イベントレポート

米国と韓国、台湾が最先端の回路技術を主導

~VLSI回路シンポジウム前日レポート

会場ホテル「リーガロイヤルホテル京都」の入り口横にはVLSIシンポジウムの案内パネルが設けられていた(6月9日の午後5時半ころに筆者が撮影)

 半導体の研究開発コミュティにおける夏の恒例イベント、「VLSIシンポジウム」が今年(2019年)も始まった。日程は6月9日(日曜)~14日(金曜)の6日間、会場は京都の「リーガロイヤルホテル京都」である。

 「VLSIシンポジウム」は、半導体技術に関する2つの国際学会で構成される。1つはデバイス・プロセス技術の研究成果に関する国際学会「Symposium on VLSI Technology」(VLSI Technology、あるいはVLSI技術シンポジウムとも呼ばれる)、もう1つは回路技術の研究成果に関する国際学会「Symposium on VLSI Circuits」(VLSI Circuits、あるいはVLSI回路シンポジウムとも呼ばれる)である。

 VLSI技術シンポジウムとVLSI回路シンポジウムの日程はほぼ等しい。メインイベントである技術講演会(テクニカルカンファレンス)は6月11日(火曜)~13日(木曜)に開催される。6月9日(日曜)と6月10日(月曜)はプレイベント、6月14日(金曜)はポストイベントを予定している。参加登録は各シンポジウムで別々であるものの、参加登録者は両方のシンポジウムを自由に聴講できる(ただし登録していないシンポジウムの論文集は別料金となる)。

2019年のVLSIシンポジウムの全体スケジュール。公式ウエブサイトの情報から筆者がまとめたもの

昨年(2018年)のVLSIシンポジウムには868名が参加

 ところでVLSIシンポジウムの開催地には、日本と米国がある。西暦の奇数年が日本の京都(会場は「リーガロイヤルホテル京都」)、偶数年が米国のハワイ(会場はホノルルの「Hilton Hawaiian Village」)というのが最近の通例となっている。昨年(2018年)の同シンポジウムはハワイのホノルルで開催された。

 VLSI技術シンポジウムの参加登録者は508名、VLSI回路シンポジウムの参加登録者は360名であり、合計で868名が参加したことになる。

昨年(2018年)のVLSIシンポジウムの開催実績 出典: VLSI回路シンポジウム委員会

 868名という参加者数は2006年の1,053名以降、ハワイ開催としてはもっとも多い。また2012年以降、4回連続(ハワイ開催のみ)で前回に比べて参加登録者数が増加してきた。

 過去の参加登録者数の推移を見てみると、「技術シンポジウム>回路シンポジウム」、「京都>ハワイ(ホノルル)」の傾向がある。投稿論文数(発表を目指して投稿された論文の数)ではこれが逆で、「回路シンポジウム>技術シンポジウム」、「ホノルル>京都」であることが多い。投稿者のグループと参加者のグループでは属性が異なることがうかがえる。

開催地別にみたVLSI技術シンポジウムとVLSI回路シンポジウムの参加登録者数の推移(2006~2018年) 出典: VLSI回路シンポジウム委員会

299件の投稿論文から108件の論文を採択

 ここからは、VLSI回路シンポジウムの概要をご説明しよう。なおVLSI技術シンポジウムの概要はすでに現地レポートでご報告したので、興味のある方は参照されたい

 VLSI回路シンポジウムの発表講演を目指して投稿された論文(投稿論文)の数は、299件である。京都開催だけで比較すると前回(2017年)が320件、前々回(2015年)が348件、さらにその前(2013年)が392件であり、最近は減少が続いている。

 発表講演に選ばれた論文(採択論文)の数は108件である。採択率は36%で、前回の京都開催とまったく同じ比率となった。

VLSI回路シンポジウムの投稿論文数と採択論文数の推移(2006~2009年) 出典: VLSI回路シンポジウム委員会

投稿論文の国・地域別件数は米国がトップ、韓国と台湾が続く

 投稿論文の件数(投稿件数)を国・地域別に見ると、米国(およびカナダ)がもっとも多く、96件を数える。次いで韓国が66件と多い。韓国は2006年以降でもっとも多い投稿件数を記録した。その次が台湾である。投稿論文数は29件と、2006年以降で初めて30件を割り込んだ。

 2010年代前半は台湾の投稿件数が韓国よりも多かった。しかし2010年代後半になると韓国が増加し、台湾が減少して両者の順位が逆転している。

 また中国の投稿件数は25件だが、香港およびマカオの8件を含めると33件となり、台湾を上回っている。

 日本の投稿件数は20件である。2006年以降ではもっとも少ない投稿件数となった。2010年代前半には60件~70件の投稿があった過去を振り返ると、いささか寂しい。

投稿論文数の国・地域別推移(2006~2019年) 出典: VLSI回路シンポジウム委員会

採択論文の国・地域別件数上位も米国、韓国、台湾の順番

 発表講演に選ばれた論文(採択論文)の数(採択件数)を国・地域別に見ると、米国が42件でもっとも多い。これに韓国が24件、台湾が11件、中国(香港とマカオを含む)が10件で続く。日本はその次で6件の発表を予定する。

採択論文数の国・地域別件数(左)と主な国・地域が採択論文数全体に占める割合の推移(右) 出典: VLSI回路シンポジウム委員会

採択論文数の機関別トップは7年連続で米国ミシガン大学

 採択論文の数を発表機関別に見ていくと、トップは今年もミシガン大学(University of Michigan)だった。採択件数は8件。7年連続の首位である。

 2位はIntelと、韓国KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)である。採択件数は7件。Intelは前年に続いて2位につけた。KAISTは前年の実質3位(カリフォルニア大学は各校の合計とみられるのでカウントしない)から、ランクアップした。日本からはルネサスエレクトロニクスが3件で9位に食い込んだ。

発表機関別の採択論文数ランキング(2015~2019年) 出典: VLSI回路シンポジウム委員会

技術分野別の投稿件数は「プロセッサ」がトップ、「電力変換」が続く

 技術分野別の投稿件数を見ると、「プロセッサ、SoC、機械学習」が44件でもっとも多い。それから「電力変換回路」が39件、「データ変換」が31件、「センサー、イメージャー、ディプレイ」と「有線送受信」がともに30件で続く。

技術分野別の投稿件数(2008~2019年) 出典: VLSI回路シンポジウム委員会
投稿件数に占める技術分野別の割合(2008~2019年) 出典: VLSI回路シンポジウム委員会

技術分野別の採択件数は「センサー」、「プロセッサ」、「有線通信」が多い

 同じく技術分野別の採択件数を見ると、「センサー、バイオ、ヘルスケア」が21件でもっとも多い。それから「プロセッサ・アーキテクチャ」が16件、「有線通信」が14件で続く。さらに「無線通信」と「データ変換」が11件とかなり多い。

 日本の採択論文を技術分野別に見ると、「プロセッサ・アーキテクチャ」と「メモリ」がそれぞれ2件を数える。そのほか「クロック・周波数生成」と「無線通信」で1件ずつの発表を予定している。

技術分野別の採択論文数と日本の発表予定件数の推移(2015~2019年) 出典: VLSI回路シンポジウム委員会

 VLSI回路シンポジウムのメインイベントである技術講演会(6月11日~13日)では、4月のプレビューレポートでご報告したように、興味深い研究成果が相次いで発表される。具体的な内容は順次、現地レポートでお伝えするので、ご期待されたい。

VLSI回路シンポジウム委員会が選んだハイライト論文 出典: VLSI回路シンポジウム委員会
VLSI回路シンポジウム委員会が選んだハイライト論文(その2) 出典: VLSI回路シンポジウム委員会
VLSI回路シンポジウム委員会が選んだハイライト論文(その3) 出典: VLSI回路シンポジウム委員会