笠原一輝のユビキタス情報局
第13世代Core HX+RTX 4090搭載ノートの性能を検証。Cinebenchは3万超えを達成
2023年2月7日 23:00
第13世代Core HX、GeForce RTX 4090 Laptopを搭載した、MSIのゲーミングノートPC「MSI Titan GT77 HX 13VI」を入手した。ベンチマークプログラムなどを利用してその性能に迫っていきたい。
Eコアが16コアになり、キャッシュが増えて、クロック周波数が引き上げられた第13世代Core HX
Intelの第13世代Coreには、S、HX、H、P、Uという5つのシリーズが用意されている。SはデスクトップPC向け、HX、H、P、Uの4つはノートPC向けとなる。各シリーズの大きな違いはTDP枠で、デスクトップPC向けのSシリーズであればTDPは最大125Wに設定されており、ターボ時にはそれが最大253Wに達する。
今回取り上げる第13世代Core HXは、そのデスクトップPC向けのSシリーズをノートPC向けに置きかえたバージョンになる。TDPは55W、ターボ時最大電力が157Wに抑えられているが、基本的な構造やダイなどはデスクトップPCのSシリーズと共通になっている。
ただし、ノートPC向けとなるので、パッケージはFCLGA1700ではなく、はんだで基板に直付けとなるFCBGA1964となる。CPUとPCHという2チップ構成なのはSシリーズと同じで、そこは他のノートPC向けのH/P/Uとは異なっている。
基本的にダイはデスクトップPC向けのSシリーズと同じであるため、最大構成はPコアが8個、Eコアが16個。ラインナップ構成は以下の通りだ。
プロセッサーナンバー | Core i9-13980HX | Core i9-13950HX | Core i9-13900HX | Core i7-13850HX | Core i7-13700HX | Core i7-13650HX | Core i5-13600HX | Core i5-13500HX | Core i5-13450HX |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コア数 | 24 | 24 | 24 | 20 | 16 | 14 | 14 | 14 | 10 |
スレッド数 | 32 | 32 | 32 | 28 | 24 | 20 | 20 | 20 | 16 |
Pコア | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 | 6 | 6 | 6 | 6 |
Eコア | 16 | 16 | 16 | 12 | 8 | 8 | 8 | 8 | 4 |
L3キャッシュ | 36MB | 36MB | 36MB | 30MB | 30MB | 24MB | 24MB | 24MB | 10MB |
ターボ時最大周波数(Pコア) | 5.6GHz | 5.5GHz | 5.4GHz | 5.1GHz | 5GHz | 4.9GHz | 4.7GHz | 4.6GHz | 4.5GHz |
ターボ時最大周波数(Eコア) | 4GHz | 4GHz | 3.9GHz | 3.8GHz | 3.6GHz | 3.6GHz | 3.6GHz | 3.5GHz | 3.4GHz |
ベース周波数(Pコア) | 2.2GHz | 2.2GHz | 2.2GHz | 2.1GHz | 2.1GHz | 2.6GHz | 2.6GHz | 2.5GHz | 2.4GHz |
ベース周波数(Eコア) | 1.6GHz | 1.6GHz | 1.6GHz | 1.5GHz | 1.5GHz | 1.9GHz | 1.9GHz | 1.8GHz | 1.8GHz |
iGPU(EU数) | 1.65GHz | 1.65GHz | 1.65GHz | 1.6GHz | 1.55GHz | 1.55GHz | 1.5GHz | 1.5GHz | 1.45GHz |
最大GPU周波数 | 32 | 32 | 32 | 32 | 32 | 16 | 32 | 16 | 16 |
DDR5 | 5600 | 5600 | 5600 | 5600 | 4800 | 4800 | 4800 | 4800 | 4800 |
ベースTDP(PL1) | 55 | 55 | 55 | 55 | 55 | 55 | 55 | 55 | 55 |
ターボ時最大消費電力(PL2) | 157 | 157 | 157 | 157 | 157 | 157 | 157 | 157 | 157 |
vPro対応 | - | エンタープライズ | - | エンタープライズ | - | - | エンタープライズ | - | - |
Pコア8個、Eコア16個という24コア構成のSKUは、Core i9-13980HX、Core i9-13950HX、Core i9-13900HXの3製品で、大きな違いはターボ時の最大クロックになる。Core i9-13980HXが最大5.6GHz、Core i9-13950HXが最大5.5GHz、Core i9-13900HXが最大5.4GHzとなる。
今回検証に利用する2つのシステム(MSI Titan GT77 HX 13VI、MSI Titan GT77 12UHS)に搭載されているCore i9-13950HXとCore i9-12900HXを比較すると以下のようになる。
Core i9-13950HX | Core i9-12900HX | |
---|---|---|
Pコア | 8 | 8 |
Eコア | 16※ | 8 |
L2キャッシュ/Pコア | 2MB※ | 1.25MB |
L3キャッシュ | 36MB※ | 30MB |
ターボ時最大周波数 | 5.5GHz※ | 5GHz |
※を付けている部分が第13世代になって強化されている部分。Eコア数が8から16コアに増やされ、Pコア1つあたりのL2キャッシュが2MBに増加され、CPU全体のL3キャッシュが30MBから36MBに増加され、プロセスルールの改良や内部配線などの見直しなどによりターボ時の最大クロック周波数が5GHzから5.5GHzに引き上げられている。
NVIDIAのGeForce RTX 40シリーズLaptops
NVIDIAのGeForce RTX 40 シリーズLaptopsは、2022年9月に発表されたデスクトップPC向けのGeForce RTX 40シリーズのノートPC版。開発コードネームはデスクトップPCと同じ「Ada Lovelace」だが、使用されているダイは若干異なっている。
GeForce RTX 4090 Laptop GPU | GeForce RTX 4080 Laptop GPU | GeForce RTX 4070 Laptop GPU | GeForce RTX 4060 Laptop GPU | GeForce RTX 4050 Laptop GPU | |
---|---|---|---|---|---|
CUDAコア | 9728 | 7424 | 4608 | 3072 | 2560 |
ブーストクロック | 1455-2040MHz | 1350-2280MHz | 1230-2175MHz | 1470-2370MHz | 1650-2370MHz |
ビデオメモリ | 16GB | 12GB | 8GB | 8GB | 6GB |
メモリバス幅 | 256ビット | 192ビット | 128ビット | 128ビット | 96ビット |
メモリタイプ | GDDR6 | GDDR6 | GDDR6 | GDDR6 | GDDR6 |
GPUサブシステム電力 | 80-150W | 60-150W | 35-115W | 35-115W | 35-115W |
NVエンコーダ | 2x第8世代 | 2x第8世代 | 第8世代 | 第8世代 | 第8世代 |
NVデコーダー | 第5世代 | 第5世代 | 第5世代 | 第5世代 | 第5世代 |
たとえば、最上位モデルのGeForce RTX 4090は、デスクトップPC向けには「AD102」というダイが利用されているが、ノートPC版のGeForce RTX 4090 Laptopは、「AD103」というデスクトップPC版で言えばGeForce RTX 4080 Ti用のダイが採用されている。これは、デスクトップPCとノートPCでは熱設計の要求が違うためで、以前からNVIDIAはそうやってデスクトップPC向けとノートPC向けで製品の切り分けをしている。
基本的なアーキテクチャや機能はデスクトップPCのそれを踏襲しており、たとえばDLSS(Deep Learning Super Sampling)はRTX 40シリーズで強化されたバージョンとなるDLSS3に対応している。DLSSは、RTX GPUに内蔵されているAIエンジン(RTコア)を利用して高品質にアップスケーリングを行なう機能のことで、たとえば4Kの画面をレンダリングする際、2Kの画面としてレンダリングした後に4Kにアップスケーリングすることで、レンダリングエンジンへの負荷を抑えつつ、高解像度のゲームを楽しむことが可能になる。
DLSS3ではいくつかの新機能を追加することで、GPUの負荷を増やすことなく、フレームレートを引き上げることが可能になっている。UL Benchmarks 3DMarkに用意されているDLSS Feature Test(3840x2160/Performance)をDLSS2までに対応しているGeForce RTX 3080 Ti Laptop GPUで行なってみると、DLSSなしが18.38fpsがDLSS2有効で51.55fpsと2.8倍といったところになる。
しかし、DLSS3に対応したGeForce RTX 4090 Laptopで行なってみると、DLSSなしが31.09fps、DLSS3有効で136.55fpsと4.3倍になる。DLSS3が性能強化につながっていることは間違いないだろう。
今回はベンチマーク時にDLSSを有効にしていないが、こうした結果はDLSS3に対応したゲームではGeForce RTX 40シリーズが旧世代よりもさらにフレームレートを上げられること示している。
旧世代に比べてCore i9-13950HXは約43.8%向上、GeForce RTX 4090は約57%向上
では第13世代Core HXとGeForce RTX 40 シリーズ Laptopsを搭載したゲーミングノートPC「MSI Titan GT77 HX 13VI」の性能を見ていこう。
MSI Titan GT77 HX 13VIはCPUにCore i9-13950HXを、GPUにGeForce RTX 4090 Laptopを採用しており、現時点でのゲーミングノートPCとしては最高峰と言ってよいスペックになっている。メモリは64GB(DDR5-4800/2チャンネル)、ストレージはSamsung PM9A1 2TB(MZVL22T0HBLB、PCI Express Gen 4)が2つでRAID0構成になって4TB、ディスプレイは17.3型4K(3,840×2,160ドット)/144Hzというスペックで、超弩級の製品だ。
その比較として、従来モデルとなる「MSI Titan GT77 12UHS」(Core i9-12900HX、GeForce RTX 3080 Ti)を利用した。新モデルと旧モデルはほぼ同じ筐体なので、熱設計の容量的に大きな違いはなく、CPUとGPUの性能の違いを見るにはよい比較になると考えられる。
なお、いずれも内蔵GPUとNVIDIAの外付GPUのハイブリッドグラフィックスが標準設定だが、性能をフルに発揮できるように外付GPUだけを利用する設定にしてベンチマークを行なった。
マシン | メモリ | SSD | |
---|---|---|---|
Apple M1 | 13インチMacBook Pro(2020) | 16GB | 256GB |
Apple M2 | 13インチMacBook Pro(2022) | 8GB | 256GB |
Apple M1 Max | 16インチMacBook Pro(2021) | 32GB | 1TB |
Core i7-7600U | Lenovo ThinkPad X1 Yoga Gen 2 | 16GB | 1TB |
Core i7-1065G7 | Surface Pro 7 | 16GB | 256GB |
Core i7-1185G7 | Surface Pro 8 | 16GB | 256GB |
Core i7-1280P | Lenovo ThinkPad X1 Carbon Gen 10 | 32GB | 256GB |
Core i7-12700KF+GeForce RTX 3060 | 自作PC | 16GB | 1TB |
Core i9-12900K+GeForce RTX 3060 | 自作PC | 16GB | 1TB |
Core i9-12900HX+GeForce RTX 3080 Ti | MSI Titan GT77 12UHS | 64GB | 1TB(RAID0) |
Core i9-13950HX+GeForce RTX 4090 Laptop | MSI Titan GT77 HX 13VI | 64GB | 2TB(RAID0) |
なお、Cinebench R23、GFXBench 5.0に関しては、過去のノートPCのCPUの結果も合わせて掲載しているので参考にしていただきたい。
筆者の連載でいつもCPUの素の性能を調べるのに使っているのがCinebench R23だ。Cinebench R23は、グラフィックスのレンダリングを、CPUを利用して行なうベンチマークで、CPUへ100%の負荷がかかるのが特徴になる。
Core i9-13950HXはCore i9-12900HXと比較して43.8%スコア向上し、ついに3万を超えるスコアをたたき出している。薄型ノートPC向けの現時点での最高峰となるIntelのCore i7-1280PやAMDのRyzen 7 PRO 6860Zの1万強というスコアに比べ、約3倍ということになる。また、1つ前の世代のデスクトップPCの最高峰になるCore i9-12900Kの26,550というスコアも上回っている。今のデスクトップPCのCPU(Core i9-13900K)のスコアは過去記事によれば37,508となるので、第13世代と第12世代のデスクトップPCの間の性能を実現していると言える。
もう1つ注目したいのは、シングルスレッドの性能も、第12世代Coreに比べて約11%向上している点。このあたりはL2/L3キャッシュの容量が増えたことの影響だと考えることができるだろう。
このGFXBench 5.0は、DirectXやOpenGL、MetalなどのAPIを利用して3Dの描画を行なう際の性能を計測するもので、CPUの性能も影響はするが小さく、主にGPUの性能がスコアに大きな影響を与えている。
この結果を見ると、NVIDIAのGeForce RTX 4090 Laptopの性能は圧倒的だ。従来モデルの最高峰となるGeForce RTX 3080 Tiに比べて、1440pで約52%、1080pで約57%の性能向上を実現している。GPUの性能で話題になったAppleのM1 Maxと比較しても、GeForce RTX 4090 Laptopは1080pのスコアで倍という結果を出している。AppleはM2シリーズを出しているのが、M1シリーズとの性能差はあまり大きくないので、ノートPC向けの絶対性能という意味では、GeForce RTX 4090 Laptopが今は明快な王者だと考えていいだろう。
これらの結果はDLSSが有効ではない結果になる。ゲームがDLSSや、最新のDLSS3に対応すれば、さらにスコアを伸ばすことが期待できるだろう。
最後にMSI Titan GT77 HX 13VI(Core i9-13950HX+GeForce RTX 4090)とMSI Titan GT77 12UHS (Core i9-12900HX+GeForce RTX 3080 Ti)との各種ベンチマークでのスコアについて触れておきたい。3DMark TimespyのCPUスコアで若干下回った以外はもちろん新しい世代が上回っている。