笠原一輝のユビキタス情報局

MIPI CSI-2カメラでWeb会議の高画質化を実現した「ThinkPad X1 Carbon Gen 10」

ThinkPad X1 Yoga Gen 10のカメラ。左からIR LED、IRカメラ、中央がRGBカメラ、一番右は物理シャッター

 レノボ・ジャパン合同会社(以下Lenovo)は、4月12日に報道発表を行ない、同社のビジネス向けPCブランド「ThinkPad」シリーズの2022年モデルの日本投入製品を発表した(発表内容に関しては別記事参照)。

 この中でLenovoは、同社のフラッグシップ・モバイルノートPCの製品である「ThinkPad X1 Carbon/Yoga」の最新モデルとなる「ThinkPad X1 Carbon Gen 10」、「ThinkPad X1 Yoga Gen 7」を発表した。

 ThinkPad X1 Carbon Gen 10とYoga Gen 7の最大の強化ポイントは、ノートPCの前面に用意されているWebカメラの高画質化だ。Lenovoがそうした取り組みを行なうのは、テレワーク/リモートワークなどが当たり前になってきたから。多くのユーザーが、既存のノートPCに内蔵されているカメラの画質に不満をもっているからだ。

2021年モデルのThinkPad X1 Carbon/YogaはClean Sheet、大きな変更が筐体に加えられる

左がThinkPad X1 Yoga Gen 7、右がThinkPad X1 Carbon Gen 10

 ThinkPadは言わずと知れたビジネス向けのノートPCブランドで、大きく言うと、モバイル向けのXシリーズ、薄型ノートPCシリーズのTシリーズ、モバイルワークステーションのPシリーズ、メインストリーム向けのLシリーズなどのサブブランドに分けられている。

 X1シリーズはモバイル向けのXシリーズから分離して、ハイエンドユーザー向けのブランドとして位置づけられている製品で、その中でもThinkPad X1 Carbon、ThinkPad X1 Yogaはフラッグシップに位置づけられている。

 それぞれスタンダードなクラムシェル型のThinkPad X1 Carbon、2in1型でペンに対応したThinkPad X1 Yogaという特色づけになっていて、ThinkPad X1 Carbonに360度回転型ヒンジとペンの機能を追加したのがThinkPad X1 Yogaと言い換えても良く、2つの製品は内部の基板や熱設計といった基本的な設計を共有している。このため、以下、本記事は基本的にThinkPad X1 Carbonについて説明しているが、ThinkPad X1 Yogaに関しても同等だと考えていただきたい。

 以下の表1はここ3年間のThinkPad X1 Carbonの進化をスペックの観点から表にしたものだ。

【表1】ここ3年間のThinkPad X1 Carbonの進化
ThinkPad X1 Carbon Gen 10ThinkPad X1 Carbon Gen 9ThinkPad X1 Carbon Gen 8
SoC第12世代Core P28(Alder Lake)第11世代Core UP3(Tiger Lake)第10世代Core Uシリーズ(Comet Lake)
SoCの熱設計28W28W15W
メモリ容量32GB/16GB/8GB32GB/16GB/8GB16GB/8GB
DRAMLPDDR5-5200LPDDR4x-4266LPDDR3-2133
ストレージ/最大構成M.2(2280)/2TBM.2(2280)/2TBM.2(2280)/2TB
ディスプレイサイズ14型14型14型
ディスプレイアスペクト比16:1016:1016:9
WQUXGA(3,840×2,400)-
UHD(3,840×2,160)--
2.8K(2,880×1,800)/OLED--
WQHD(2,560×1,440)--
2K(2,240×1,400)--
WUXGA(1,920×1,200)-
FHD(1,920×1,080)--
オーディオコントローラRealtek ALC3306Realtek ALC3306USI 4551-513711-00
スピーカー2W×2/0.8W×2、Dolby Atmos2W×2/0.8W×2、Dolby Atmos2W×2/0.8W×2、Dolby Atmos
マイク4マイク/遠方界/Dolby Voice4マイク/遠方界/Dolby Voice4マイク/遠方界
720p(IRなし)/物理シャッター付きカメラ
720p(IRハイブリッド)/物理シャッター付きカメラ-
1080p(IRなし)/物理シャッター付きカメラ--
1080p(IRハイブリッド)/物理シャッター付きカメラ--
1080p(IR、RGB独立、MIPI接続)/物理シャッター付きカメラ--
Wi-Fi/BluetoothIntel Wi-Fi 6E AX211(Wi-Fi 6E/BT5.2)Intel Wi-Fi 6 AX201(Wi-Fi 6/BT5.2)
WAN5G/LTE(オプション)5G/LTE(オプション)LTE(オプション)
5GモデムモジュールSnapdragon X55-
4GモデムモジュールFibcom L860-GL(Intel XMM7560)Quectel EM120R-GL(Qualcomm Snapdragon X24)Quectel EM05-CE(Qualcomm)
Fibocom L850-GL(Intel XMM7360)
Fibocom L860-GL(Intel XMM7560)
NFC
バッテリ容量57Wh57Wh51Wh
バッテリ駆動時間(JEITA測定法2.0)24.9時間26時間19.8時間
vPro対応モデルによるモデルによるモデルによる
Evo認証モデルによるモデルによる-
重量1.12kg~1.133kg~1.09kg~
登場年202220212020

 LenovoのThinkPadシリーズは、2年や3年に1度(製品によってサイクルは異なっている)同社がCS(Clean Sheet)と呼んでいる、完全にリフレッシュされた新しいシャシーが導入される開発体制を取っている。ThinkPad X1 Carbon/Yogaの場合は、昨年(2021年)のモデル(ThinkPad X1 Carbon Gen 9/ThinkPad X1 Yoga Gen 6)がそのCSに相当する製品で、以下の点で大きく更新されていた。

1.SoCの熱設計の枠(TDP)が、2020年モデルの15Wから28Wに拡張される
2.ディスプレイのアスペクト比が16:9から16:10に変更され、4辺狭額縁になった
3.マイクがDolby Voiceに対応した
4.バッテリ容量が2020年モデルの51Whから57Whに約12%強化されるが重量はほとんど変わらず

 更新点は上記の記事を読んでいただきたいが、要するに対応できるSoCの熱設計に余裕を持たせているため、CPUやGPUの性能が大きく引き上げられ、バッテリ容量が増やされたためバッテリ駆動時間が延び、さらに4辺狭額縁になりディスプレイパネルのアスペクト比が16:9から16:10へと変更されることで、縦方向にディスプレイが長くなって、Webブラウザのような縦型のアプリケーションでの表示面積が増えていることが強化ポイントとなっていた。

2022年モデルは第12世代Core Pシリーズに対応

ThinkPad X1 Carbon Gen 10

 今年(2022年)のThinkPad X1 Carbon/Yogaは、ディスプレイは16:10のディスプレイが採用され、SoCの熱設計の枠は28Wと昨年モデルと同じになっている。その意味でいうと、昨年モデルの延長線上にある製品と考えられる。既に述べたとおり、通常ThinkPadの筐体などは2年や3年に1度大きく更新されるので、今年はCSの改良版になる年だと理解できるだろう。

左側にはUSB Type-C/Thunderbolt 4ポート、USB 3.2 Gen 1(A端子)、HDMIポート(HDMI 2.0b)
右側にはヘッドフォン端子、NanoSIMカードスロット、USB 3.2 Gen 1(電源常時供給ポート)、ケンジントン・ナノ・セキュリティー・スロット
指紋センサーは電源スイッチと共用
ThinkPadの特徴と言っていいTrackPointはもちろん健在で、タッチパッドも用意されており、両方同時にあるいはどちらか1つだけでも利用可能(設定ツールで設定できる)。TrackPointの物理ボタンもタッチパッド上部に用意されている

 新モデルにおける最大の強化点は、SoCが最新の第12世代Coreプロセッサ(Alder Lake)に強化されていることだ。第12世代Coreのメリットに関しては以前の記事で解説したとおりで、詳しくは以下の記事をご参照いただきたい。

 第12世代Coreの特徴は既に何度か説明しているとおり、「ハイブリッド・アーキテクチャ」というCPUを採用しており、性能を重視したP(Performance)コアと、効率を重視したE(Efficiency)コアという2つの種類のCPUが搭載されている。前者は従来のCoreプロセッサと同じCPUで、後者は並列実行時に高い効率で処理できる。簡単に言えば前者はMicrosoft Officeなどのオフィスアプリケーションなどを高速化し、後者は写真や動画編集などの処理を高効率に行なう仕組みになっている。

【表2】2022年モデルのThinkPad X1 Carbon/Yogaで選択できるSoC、現状はPシリーズのみだが、どこかの段階でUシリーズ(15W)も追加される予定
PコアEコアL3キャッシュGPUのEU数
Core i7-1280P6コア8コア24MB96
Core i7-1270P4コア8コア18MB96
Core i7-1260P4コア8コア18MB96
Core i5-1250P4コア8コア12MB80
Core i5-1240P4コア8コア12MB80

 2022年型ThinkPad X1 Carbon/Yogaで採用されている第12世代CoreはPシリーズと呼ばれるTDP 28Wの薄型ノートPC用としてはハイパフォーマンス版を搭載した製品がまず投入され、後にUシリーズ(TDP 15WのU15)が提供される予定とLenovoは説明している。PシリーズはPコアが6、Eコアが8という14コア製品および、Pコアが4、Eコアが8という12コア製品などがラインアップされており、従来の第11世代Core UP3(4コア)に比較してCPUコア数が大きく増えており、性能が向上していることが特徴となる。性能を重視したいハイエンドユーザーにとってはCPUコア数が多いSoCを選べるようになったことは素直に歓迎して良いだろう。

CPUは第12世代Core Pシリーズへ強化(写真はThinkPad X1 Yoga Gen 7に搭載されたCore i7-1260P、Pコアが4つ、Eコアが8つの12コア構成になっている

 こうしたより高性能なCPUを入れるにあたり、Lenovoは内部設計も見直しているという。レノボ・ジャパン合同会社 執行役員 塚本泰通氏は「ワークステーション用のPシリーズなどで採用していた、キーボード側に通気口を設けて空気を取り入れる仕組みを導入している。それにより熱設計の効率が向上している」とし、放熱機構にさらに工夫を加えることで、CPUがTurbo Boostモードでクロック周波数を規定よりも上げている時にできるだけ高いクロックで動作する時間を長くすることなどが可能になると説明した。

 また、細かな改良としては、2021年モデルではディスプレイの選択肢が3,840×2,400ドットとWUXGA(1,920x1,200ドット)の2つだけだったが、2022年モデルでは2.8K(2,880×1,800ドット、OLED)、2K(2,240×1,400ドット)という選択肢が追加されている。ただし、ディスプレイは標準モデルだとWUXGAなどになっており、それ以外はCTOで選択する必要がある。

2022年モデルのThinkPad X1 Carbon/YogaはWebカメラの選択肢が増え、1080pに対応

ThinkPad X1 Carbon Gen 10のカメラ部分、微妙に膨らんでいるが、気にならないレベルで閉じてしまうと従来のThinkPadのお弁当箱のイメージは確保されている

 そして、今回の2022年モデルのThinkPad X1 Carbon/Yogaで、実のところ一番強化されているのはディスプレイ上部にあるカメラだ。

 従来の2020年/2021年モデルのThinkPad X1 Carbon/Yogaには2つのカメラの選択肢があった。具体的には解像度が720p(1,280×720ドット)のIR(赤外線)カメラあり(つまりはWindows Helloの顔認証に対応)と、IRカメラなし(Windows Helloの顔認証には非対応)の2つで、どちらのカメラかはユーザーがCTOで選択ないしは、モデルにより異なるというスペックになっていた。

 今回のThinkPad X1 Yogaでは720p(IRあり)のカメラという選択肢は依然として用意されているものの、それに加えて3つの1080pのカメラが追加されている。1つ目がIRなしの1080pカメラ、2つ目がIRとRGBカメラがハイブリッド構造になっている1080pカメラ、そして3つ目がIRとRGBカメラが独立している1080pカメラだ。

【図1】ThinkPad X1 Carbon/YogaのWebカメラ、①と②が2020/2021モデルの選択肢、②~⑤が2022モデルの選択肢(筆者作成)

 従来モデルでは、CMOSイメージセンサー(レンズが捉えている画像をアナログからデジタルに変換する素子)が最大で720pまでの対応になっており、IRなしRGBのみのレンズとIRとRGBとがハイブリッド(一眼)になっている選択肢(図で言うところの①と②)しか用意されていなかった。

 それに対して2022年モデルは、図で言うところの②~⑤の4つの選択肢が用意されている。中でも⑤の最上位モデルのカメラが要注目だ。

 レノボ・ジャパンの塚本氏によれば「テレワーク/リモートワークの環境になり、Web会議が一般的になりWebカメラの画質にこだわるお客さまが増えた。そこで、CMOSセンサーの1.4μmの大きなピクセルサイズのFHDセンサーを意図的に採用し、さらにIRとRGBを独立したカメラにすることで、暗い環境や逆光だったりという環境でも写りをよくするように改良を加えた。また、コンピュータービジョンを採用したモデルでは、CMOSセンサーをMIPI CSI-2というインターフェイスでSoCのISPに直接入力するようにしている」といくつかの点で画質などが強化できるような仕組みを導入していることを説明している。

 今回Lenovoはそうした1.4μmの大きなピクセルサイズのFHDに対応したCMOSセンサーを導入するために、カメラの部分をやや膨らんだデザインにしている。4辺狭額縁のままだとCMOSセンサーなどが入りきらないための苦肉の策ではあるが、その代わりに明るい画像を取り込むことができるというメリットがある(実物で見てみると、さほど気になるレベルではない)。

後ろが従来のIRとRGBがハイブリッド(1眼)になっているカメラで、手前がIRとRGBが別のレンズになっている2眼カメラ。IRとRGBが別のカメラ

 また、顔認証で利用するIRのカメラ(赤外線LEDから赤外線を照射して顔の形などを認証に使うカメラのこと)とRGBのカメラをそれぞれ別々のカメラとしていることも効果がある。一般的なノートPCのカメラでは、IRとRGBがハイブリッドレンズ(要するに1眼)になっていることが多い。

 赤外線を利用して顔認識などを行なう場合でも、RGBと同じレンズを利用するため、どうしてもRGB映像が暗くなってしまうという課題があった。こうした問題はノートPCメーカーでも認識が進んでおり、最近のハイエンドでは顔認証用のIR専用のレンズ、RGB専用のレンズと2つのレンズ(2眼レンズ)を設けることがトレンドになっており、高画質化手法の1つになっている。

高画質化のため、第12世代Coreに内蔵されているISPにMIPI CSI-2でカメラモジュールを接続

ThinkPad X1 Carbon Gen 10でのカメラは、SoCのGPU(第12世代Coreの場合はIris Xe)に接続されているようにWindowsからは見えている。従来型カメラはUSB接続なので、デバイスマネージャーなどで確認すると違いがわかる

 そして今回の製品での一番大きな進化が、カメラモジュールとSoC(CPU)を接続するバスが、従来型のカメラではUSBであるのに対して、最上位カメラモジュール搭載モデルでは、MIPI CSI-2になっているということだ(図1の⑤)。

 従来のカメラ(今回発表された2022モデルでも②~④までのカメラはこれに該当する)は、レンズに映った映像をCMOSセンサーがアナログからデジタルに変換し、その生データ(RAWデータ)をカメラ内蔵のISP(Image Signal Processor)へと送り、ISPが生データを圧縮し、ホワイトバランスの調整やレンズ補正など、いわゆる後処理を行なう仕組みになっている。その後そうして処理したデータはUSBを通じて、SoCに送られる。

 それに対してMIPI CSI-2は、カメラモジュールとSoC(CPU)内蔵ISPが直接接続される。つまりCMOSセンサーが取り込んだ生データは、画像専用の高速なシリアルバスとなるMIPI CSI-2を経由して、SoC(CPU)内蔵のISPへと転送されるわけだ。

 Intelの第12世代Coreの場合には、CPU/GPU側のチップに「IPU6」という名前のISPが内蔵されており、MIPI CSI-2経由で送られてきたRAWデータを圧縮、スケーリング(解像度の変換)、ホワイトバランスの調整や黒レベルの調整などの後処理を行なえる。ハードウェアエンジンを利用してそれらの処理を行なうことができるため、CPUに負荷をかけることなく画像処理が可能だ。

 IPU6では、4つのCMOSセンサーを接続して、最大で4Kの映像を処理できる。また、USB接続のカメラモジュールに内蔵されているISPに比べると、圧倒的に高品質で画像処理を行なえる。さらに、CPUやGPUを利用して、ISPがサポートしていない処理を行なうことも可能であり、PCメーカーによってはプログラムの作り方次第で他のメーカーよりも高性能な動画をキャプチャできる。

 例えば、IPU6では、プロセッサ内蔵のGPUを利用してノイズリダクション処理を行なえるし、今回LenovoはこうしたMIPI CSI-2接続のカメラモジュールを選択した場合には、コンピュータービジョン(マシンラーニングベースのAI機能を利用した画像認識)を利用したセキュリティ機能を実装する予定になっている。

 なお、MIPI CSI-2接続のカメラはオプションで、注文時にCTOモデルでMIPI接続のカメラを選択した場合のみになる。実際日本向けに発表されたトップセラーモデル(21CB0000JP、21CB0001JP)は③のIRカメラの内1080pカメラになっている。このため、今回の記事で紹介しているようなMIPI CSI-2接続のカメラを選びたい場合には、レノボ・ジャパンの直販サイトなどでCTOモデルを選択する必要があるのでご注意願いたい。

スマートフォンやSurfaceシリーズなどで採用されていた手法、実機では大きな改善を確認

左が従来の720pのIR/RGBハイブリッドカメラ、右が新しいThinkPad X1/Carbon YogaのMIPI CSI-2接続のカメラ。カメラの写りの問題もあるが左側の旧カメラが全体的にぼやっとした写りになっているのに対して、右側の新しいカメラは肌色の写りも良好だったし、カリッとした映像になっていた。もちろんレンズ交換式カメラなどには敵わないが、それでも外付けUSBカメラをつながなくても良いレベル以上にはなっている。

 こうしたMIPI CSI-2接続のカメラは、スマートフォンでは一般的に採用されている手法だ。スマートフォンのカメラの画質は年々向上しているが、そうした理由の1つはスマートフォン向けのSoC(Android用ならQualcommのSnapdragonシリーズ、iOS用ならApple Aシリーズ)に内蔵されているISPが年々良くなっており、ソフトウェアもこなれてきているからだ。

 ちなみにこの実装方式をPCで採用しているのは何もLenovoだけではない。例えば、MicrosoftのSurfaceシリーズは、以前からIntelのSoC内蔵のISPを利用した実装をSurface Proシリーズなどで行なっている。実は今PC業界で最も美しい内蔵カメラを持つとして定評があるのがSurfaceシリーズであることに異論を持つ人はあまり多くないと思う(店頭で確認すればすぐわかるので、ぜひとも他のPCと比較してみていただきたい)。

 最後に実機で確認した映像の評価を紹介したい(上の写真)。左は従来の720pカメラ(IR/RGB共用の一眼)を搭載したThinkPadシリーズのWebカメラの映像で、右側が新しいThinkPad X1 Carbon Gen 10のMIPIカメラの映像になる。

 写真だと角度の問題などもあって伝わりにくいのだが、従来の720pカメラだがちょっとフォーカスがあまく、ホワイトバランスもイマイチでモヤがかかったようになってしまっており、肌色が肌色に見えないなどが一目でわかっていただけると思う。

 それに対して、右の新しいMIPI CSI-2のカメラの方はフォーカスのきっちり人間にあっていて、肌色も肌色に表示されており、パリッとした感じの映像であることが確認できた。ここまでキッチリ映っていれば、外部のカメラは必要なくなるだろうなと感じた。

 テレワーク/リモートワークでWeb会議するときに、相手の画面に映る映像がぼやっとしたような映像よりは、かっちりした映像が表示される方がビジネス上有利なのは、今更筆者が繰り返すまでもないだろう。

 筆者が今メインで使っているPCも、1080pの解像度をサポートしているが、なんだかぼやっとした映像しか撮れなくて、正直にいって電話会議する時にはレンズ交換式のカメラを接続してWeb会議をしているというのが現状だ。

 しかし、外出時にはレンズ交換式カメラを持っていない場合もあり、外出先でWeb会議を行なう際に「内蔵Webカメラがもっときれいだといいのに……」と思うことは少なくなかった。その意味で、今回ThinkPad X1 Carbon/YogaにこのMIPI CSI-2接続のカメラモジュールが採用されたことは大歓迎。ぜひともほかのメーカーも、Microsoft、Lenovoの後に続いてほしいと切に願っている。