【COMPUTEX 2009レポート】
AMDの統合型チップセット「AMD785G」搭載マザーが多数展示される
~サーバ向けのSocket G34搭載製品も

壁一面にマザーボード、ビデオカードが並べられたAMDブース



●DX10.1&UVD2対応のグラフィック機能へ進化

 今回のCOMPUTEX TAIPEIでは、AMDのグラフィック統合型チップセットの新製品「AMD 785G」を搭載する製品が多くのマザーボードベンダーから展示された。AMD 780GとAMD 790GXの間に位置付けられるかのようなチップセット名だが、実態はまったく別のものと考えて良い。

AMD 785Gと、内蔵グラフィック機能のRadeon HD 4200のロゴマーク

 AMD 785Gで強化されたのはグラフィック機能で、「Radeon HD 4200」と呼ばれるものが内蔵される。このグラフィック機能のポイントはDirect X10.1とUVD2(Universal Video Decoder 2)への対応だ。

 現在発売されているAMD 780Gに内蔵されたRadeon HD 3200、AMD 790GXに内蔵されたRadeon HD 3300は、Radeon HD 3000世代のグラフィック機能でありながらDirect X10までの対応となっていた。Windows 7登場を控え、AMDの戦略としてはDirect X10.1への対応が欠かせないといったところだろう。

 もう1つのUniversal Video Decoder 2も、AMD 780G/790GXは第1世代のサポートとなっていた。Radeon HD 4000シリーズでサポートされたUVD2は、デュアルストリームのアクセラレーションや、SD解像度からHD解像度へのアップスケーリング機能、自動コントラスト調整機能などを備えている。AMD 785Gのグラフィック機能は、これを搭載したことでRadeon HD 4200という、Radeon HD 4000シリーズに属するものとしてラインナップされたと見られる。

 マザーボードベンダーの話によると、パフォーマンス自体はAMD 780Gとほとんど同じという。製品名のナンバーが790より下に位置付けられているのは、この性能面が考慮されたと想像される。

 実際の搭載製品の傾向としては、DDR3に対応する製品が多めであることに気が留まる。いよいよメインストリーム以下のセグメントもDDR3化が本格化するという雰囲気もあるのだが、大手ベンダーであるASUSTeKやGIGABYTE、FOXCONNが揃ってDDR2を採用しているあたり、AMD 785Gでどちらがトレンドになるかは予測しづらい状況といえる。

 このほか、AMD 785Gも、AMD 780GやAMD 790GX同様に内蔵グラフィック機能のフレームバッファ用メモリ“SidePort”をサポートしているが、今回展示された製品には128MB程度のSidePortを搭載している製品が非常に多い。SidePortにはDDR3メモリが利用されるが、この低価格化で追加コストがそれほど大きくならないという事情もあるそうだ。

 一方サウスブリッジであるが、多くの製品はSB710を組み合わせている。一部製品はSB750を組み合わせているが、両サウスブリッジの違いはRAID5サポートの有無程度。メインストリーム以下のセグメントでRAID5は不要と考えるか否か、というメーカーやその製品の思想の違いといえる。

ASRock「M3A785GXH/128M」。AMD 785G+SB710を搭載するDDR3対応製品。128MBのSidePortを備えるほか、x8×2+x4×1での3枚挿しCrossFireもサポートしているASUSTeK「M4A785-V PRO」。AMD 785G+SB710を搭載するDDR2対応製品。CPUに8フェーズ、メモリに2フェーズのVRMを備えるASUSTeK「M4A785-M EVO」。AMD 785G+SB710を搭載するDDR2対応製品。SidePort用メモリも備えている
ASUSTeK「M4A785G HTPC」。AMD 785G+SB710を搭載するDDR2対応製品。HTPC向けの製品でサウンド周りの機能などで差別化を行っているBIOSTAR「TA785G Combo」。AMD 785G+SB710を搭載。DDR3とDDR2の両方に対応するコンボ製品DFI「LanParty BI 785G-M34」。AMD 785G+SB750を搭載するDDR3対応製品。デジタルPWMによる4フェーズ電源回路を搭載。SidePort用メモリも備える
ECS「A785GM-M」。AMD785G+SB710を搭載するDDR3対応製品。同社の上級ユーザー向け製品であるBlackシリーズに属し、POSTコード表示パネルなどを備えるFOXCONN「Cinema」。AMD785G+SB710を搭載するDDR2対応製品。Dolby Digital LiveとDTS Connectの認証を受けているFOXCONN「A85GM」。AMD785G+SB710を搭載するDDR2対応製品。
GIGABYTE「GA-MA785G-UD3H」。AMD785G+SB710を搭載するDDR2対応製品。2oz copperやDualBIOSなど同社独自機能を満載したATX製品GIGABYTE「GA-MA785GPM-UD2H」。AMD785G+SB710を搭載するDDR2対応製品。こちらはmicroATXだが、128MBのSidePort用メモリを備えているのが特徴Jetway「MA3-785G+」。AMD785G+SB710を搭載するDDR3対応製品。SidePort用メモリも搭載。DDR2対応製品も検討されている
J&W Technology「JW-785GXM-EXTREME」。AMD785G+SB750を搭載するDDR3対応製品。128MBのSidePort用メモリ搭載J&W Technology「MINIX 785G-SP128M」。AMD785G+SB710を搭載。DDR2対応のSO-DIMMスロットを2基備えるほか、128MBのSidePort用メモリも搭載。展示されたAMD 785G搭載製品では唯一のMini-ITXモデルMSI「785GM-E65」。AMD785G+SB710を搭載するDDR3対応製品。SidePort用メモリも搭載。OC SwitchなどのMSI独自機能も多数備えている

●AMDブースにはSocket G34マザーも

 AMDはこのCOMPUTEX TAIPEIのタイミングでIstanbulこと6コア版Opteronを発表したが、AMDのプレスカンファレンスでは、すでに次世代の話題が出るほどサーバプラットフォームの動きは活発だ。

 そのプレスカンファレンスにおいても紹介された、2010年登場予定の次期Opteron「Magny-Cours」などで採用されるDirect Connect Architecture 2.0に対応した、「Socket G34」を備えたマザーボードがAMDブースに展示されていた。

 カンファレンスではDirect Connect Architecture 2.0によってメモリやHTリンクの帯域幅向上などのメリットが紹介されているが、このメモリ帯域幅向上というのはDDR3化を意味している。Opteronは現時点においてもDDR2メモリが使用されているが、Socket G34の登場によってDDR3化が始まることになる。

 ちなみに、Opteron用マザーのベンダーとしてメジャーな存在であるTYANのSocket G34マザーが展示されていない。疑問に思って同社ブースで尋ねてみたところ、このクラスの製品はHPCなどの分野で使われることになるため、製品化に当たっては信頼性などの課題をきっちり解決したうえでリリースする、という慎重な姿勢で製品化を進めているので、現時点では展示していないとのこと。

 TYANでは初期製品はAMDのチップセットを採用することになるとしている。今回展示された製品も、同じくAMDのチップセットを搭載しており、Socket G34登場直後はこの構成が主流となりそうだ。

Socket G34ソケットInventec「Snipper」Quanta「S2C」

(2009年 6月 8日)

[Reported by 多和田 新也]