笠原一輝のユビキタス情報局

第13世代Core HX+RTX 4090搭載ノートの性能を検証。Cinebenchは3万超えを達成

第13世代Core HXとGeForce RTX 4090 Laptop を搭載したMSI Titan GT77 HX 13VI

 第13世代Core HX、GeForce RTX 4090 Laptopを搭載した、MSIのゲーミングノートPC「MSI Titan GT77 HX 13VI」を入手した。ベンチマークプログラムなどを利用してその性能に迫っていきたい。

Eコアが16コアになり、キャッシュが増えて、クロック周波数が引き上げられた第13世代Core HX

第13世代Core HXシリーズ(写真提供:Intel)

 Intelの第13世代Coreには、S、HX、H、P、Uという5つのシリーズが用意されている。SはデスクトップPC向け、HX、H、P、Uの4つはノートPC向けとなる。各シリーズの大きな違いはTDP枠で、デスクトップPC向けのSシリーズであればTDPは最大125Wに設定されており、ターボ時にはそれが最大253Wに達する。

第13世代Coreの5つのシリーズの違い

 今回取り上げる第13世代Core HXは、そのデスクトップPC向けのSシリーズをノートPC向けに置きかえたバージョンになる。TDPは55W、ターボ時最大電力が157Wに抑えられているが、基本的な構造やダイなどはデスクトップPCのSシリーズと共通になっている。

 ただし、ノートPC向けとなるので、パッケージはFCLGA1700ではなく、はんだで基板に直付けとなるFCBGA1964となる。CPUとPCHという2チップ構成なのはSシリーズと同じで、そこは他のノートPC向けのH/P/Uとは異なっている。

 基本的にダイはデスクトップPC向けのSシリーズと同じであるため、最大構成はPコアが8個、Eコアが16個。ラインナップ構成は以下の通りだ。

【表1】第13世代Core HXのSKU構成
プロセッサーナンバーCore i9-13980HXCore i9-13950HXCore i9-13900HXCore i7-13850HXCore i7-13700HXCore i7-13650HXCore i5-13600HXCore i5-13500HXCore i5-13450HX
コア数242424201614141410
スレッド数323232282420202016
Pコア888886666
Eコア1616161288884
L3キャッシュ36MB36MB36MB30MB30MB24MB24MB24MB10MB
ターボ時最大周波数(Pコア)5.6GHz5.5GHz5.4GHz5.1GHz5GHz4.9GHz4.7GHz4.6GHz4.5GHz
ターボ時最大周波数(Eコア)4GHz4GHz3.9GHz3.8GHz3.6GHz3.6GHz3.6GHz3.5GHz3.4GHz
ベース周波数(Pコア)2.2GHz2.2GHz2.2GHz2.1GHz2.1GHz2.6GHz2.6GHz2.5GHz2.4GHz
ベース周波数(Eコア)1.6GHz1.6GHz1.6GHz1.5GHz1.5GHz1.9GHz1.9GHz1.8GHz1.8GHz
iGPU(EU数)1.65GHz1.65GHz1.65GHz1.6GHz1.55GHz1.55GHz1.5GHz1.5GHz1.45GHz
最大GPU周波数323232323216321616
DDR5560056005600560048004800480048004800
ベースTDP(PL1)555555555555555555
ターボ時最大消費電力(PL2)157157157157157157157157157
vPro対応エンタープライズエンタープライズエンタープライズ

 Pコア8個、Eコア16個という24コア構成のSKUは、Core i9-13980HX、Core i9-13950HX、Core i9-13900HXの3製品で、大きな違いはターボ時の最大クロックになる。Core i9-13980HXが最大5.6GHz、Core i9-13950HXが最大5.5GHz、Core i9-13900HXが最大5.4GHzとなる。

CPU-ZによるCore i9-13950HXの表示

 今回検証に利用する2つのシステム(MSI Titan GT77 HX 13VI、MSI Titan GT77 12UHS)に搭載されているCore i9-13950HXとCore i9-12900HXを比較すると以下のようになる。

【表2】Core i9-13950HXとCore i9-12900HX
Core i9-13950HXCore i9-12900HX
Pコア88
Eコア16※8
L2キャッシュ/Pコア2MB※1.25MB
L3キャッシュ36MB※30MB
ターボ時最大周波数5.5GHz※5GHz

 ※を付けている部分が第13世代になって強化されている部分。Eコア数が8から16コアに増やされ、Pコア1つあたりのL2キャッシュが2MBに増加され、CPU全体のL3キャッシュが30MBから36MBに増加され、プロセスルールの改良や内部配線などの見直しなどによりターボ時の最大クロック周波数が5GHzから5.5GHzに引き上げられている。

NVIDIAのGeForce RTX 40シリーズLaptops

NVIDIAのGeForce RTX 40シリーズLaptops、写真はGeForce RTX 4080 Laptop

 NVIDIAのGeForce RTX 40 シリーズLaptopsは、2022年9月に発表されたデスクトップPC向けのGeForce RTX 40シリーズのノートPC版。開発コードネームはデスクトップPCと同じ「Ada Lovelace」だが、使用されているダイは若干異なっている。

【表2】GeForce RTX 40シリーズLaptop
GeForce RTX 4090 Laptop GPUGeForce RTX 4080 Laptop GPUGeForce RTX 4070 Laptop GPUGeForce RTX 4060 Laptop GPUGeForce RTX 4050 Laptop GPU
CUDAコア97287424460830722560
ブーストクロック1455-2040MHz1350-2280MHz1230-2175MHz1470-2370MHz1650-2370MHz
ビデオメモリ16GB12GB8GB8GB6GB
メモリバス幅256ビット192ビット128ビット128ビット96ビット
メモリタイプGDDR6GDDR6GDDR6GDDR6GDDR6
GPUサブシステム電力80-150W60-150W35-115W35-115W35-115W
NVエンコーダ2x第8世代2x第8世代第8世代第8世代第8世代
NVデコーダー第5世代第5世代第5世代第5世代第5世代

 たとえば、最上位モデルのGeForce RTX 4090は、デスクトップPC向けには「AD102」というダイが利用されているが、ノートPC版のGeForce RTX 4090 Laptopは、「AD103」というデスクトップPC版で言えばGeForce RTX 4080 Ti用のダイが採用されている。これは、デスクトップPCとノートPCでは熱設計の要求が違うためで、以前からNVIDIAはそうやってデスクトップPC向けとノートPC向けで製品の切り分けをしている。

 基本的なアーキテクチャや機能はデスクトップPCのそれを踏襲しており、たとえばDLSS(Deep Learning Super Sampling)はRTX 40シリーズで強化されたバージョンとなるDLSS3に対応している。DLSSは、RTX GPUに内蔵されているAIエンジン(RTコア)を利用して高品質にアップスケーリングを行なう機能のことで、たとえば4Kの画面をレンダリングする際、2Kの画面としてレンダリングした後に4Kにアップスケーリングすることで、レンダリングエンジンへの負荷を抑えつつ、高解像度のゲームを楽しむことが可能になる。

GeForce RTX 3080 Ti LaptopでのDLSS Feature Test(3840x2160/Performance)の結果
GeForce RTX 4090 LaptopでのDLSS Feature Test(3840x2160/Performance)の結果

 DLSS3ではいくつかの新機能を追加することで、GPUの負荷を増やすことなく、フレームレートを引き上げることが可能になっている。UL Benchmarks 3DMarkに用意されているDLSS Feature Test(3840x2160/Performance)をDLSS2までに対応しているGeForce RTX 3080 Ti Laptop GPUで行なってみると、DLSSなしが18.38fpsがDLSS2有効で51.55fpsと2.8倍といったところになる。

 しかし、DLSS3に対応したGeForce RTX 4090 Laptopで行なってみると、DLSSなしが31.09fps、DLSS3有効で136.55fpsと4.3倍になる。DLSS3が性能強化につながっていることは間違いないだろう。

 今回はベンチマーク時にDLSSを有効にしていないが、こうした結果はDLSS3に対応したゲームではGeForce RTX 40シリーズが旧世代よりもさらにフレームレートを上げられること示している。

旧世代に比べてCore i9-13950HXは約43.8%向上、GeForce RTX 4090は約57%向上

MSI Titan GT77 HX 13VI

 では第13世代Core HXとGeForce RTX 40 シリーズ Laptopsを搭載したゲーミングノートPC「MSI Titan GT77 HX 13VI」の性能を見ていこう。

背面
天板のロゴは色が変わるようになっている
本体左側面のポート
本体右側面のポート

 MSI Titan GT77 HX 13VIはCPUにCore i9-13950HXを、GPUにGeForce RTX 4090 Laptopを採用しており、現時点でのゲーミングノートPCとしては最高峰と言ってよいスペックになっている。メモリは64GB(DDR5-4800/2チャンネル)、ストレージはSamsung PM9A1 2TB(MZVL22T0HBLB、PCI Express Gen 4)が2つでRAID0構成になって4TB、ディスプレイは17.3型4K(3,840×2,160ドット)/144Hzというスペックで、超弩級の製品だ。

 その比較として、従来モデルとなる「MSI Titan GT77 12UHS」(Core i9-12900HX、GeForce RTX 3080 Ti)を利用した。新モデルと旧モデルはほぼ同じ筐体なので、熱設計の容量的に大きな違いはなく、CPUとGPUの性能の違いを見るにはよい比較になると考えられる。

 なお、いずれも内蔵GPUとNVIDIAの外付GPUのハイブリッドグラフィックスが標準設定だが、性能をフルに発揮できるように外付GPUだけを利用する設定にしてベンチマークを行なった。

【表4】テスト環境
マシンメモリSSD
Apple M113インチMacBook Pro(2020)16GB256GB
Apple M213インチMacBook Pro(2022)8GB256GB
Apple M1 Max16インチMacBook Pro(2021)32GB1TB
Core i7-7600ULenovo ThinkPad X1 Yoga Gen 216GB1TB
Core i7-1065G7Surface Pro 716GB256GB
Core i7-1185G7Surface Pro 816GB256GB
Core i7-1280PLenovo ThinkPad X1 Carbon Gen 1032GB256GB
Core i7-12700KF+GeForce RTX 3060自作PC16GB1TB
Core i9-12900K+GeForce RTX 3060自作PC16GB1TB
Core i9-12900HX+GeForce RTX 3080 TiMSI Titan GT77 12UHS64GB1TB(RAID0)
Core i9-13950HX+GeForce RTX 4090 LaptopMSI Titan GT77 HX 13VI64GB2TB(RAID0)

 なお、Cinebench R23、GFXBench 5.0に関しては、過去のノートPCのCPUの結果も合わせて掲載しているので参考にしていただきたい。

【グラフ1】Cinebench R23

 筆者の連載でいつもCPUの素の性能を調べるのに使っているのがCinebench R23だ。Cinebench R23は、グラフィックスのレンダリングを、CPUを利用して行なうベンチマークで、CPUへ100%の負荷がかかるのが特徴になる。

 Core i9-13950HXはCore i9-12900HXと比較して43.8%スコア向上し、ついに3万を超えるスコアをたたき出している。薄型ノートPC向けの現時点での最高峰となるIntelのCore i7-1280PやAMDのRyzen 7 PRO 6860Zの1万強というスコアに比べ、約3倍ということになる。また、1つ前の世代のデスクトップPCの最高峰になるCore i9-12900Kの26,550というスコアも上回っている。今のデスクトップPCのCPU(Core i9-13900K)のスコアは過去記事によれば37,508となるので、第13世代と第12世代のデスクトップPCの間の性能を実現していると言える。

 もう1つ注目したいのは、シングルスレッドの性能も、第12世代Coreに比べて約11%向上している点。このあたりはL2/L3キャッシュの容量が増えたことの影響だと考えることができるだろう。

【グラフ2】GFXBench 5.0

 このGFXBench 5.0は、DirectXやOpenGL、MetalなどのAPIを利用して3Dの描画を行なう際の性能を計測するもので、CPUの性能も影響はするが小さく、主にGPUの性能がスコアに大きな影響を与えている。

 この結果を見ると、NVIDIAのGeForce RTX 4090 Laptopの性能は圧倒的だ。従来モデルの最高峰となるGeForce RTX 3080 Tiに比べて、1440pで約52%、1080pで約57%の性能向上を実現している。GPUの性能で話題になったAppleのM1 Maxと比較しても、GeForce RTX 4090 Laptopは1080pのスコアで倍という結果を出している。AppleはM2シリーズを出しているのが、M1シリーズとの性能差はあまり大きくないので、ノートPC向けの絶対性能という意味では、GeForce RTX 4090 Laptopが今は明快な王者だと考えていいだろう。

 これらの結果はDLSSが有効ではない結果になる。ゲームがDLSSや、最新のDLSS3に対応すれば、さらにスコアを伸ばすことが期待できるだろう。

 最後にMSI Titan GT77 HX 13VI(Core i9-13950HX+GeForce RTX 4090)とMSI Titan GT77 12UHS (Core i9-12900HX+GeForce RTX 3080 Ti)との各種ベンチマークでのスコアについて触れておきたい。3DMark TimespyのCPUスコアで若干下回った以外はもちろん新しい世代が上回っている。

【グラフ3】各種ベンチマークの比較(従来世代を100とした時の性能向上幅)