Ubuntu日和
【第66回】6年前のPC、Ubuntuをインストールして使い続けるか、買い替えるか。ベンチマークから占うことにした。
2024年12月21日 06:16
今更述べるまでもなく、来年の10月でWindows 10のサポートが終わってしまう。Windows 11にアップグレードできないPCはどうすればいいのか。一案はUbuntuをインストールすることで、Windows 10のサポート終了まであと1年を切った!これを機にUbuntuへの乗り換えも検討しませんか?で紹介している。
とはいえ、現実的にWindows 11が動かないくらいのPCで満足にUbuntuを動作させることはできるのだろうか。場合によっては買い替えたほうがいいのではないか。もちろん筆者の希望としては買い替えたとしてもOSはUbuntuであってほしいが……。
ちょうどうちに、ギリギリWindows 10が動かないCPUがあったので、これと今どきのCPUを比較してみることにした。今どきとはいえ、当時は今のような多コア時代ではないので、4コア8スレッドで統一することにした。4コア8スレッドは、当時としては多コアな方だが、今となってはローエンドもいいところだ。
Windows 11が対応するCPU/対応しないCPU
Windows 11が対応するCPUはMicrosoftが公開している。
Windows 11 でサポートされている AMD プロセッサ
Windows 11 でサポートされている Intel プロセッサ
順番に他意はなく、アルファベット順である。いずれも分かりやすく、Intelは第8世代Core iシリーズ以降、AMDはZen+コア以降だ。Zen+コアを採用しているのはRyzen 2000シリーズと同3000Gシリーズ以降だ。……いや分かりにくいな?
用意したCPU
今回比較用に用意したCPUは次の通りだ。
Ryzen 5 2400G
Ryzen 3000Gシリーズよりも前ということで、これだけWindows 11には対応しない。
AKIBA PC Hotline! の記事によると、2018年2月13日に発売したとのことだ。おそらく発売まもなく入手したものと思われる。
ベンチマークの結果から、少なくともCPU部分は特に高速とはいえないので、比較としてはいいのではないだろうか。
ちなみにRyzen 5 3400Gも所有しているが、諸般の事情でテストは行なっていない。
Ryzen 3 Pro 4350G
2000Gシリーズと3000Gシリーズでは「Ryzen 5」だったが、4000Gシリーズ以降は「Ryzen 3」に降格となる。製造プロセスがGLOBALFOUNDRIESの14/12nmからTSMCの7nmプロセスに移行し、より多くのコアが詰めるようになったからだ。後藤弘茂氏の記事に詳しい。
今考えても謎だが、AMDは日本(とほか数カ国?)向けにRyzen PRO 4000Gシリーズをバルクで販売した。筆者はRyzen 7 PRO 4750Gを(確か)発売日に購入し、Ryzen 5 2400G/3400Gで感じていた性能不足が一掃されて痛く感動した記憶がある。Ryzen PRO 3 4350Gはマザーボードとセットで格安販売されていたものを購入したと思われるが、実のところはあまりよく覚えていない。4350Gはバランスがよく、かつPROということでECCメモリが使用できるので、現在も録画サーバーで稼働中だ。ただしこれも諸般の事情により4350Gはうちに3つあるので、ベンチマークは問題なく行なえた。
現在となっては4350Gは入手困難だが、4300Gであれば容易に入手できる。もちろん本原稿の執筆時点だが。ただ、今から買うなら後述する5300Gのほうがいい。
Ryzen 3 5300G
先月リテール販売が開始されたばかりの5300Gを新たに入手した。発売当初は1万8,800円で、そのタイミングで購入していればよかったのだが、もたもたしているうちに1万9,800円に値上げしており、円安もあるし仕方ないかと購入したら、まもなく1万7,980円に値下げしている(原稿執筆時点)。もともと2個買う予定だったので、今買って2で割ったら発売時点とほぼ同じ価格になるのかなと邪悪なことを考えている。
本当はRyzen 3 8300Gでもテストできればよかったのだが、入手できそうな気が全くしなかったので諦めた。2年後ぐらいにはリテールで販売されるのであろう。
Core i3-14100
特に理由はなく、Amazonで安かった(1万6,531円)ので購入したが、ベンチマーク的にはいいスパイスになって結果オーライである。たぶん。
そういえば使用したマザーボードもAmazonで安かったから購入したものであった。それでいいのか、自分。
今後IntelはHyper-Threadingに対応したCPUはリリースしないようなので、これが最後のデスクトップ用4コア8スレッドのCPUになるのであろう。
使用ハードウェア
使用ハードウェアは次の通りだ。
CPU | Ryzen 5 2400G | Ryzen 3 Pro 4350G | Ryzen 3 5300G | Intel Core i3-14100 | Intel N100 |
---|---|---|---|---|---|
CPUファン | IS-40X | 同左 | 同左 | SilverStone NT07-1700 | - |
マザーボード | GIGABYTE B450I AURUS PRO WIFI | 同左 | 同左 | 同左 | ASRock H670M-ITX/ac |
メモリー | Corsair CMK16GXM2E3200C16B | 同左 | 同左 | 同左 | Kingston KVR32N22S8/8 |
SSD | Western Digital WDS250G2X0C | 同左 | 同左 | 同左 | 同左 |
ケース | INWin BQ656S | 同左 | 同左 | 同左 | SilverStone SST-SG13 |
「B450I AURUS PRO WIFI」は久しく眠っていたものを掘り起こしてきたもので、5年ぶりにUEFI BIOSのアップデートを実行した。この間もアップデートをリリースし続けていたマザーボード各社には頭が下がる思いだ。
ベンチマーク
今回も使用するのはPhoronix Test Suiteだ。ちなみに動かしたことはないのもののWindows版もあるので、誰でも検証可能である。
Zstd
まずはZstdという圧縮形式での結果から見ていこう。Zstdには3から22までの圧縮レベルがあり、レベルが高いほど圧縮率がよくなり、その分時間がかかるようになる。
最初が圧縮時の結果で、次が展開時の結果だ。CPU負荷が比較的低いとはいえ、速度差がきっちり出ているのは興味深い。ただし、圧縮時と比較して展開時は差が大きくない。IntelのCPUは圧縮が得意なのか、展開が苦手なのか、その両方なのか、これだけだとなかなかに判断が難しい。
今度はLevel 8での結果で、圧縮時の差はLevel 3と比較して減っているが、展開時の傾向はあまり変わっていない。
Level 19なんて実際に使う機会があるかは謎だが、CPUパワーの傾向は分かりやすい。とはいえLevel 8のときとあまり変わりはない。
圧縮時の2400Gと14100を比較すると、どのレベルでもきっちり倍以上の差がついていて、驚くばかりだ。
7-Zip
Windowsでも標準で7-Zip形式に対応したので、馴染があることだろう。こちらは元祖の実装で、マルチスレッドをきっちり使い切ってくれるのでそういうベンチマークになっている。
おおむねZstdと似た傾向にあるが、IntelのCPUは展開が苦手であるという仮説が当てはまりそうな結果だ。
Build2
Build2というC/C++ツールチェインのビルド時間もなかなかに興味深い結果であった。
14100は2400Gのおおむね半分の時間、すなわち倍の速度で、5300Gが無視できない程度の速度差で続く傾向はこれまでの結果と同様といえる。通常ビルドはシングルスレッド処理とマルチスレッド処理が交じるが、Build2も同様と思われる。N100は妙に遅いのは、スレッド数の少なさが足を引っ張っていると考えられる。N100は得手不得手がはっきり出る傾向があり、汎用的な用途には向かないのかもしれない。
結論
ソケットが同じ2400Gから5300Gに変更するだけで、1.5〜1.8倍くらい速くなることが期待でき、マザーボードごと14100に変更したらおおむね倍の速度になる。あくまでベンチマーク上のことなので、体感としてはそれほどの差はないだろう。現実的に買い替えるとしたらN100ではなくもう少し速い、5万円台のミニPCが選択肢になってくるであろうか。コア数/スレッド数も増えるので、より快適になることが期待できる。
6年かそれよりも前のPCであれば、ストレージがHDDであるものも多いので、SSDに移行すればそれだけで快適になることは論を俟たない。というわけで、ストレージをSSDにして、PC自体はそのまま使用を続けても全体の速度的には問題なさそうである、というのを結論にするのが妥当そうな結果となった。