特集

メーカー製アルカリ電池どれが長持ち?8メーカー24種類を一挙テスト!

 家電の評価をしている筆者だけれど、メチャ難しいのが空気清浄機。実は公平に評価する手段がない。だからレビューというか感想になっちゃうか、「論理的に言うと~~」って推測になっちゃう。炊飯器も似たようなモンで、10人のレビューがあったら10人の評価がある。

 それ以上に評価が難しいのが乾電池だ。市場はほとんどアルカリ乾電池なので、おそらく「アルカリ乾電池」を買うだろう。だがみなさんは、どう品定めしているだろう?スーパーのレジ横はほぼ選択肢がない高いヤツ。でも100円ショップや量販店には多数の選択肢があり、どれを選んだらいいのか分からない。筆者もだ(笑)。

 ある人は長持ちしそうな金色系の電池を選ぶだろう。ほかにも自分の一番信頼しているメーカー、生産国、価格で選ぶ人もいる。

 ここでは、品定めが超難しいアルカリ乾電池、中でも名の通ったメーカーの電池をかき集め、どれだけ長持ちするかを調べてみた。

実験した電池は8メーカー24種類

 ここでは手に入るだけの国内メーカーのアルカリ乾電池を集めてみた。ほかにもこんなメーカーもあるぞ!というご意見もあるかもしれないが、これで8~9割の有名メーカー製はテストできたはずだ。

 例外はDURACELL(デュラセルの乾電池)。20年以上前までは国内電池メーカーと合弁会社を設立して販売していたものの、2002年には日本から撤退。しかし2024年7月から伊藤忠リテールリンクが国内販売代理店となり、再び日本での販売を開始し始めたのだ。しかも英文のレビューを当たってみると、すごく長持ちで高性能みたいな感じ。そこでDURACELLは、アメリカの企業だが評価対象に入れている。またAmazonの電池を使っている方も非常に多いので、メーカーではないが実験に加えている。

製品名Amazon Basics
型番型番なし
製造元Amazon
製造国中国
使用期限2034年7月(10年間)
価格/1本73円 ※Amazon価格8本セット
試験気温22.2 ℃
製品名DURACELL DELUXE
型番型番なし
製造元DURACELL(伊藤忠リテールリンク)
製造国中国
使用期限2034年5月(10年間)
価格/1本176円
試験気温19.1 ℃
製品名DURACELL OPTIMUM
型番型番なし
製造元DURACELL(伊藤忠リテールリンク)
製造国中国
使用期限2036年5月(12年間)
価格/1本198円
試験気温22.0 ℃
製品名DURACELL(無印)
型番型番なし
製造元DURACELL(伊藤忠リテールリンク)
製造国中国
使用期限2034年5月(10年間)
価格/1本148円
試験気温15.8 ℃
製品名FUJITSU HighPower
型番LR6FH
製造元FDK
製造国日本
使用期限2034年10月(10年間)
価格/1本123円 ※Amazon価格
試験気温19.8 ℃
製品名FUJITSU LongLife PLUS
型番LR6LP
製造元FDK
製造国日本
使用期限2034年1月(10年間)
価格/1本76円
試験気温20.1 ℃
製品名FUJITSU Premium S
型番LR6PS
製造元FDK
製造国日本
使用期限2034年5月(10年間)
価格/1本129円
試験気温26.1 ℃
製品名FUJITSU TOPRUN V
型番LR6TOPV2
製造元FDK
製造国中国
使用期限2029年2月(5年間)
価格/1本44円
試験気温24.2 ℃
製品名IRIS OHYAMA PRIME
型番LR6BP
製造元アイリス オーヤマ
製造国中国
使用期限2034年4月(10年間)
価格/1本132円 ※Amazon価格
試験気温24.2 ℃
製品名IRIS OHYAMA basic plus-緑
型番LR6Bbp
製造元アイリス オーヤマ
製造国中国
使用期限2034年4月(10年間)
価格/1本60円
試験気温21.9 ℃
製品名IRIS OHYAMA basic-青
型番LR6Bp
製造元アイリス オーヤマ
製造国中国
使用期限2028年7月(5年間)
価格/1本85円 ※Amazon価格
試験気温19.0 ℃
製品名MITSUBISHI アルカリEX
型番LR6EXR
製造元三菱
製造国日本
使用期限2034年4月(10年間)
価格/1本126円
試験気温18.2 ℃
製品名MITSUBISHI アルカリ乾電池-赤
型番LR6R
製造元三菱電機ホーム機器
製造国中国
使用期限2029年6月(5年間)
価格/1本44円
試験気温中国
製品名MITSUBISHI アルカリ乾電池-青
型番LR6N
製造元三菱
製造国中国
使用期限2029年8月(5年間)
価格/1本46円 ※Amazon価格10本セット
試験気温20.1 ℃
製品名MITSUBISHI アルカリ乾電池G
型番LR6GR
製造元三菱
製造国日本
使用期限2034年7月(10年間)
価格/1本77円
試験気温18.2 ℃
製品名Panasonic EVOLTA
型番LR6EJ
製造元パナソニック
製造国日本
使用期限2034年10月(10年間)
価格/1本107円
試験気温25.8 ℃
製品名Panasonic EVOLTA NEO
型番LR6NJ
製造元パナソニック
製造国日本
使用期限2034年7月(10年間)
価格/1本176円
試験気温22.1 ℃
製品名Panasonic アルカリ乾電池
型番LR6XJ
製造元パナソニック
製造国タイ
使用期限2034年7月(10年間)
価格/1本141円 ※Amazon価格
試験気温20.1 ℃
製品名TOSHIBA IMPULSE
型番LR6H
製造元東芝ライフスタイル
製造国インドネシア
使用期限2034年10月(10年間)
価格/1本60円 ※Amazon価格
試験気温21.2 ℃
製品名TOSHIBA アルカリ1
型番LR6AN
製造元東芝ライフスタイル
製造国中国
使用期限2034年9月(10年間)
価格/1本115円
試験気温26.6 ℃
製品名TOSHIBA アルカリ乾電池-青
型番LR6L
製造元東芝ライフスタイル
製造国中国
使用期限2029年10月(5年間)
価格/1本60円
試験気温21.9 ℃
製品名TOSHIBA アルカリ乾電池-黒赤
型番LR6Z
製造元東芝ライフスタイル
製造国中国
使用期限2033年9月(10年間)
価格/1本71円
試験気温18.1 ℃
製品名maxell アルカリ乾電池
型番LR6GD
製造元maxell
製造国中国
使用期限2034年4月(10年間)
価格/1本55円
試験気温19.9 ℃
製品名maxell ボルテージ
型番LR6T
製造元マクセル
製造国日本
使用期限2034年7月(10年間)
価格/1本132円
試験気温17.9 ℃

※価格は4本セットの価格から1本あたりを算出。特に明記なきものは「モノタロウ」価格。4本セットでの販売がないものは、つど明記している

※電池は気温により性能が変わる。気温が高いほど活性化するのでいい結果が出る傾向にあるが、一般家庭で温度を一定にするのは難しいため測定開始時の気温も併記している

実験結果発表!いちばん長持ちはDURACELLだが……

 実験したすべての電池をまとめたのが次のグラフだ。実験は5Ωの抵抗をつないで、「電池が空になった」と定める0.9V(「終止電圧」)を下回るまで何時間使えたか?を示している。

 グラフ上部の「DURACELL OPTIMUM」と「DURACELL DELUXE」がいちばん長持ちで「これしか勝たん!」という状態。でも明らかに飛び抜けすぎていて、眉をひそめる方もいるだろう。この原因は公式ホームページに「独自の最新新材を正極材に配合」とあり、同社はこれを「POWER BOOST成分」を配合しているためという。

 実は10年ほど前にパナソニックから発売された「オキシライド乾電池」があり、これも独自素材を正極材(電池のプラス側成分)に加えたもので、ハイパワーで長持ちを謳っていた。しかしほかのアルカリ電池は電圧が1.5Vなのに対して、オキシライド電池は1.7Vあった。たった0.2Vの差ではあるが、4本直列つなぎにすると0.8Vまで差が広がるため、ストロボのように4本使う機器では発熱したり、一部がコゲたりという事故が発生。こんな経緯があり、すぐに市場から消えて、電圧を1.5Vに下げた「EVOLTA」に切り替えたという経緯がある。

 次のグラフは、ランキング化をする前の生データだ。縦に電圧、横に時間軸がとってある。注目すべきは「POWER BOOST成分」を配合した「DURACELL OPTIMUM」(水色)と「DURACELL DELUXE」(緑)だけが飛び抜けて電圧が高くなってる。

凡例の左から右、上から下が終止電圧の右端(下位)から、左端(上位)になっている

 つまり10年前のオキシライド乾電池と同様で「DURACELL OPTIMUM」と「DURACELL DELUXE」は機器によっては利用を避けた方がいい機器がある。たとえば4本直列に使うストロボや、6本や8本を直列に使う無線機関係などだ。またバッテリ残量計の表示が実際の残量と異なるなどの影響もあるだろう。

 ちなみに知り合いの時計メーカー曰く「オキシライド乾電池で不具合が多数発生して使用NGにしたぐらいだよー!」という話を聞いたので、POWER BOOST系は人柱を用意して問題ないことが確認できてから使うことをオススメ♪

【14時14分追記】時計におけるBOWER BOOST系電池の記述を追記しました。

 例外は「POWER BOOST成分」を配合していない「DURACELL(無印)」(黄土色)は、ほかの電池と同じ1.5V前後になっている。おそらく従来の電池との互換性のために、シリーズに入れざるを得なかったのでは?と勘ぐってしまう。

 このような理由から「DURACELL OPTIMUM」と「DURACELL DELUXE」は、ほかのアルカリ乾電池とはちょっと毛色が違うモノと理解して使う必要があるだろう。ただし「DURACELL(無印)」は、フツーに使って問題ない。ちょっと面倒な電池だ。

多少高くてもいいから長持ち重視なら三菱の「アルカリ乾電池G」

 電池の性能は、リモコンや時計のようにチョロチョロと細く長く使う機器に向いているもの、ストロボやミニ四駆(競技用の模型自動車)のように瞬間的にハイパワー(大電力)で使う機器に向いているものの2種類あることが多い。

 今回の実験はその中間からややハイパワーよりという感じだ。従って使う機器によっては、順位が変動することをあらかじめご了承いただきたい。実験結果はあくまでも目安ということで。

こんな感じの実験装置で、テスターの電圧をPCで記録した。インターバルは10秒単位となっている

 さらに電池の性能は個体差があり、性能は気温にも左右される。電池は化学変化を利用しているので、一般的に温度が高いと活性化しいい結果が出る。ただ一般家庭で温度を一定にするのは不可能なので、先の電池一覧には実験開始時の気温を併記しておいた。

 また個体差に依存されないよう、メーカーの実験などでは何十本もの電池を測定しその平均値を取っている。これも一般家庭では難しいため1本のみで実験している。ただし明らかに異常が見られる(グラフがガタガタ、キレイな曲線を描かなかった)場合は再実験を行ない、その結果を用いている。

 以下のグラフは、DURACELLの「POWER BOOST」2種類を除いた実験の生データで、終止電圧部分を拡大している。

凡例の左から右、上から下が終止電圧の右端(下位)から、左端(上位)になっている

 このデータを元に電池の長持ち順にまとめたのが次のグラフになっている。全部で22本の電池があるため、終止電圧に達した準にグループ分けして性能を見ていこう。まずは長持ちした上位8位から。

 電池が切れるまでの時間が1~4位までは1時間55分、それより2分短い1時間53分までの間に上位8位がひしめいている。キャンプや防災などに使う長持ちする電池を選ぶなら、この中のどれかを選べばいいだろう。

 意外だったのは「MITSUBISHI アルカリ乾電池G」と「Panasonic アルカリ乾電池」だ。どちらもさらに上位の「アルカリ乾電池EX」や「EVOLTA」、「EVOLTA NEO」があるが、安い下位モデルの方が長持ちという結果になった。これは冒頭で説明した通り、上位モデルが瞬間的にハイパワーな特性に振ってあるからと思ってもいいだろう。

 また思いのほか健闘したのが「Amazon Basic」だ。Amazonのプライベートブランドだが、国産の一流メーカーに引けを取らない性能に驚かされる。

 続く第2集団は、次のグラフとなる。

 9位の1時間51分から13位の1時間48分まで。こちらも第2集団の中ならどれを使ってもほぼ同じと思ってもいい感じだ。「TOSHIBA IMPULSE」も最高グレードなので、瞬間的にハイパワーな電池群がまとまっている印象だ。そして「たまたま」だとは思うが、瞬間ハイパワーは青系がよく使われている印象だ。

 第3集団は14位の1時間46分から、18位の1時間43分。

 こちらは安めの電池が入っているというイメージだ。ちょっと特徴的なのは「FUJITSU Premium S」と「FUJITSU HighPower」だ。瞬間的にハイパワータイプを最上位モデルに据えるメーカーが多い中、富士通は細く長く使えるタイプの「FUJITSU Premium S」に置いているようだ。

 最後の集団は1時間40分を割っている短命の電池の集団。

 各メーカーの格安タイプが集まっている感じだ。特徴としては4本セットモデルより8本、12本で売られているタイプが多く含まれる。なお「TOPRUN V」は「FUJITSU」を前面に出しておらず、入手しにくかったので「FUJITSU LongLife PLUS」の前のモデルで、流通残だったのかも知れない。なおTOSHIBAの電池は、どちらも現行品で多本数パックで販売するイメージだった。

コストパフォーマンスの差は最大で4倍違うので要注意!

 電池切れまでの時間でも説明した通り、電池には特性がある。ここでは「単位時間(10分)あたり」のコストパフォーマンスである点に注意して欲しい。たとえば「懐中電灯の明るさあたり」や「ミニ四駆のタイムアタック秒単位あたり」などのコストパフォーマンスは、電池の特性で順位が入れ替わる点に注意していただきたい。

 それを踏まえて全体のコスパを見ると、次のグラフになる。こちらは価格差が飛び出ていることはなかったので、DURACELLシリーズも含めて見ていこう。実験では便宜的に「10分あたりの価格」を計算しているが、金額は単位のない単なる指標と思っていただきたい。

 次のグラフは全24本の実験結果だ。

グラフ上部の電池は、いわゆる「コスパがいい電池」。下に行くほど10分あたりの価格は上がり「コスパが悪い電池」と言える

 おそらく電池を購入する時に「なんか高いなぁ」と感じる電池は、やっぱりコスパも悪いというイメージではないだろうか?

 次のグラフは、最高のコスパを誇る上位6位の1集団だ。

 「MITSUBISHI アルカリ乾電池」には赤と青があったが、どちらも同じものと考えてよさそうだ。また「TOSHIBA IMPLUS」は上位モデルの割りにコスパがいいという結果になった。ただ最近は販売店でもあまり見かけることがなく入手しにくいため、販売価格がディスカウントされているのかも知れない。

 さらに「IRIS OHYAMA basic plus-緑」は4本セットモデル(実験では4本セット価格で計算)は少なく、8~20本セットで売られていることが多いので、実質のコスパはもっとよくなると思われる。

 このようにコストパフォーマンスはセット売りの本数や相場によっても変ってくるということが分かるだろう。

 次のグラフは、第2集団の7~13位。

 14位以降は「グン!」とコスパが悪くなるので、ここまでが経済的というイメージだ。

 長持ち比較でDRURACELLを除けば1位だった「MITSUBISHI アルカリ乾電池G」が、ここに入っているのは驚き。長持ちで経済的なので、迷ったら「MITSUBISHI アルカリ乾電池G」を入れとけというオススメ乾電池になる。

 また「Amazon Basic」も経済的で長持ちだ。8本セットからの販売なので、その半額の4本分でコスパを計算しているが、最大100本の大量セットもあるので会社で使う電池としては最高のコスパを叩き出せるかも知れない。

 続く第3集団は、11円台にひしめく14~19位。

 こちらは各メーカーのハイパワー系のモデルが並んでいるという印象。この実験ではややハイパワーよりという程度での実験だったので、コスパ的には振るわなかったという感じだ。

 最後はコスパがいまいちという集団。長持ちの実験では飛び抜けていたのでランキングから除外したDURACELL。しかし価格的には飛び抜けている感はなかったので、コスパ比較にはDURACELLシリーズすべてを含めている。

 「Panasonic アルカリ乾電池」と「DURACELL(無印)」は長持ち性能で上位に入っていたので、よく言えば「それ相応の価格」だ。しかし「Panasonic EVOLTA NEO」に関しては、長持ちという観点から見るとコスパ的には最下位になった。この集団はブランドイメージが強い乾電池で、保存期間12年と長かったり、機器を選んだり、ロボット人形にチャレンジをさせたりと、性能が尖っているという言い方をしてもいいかも知れない。

総合順位は予測と同じ?

 コストパフォーマンスの高い電池を取り換え引っ換え使うべきなのか?長く使える電池を入れて交換頻度を減らすのか?も考えるとどのような順位になるだろう。

 以下は筆者が独自にそれぞれの性能を得点化して、総合点数順に並べ変えたランキングだ。100点を越える上位10位までの電池を使っていれば、おそらく損はないだろう。

 これまでのアルカリ乾電池選びは正しかった?間違っていた?

 一概に〇×とは言えないものの、リモコンや防災グッズなどで使う電池は、あまり強そうなデザインじゃない方がよさそうだ。迷ったら三菱かAmazonかmaxellを選んでおけばよさそうだ。