やじうまミニレビュー

死蔵しているFireタブレットをWindowsのサブモニターとして使える「spacedesk」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
「spacedesk」を使えばFireタブレットをWindowsマシンのサブモニターとして利用できる。無料で利用できるのが大きな魅力だ

 コストパフォーマンスの高さや人気のAmazonのタブレット「Fire」シリーズだが、動画や電子書籍の利用が主なターゲットゆえ、使わない時はすっかり放置状態になっている人は多いのではないだろうか。またセールのたびに新モデルを買っていて、古いモデルを何台も死蔵している人もいるかもしれない。

 こうした場合のFireタブレットの活用方法はいくつかあるが、その1つに、Windowsのサブモニターとして活用する方法がある。今回はこれを可能にするツール「spacedesk」について、その使い方を紹介する。

Fireで利用可能なサブモニターアプリ

 「spacedesk」は、iPadやAndroidタブレットなどを、Windows PCのサブモニターとして使うためのソフトだ。WindowsとPC側とタブレット側、それぞれに専用アプリをインストールすることで、タブレットがWindowsから外部ディスプレイとして認識され、画面の複製や拡張が可能になる。

 以前紹介した「Duet Display」や「Luna Display」と異なるのは、AmazonのFireタブレット向けにも専用アプリが用意されていることだ。Android向けのapkファイルを強引にインストールするのではなく、きちんとAmazonのアプリストアで配布されているので安心だ。

 接続はワイヤレスで、同じWi-Fiネットワークに接続されている必要がある。手順としては、Window側にドライバを、Fireタブレットにビューアアプリをインストールし、両者を起動。するとお互いの存在を認識するので、ダブルクリックすることによってWindowsの画面がFireタブレットに表示される。あっという間なので拍子抜けするくらいだ。

まずはホームページ上からWindows用のドライバをダウンロード。今回はWindows 10/11用の64bit版を使用している。ちなみにmacOSには非対応だ
ドライバをインストールする。このあたりはWindows用ソフトのインストール手順と同じ
起動するとコンソールが表示される。この時点ではまだビューアアプリ導入済みのタブレットが同一ネットワーク内にないため、「CONNECTIONS」には1台も表示されない
続いてビューアアプリをダウンロード。なおFireに関してはこのページからではなく、Amazonアプリストアで「spacedesk」を検索したほうが手っ取り早い
アプリをインストールし起動。同一ネットワーク内が検索され、見つかったWindowsマシンのIPアドレスが表示される
Windows側でもタブレットが認識され、IPアドレスが表示される。タップすると接続される
FireでWindowsの画面が表示された
Windows側の表示。1台が接続中なので「Connection:1」となっている

 サブモニター化したFireタブレットは、Windowsの側からは一般的なディスプレイとして認識される。ディスプレイの情報を見る限り「spacedesk Graphics Adapter」というデバイスとして認識されており、リフレッシュレートは30Hzで固定されている。画面の複製、拡張、どちらにも対応するほか、拡大率の変更や縦横の切り替えといった操作にも対応している。

Windows側では一般的なディスプレイとして認識されている。もちろん画面の複製、拡張、どちらにも対応する
Fire HD 10 Plusは解像度1920×1200だが、初回接続時は800×600になっていた
ディスプレイの情報。「spacedesk Graphics Adapter」として認識されている(なぜかワイヤード(有線)になっているのが面白い)。リフレッシュレートは30Hz固定
相手が見つからない場合はIPアドレスを指定しての接続も可能
自動回転も設定できる
自動接続の設定もできる。着脱が多いようであれば設定しておくとよいだろう

高いパフォーマンスが特徴。過去モデルの多くにも対応

 そんな「spacedesk」は、パフォーマンスが高く、動画などの再生も快適に行なえるのが大きな特徴だ。

 本アプリに類似したソリューションとしては、以前紹介した「Duet Display」や「Luna Display」があるが、どちらも高解像度の動画は苦手で、再生中にコマ落ちが発生したり、あるいは解像度が極端に落ちてしまうといった現象が発生していた。またそもそもの問題としてFireには非対応だった。

 しかし本製品はそれらと比べても再生はスムーズで、快適に動画を閲覧できる。今回はフレームレートは30fpsまでしか試せていないが、前述の2製品が30fpsでカクついていたこと、またFireタブレット自体、iPadと比べて決して性能は高くないことを考えると、パフォーマンスは極めて優秀といっていい。

解像度についてはFire側にも設定項目がある。任意の解像度を指定したければここをチェック
画面のクオリティやフレームレートなども調整できる。初期値では30fpsになっているが、デバイスによってはこれ以外の値になるのかは不明

 さらにタッチ操作にも対応するほか、スタイラスペンも利用可能。またオーディオ出力も利用できるなど、制限事項が少ないのも魅力だ。ちなみにWindowsのブラウザ上で再生中のAmazonプライムビデオのタブをこちらに移し、再生を継続することもできたが、これはさすがにFire自身の機能を使ったほうがよいだろう。

タッチ操作の可否も設定できる
スタイラスペンについても利用の可否を選択できる
Fire側の画面右端のハンバーガーメニューからはソフトキーボードを呼び出したり、オーディオの有効無効を切り替えられる
スピーカーもきちんと認識される
画面右に記載されているNG項目を見ると、ShadowPlayによる画面の記録や、Virtual Desktopは不可能なようだ。ちなみに試した限りではWindowsのリモートデスクトップの画面は問題なく表示できた

 Fire HD 10 Plus以外のモデルではどうだろうか。現行のFire HD 8 Plus(8型)、Fire 7(7型)で試してみたが、特に支障なく動作した。Fire 7は1,024×600ドットという特殊な解像度のせいか、全画面表示ができなかったので、強いて注意すべき点があればそこだろう。

 また同時に複数台を認識させることも可能なので、2台のFireをノートPCの左右に並べてトリプルディスプレイにすることもできる。もちろんiPadやAndroidタブレットなど、Fire以外のタブレットが混在しても構わない。

Fire HD 8 Plusを接続したところ。特に問題なく使用できる
Fire 7は解像度が特殊なせいか左右に黒帯ができる
縦置きでも利用可能。Fire HD 10 PlusのほかFire HD 8 Plus、Fire 7でも問題ない(Fire 7では上下に黒帯ができる)
2台のFireをノートPCの左右に並べてトリプルディスプレイにすることも可能。試した限りではspacedesk経由2台、HDMI接続2台の合計4台まで接続できた

 古いモデルではどうだろうか。試しに10年前、2013年に発売された「Kindle Fire HD 8.9」で試してみたが、Amazonアプリストアで「spacedesk」を検索してもアプリが見つけられなかった。なにせAndroid 4ベース(FireOS 3)で更新はすでに終了しているので、これは仕方ない。

 それならばと翌2014年発売の「Fire HDX 8.9」を引っ張り出して試してみたが、Amazonアプリストアで「spacedesk」が表示され、問題なくインストールおよび表示を行なうことができた。10年近く前の、Android 5.1ベースのモデルでも利用できるのはちょっとした驚きだ。

2014年発売の「Fire HDX 8.9」でも接続できた(FireOSのバージョンは5.7.0.0)。ちなみに1つ前のトリプルディスプレイの写真で右端にあるのが本製品だ
タッチ操作にも対応している。ただしこちらはデバイスによっては反応はワンテンポ遅れることもあるようだ

完全無料で利用可能(ただし将来は一部サブスク化の可能性あり)

 以上のように実に優秀で汎用性も高いのだが、なんといっても見逃せないのが、無料で利用できることだ。

 前述のDuet DisplayやLuna Displayが、それぞれサブスクの料金がかかったり、ドングルを購入しなくてはいけなかったのとは対照的で、本当に無料でいいのか疑ってしまうレベルだ。強いて挙げれば画面が英語なのがネックだが、多くは自動設定なので、かなり凝った設定をしない限りは困ることはないだろう。

 なお無料で利用できると書いたが、ホームページ上にある今後のロードマップによると、将来的にはサブスクリプション制を導入する予定があり、現行機能の一部もサブスク化される可能性があるようだ。現時点で詳細は未定だが、こうしたことから無料のうちに試してみて、見極めをしておくことを個人的にはおすすめしたい。

「Previous」欄には、これまで接続したデバイスの履歴が表示される。今回紹介したFire以外にも、iPadやAndroidタブレットなど選択肢は豊富だ