やじうまミニレビュー
速度が大幅向上したWD製の第2世代ハイエンドSSD「Black 3D NVMe SSD」
2018年5月30日 06:00
Western Digitalは、NVMe/PCIe対応のハイエンドSSD新モデル「WD Black 3D NVMe SSD」を発売した。WDブランドとして初のNVMe/PCIe対応SSDとして2017年1月に登場した「WD Black」の後継として位置付けられており、WDのNVMe/PCIe対応SSDとしては第2世代のモデルとなる。このWD Black 3D NVMe SSDの1TBモデルを取り上げ、性能をチェックしたいと思う。
自社製コントローラと64層TLC 3D NANDの採用により性能と耐久性を向上
ではまず、WD Black 3D NVMe SSDの仕様を確認していこう。この製品は、フォームファクタがM.2 2280、接続インターフェイスがPCI Express 3.0 x4、プロトコルがNVM Express 1.3に対応するSSDだ。Western DigitalのSSDとしてハイエンドに位置付けられており、ハイエンドゲーマーやエンスージアストユーザーをターゲットとしている。
最大の特徴となるのが、自社製コントローラを採用している点だ。従来モデルのWD Black SSDではMarvell Technology Groupのコントローラを採用していたが、本製品から自社製コントローラへと切り替えられた。
コントローラの詳しい仕様は公開されていないものの、先に紹介したようにPCIe 3.0 x4やNVMe 1.3をサポート。また、NANDフラッシュメモリの一部をSLCキャッシュとして活用することでLTC NANDのアクセス性能を向上する「nCache 3.0」にも対応している。nCacheはサンディスク製SSDで採用されていた技術だが、現在サンディスクはWD傘下となっているため、Western DigitalブランドのSSDでも採用されることになった。
さらに、NANDフラッシュメモリへのアクセス状況に応じて、CPUを介さず直接NANDフラッシュメモリにアクセスする機能を用意することで、最大限のアクセス性能を維持しつつ、発熱も抑えられるという。
具体的には、大容量のシーケンシャル書き込み時に、CPUを介さず直接NANDフラッシュメモリに書き込める専用のデータラインを利用することで、CPUの負荷を抑えるとともに、nCache 3.0のキャッシュ領域の枯渇も低減できるとのことだ。
NANDフラッシュメモリには、東芝と共同開発され、四日市工場で製造されている、Western Digital最新世代の64層3D NAND(BiCS3)を採用している。セルあたりの容量が3bitのTLC仕様となる。2017年8月に登場した2.5インチSSD「WD Blue 3D SSD」と同じNANDフラッシュメモリだ。
このような特徴により、表1にまとめたようにシーケンシャルアクセス速度はリード最大3,400MB/s、ライト最大2,800MB/sに達し、ランダムアクセス速度も十分に高速となっている。従来モデルはPCIe/NVMe対応SSDながら速度がやや遅かったものの、新モデルでは競合製品とほぼ対等の速度が発揮されるようになっており、ハイエンドゲーマーやエンスージアスト向けとして大きく進化したと言える。
このほかにも、耐久性の高さも魅力の1つ。総書き込み容量は250GBモデルで200TBW、1TBモデルでは600TBWに達しており、非常に高い耐久性を備えている。合わせて保証期間も5年と長いため、長期間安心して利用できそうだ。
容量 | 250GB | 500GB | 1TB |
---|---|---|---|
フォームファクタ | M.2 2280 | ||
インターフェース | PCI Express 3.0 x4 | ||
プロトコル | NVMe 1.3 | ||
NANDフラッシュメモリ | 64層 3D NAND(BiCS3) TLC | ||
コントローラ | Western Digital自社製コントローラ | ||
DRAMキャッシュ容量 | 非公開 | ||
シーケンシャルリード(QD32/Thread1) | 3,200MB/s | 3,400MB/s | |
シーケンシャルライト(QD32/Thread1) | 1,600MB/s | 2,500MB/s | 2,800MB/s |
ランダムリード(4KB/QD32/Thread8) | 220,000IOPS | 410,000IOPS | 500,000IOPS |
ランダムライト(4KB/QD32/Thread8) | 170,000IOPS | 330,000IOPS | 400,000IOPS |
総書き込み容量 | 200TBW | 300TBW | 600TBW |
平均故障時間(MTTF) | 175万時間 | ||
保証期間 | 5年 |
【お詫びと訂正】初出時にNVMe 1.4対応としておりましたが、1.3の誤りです。お詫びして訂正させていただきます。
十分な速度が発揮され、発熱も少なく、ハイエンドSSDとして魅力あり
では、ベンチマークテストの結果を見ていこう。今回は、「CrystalDiskMark 6.0.0」と、「ATTO Disk Benchmark V3.05」の2種類のベンチマークソフトを利用した。テスト環境は以下にまとめたとおりだ。検証に利用したのは、WD Black 3D NVMe SSDの1TBモデルだ。また比較用として、Samsung製の最新SSD「970 PRO」の1TBモデルの結果も加えてある。
・テスト環境
マザーボード:ASUS PRIME Z370-A
CPU:Core i5-8400
メモリ:DDR4-2666 8GB×2
システム用ストレージ:Samsung SSD 840 PRO 256GB
OS:Windows 10 Pro 64bit
まず、CrystalDiskMarkの結果を見ると、データサイズが1GiBの場合にはシーケンシャルアクセス速度はリード、ライトともに公称値を上回る結果が得られている。同様に4Kランダムアクセス速度も申し分ない速度で、ハイエンドSSDとして十分納得できる速度が発揮されている。
データサイズを32GiBに設定した場合には、シーケンシャルライトおよびランダムライトでやや速度低下が見られるものの、この程度であればほぼ体感できるほどではなく、大きな問題はないはずだ。
比較用の970 PROと比べると、やや劣る部分もあるが、このあたりはNANDフラッシュメモリの仕様による違いが大きいと思われる。とはいえ、思ったほど大きな差はなく、この程度の差であれば、ほぼ気にならないレベルと言える。
ATTO Disk Benchmarkの結果も、CrystalDiskMarkの結果にほぼ準ずるものとなっている。細かく見ると、こちらも970 PROに比べてわずかに劣ってはいるものの、大幅な差ではない。
次に、ATTO Disk Benchmark実行時の温度変化をチェックしてみた。さきほどのベンチマークテストでは、検証時にマザーボード付属のSSDヒートシンクを装着するとともに、空冷ファンの風も当てて検証を行なっているが、温度変化のチェックではヒートシンクを装着せず、ファンの風も当てずに行なっている。温度情報は、PCのハードウェア情報を取得するツール「HWINFO64」を利用し、S.M.A.R.T.で得られるSSDの温度情報を記録することで取得した。
結果を見ると、WD Black 3D NVMe SSDは970 PROと比較して温度の上がり方が緩やかで、しかも最も高温でも81℃と、970 PROよりも20℃以上低い。この結果からも、WD Black 3D NVMe SSDが高負荷時でも比較的温度が上がりにくく、扱いやすいと言える。
この結果からも、WD Black 3D NVMe SSDはハイエンドSSDとして十分な魅力を備える製品と言っていいだろう。とにかく最強の性能を求めるなら、MLC NANDフラッシュメモリを採用する競合製品が有利だろう。それでも、WD Black 3D NVMe SSDが速度で大きく劣るわけではなく、価格や優れた耐久性などを考えると、十分な魅力を備える製品と言える。ハイエンドSSDの新たな選択肢として、お勧めしたい。
USB 3.1 Gen2対応でアクセス速度が向上した「サンディスク エクストリーム ポータブル SSD」
今回は、もう1つ製品を取り上げる。それは、サンディスクブランドのポータブルSSD新モデル「エクストリーム ポータブルSSD」だ。
従来モデルとなる「エクストリーム500 ポータブルSSD」は、写真家などが外出先で撮影した写真や動画を保存する外部ストレージとして位置付けられた製品で、高さ1.8mからの落下に耐える耐衝撃性や高速なアクセス速度を特徴としていた。新モデルも同様のコンセプトを受け継いでいるが、2mからの落下に耐える耐衝撃性へと強化されるとともに、新たにIP55準拠の防滴防塵性能も追加された(従来モデルでも「エクストリーム510 ポータブルSSD」は防滴防塵対応)。
加えてインターフェイスがUSB 3.1 Gen2準拠のUSB Type-Cとなり、転送速度が読み出し最大550MB/sに高められた。
本体形状は、正方形に近い従来モデルから長方形へと変化している。サイズはサイズは49.55×96.2×8.85mm(幅×奥行き×高さ)、重量は38.9g。デザインコンセプトは大きく変わっておらず、コーポレートカラーの赤がアクセントで使われている点も同様だ。
また、本体右上にはストラップを装着したり、カラビナに取り付けられるように大きな穴が用意されている。また、従来モデルでは接続端子がゴム製のカバーで覆われていたが、新モデルはUSB Type-Cがむき出しとなり、利便性が高められている。もちろん、端子むき出しの状態で防滴防塵対応となる。
容量は、250GB、500GB、1TB、2TBの4モデルをラインナップ。この新モデルの登場によって従来のエクストリーム500 ポータブルSSDは販売終了となり、順次新モデルへと置き換わるとのことだ。
では、簡単にアクセス速度をチェックしよう。エクストリーム ポータブルSSDの500GBモデルを利用し、ベンチマークソフトはCrystalDiskMark 6.0.0で速度をチェックした。テスト環境はWD Black 3D NVMe SSDの場合と同じで、マザーボードのUSB 3.1 Gen2ポートに接続して検証。あわせて、従来モデルとなるエクストリーム500 ポータブルSSDの250GBモデルでも同じテストを行なった。
結果を見ると、従来モデルではシーケンシャルリードが354.4MB/s、シーケンシャルライトが89.05MB/sだったのに対し、新モデルではシーケンシャルリードが445.3MB/s、シーケンシャルライトが451.6MB/sを記録した。公称速度には届いていないが、それでも従来モデルからリードは100MB/sほど速度が向上。さらにライトは345MB/sほどと、大幅な速度向上となった。
このほか、ランダムアクセス速度も高められており、アクセス性能は大きく向上。これなら、大容量の写真や動画の保存もスピーディに行えるはずで、利便性が大きく高まったと結論づけていいだろう。
デジタルカメラは撮像素子の高画素化や4K動画撮影機能の搭載などによって、撮影データは年々大容量化している。そのため、データ保存用の外付けSSDも需要も高まっている。
そういったなかでこのエクストリーム ポータブルSSDは、最大2TBの大容量を実現しつつ、従来モデルからデータ転送速度の高速化を実現することで魅力が向上。加えて、優れた耐衝撃性や防滴防塵対応など、外出時に利用するポータブルSSDとして必要な機能も網羅。ポータブルSSDの新たな基準となる製品として広くお勧めしたい。
なお、利用時には基本的にPCを介することになる。もちろんそれでもいいのだが、デジタルカメラのUSBポートに接続するだけで撮影データを直接コピーできるようになると、さらに利便性が高まるはずだ。今後デジタルカメラメーカーと協力し、そういった動作もぜひとも実現してもらいたい。