やじうまミニレビュー
光学式スイッチを採用した高コスパのゲーミングキーボード「GAMDIAS HERMES P2」
2018年5月29日 06:00
GAMDIASの「HERMES P2」は、2017年10月に発売された“光学式スイッチ”を採用したUSB接続のゲーミングキーボードだ。代理店はアイティーシー、価格はオープンプライスで、実売価格は9,000円前後となっている。今回、サンプルを1台お借りできたので、簡単に紹介したい。
キーボードのスイッチは大まかに2種類に分けられる。電気的な接点があるタイプと、電気的な接点がないタイプだ。メンブレンやパンタグラフ、メカニカル方式は前者、そして東プレ製品が代表する静電容量方式は後者に分類される。前者はスイッチの接触により、実際に電気が流れたことを検出。後者はセンサーを介して、電気信号の変化を検出する。
今回紹介するHERMES P2は、後者に属するスイッチを採用したキーボード。その仕組みはこうだ。基板上すべてのキーの下にLEDを配置して、常時発光させておく。それをキー内のプリズムでコの字型に反射させ、LED横に装着された感光センサーへと送る。キーが押下されると、プリズム内のシャッターが開き、感光センサーは暗い状態から明るくなったことを検知し、キーが入力されたことを検出する、といった具合である。
このような光学式スイッチは、電気的な接点がないため、接点の劣化による故障の心配がない。また、理論上は、電気接点の感触に左右されない独特なストローク感を作り込むことや、シャッターの開閉というシンプルな機構の寿命を追求することも可能だ。本製品は1キーあたり5,000万回打鍵の耐久性が謳われており、ゲーミングキーボードとしては十分な堅牢性が確保されているが、この機構がこの実現に大きく寄与していると言ってもいいだろう。
なお、本製品のスイッチは、いわゆる“Cherry MX 青軸”に似た、押下時にはっきりと「カチカチ」とした音が鳴り、入力したフィードバックがしっかりと得られるタクタイルフィーリングとなっている。キーキャップはCherry MX互換で、市販のものと換装が可能だ。
発光と受光が基板上で完結する機構のため、スイッチ(プリズムとシャッター)自体が完全に取り外し可能なのも本製品の特徴。国によってはCherry MX黒軸、赤軸、茶軸に相当するものも提供されているため、現時点では予定されていないが、将来的に各色のスイッチ単体が売られれば、キーによってタイピングの感触が異なるキーボードに仕上げることも可能ではある。
ちなみにスイッチを取り外した状態では、センサーが部屋の明かりを検知するため、明るい環境下で、指でセンサー部を覆いかぶされば入力できてしまう。また、本製品はRGB LEDイルミネーションのLEDとセンサー用LEDが兼用となっており、プリズムでその光を外に出しているため、LEDバックライトを暗くできても、完全にオフにすることはできないようになっている。
なお、製品出荷時のデフォルトではUSBの標準である6キーロールオーバーとなっているが、Fn+PauseキーでNキーロールオーバーに切り替えられる。Nキーロールオーバーモードでは、全キー同時押しもサポートする。ちなみにNキーロールオーバーと同時押しの違いについては、以前に掲載した「Quick Fire Pro」のレビュー記事(関連記事:USB接続で全キー同時押し対応キーボード「Quick Fire Pro」)が詳しいので、そちらを参照されたいが、本製品は、ゲームにおいて必須とも言える同時押しへの対応がなされているという認識でいい。
今回お借りしたのは日本語配列モデルとなっており、日本語が刻印されている。配列的には、英語配列のスペースバーの横に、変換/無変換/ひらがな/カタカナキーを追加したもので、それ以外は英語配列をベースとしている。やや違和感があるのはEnterキー付近で、カギカッコが縦ではなく横に配列されている点。コストダウンも関係していると思われるが、せっかくの日本語配列ならJIS配列にしてほしいところではある。
本製品で特徴的なのはフレームがない、底面がフラットでキーが浮いたようなデザイン。これはキースイッチの抜き差しを容易にするだけでなく、掃除といったメンテナンスの面でも有利である。本体と一体型のプラスチック製パームレストを備えている点も特徴。奥行き57mm程度確保しており、若干の傾斜により快適にタイピングできる。欲を言えば、取り外し式にして、もう少し柔らかい素材にするなどの工夫がほしかったところだ。
キートップはステップスカルプチャー構造が採用されており、奥のキーが“遠い”と感じないのも良い。全体的なデザインも、落ち着いたなかに力強いなにかを秘めている印象を受ける。キートップ面のフレーム素材は金属だと思われ、タイピングしたとき若干響くのが気になる。青軸の採用も含め、静かな環境で利用するのには向いていないだろう。しかし、この金属により高い剛性と重量感を実現しており、安定したタイピングが可能だった。
音量調節用のジョグダイアルを右奥に配しているのがポイントなほか、ホットキーの一部は、Fnキーとの同時押しで作用するようになっている。先述のとおり、Fn+PauseキーでNキーロールオーバーへの切り替えが行なえるわけだが、そのほかにも下表のような組み合わせが用意されている。
【表】Fnキーと同時押しで機能するキー | |
---|---|
F2 | 前のメディア |
F3 | 次のメディア |
F4 | W/A/S/Dキーを矢印キーにスワップ |
F5 | メディア再生/一時停止 |
F6 | ミュート |
F7 | 音量ダウン |
F8 | 音量アップ |
F9 | マクロ記録開始/停止 |
F11 | 全キー無効 |
Scroll Lock | 6キーロールオーバー |
Pause/Brake | Nキーロールオーバー |
1~6 | プロファイルの1~6に切り替え |
Ins | Waveライティングエフェクト |
Home | Slide inライティングエフェクト |
Del | Rotationライティングエフェクト |
End | ライティングのオン/オフと色変更 |
PgUp/PgDn | ライティングエフェクトを速く/遅く |
テンキーの8 | ライティングを暗く |
テンキーの2 | ライティングを暗く |
Windows | ゲームモード(Windows>高い剛性と重量感を実現している一方で、無効) |
スペース | マクロ1 |
B | マクロ2 |
本製品は、専用のユーティリティ「HERA」上から、マクロのアサインなどを行なえるのだが、上記からわかるとおり、マクロの記録やライティング設定の一部はユーティリティなしでも行なえる。マクロの設定などは、本体のメモリに記録されるため、ほかのPCなどに挿したさいでも再現できるようになっている。
ユニークな機能としては、W/A/S/Dと矢印キーのスワップだろうか。古いFPSゲームでは、W/A/S/Dではなく矢印キーで移動するのだが、この機能を使えば、すぐに慣れたW/A/S/Dで移動できる。逆にW/A/S/Dに慣れないうちは矢印キーで移動する、というのもアリだろう。
HERAユーティリティだが、ディレイを含めたキーマクロの記録や編集、ライティングエフェクトの設定以外に、カウントダウンタイマーによるアラームを設定可能なのが特徴。もちろんPCから音が鳴るので、PCが点いていなければ利用できないが、たとえば、MMORPGなどで倒されてから一定時間後にポップするボスの時間などをセットしておけば、わざわざ別途スマートフォンなどでタイマーを設定しておく必要がなくなるため役に立つだろう。
キー配列がJIS準拠ではない、ユーティリティが日本語化されていないなど、日本に投入する製品としては若干荒削りな印象も受けるが、独自のスイッチ構造と高い安定感、そしてなによりも1万円を切る実売価格はなかなかのもの。今後は青軸のみならず、ほかの軸の展開にも期待したいところだ。