イベントレポート
IFAで発表されたWindows 10搭載PCを総ざらい
(2015/9/8 14:22)
IFAでは、MicrosoftのWindows 10がリリースされて1カ月後、さらにはIntelの第6世代Coreプロセッサ(開発コードネーム:Skylake)の発表になったことが重なり、Lenovo、Acer、ASUS、東芝といったPCメーカーが多数の年末商戦向け製品を発表した。ただ、グローバルでシェア第2位のHP、第3位のDellは今回のIFAには出展しておらず、Microsoftの基調講演(別記事)などで新製品が紹介された程度だった。
その中でも注目製品は別記事で紹介している東芝の4Kディスプレイ搭載2-in-1デバイス「Satellite Radius 12」だが、それ以外でも魅力的な製品が多数発表、ないしは開発意向表明などが行なわれた。本記事ではそうしたIFAで発表されたWindows 10搭載PCの中から注目の製品を中心に紹介していきたい。
ThinkPad YOGAシリーズ、Surfaceシリーズに対抗するMIIX 700など新製品多数のLenovo
世界最大のPCメーカーLenovoは、例年IFAで年末商戦向けの新製品を多数発表している。リリースベースの発表や、発表会の様子は、既に別記事でも紹介済みだが、日本のユーザーにとって気になる製品を中心に紹介していきたい。
ThinkPadからは、ThinkPad YOGAファミリとして販売されている、360度回転型ヒンジを利用した2-in-1デバイスが発表された。「ThinkPad YOGA 260」と「ThinkPad YOGA 460」で、前者が12.5型(フルHD=1,920×1,080ドットまたはHD=1,366×768ドット)、後者が14型(フルHDまたはWQHD=2,560×1,440ドット)の液晶ディスプレイを採用した製品となる。
いずれの製品も特徴しているのは、業界では“ヨガ型”として定着しつつある、360度回転ヒンジを採用していることで、クラムシェルモード、ビューモード、テントモード、タブレットモードと4つのスタイルで使うことが可能。シリーズの特徴となっている、タブレットモード時にはキーボードが沈降して押せないようになる機能も引き続き採用されている。
そのほか、CPUが第6世代Coreプロセッサになり、LTE-Aに対応したセルラーモデムがオプションで用意されている点が改良点となるが、基本的には従来のThinkPad YOGAの12型、14型のキープコンセプトを踏襲する製品だと言っていいだろう。
Lenovoのコンシューマブランド(Iedapad、YOGA)も新製品が多数展示された。Ideapadシリーズの「MIIX 700」は、キックスタンド付きスレート型タブレットと、マグネットで本体と合体するカバーキーボードで構成される2-in-1デバイスだ。写真を見れば分かるように、製品としては明らかにMicrosoftのSurfaceシリーズを意識した製品だ。
ただし、いくつかの点で相違点がある。1つはCPUで、「Surface Pro 3」は第4世代Coreプロセッサを、「Surface 3」ではAtom x7-Z8700を搭載している。これに対して、MIIX 700は第6世代Core mプロセッサを搭載している。このため、Coreプロセッサの性能でファンレスデザインが可能になっている。
もう1つの大きな特徴はヒンジのデザインにある。MIIX 700のヒンジはLenovoがウォッチバンドヒンジと呼ぶ、腕時計のバンドのような形をしている。このヒンジは無段階で角度が調節可能になっている。Surface Pro 3は無段階だが、Surface 3は3段階なので、この点は大きな違いと言えるだろう。液晶ディスプレイは12型のフルHD+(2,160×1,440ドット)で、300cd平方mの輝度が実現されており、Surface Pro 3と同等だ。
ユニークな特徴としては、オプションでIntelのRealSenseカメラを備えていることだ。ただし、装着されているのは背面となり、Windwos Helloによる顔認証ログインで利用できるかもしれないが、実質的には意味がないことになる。RealSenseに対応したアプリケーションを利用して、物体の3Dスキャンなどを行ない、物体の大きさを計測したりという使い方が可能だ。
レノボ・ジャパンによれば、いずれの製品もグローバル向けの発表となり、日本市場への投入は未定とのことだった。ただ、完全な新シャシーとなるMIIX 700は別にして、多くの製品で前モデルが日本では販売されいることを考えれば日本で販売されても不思議ではない。
プレビューとなった「Switch 12」に注目が集まったAcer、ユニークなドッキング構造
Acerが記者会見(その模様はこちら)で開発意向表明を行なった、「Aspire Switch 12」は、第6世代Core mプロセッサを搭載した脱着型の2-in-1デバイス。展示されていたサンプルでは、CPUがCore m5-6Y54で、メモリは8GBというスペックが確認できた。
最大の注目点は、ドッキングソリューションだ。というのも、Switch 12はドッキング部分全体がキーボードに電力を供給するための給電ピンになっているものの、いわゆるデータを転送するためのボゴピンなどは用意されていない。最初はBluetoothで接続しているのかと思ったのだが、展示員によればBluetoothも使っておらず、ヒンジ部分に隠された2つのセンサーが高周波数で通信を行なうという仕組みになっているのだという。
これにより、USB 3.0相当の速度で通信が可能になっており、キーボード側には2つのUSB 3.0ポートが用意され、ドッキングすると普通に使えていた。つまり、PCからはUSBのHubがキーボード側にあるように見えるのだ。
デバイスマネージャで確認してみるとFresco Logicの「F-One Cotroller」というコントローラがUSBコントローラの先に繋がっており、その先にキーボードやタッチパッドが接続する形になっていた。つまり、このFresco LogicのF-One Cotrollerというのが、高周波数で通信するセンサーということになるだろう。
このため、Switch 12のドッキング部は非常にシンプルになっており、一見すると本体を固定する突起しかないように見えるが、そこにセンサーが入っており、タブレット側の溝に隠されたセンサーと通信することが可能になっているのだ。中央部にコネクタがないため、重量を節約できるほか、ドッキングする時も、すっと入るので使い勝手が良い。
なお、今回のSwitch 12は開発意向表明で、現時点では価格などは未定だが、Acerの説明員によれば年内には正式発表したいということだった。もちろん価格次第だが、価格がそれなり手頃であれば、薄型ノートPCとしても普通に使える製品を検討している人には朗報だろう。
このほか、「Aspire R13」を発表した。Aspire R13は、液晶ディスプレイの左右ベゼルの中央部が起点になって液晶ディスプレイが回転するタイプの2-in-1デバイス。業界ではイーゼル型と呼ばれるこのタイプのヒンジは、以前はDellがXPSシリーズなどで採用していた。その時はイーゼルのフレームが完全な形になっていたのに対して、このAspire R 13はイーゼルの上半分がない形状になっている。その分中の回転する液晶ディスプレイ部分がしっかり作ってあり、回転型ヒンジと同じようにクラムシェルモード、テントモード、ビューモード、タブレットモードに変形して利用できる。
CPUは第6世代Coreプロセッサ(Uプロセッサ)、メモリは最大8GB、128GB/256GB/512GBのSSDで、それらを2つ搭載したRAID 0構成も可能になっている。重量/サイズは1.6kg/343.8×230.35×18.5mm(幅×奥行き×高さ)。液晶は13.3型でWQHDないしはフルHDとなる。
上記いずれの製品も、Thunderbolt 3に対応したUSB TypeーCを搭載している。DisplayPortの機能も持っており、4Kに出力できる様子がデモされた。
このほかAcerでは、Chromebookの2-in-1型となる「Chromebook R11」、Windows 8.1モデルをWindows 10プレインストールに変更した製品などがブースには展示されていた。
ゲーミングノートが中心となったASUS、T100シリーズの最新製品T100HAも正式発表
ASUSは発表会では、「ZenWatch2」や「ZenPad」、「ZenFone」などが主にフィーチャーされていたため、基本的にノートPCの新製品などは紹介されていなかったが、いくつかの新製品が発表された。
最大の発表はゲーミングノートPCで、同社のゲーミングPC向けの製品となるROG(Republic of Gamers)の水冷ノートPCとなる「GX700」、および「G752」シリーズなどを発表した。
近年ASUSはROGブランドでゲーミングPCに力を入れており、今回発表されたGX700は水冷ユニットとノートPC部分という2つから構成される“世界初水冷ゲーミングPC”となる。CPUには第6世代CoreプロセッサのHK SKU(ノートPC用に倍率変更が可能なHプロセッサのK SKU)を搭載しており、オーバークロックできる。水冷のシステムを利用しているので、よりオーバークロックがやりやすくなっているのは言うまでもない。
水冷システムはドッキングした時にサーマル的に接続することで、水冷のシステムが利用可能になっている。例えば、家の中でちょっと移動する時にはノートPCだけ取り外し、ゲームのLANパーティーをやるときには、水冷システムごと持って行くという使い方になると考えられる。GPUは未公表だったが、NVIDIAのGPUが搭載されており、17型の4K解像度のIPS液晶が本体の液晶ディスプレイとして採用されている。
このほかCOMPUTEX TAIPEIで発表されたTransformer Bookの最新版となる「Transformer Book T100HA」が展示された。CPUはCherry TrailのAtom x5、10.1型のWXGA(1,280×800ドット)ディスプレイ、2GBないしは4GBメモリ、32GB/64GB/128GBのeMMCというスペックで、タブレットだけで580g、バッテリ含んでいるキーボードドックが470gとなっている。本体側にはUSB Type-Cポート(USB 3.1対応)が用意されている。
東芝ブースではオールドPCから、dynabookの理想を目指す2-in-1デバイスも展示
東芝は例年は、大きなブースでTVなども含めて展示していたのだが、今年はPCに絞ったブースを出し、東芝のノートブックPC事業が30周年を迎えたことをフィーチャーした展示を行なった。ブースには東芝が過去にリリースした製品ノートPC製品、「T1100 Plus」や「Libretto」などの過去の製品から、つい最近の「Cosmio」まで展示されており、来場者は興味深そうに見ていたのが印象的だった。
製品としては別記事で紹介した12.5型4Kディスプレイを搭載した回転ヒンジ型の2-in-1デバイス「Satellite Radius 12」が目玉となったが、それ以外にも注目の展示があった。Showcase Onlyと書かれてアクリルの箱に入った2-in-1デバイスで、Microsoftの基調講演で紹介された新2-in-1デバイスだと思われる。アラン・ケイのDynabookのビジョンを東芝は実現したいと願っていると書かれたプレートの前に置かれたそのデバイスは、着脱式キーボードに接続される形の2-in-1デバイスで、製品の前にはデジタイザペンが置かれており、ペンで操作可能なモデルであることが分かる。
このほかにも、東芝は「Satellite Radius 11」、「Satellite Radius 14」、「Satellite Radius 15」といったSatellite Radiusシリーズの2-in-1、Bay TrailないしはCherry Trailを搭載した2-in-1「Satellite Click」シリーズなどを展示した。
Intelは第6世代Core m搭載のスティック型PCを公開、ただし静的デモのみ
Intelは、報道関係者向けのイベント“ShowStoppers”において、開発中の第6世代Core m搭載のスティック型PCを公開した。IntelはAtom Z3700シリーズ(Bay Trail)を搭載したスティック型PCを出荷中で、今回公開された製品はその後継となる製品だと考えられる。
SoCが第6世代Core mプロセッサに変更されたことで、最大のメリットは性能の向上になる。Coreプロセッサをベースにして作られているCore mは、CPUはデュアルコアとBay Trailのクアッドコアより減っているが、内部の効率は良いので、より高速にアプリケーションを実行できる。また、GPUの内蔵エンジンも24EUと、Bay Trailの4EUに比べて圧倒的に多く、GPUの性能が高いことも特徴になる。
ただしBay Trailに比べると、熱設計の面ではやや厳しくなる。Bay TrailではSDP 2Wが熱設計のデザインポイントになるが、第6世代Core mの場合には4.5W、cTDP(Configurable TDP)の下側となるcTDP downでは3.5Wとなるが、それでもSDPで2WでいいBay Trailよりはより厳しい熱設計を行なう必要がある。
このため、筐体はかなり大型になっており、HDMI端子と比較すると、厚みや外形が従来のスティック型PCに比べると増していることが分かるだろう。実際、放熱のためと思われる無数の穴がデザインとして入れられており、それなりの大きさのファンが内蔵されていると推測される。今回はあくまで静的なデモのみで、動作している様子は公開されなかったため、どの程度のファンのノイズがあるのかなどは不明だ。
Intelによれば、現在開発中ということで、いつリリースされるのか、価格はいくらになるのかも含めて、未定ということだった。