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Microsoft、「Teams」に会議中食事をしても咀しゃく音を消せる機能などを搭載
2020年3月19日 22:00
Microsoftは3月19日(現地時間)にオンライン記者会見を行ない、リモートワーク/テレワークにも利用可能な同社コラボレーションツール「Teams」の機能強化を明らかにした。
MicrosoftのTeamsとは、コラボレーションツール+オンライン会議という2つの顔を持っている
新型コロナウイルスの影響は現在さまざまなところにおよんでおり、とくに大企業などではPCやスマートデバイスを利用した在宅勤務に切り替えているところが少なくない。そうしたときの社員同士での連絡手段やオンライン会議用のアプリとして、それぞれに特化したSlackやZoom、WebExなどが用いられている
一方でMicrosoftの「Teams」は、コミュニケーションツールとオンライン会議の両方の機能を併せ持ったアプリとなっている。
Slackのように、チャネルでほかのチームメンバーとチャットのようなかたちでやりとりもすることができるし、Webカメラとマイクで動画ベースのオンライン会議を開くことが可能だ。Teamsがそうした機能を両方を備えているのは、もともとTeamsがSkype for Businessというアプリの後継としてリリースされたことも影響している。
また、Teamsのもう1つの特徴は、とくに大企業などで導入が進んでいるOffice 365サブスクリプションの一部として導入されていることが挙げられる。
ビジネス向けのOffice 365サブスクリプションの多くにはTeamsの利用権が付属してくるので、とくに大企業などで導入が進んでいるという状況だ。
Microsoftの社員4万人もリモートワーク中、これからリモートワークの生産性を上げるべくTeamsを改良
Microsoft Microsoft 365担当コーポレートバイスプレジデント ジャレッド・スパタロウ氏は、「Teamsはリリースから3年が経ち、多くのユーザーを獲得してきた。現在はグローバルに3,200万人のデイリーアクティブユーザーを抱えて、1万人以上の従業員を抱える大企業では650社で採用、さらにFortune100企業のうち93社がTeamsを利用している」と述べる(記者会見後に、Microsoftよりデイリーアクティブユーザーがここ最近で大きく増え、4,400万人になったとの発表があった)。
Microsoftがオンラインで行なった記者会見では、Microsoft CEO サティヤ・ナデラ氏も登場し、「MicrosoftもCOVID-19(新型コロナウイルス)の大きな影響を受けており、約5万人の米Microsoft社員もリモートワークなどのかたちで働いている。状況は簡単ではないが、われわれの使命はリモートワークやリモート診断、リモート授業をすることになるビジネスユーザー、病院、学生などが、安全な状態のまま協調して生産性を上げられるようにすることだ」と述べた。
このなかで、ナデラ氏とスパタロウ氏はイタリアのボローニャ大学がわずか4日間で90%の授業をTeamsで実現した事例や、ペンシルバニア州の大学病院が患者の診断をビデオカンファレンスで行なった事例などを紹介した。
なお、オンラインの記者会見では触れられなかったが、Microsoftが発表したブログでは、大阪市がTeamsを利用して4月に入庁する新職員数百人のオリエンテーションや研修を、Teamsで行なっていることなどが明らかにされている。
リアルタイムノイズ抑制、挙手機能、Teamsが利用できるフィールドワーク用ウェアラブルデバイスなど
今回Microsoftはこのオンライン会見のなかで今年の末までにMicrosoftが順次導入していくTeamsの新機能を公開した。具体的には以下のような機能が提供される。
(1)ミーティング関連 : リアルタイムノイズ抑制機能、挙手機能
Teamsに新たに導入されるのは「リアルタイムノイズ抑制機能」だ。たとえば、オンライン会議の典型的な失敗例としては、参加者らが発言をしないときでもマイクをミュートにしておかず、会議がノイズ音だらけになってしまうというものがある。この場合、主催者が自分以外の全員のマイクを一斉にミュートするか、参加者に呼びかけることで回避できるが、自動的に参加者が出すノイズを減らせることができればよりスマートだ。
Teamsのノイズ抑制機能はマシンラーニングによるAIを利用して、人間の声以外のノイズを低減する。デモでは参加者がポテトチップスを食べながら参加していて、袋やチップを掴んだ音などをAIが削減してくれる様子が公開された(ポテトチップスを食べながらオンライン会議に参加するかの議論は置いておくとして……)。
また、同じくオンライン会議の課題の1つである誰がしゃべっているのかわからない状況を回避するために、学校で生徒が挙手して先生が指名するといった仕組みが導入される。これにより、会議の主催者は挙手ボタンを押した参加者の発言をスムーズに促すことができる。
(2)Teams用ウェアラブルデバイス、BookingsのTeamsへの適用
MicrosoftはSkype for Businessの時代から、専用デバイスの開発に熱心で、Teamsを利用した電話会議用デバイスをサードパーティと共同開発している。先日、日本でもレノボ・ジャパンからTeams専用端末「ThinkSmart View」が発表されるなど、じょじょに対応デバイスが増えている状況だ。
今回Microsoftが発表したのは産業機器メーカーのRealWearと共同で開発したフィールドワーカー用のウェアラブルデバイスで、ヘルメットと一体になっているスマートグラスだ(同社のHMT-1だと見られる)。ウェアラブルデバイスからTeamsにアクセスし、音声でほかの同僚とやりとりをしながらフィールドワークを行なうデモが披露された。
また、MicrosoftがOffice 365/Microsoft 365向けに提供しているクラウドベースの予約システム「Bookings」を、Teamsのオンライン会議の予約にも拡張できるようにすることも明らかにされた。クリニックや美容院といった小規模の組織向けの予約システムとして人気を集めるBookingsだが、それがTeamsに拡張されることで、Teamsを利用したオンラインミーティングの予約をより効率よく行なえるようになる。
(3)チャット機能の別のウィンドウへの拡大
Teamsを利用したチャットをより便利にするために、Teamsのチャットウィンドウを別ウィンドウとして、メイン画面から独立できるようなる。また、オフラインや低速なネットワーク環境でもチャットが行なえるようになる。
(4)米国でMicrosoft 365 Business Voiceの提供を開始
現在のTeamsでは、従来のPBXシステムの代わりとなる電話システムを導入可能だが、それができるのはエンタープライズ向けのプラン(Microsoft 365 Enterpriseなど)を契約している必要があった。米国限定にはなるが、これをMicrosoft 365 Businessなどの中小企業向けのプランにも拡大する。また、Microsoft 365 Enterpriseの契約ユーザー向けにフィールドワーカー向けのプランを追加する計画であることを明らかにした。
これらのTeamsのアップデートは今年中にじょじょに投入される計画だという。Microsoftは今後も新型コロナウイルスにより、リモートワークを強いられている働き人の生産性を上げるために、Teamsの改善を続けていくと説明している。