やじうまミニレビュー

CMR方式のSeagate製18TB NAS向けHDD「ST18000NE000」を試す

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Seagate IronWolf Pro 18TBモデル「ST18000NE000」

 SeagateのNAS向けHDD「IronWolf Pro」シリーズから、最大容量モデルとなる18TBモデル「ST18000NE000」が登場した。今回、実際に実機を試用する機会を得たので、仕様や性能面を紹介する。すでに販売中で、実売価格は6万8,300円前後。

2TBプラッタ9枚で18TBを実現

 ST18000NE000は、SeagateのNAS向け3.5インチHDD「IronWolf」シリーズ上位モデルとなる「IronWolf Pro」の新モデルで、シリーズ最大容量となる18TBを実現する点が最大の特徴となっている。

 容量2TBのプラッタを9枚搭載することで18TBの容量を実現。記録方式は垂直磁気記録(CMR)方式を採用しているが、2次元磁気記録(TDMR)技術を採用することによって、プラッタあたりの容量を2TBに高め、18TBという容量を実現している。内部にはヘリウムガスを封入。回転数は7,200rpmで、平均回転待ち時間は4.16ms、最大連続データ転送速度は260MB/s。キャッシュ容量は256MB。

 IronWolf Proシリーズということで、NAS利用を想定したさまざまな最適化を実現する点は従来モデル同様だ。ファームウェアにはNASでの使用に最適化した「AgileArray」を採用。プラッタやヘッドの動作、ほかのドライブの振動などによる影響を「回転振動(VR)センサー」によって計測し、ヘッドの動作を補正して性能低下を軽減する。

 「IronWolf Health Management」機能では、対応するNASで使用する場合にHDDの異常を非常に細かく検出できるようになり、安全な利用を可能としている。加えて、3年間の「Rescueデータ・リカバリ・プラン」が付帯されており、トラブルによるデータ紛失時のデータ復元サービスを購入後無償で利用できる(サービス利用にはユーザー登録が必要)。

 また、24時間365日の連続稼働を想定して、高度な電力管理による省電力性を追求。耐久性に関しても、作業負荷制限(WRL)を300TB/年としている。作業負荷制限はSeagate独自の耐久性に関する指標で、この値が大きいほど優れた耐久性を備えるHDDであることを示す。下位モデルとなるIronWorfでは180TB/年なので、ST18000NE000は上位モデルらしい優れた耐久性を備え、NASでの利用も安心と言える。

 それ以外の仕様は、ほかのIronWolf Proシリーズとほぼ同等。接続インターフェイスはSATA 6Gbpsで、平均故障間隔(MTBF)は120万時間、24時間365日フル稼働時の年間故障率(AFR)は0.73%などとなっている。保証期間は5年。

容量18TBを実現したIronWolf Pro最大容量モデル。2TBプラッタ9枚を内蔵し18TBを実現。内部はヘリウムガスを封入している
裏面
接続インターフェイスはSATA 6Gbps

プラッタ内周でも120MB/s超の高速アクセスが可能

 では、性能をチェックしていこう。まずはパソコンに接続し、CrystalDiskMark 7.0.0hとHD Tune Pro 5.70にて速度をチェックしてみた。検証に利用したパソコンの環境は下に示したとおりだ。

テスト環境
マザーボードMSI MAG Z490 TOMAHAWK
CPUCore i5-10400
メモリーDDR4-2666 16GB
システム用ストレージSamsung SSD 840 PRO 256GB
OSWindows 10 Pro

 今回は、データサイズを1GiBと64GiBに設定した状態でテストを行なったが、いずれもシーケンシャルアクセスはリード・ライトともに265MB/s前後を記録しており、ほぼスペックどおりの速度が確認できた。ランダムアクセス速度はHDDらしい結果となっているが、HDDとしてはとくに遅いわけではなく、こちらも大きな不満は感じない。これだけの速度が発揮されるなら、NASでの利用だけでなく、パソコンの大容量データドライブとしても申し分なく活用できるだろう。

CrystalDiskMarkの結果(データサイズ1GiB)
CrystalDiskMarkの結果(データサイズ64GiB)

 続いて、HD Tune Pro 5.70を利用してプラッタの内周から外周まで全体のアクセス速度をチェックしてみた。以下がその結果だが、リードは最大262.8MB/s、最小が121.8MB/s、ライトは最大265.0MB/s、最小124.9MB/sだった。

 HDDでは転送速度がプラッタ外周部ほど高速に、内周部ほど低速となるのが通常。そのため、この結果も通常どおりだが、もっとも低速となる場合でも120MB/s以上となかなかの速度を発揮している点は大きな魅力。これなら、大容量のデータを保存している状態でもなかなかの性能が発揮されるはずで、快適な利用が可能と言える。

HD Tune Pro 5.70の結果(リード時)
HD Tune Pro 5.70の結果(ライト時)

 最後に、手持ちのNASに取りつけてアクセス速度を検証してみた。利用したNASはSynology製のGigabit Ethernet(GbE)対応2ベイNAS「DS216+II」だ。2016年に登場のNASではあるが、ST18000NE000も問題なく認識し、全容量が利用可能だった。そのうえで、検証用パソコンとGbE対応スイッチングハブを介して有線接続するとともに、NASの共有領域をパソコンでネットワークドライブとして割り当て、CrystalDiskMarkで速度を計測した。

 結果は下に示したとおりで、シーケンシャルアクセスはリード/ライトとも116MB/s前後と申し分ない速度が計測された。GbE対応NASとしては十分な速度であるとともに、先ほど紹介したHD Tune Pro 5.70で計測したもっとも低速となる速度を下回っていることから、データ保存量に関係なくこの速度が発揮されると考えられる。

 2.5GbEや10GbEなどより高速な転送に対応するNASでは、プラッタ内周部のアクセス時など、やや速度が遅くなる場面があるかもしれないが、それでも快適度はそこまで大きく低下することはないだろう。そういった意味で、NASの快適な利用を考えている場合に最適な選択肢と言えそうだ。

Synology製のGbE対応2ベイNAS「DS216+II」に取りつけて検証
DS216+IIでも問題なく全領域を認識し利用できた
CrystalDiskMarkの結果(DS216+II装着時)

 なお、動作時の音に関しては、アクセスが行なわれていない状態ではほぼ気にならないものの、アクセス時にはゴリゴリというやや大きな音が発生するようだ。NASに装着した状態でも少々耳障りに感じたので、場合によってはかなりうるさく感じる場面もありそうだ。ただ、静音性に優れる設計のパソコンケースで利用するなら、ある程度軽減できそうだ。

 発熱に関しては、30分ほど連続アクセスを行ない、実際に触ったりして確認してみたが、ほかのHDDとほぼ同等レベルと感じた。こちらも、空冷ファンでエアフローを確保しておけばとくに問題は発生しないと言える。

安全性はもちろん速度も考慮したNAS向け大容量HDDとしてお勧め

 今回実際にST18000NE000を利用してみて、18TBと一般ユーザー向け3.5インチHDDとして最大容量を実現するだけでなく、速度も申し分なく高速で、さすが最新モデルという印象を強く受けた。そのうえで、SeagateのNAS向けHDD最上位モデルということで、24時間365日常時稼働が基本のNASでの利用に最適化されており、安心して利用できるという点も非常に心強い。

 価格は、実売で6万8,300円前後とさすがに高価ではあるが、容量あたりの単価を考えるとそこまで高価というわけではない。そのため、ベイ数の少ないNASで大容量化を実現したい場合には、非常に重宝する存在となるはずだ。

 あわせて、HDDとしての性能が十分に優れていることから、NASだけでなくパソコンのデータドライブとしての利用も十分にお勧めできる。大容量データ保存時の速度低下が少ないこととあわせて、ビデオ編集など大容量データを頻繁に扱う人にもお勧めしたい。