イベントレポート

東芝、4K液晶+Skylakeの12.5型2-in-1をデモ

東芝のSatellite Radius 12は、12.5型4K/フルHDの液晶ディスプレイを搭載した2-in-1デバイス

 株式会社東芝は、9月4日からドイツ共和国ベルリンで開催されているIFAに出展し、各種の新製品などを展示している。その中で最も注目されているのが、12.5型4Kディスプレイを搭載した回転ヒンジ型の2-in-1デバイス「Satellite Radius 12」だ(別記事参照)。

 CPUには第6世代Coreプロセッサ(TDP 15WのUプロセッサ)を採用し、8GBのLPDDR3がオンボード搭載、最大で512GBのSSDが採用されているほか、USB Type-Cコネクタを備えるなど、最新の機能や技術が詰め込まれている。ディスプレイは4K(3,840×2,160ドット)ないしはフルHD(1,920×1,080ドット)のどちらかとなる。

 重量は約1.32kgで、本体サイズは299.5×209×15.4mm(幅×奥行き×高さ)、バッテリ駆動時間は4Kモデルが6時間、フルHDモデルが8時間となっている。3Dカメラを液晶ディスプレイ上部に搭載しており、MicrosoftのWindows 10でサポートされている生体認証ログイン機能「Windows Hello」で活用できる。RealSenseではないWindows Hello対応カメラがノートPCに採用されたのは初めてで、こちらの点でも注目を集めている。

CPUにはTDP 15WのSkylake Uプロセッサを採用、メモリ8GB、SSD最大512GB

 Satellite Radius 12は12.5型のディスプレイを採用した2-in-1デバイスだ。COMPUTEX TAIPEI 2015ではMicrosoftの基調講演(別記事参照)で東芝のAstrea(アストレア)として紹介されたモデルの製品版で、どうやらAstreaというのは開発コードネームだったようだ。液晶のヒンジ部分が回転する形状の2-in-1デバイスで、クラムシェルモード、ビューモード、テントモード、タブレットモードなどに形状を変化させて利用できる。

 CPUはIntelの第6世代Coreプロセッサが採用されている。報道関係者向けイベント“ShowStoppers”で展示されていた個体にはCore i7-6500U(ベース2.5GHz)が搭載されていることが確認できた。メモリはLPDDR3の8GBでオンボード搭載され、SSDはSKUやCTOでの構成によって異なっているが、最大で512GBまでの対応となる。

 もちろんOSはWindows 10となり、ユニークな機能としては、ハードウェアのCortana呼び出しボタンが用意されている。キーボードにはファンクションキーのF1ボタンに、タブレットモードにした時には本体の右側面に用意されているボタンを押すと、Windows 10のCortanaが呼び出されて、音声検索ができるようになる。なお、現在の日本語版のWindows 10のようにCortanaに対応していない場合には、単にタスクバーの検索バーが開くだけとなる。

 タッチパッドはやや大型で、ボタンは独立していないクリックパッドとなるが、ボタン部分の中央に線が描かれており、それにより違和感無く利用することができるだろう。キーボードは6列配列の一般的なキーボードで、最近の流行となっている、ストロークは浅いがしっかりとした打鍵感があるキーボードで、東芝のノートブックのキーボードに慣れ親しんでいるユーザーなら違和感無く利用することができるだろう。

このように360度回転型ヒンジを備えている、クラムシェルモード、タブレットモードのほか、写真のテントモードやビューモードにも設定できる
このように180度開いて利用することもできる
キーボードの配列は一般的な6列配列キーボード、ストロークは深くないのに入力はし易いという最近のキーボードのトレンドに沿ったモノになっている
タッチパッドは、いわゆるクリックパッドだが、中央に線が切ってあってボタンが押しやすい
キーボードに用意されているCortana呼び出しのための検索ボタン。Cortanaに対応していない場合には検索バーが開く

圧倒的な解像感の4Kディスプレイをモバイルできる、ただしバッテリ駆動時間は減少

 Satellite Radius 12の最大の特徴は、12.5型を搭載した2-in-1デバイスとしては初めて4Kディスプレイを搭載していることだ。これまで、14型とか15型といったもう少し大きく、家の中で使うようなノートPCに採用された例はあったが、12.5型のディスプレイを搭載するようなウルトラポータブルな製品に採用されたのは、Satellite Radius 12が初めてとなる。

 実際には、ディスプレイは4KないしはフルHDのどちらかが、SKUあるいはCTO時の選択によって決まる。実際、現場で4Kのディスプレイを確認してみたところ、ビデオなどの解像感は圧倒的だった。特に映像や画像などを高解像度で処理する機会が多いユーザーには、この4Kの高解像度をモバイルできるというのは大きなメリットになるだろう。

 その一方で、高解像度とのトレードオフもある。それがバッテリ駆動時間だ、バッテリ駆動時間(公称値)がフルHDモデルは8時間であるのに対して、4Kモデルは6時間となっており、明確にバッテリ駆動時間が減っている。4Kの液晶ディスプレイが、ドットが増えたり、高精細になった分で開口部が小さくなっているので、その補填にバックライトを明るくする必要があると考えられるため、消費電力がフルHDに比べて高いのだろう。なお、バッテリは42Whの容量だった。

 ChromaTuneというソフトウェアがバンドルされており、液晶の色域の設定をソフトウェア的に変えられるようになっている。液晶色域というのはバックライトの調節などさまざまな要素で決まってくるが、それをソフトウェア的にある程度コントロールしようというのがこのソフトウェアの目的だ。一般的なWindows PCではsRGBが色域として利用されており、ほかにもAdobe RGBなどがよく知られている。通常は、どの色域を目指すかはPCメーカーが出荷前に液晶ディスプレイのファームウェアを調整して決定するが、このChromeTuneではそれをソフトウェア的に変更できる。

 また、アプリケーションごとに、例えばレタッチソフトを使う時にはAdobe RGBに、Webブラウザを使う時にはsRGBといったように調整できる。もちろんプロフェッショナルユースを意識したモノではなく、あくまでコンシューマユーザーがより正確な色でレタッチしたいとか、より良い色で写真を見たいなどのニーズに応えるものだと捉えた方がいいだろう。

4Kの解像度で高精細に動画や静止画が表示できる
TechnicolorのChromaTuneを利用することで、色域をダイナミックに変えることができる
アプリケーション毎に設定を変えることができる、Webブラウザはこの色域、Photoshopはこの色域という形で設定することができる

RealSenseではない3DカメラでWindows Helloに対応可能

 前面の3Dカメラで、Windows 10のWindows Helloの顔認証を利用できる。これまでWindows Helloに対応したPCでは、ほぼ例外なくIntelのRealSenseが採用されている。しかし、この東芝の製品はそうではなく、2つの赤外線と2つのカメラが用意されており、それを利用して深度方向を計測でき、Windows Helloが要求する仕様を満たすことが可能になっているという。

 東芝が独自の3Dカメラを採用した背景には、RealSenseのモジュールが、薄型ノートPCにはやや厚すぎるという課題があるからだ。RealSenseも第2世代になって少し薄くなったものの、まだ薄型ノートPCに入れるには厚い。

 このほか、ポート類としてはクラムシェル時の左側面に、ACアダプタ、HDMI、USB 3.0、USB Type-C(USB3.1対応)、音声入出力がある。クラムシェル時の右側面にUSB 3.0とSDカードスロットが用意されている。USB Type-Cはあるものの、ACアダプタのジャックは別途用意されており、USB PDによるACアダプタは用意されていないようだ。東芝の関係者もUSB PDに対応しているかどうかは分からないとのことだった。

 なお、Skylakeの内蔵PCHはUSB 3.0までの対応となっているため、USB Type-CのUSB 3.1用にASMediaのUSB 3.1コントローラが搭載されていることが確認できたほか、無線LANとBluetoothモジュールに関しては、Intelからはまだ未発表の「Intel Dual Band Wireless-AC 8260」(IEEE 802.11ac対応)が採用されていた。

前面に用意されている3Dカメラ部分。こちらを利用してWindows Helloのログインが可能になる
本体の左側面、左からACアダプタポート、HDMI、USB 3.0ポート、USB Type-C(USB 3.1対応)、音声入出力
本体の右側面。左からCortanaの検索ボタン、ボリュームスイッチ、USB 3.0、SDカード
プロセッサはCore i7-6500Uが採用されている、メモリは8GB
Wi-Fiは未発表のIntel Dual Band Wireless-AC 8260が採用されている
ASMediaのUSB 3.1コントローラが搭載されている

価格は899米ドル~、ヨーロッパでは第4四半期から販売開始、日本市場は未定

 現時点では東芝からは価格などは明らかにされていないが、9月4日の午後に行なわれたMicrosoftのニック・パーカー副社長の基調講演で、899米ドルからという価格がアナウンスされた。日本円にすれば11万~12万円程度という価格になるだろう。もちろんこの価格は一番安いモデルとなるので、フルHDのモデルの価格と考えるのが妥当だ。4Kモデルの価格がいくらになるのかは分からないが、10万円台の後半から20万円台の前半あたりと考えるのが妥当ではないだろうか(あくまで筆者の予想だ)。

 現時点ではヨーロッパでは第4四半期で発売と発表されているだけで、日本での投入は何もアナウンスされていない。しかし、こうしたハイスペックのモバイル製品は日本市場にマッチしているので、当然投入されると考えるのが自然だ。その意味でハイスペックなモバイルが欲しいと考えている人には、4Kという新しい付加価値が魅力となるのではないだろうか。

(笠原 一輝)