【CES 2010】【Intel基調講演】
Moorestownベースのスマートフォンを今年後半に投入

Intel ポール・オッテリーニ社長兼CEO

会期:1月7日~10日(現地時間)
会場:Las Vegas Convention Center
   Sands Expo and Convention Center/The Venetian



 Intelのポール・オッテリーニ社長兼CEOは、1月7日に米国ネバダ州ラスベガスで開催中のInternational CESの基調講演に登場し、同日にIntelが発表した新しい「2010 Intel Coreプロセッサ・ファミリー」などの新製品を紹介し、今後の新製品についても語った。

 その中でオッテリーニ氏は、同社が現在開発しているスマートフォン向けのIA(x86)プロセッサ“Moorestown”(ムーアズタウン)を搭載した韓国LG電子のスマートフォン「GW900」を紹介し、LG電子が今年の後半に搭載製品を投入するということを明らかにした。

●3D立体映像のコンテンツも2010 Coreプロセッサ・ファミリーなら編集可能とアピール

 オッテリーニ氏は、基調講演が行なわれた1月7日の朝に正式発表されたばかりの、新しいCoreファミリープロセッサを最初に取り上げた。「我々は新しい2010 Coreプロセッサ・ファミリーを一挙に25種類も発表した。これらの製品は新しい32nmプロセスルールに基づいて製造されており、パーソナルコンピューティングに新しい可能性をもたらす」と述べた。オッテリーニ氏は、「新しい32nmプロセスルールのCore i7/i5/i3は、最初のマイクロプロセッサである4004に比べて、性能では5,000倍、価格性能比では10万倍にもなる」と述べ、ムーアの法則のメリットを聴衆に語りかけた。

 ついで、オッテリーニ氏は、今回のInternational CESでの大きな話題の1つである3D立体映像のコンテンツについて触れ、「3Dコンテンツを作成するには処理能力が必要になる。たとえば、ハリウッドのアニメであるシュレックの作成にかかる時間は最新版のシュレック4では、最初のバージョンの8倍近くになっており、より強力な作成環境が求められている」と語り、3D立体映像の編集などにはより大きなプロセッサパワーが必要だと指摘した。

 その上で、新しいCore i7プロセッサを利用して実際に3D映像をリアルタイムで編集する様子をデモした。

4004との比較で最新の32nmプロセスルールはこんなに強力とアピールシュレックのレンダリングにかかる時間は、作品毎に増えている3D立体映像をPCを使って編集する

●Atomプロセッサを利用したソリューションなどをデモ

 オッテリーニ氏は続いて、Intelが開発を進めているLightPeak Technologyについて言及した。「LightPeak Technologyを利用することで、ユーザーは手軽にデバイスをHDディスプレイなどに接続することができるようになる」と述べ、昨年のIDFで公開したLightPeak Technologyへのサポートを訴えた。

 その前段階というわけではないが、オッテリーニ氏は今使える技術として、「Intel Wireless Display」と呼ばれる新製品について言及した。「Intel Wireless Displayは1月17日より、全米のBest Buy(小売業者)で販売される。ユーザーはデバイスを購入することで、Wi-FI経由で手軽にPC上のHDコンテンツをテレビに映し出すことができる」と述べた。

 基調講演ではこれ以上の言及はなかったが、IntelのWebサイトによれば、Intel Wireless Displayは、PCとはWi-Fiで接続し、PCにはHDMIやコンポーネント端子などを経由してテレビに接続して利用するアダプタで、Core i5を搭載して内蔵GPUを利用しているノートPCなどと組み合わせて利用できるようになるという。オッテリーニ氏が言及している通り、1月17日から全米およびカナダのBest Buyで販売される予定だという。

 さらにオッテリーニ氏はリビング向けのソリューションとして、「Sodaville」のコードネームで開発し、昨年のIDFで正式に発表したテレビ向けSoCの「Atom CE4100」を搭載したOrange(欧州の携帯電話事業者)のセットトップボックスを紹介した。セットトップボックスは、テレビ、レコーダ、オンデマンドの動画配信などに対応しており、Atom CE4100の内蔵GPUを利用してコンテンツのリストを3D表示したりなどに利用することができる。

 また、オッテリーニ氏はIntelが開発している家庭内の家電(ライトとかお風呂とか)などを集中して管理するAtomベースの管理コンソール機器のコンセプトモデルを紹介した。ライトをつけたり消したりなどを集中してコントロールできるほか、自分でプロファイルを作りそれを切り替える様子などが公開された。

LightPeak Technologyを再びアピールIntel Wireless Displayは米国では17日より販売される、他の地域での販売の予定はいまのところないとのことOrangeのセットトップボックスのデモ。番組一覧などが3DのUIで表示される
Atomベースの家電制御装置のデモ

●Intel版アプリストア、AppUp Centerのサービスを開始

 オッテリーニ氏は、昨年のIDFでIntelが紹介したAtomプロセッサ向けのアプリケーションを開発するための開発者のコミュニティである「Atom Developer Program」について言及し、現在開発者が各種のアプリケーションを作成していると述べた。今回の基調講演では、そうした開発者コミュニティでつくられたアプリケーションをエンドユーザーに届ける場として、Intelがアプリストアを開設することが明らかにされた。

 オッテリーニ氏がAppUp Center(アップアップセンター)と呼ぶストアでは、開発者が開発したアプリケーションを提供することができ、ユーザーはそれをオンライン購入することができる仕組みが用意される。エンドユーザーはネットブックなどに専用のアプリケーションをインストールして利用する形となる。「AppUp StoreにはWindows版とMoblin版の2つが用意される。すでにAcer、ASUS、Dell、SamsungなどのOEMメーカーがこの取り組みに参加することが決まっており、今後さらに増えることになるだろう」と述べ、今後はネットブックだけでなく、MIDやスマートフォンなど様々な形のデバイスでもAppUp Centerが利用可能になるという見通しを明らかにした。

AppUp Centerのデモ。ネットブックなどにソフトをインストールして、Atom向けソフトウェアの購入やダウンロードなどができるようになるAcer、ASUS、Dell、Samsungが対応予定

●IAベースのスマートフォンを市場に投入へ、LG電子「GW900」をデモ

 最後にオッテリーニ氏はIntelが今年の半ば以降に出荷を予定している、スマートフォン向けプラットフォームに関する発表を行なった。「スマートフォンを利用すると、いつでもどこでもコンピューティングの機能を利用することができるようになる。Moorestownはそのための製品だが、今日ここではLG電子による製品をお見せしたい」と述べ、LG電子が開発中のMoorestown搭載スマートフォン「GW900」のデモを行なった。デモでは3Dを利用したユーザーインターフェイスなどが公開され、3Dのアイコンがグリグリと動く姿は印象的だった。

 オッテリーニ氏によればGW900は今年の後半に投入される予定だ。今年の後半には、IAベースのスマートフォンが現実のものになりそうだ。

MoorestownベースのスマートフォンはLG電子が投入LG電子のGW900、Moorestownを採用したIAベースのスマートフォン3DのUIになっており、それがグリグリと回転する

(2010年 1月 8日)

[Reported by 笠原 一輝]