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MITと共同でニューロン単位での脳解析を目指す東芝メモリ
~2019年には96層QLC NANDを投入
2018年11月30日 19:38
東芝メモリ株式会社は30日、都内にて「SSDフォーラム 2018」を開催した。
同フォーラムは、東芝メモリの顧客向けイベントで、同社の製品などが紹介された。講演プログラムでは、同社 常務執行役員 SSD事業部長の横塚賢志氏が登壇し、挨拶を行なった。
同氏は、東芝メモリは2018年6月1日より新体制となり、8月1日から親会社Pangeaと合併。2019年には本社を田町に移転予定で、心機一転して事業を継続していくとアピール。NANDフラッシュを発明した企業として、メモリとSSDを事業の軸に世界をリードしていくと語った。
事業規模は、2017年の売上高で約1兆2,000億円に達し、世界の半導体業界中8位を記録。国内半導体企業としては唯一の上位10社に入り、国内電気機器業界でも16位につけ、技術オリエンテッドな企業として、国内半導体業界も牽引していきたいとした。
四日市工場には3D NAND生産棟を新設(第6棟)したほか、従来は各Fabにエンジニアが分散していたが、それらを集約する開発センターも新設。先端技術の開発を推進するとした。
また、岩手県北上市にも新製造棟建設中で、AIを活用したシステムを導入し、同社最大規模の生産施設となる見込みであるという。
大きな設備投資を行なっているが、同氏は今後の展望について、それらの投資はデータの爆発的な増加が背景にあると説明。
2017年に生成されたデータの総量は23ZB(ゼタバイト)だが、2025年には年間で160ZBにまで達し、そのうち4,560EB(エクサバイト)が保存されると予想されている。
生成データに対し、保存されているのは3割程度ということになるが、同氏は、これは記録媒体の生産量に起因する制限だと述べ、市場の成長余地は大きいとした。
また、次世代のアプリケーションやソフトウェアでは、高速なデータアクセスが必須となる世界であり、それらがフラッシュメモリの普及をさらに加速し、市場規模がより拡大していくと語った。
同社では、それらの需要に対して、3D NANDの多層化による高密度化と大容量化、SSDとしての高密度な実装、インターフェイスの高速化と処理能力向上、セキュリティに配慮した暗号化SSDと、高密度化/大容量化/高性能化/セキュリティの4つのスケールで応えていくとした。
ニューロン解析にストレージが貢献
次いで登壇したMIT Media Lab副所長の石井祐氏は、MIT Media Labと東芝メモリ、NHKのコラボで実現した、8K解像度のインタラクティブな脳の3Dビジュアライゼーションについて説明。
MIT Media Labは、米マサチューセッツ工科大学内の研究所であり、スマートシティの研究なども行なっている。
石井氏は、人類未知の領域には、宇宙や深海などを想起するが、人間の脳もその1つであると述べ、同研究所のEd Boyden氏を、その領域を解明しようと踏み込んでいる1人だと紹介した。
Boyden氏は、同氏が考案した「Expansion Microscopy(膨張顕微鏡法)」と呼ばれる手法を用いて、脳細胞の体積を8,000倍に増やし、それによって非常に複雑なニューロンのネットワークを可視化することに成功。
このとき、体積が8,000倍になった脳は解像度が8,000倍となり、データ量も8,000倍になる。そこで、10~100TBクラスの大容量データに対して、10GB/sクラスの高速アクセスが必要となり、その分野で東芝メモリが協力しているという。高解像度で3D顕微鏡画像を観察するため、NHKとも協力し、8Kサイズでのインタラクティブ3Dビジュアライゼーションも実現した。
チームは神経細胞レベルでの脳の仕組みの解明を目指しており、膨張顕微鏡法による詳細な観測だけでなく、Optogeneticsによる神経細胞の制御といった研究も行っている。
目標としては、脳まるごとのニューロンの高速全解析だが、今はマウスの海馬の断片で5TBになり、マウスの脳全体で1EB(100万TB)のデータサイズとなる。人間の脳に至っては、3ZB(30億TB)という途方もないサイズになる。
目標実現に向けて、両者は毎秒TB超の転送速度を持ったストレージ環境の構築を目指している。
石井氏は、ストレージ技術は、データセンターやクラウドなど直接連想できる領域だけでなく、科学研究分野にも貢献していると延べ、ストレージ技術の進化が、科学分野でもエポックなターニングポイントを作るのではないかとした。
会場展示も
会場には、同社の製品やソリューションも展示されており、後述するNVMe-oFを活用した8Kニューロン3Dモデルのデモも展示。
7月に発表された96層3D NAND採用のNVMe SSD「XG6」(東芝メモリ、約3GB/sのライト性能を実現した業界最速クラスのSSD)は、動作デモで公称値に迫るシーケンシャルライト2,872MB/sを記録していた。
同社によれば、96層QLC NANDも2019年に投入する予定とのことで、早期の製品化に期待したい。
NVMe SSDをローカルではなく外部の接続インターフェイスを使ってストレージとして利用する「NVMe over Fabrics(NVMe-oF)」のソリューションも展示。
NVMe-oFはインターフェイスを限定した規格ではないが、東芝メモリでは普及率の高いEthernetでの利用がもっとも将来性があると考え、数十GbpsのEthernetで接続しての利用を提案している。
現状は転送速度のボトルネックはなく、レイテンシ面でも10~20μsの増加にとどまるため、ほぼローカルストレージと変わらないパフォーマンスで動作するという。