イベントレポート
米国と韓国、台湾が最先端の回路技術を主導
~VLSI回路シンポジウム前日レポート
2019年6月10日 18:31
半導体の研究開発コミュティにおける夏の恒例イベント、「VLSIシンポジウム」が今年(2019年)も始まった。日程は6月9日(日曜)~14日(金曜)の6日間、会場は京都の「リーガロイヤルホテル京都」である。
「VLSIシンポジウム」は、半導体技術に関する2つの国際学会で構成される。1つはデバイス・プロセス技術の研究成果に関する国際学会「Symposium on VLSI Technology」(VLSI Technology、あるいはVLSI技術シンポジウムとも呼ばれる)、もう1つは回路技術の研究成果に関する国際学会「Symposium on VLSI Circuits」(VLSI Circuits、あるいはVLSI回路シンポジウムとも呼ばれる)である。
VLSI技術シンポジウムとVLSI回路シンポジウムの日程はほぼ等しい。メインイベントである技術講演会(テクニカルカンファレンス)は6月11日(火曜)~13日(木曜)に開催される。6月9日(日曜)と6月10日(月曜)はプレイベント、6月14日(金曜)はポストイベントを予定している。参加登録は各シンポジウムで別々であるものの、参加登録者は両方のシンポジウムを自由に聴講できる(ただし登録していないシンポジウムの論文集は別料金となる)。
昨年(2018年)のVLSIシンポジウムには868名が参加
ところでVLSIシンポジウムの開催地には、日本と米国がある。西暦の奇数年が日本の京都(会場は「リーガロイヤルホテル京都」)、偶数年が米国のハワイ(会場はホノルルの「Hilton Hawaiian Village」)というのが最近の通例となっている。昨年(2018年)の同シンポジウムはハワイのホノルルで開催された。
VLSI技術シンポジウムの参加登録者は508名、VLSI回路シンポジウムの参加登録者は360名であり、合計で868名が参加したことになる。
868名という参加者数は2006年の1,053名以降、ハワイ開催としてはもっとも多い。また2012年以降、4回連続(ハワイ開催のみ)で前回に比べて参加登録者数が増加してきた。
過去の参加登録者数の推移を見てみると、「技術シンポジウム>回路シンポジウム」、「京都>ハワイ(ホノルル)」の傾向がある。投稿論文数(発表を目指して投稿された論文の数)ではこれが逆で、「回路シンポジウム>技術シンポジウム」、「ホノルル>京都」であることが多い。投稿者のグループと参加者のグループでは属性が異なることがうかがえる。
299件の投稿論文から108件の論文を採択
ここからは、VLSI回路シンポジウムの概要をご説明しよう。なおVLSI技術シンポジウムの概要はすでに現地レポートでご報告したので、興味のある方は参照されたい。
VLSI回路シンポジウムの発表講演を目指して投稿された論文(投稿論文)の数は、299件である。京都開催だけで比較すると前回(2017年)が320件、前々回(2015年)が348件、さらにその前(2013年)が392件であり、最近は減少が続いている。
発表講演に選ばれた論文(採択論文)の数は108件である。採択率は36%で、前回の京都開催とまったく同じ比率となった。
投稿論文の国・地域別件数は米国がトップ、韓国と台湾が続く
投稿論文の件数(投稿件数)を国・地域別に見ると、米国(およびカナダ)がもっとも多く、96件を数える。次いで韓国が66件と多い。韓国は2006年以降でもっとも多い投稿件数を記録した。その次が台湾である。投稿論文数は29件と、2006年以降で初めて30件を割り込んだ。
2010年代前半は台湾の投稿件数が韓国よりも多かった。しかし2010年代後半になると韓国が増加し、台湾が減少して両者の順位が逆転している。
また中国の投稿件数は25件だが、香港およびマカオの8件を含めると33件となり、台湾を上回っている。
日本の投稿件数は20件である。2006年以降ではもっとも少ない投稿件数となった。2010年代前半には60件~70件の投稿があった過去を振り返ると、いささか寂しい。
採択論文の国・地域別件数上位も米国、韓国、台湾の順番
発表講演に選ばれた論文(採択論文)の数(採択件数)を国・地域別に見ると、米国が42件でもっとも多い。これに韓国が24件、台湾が11件、中国(香港とマカオを含む)が10件で続く。日本はその次で6件の発表を予定する。
採択論文数の機関別トップは7年連続で米国ミシガン大学
採択論文の数を発表機関別に見ていくと、トップは今年もミシガン大学(University of Michigan)だった。採択件数は8件。7年連続の首位である。
2位はIntelと、韓国KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)である。採択件数は7件。Intelは前年に続いて2位につけた。KAISTは前年の実質3位(カリフォルニア大学は各校の合計とみられるのでカウントしない)から、ランクアップした。日本からはルネサスエレクトロニクスが3件で9位に食い込んだ。
技術分野別の投稿件数は「プロセッサ」がトップ、「電力変換」が続く
技術分野別の投稿件数を見ると、「プロセッサ、SoC、機械学習」が44件でもっとも多い。それから「電力変換回路」が39件、「データ変換」が31件、「センサー、イメージャー、ディプレイ」と「有線送受信」がともに30件で続く。
技術分野別の採択件数は「センサー」、「プロセッサ」、「有線通信」が多い
同じく技術分野別の採択件数を見ると、「センサー、バイオ、ヘルスケア」が21件でもっとも多い。それから「プロセッサ・アーキテクチャ」が16件、「有線通信」が14件で続く。さらに「無線通信」と「データ変換」が11件とかなり多い。
日本の採択論文を技術分野別に見ると、「プロセッサ・アーキテクチャ」と「メモリ」がそれぞれ2件を数える。そのほか「クロック・周波数生成」と「無線通信」で1件ずつの発表を予定している。
VLSI回路シンポジウムのメインイベントである技術講演会(6月11日~13日)では、4月のプレビューレポートでご報告したように、興味深い研究成果が相次いで発表される。具体的な内容は順次、現地レポートでお伝えするので、ご期待されたい。