕を見るのがおすすめ

2. 先にブーツだけケーブルに通しておく

必ず先にブーツを挿入しよう。ケーブル両端を作成してしまうとブーツを挿入できなくなってしまう

3. かしめ工具のカッターの凹みのあるところで、回転させるようにして被覆に切り込みを入れる

ケーブル先端から4cmあたりに切り込みを入れる
カットした被覆を抜き取る。完全に握り込んでカットすると芯線まで切れてしまいがちなので慎重に

4. 2本×4の“より線”状態になっている芯線を軽く開き、ニッパやハサミで中央にある十字介在を根本からカットする

中央の透明のものが十字介在
これを根本からニッパなどでカットする

5. より線状態になっている芯線をほぐし、指先できれいに伸ばす

できるだけ1本1本まっすぐになるように伸ばそう

6. 8本の芯線を所定の並びにする

ケーブルの仕様によって2パターンの並びがある。今回は主にストレートケーブルで使われているパターン2(T568B)で作成した
芯線の先端あたりによりがあるときは、少しカットして整える

7. 芯線をLANコネクタに差し込む

金属の端子部が視認できる側から見て、左端が白橙、右端が茶となるように差し込む
横から見たときに、これくらいまでケーブルを差し込むと良い

8. 余った先端の芯線を、かしめ工具のカッターやニッパでカットする

余った芯線をカットしたところ

9. かしめ工具で端子部をかしめる

ハンドルを握り込んで端子を芯線に食い込ませる

10. ブーツをコネクタにはめ込む

このコネクタの場合はブーツを軽く手ではめ込むだけ

11. LANケーブルテスターで通電チェック

スイッチをオンにすると両側で縦に並ぶ1~8のLEDが順番に光る。両方が同時に明るく光ればOK

12. 反対側のケーブル端も同じように加工して、完成

短いLANケーブルができあがった!

ジャストサイズのLANケーブルでスパゲティ状態を解消しよう

 難しそうなイメージのあるLANケーブルの自作だけれど、今回紹介したようなブーツ付き貫通型LANコネクタのように部品点数が少なく扱いやすい商品が登場したことで、作成の難度が下がり、手間や必要な工具は以前より少なくなっている。一度手順を覚えてしまえば、自分の欲しいジャストサイズのLANケーブルが作り放題。ネットワーク機器周りのスパゲティ状のごちゃつきも解消できるはずだ。

 ただ、10Gbpsという高速な通信に対応するカテゴリ6AのLANケーブルは、わずかな接触不良で本来の転送速度を発揮できなくなる可能性があり、自作することによるリスクもないとは言えない。LANケーブルテスターでチェックするのはもちろんだが、最初は通信に支障が出ても大きな問題にならない機器に使ってみて、安全かつ高速に通信できることが分かったら“本番”の機器に差し替える、というやり方もおすすめだ。