笠原一輝のユビキタス情報局

一新した「ThinkPad X1 Carbon/ Yoga」。4辺狭額縁、電力10%減、バッテリ12%増

レノボ・ジャパンが発表したThinkPad X1 Carbon Gen 9(左)とThinkPad Yoga Gen 6(右)

 レノボ・ジャパン合同会社(以下両社合わせてLenovo)は、3月23日に報道発表を行ない、1月のCESでグローバル発表を行なったThinkPad X1シリーズの14型搭載ノートPCとなる「ThinkPad X1 Carbon Gen 9」、および「ThinkPad X1 Yoga Gen 6」の国内モデルを投入。本記事では、Lenovoの開発者にインタビューし、新製品の魅力について迫っていきたい。

 スペックや設計などを詳細に見て行くとわかるが、この新しいThinkPad X1 Carbon/Yogaは内部も外部も大幅に見直されており、製品名こそ同じだが、完全に新設計の製品と言っていい。

16:10のフルHD+ないしはUHD+のディスプレイを採用

左が従来モデルとなるThinkPad X1 Yoga Gen 5、右が新モデルとなるThinkPad X1 Yoga Gen 6、縦方向に画面が大きくなっていることがわかる。実利用環境でこの差はかなり大きい

 ThinkPad X1 CarbonおよびThinkPad X1 Yogaは、ビジネス向けノートPCのフラッグシップと位置づけられる「ThinkPad X1」ブランドのなかで、14型のディスプレイを搭載した製品となる。

 クラムシェル型ノートPCでタッチも選択できるという製品がThinkPad X1 Carbon Gen 9。いわゆる“Yoga型”と呼ばれる360度回転ヒンジを備えてデジタイザペンが使える2in1型デバイスがThinkPad X1 Yoga Gen 6となる。CarbonがGen 9で、YogaがGen 6なのは、シリーズの最初の製品が投入された時期の違いで、Yogaの方が3世代ほど遅れて投入されたためだ。Yogaのほうがヒンジデザインが異なり、ペンが使えて変形できるという点以外は、基本的に両者のスペックは同じだと考えていい(以下とくに断わりがない場合は両者のことをまとめてThinkPad X1 Carbon/Yogaと記述する)。

両製品の特徴

 ThinkPad X1 Carbon/Yogaの最大の特徴はディスプレイが一新されたこと。従来製品となるThinkPad X1 Carbon Gen 8およびThinkPad X1 Yoga Gen 5は、アスペクト比(画面の縦横の比率のこと)が16:9になるフルHD(1,920×1,080ドット)ないしは4K(3,820×2,160ドット)という2つの解像度から選べた。

 また、フルHDのモデルにはオプションで「Privacy Guard」と呼ばれる“デジタル方式のプライバシーフィルム”とでも言うべき、スイッチで左右などからのぞき見を防止する機能を選択することが可能になっていた(Privacy Guardに関しては過去記事「貼り替え不要のデジタルプライバシーフィルム「ThinkPad Privacy Guard」は今後トレンドのセキュリティ機能だ」を参照)。

狭額縁にしてディスプレイが16:10のアスペクト比になることで表示エリアが広がり、キーボードやタッチパッドの大きさも維持できる

 新しいThinkPad X1 Cabon/Yogaでは、アスペクト比は16:10に変更され、解像度もフルHD+(1,920×1,200ドット)、そしてUHD+(3,840×2,400ドット)となり、それぞれ縦方向が120ドット(FHD+)、240ドット(UHD+)増えた。Lenovoによれば、表示領域が5%ほど大きくなっているという。

 実際、従来モデルと並べて確認してみると、新しいThinkPad X1 Carbon/Yogaのディスプレイが縦方向に伸びているのが確認できる。Webブラウザのような縦長に表示するアプリケーションでは、表示できるエリアが広がる。

底面積はほとんど変わらないが、表示領域が増える4辺狭額縁のデザインを採用

4辺狭額縁を実現する工夫

 このように縦方向が伸びているのだが、底面積はほとんど変わっていない。ThinkPad X1 Carbon Gen 8のサイズは323×217mmとなっているのに対して、ThinkPad X1 Carbon Gen 9は315×221.6mmとなっている。底面積は従来モデルが70,091平方mmであるのに対して、新モデルは72,020平方mmで、約2.8%分大きくなっているだけだ。

 底面積を増やさないままにディスプレイを16:1分だけ大きくできた理由についてレノボ・ジャパン合同会社 機構開発 Display Mechanical Lead 堀内茂浩氏は「新しい製造工程を導入しディスプレイ部分の4辺狭額縁を実現し、液晶モジュールの下部にある基板部分を折り返してディスプレイの裏側に入れることに成功したからだ」と説明する。

レノボ・ジャパン合同会社 機構開発 Display Mechanical Lead 堀内茂浩氏

 順番を追って説明しよう。通常ノートPCのディスプレイは、A面(天板部)、B面(ディスプレイ部)があり、バスタブのようになっているA面カバーに、液晶(ないしはOLED)モジュールを組みつ付けて、その上からベゼルと呼ばれるディスプレイとA面のタブのギャップを埋めるためのカバーを付けて完成させる。

従来モデルの液晶、周辺にスポンジが入っており、それで液晶を支え、位置合わせを実現していた
従来モデルのAカバー、周囲にスポンジが置かれている

 ThinkPad X1 Carbonの従来モデルではこの液晶モジュールの組み付けの時に、A面カバー側に液晶モジュールとA面カバーの隙間を吸収するためのスポンジが入っており、それが液晶の支える役目と、組み付け時に必要な位置合わせを簡単にできるようになっていた。しかし、どうしてもスポンジ分だけ底面積が必要になるため、とくに左右方向の額縁が太くなってしまう。

耳をもって引っ張ると剥がせる両面テープで固定されている新しい液晶

 そこで、新しいThinkPad X1 Carbon Gen 9ではこのスポンジを廃止し、液晶モジュールとカバーの間には隙間があるかたちで、両面テープを利用して固定する。両面テープは耳だけが出ていて、引っ張ると剥がせるタイプの両面テープで、仮にサービスなどで液晶モジュールをA面カバーから外したい時には液晶を傷つけずに取り外せる。実際、今回の取材でも、あっという間に綺麗に剥がすことができるところを見ることができた。両面テープでA面カバーについていることで、スポンジが必要ないので、しっかりとした強度もでるし、安定感もある構造になっている。

新しい液晶とA面カバー

 ただ、課題になったのは工場での組み立て時にどうやって液晶モジュールを位置ズレなくセンターに置くかということだった。堀内氏によれば「新しいカメラで位置合わせをする機械を導入し、機械がモジュールをずれなくセンターに置くようにしている」ということで、そうした機器の導入がこの構造を実現できた理由だという。

基板を折り返してパネルの裏側に置くというウルトラC

A面カバーが後方に向かって緩やかに膨らんでいるが、よく見ないとわからない程度

 そして、4辺狭額縁というからには、ディスプレイ下部の狭額縁化も重要だ。「狭額縁」を謳っている製品でも、2辺狭額縁だったり、3辺狭額縁だったりする製品が多い。2辺の場合は左右が狭額縁であることを意味しており、3辺狭額縁の場合には左右に上の3カ所が狭額縁になっている。ディスプレイの上部にはカメラがくるので、それが小型モジュールになっていると3辺狭額縁、そうでなければ2辺狭額縁だ。

 では、下はどうなっているのか。液晶モジュールの下部には、システム側(具体的にはGPU)からの入力を受けて液晶モジュールを制御する制御基板が入っている。これがあるので、ディスプレイの下部を小さくすることが難しい。そこで、今回の製品ではその制御基板は180度折り曲げて、液晶モジュールの裏側、具体的には液晶モジュールとA面カバーの間に置いている。

 皆そうすればいいじゃないかと思うと思うが、実際にはそれは難しい。それをやるとA面カバーと液晶モジュールの間にそれなりのスペースが必要になり、セットが厚くなってしまうからだ。

液晶ディスプレイのモジュール、背面に基板が装着されている
左が新製品の液晶、右が従来製品のディスプレイ。新製品の方はほとんどディスプレイという構造になっている

 そのため、今回のThinkPad X1 Carbon Gen 9ではA面カバーがよく見ないとわからない程度に膨らんでいる。正直に言えば、筆者の撮影技術では撮影するのが難しいぐらいの「言われないとわからない」程度の膨らみなのだ。とくにThinkPad X1 Carbon Gen 9では色が黒になっているので、色の影響もあって見た目ではまったく気がつかない程度だ。

 しかしながら、よく考えてみればThinkPad X1 CarbonのA面カバーは、その製品ブランドのとおりカーボンだ。通常の熱プレス製法ではそうした曲面を再現するのは極めて難しい。実際、Lenovoでも事業者に協力してもらい、ドーム状にA面カバーを製造してもらったそうだが、当初は反りが酷くて、歩留まりはかなり低かったという。しかし、最終的には反りを制御する方法を発見し、量産として出荷できるレベルに歩留まりをあげることに成功したということだった。

低温ポリシリコン液晶/PSR2対応でディスプレイの消費電力を10%低下

FHD+、UHD+ともに従来モデルと比較して10%の消費電力の削減

 4辺狭額縁というハードウェア面の改良に加えて、今回の製品では液晶モジュールのベンダーと協力することで、液晶自体の消費電力を下げることに成功したという。レノボ・ジャパン合同会社 システムデザイン戦略 山崎誠仁氏によれば「フルHD+、UHD+のどちらも従来製品から約10%程度消費電力を削減することに成功した」とのことで、解像度が上がっているのに消費電力は下がり、システムが消費する消費電力は大きく下がっているという。このことは、後述するバッテリ駆動時間へのインパクトは非常に大きい。

レノボ・ジャパン合同会社 システムデザイン戦略 山崎誠仁氏

 というのも、PCのシステムがバッテリで駆動しているとき、半分近い割合を占めているのがこのディスプレイだからだ。「え、CPUじゃないの?」というびっくりされる読者もいらっしゃると思うが、じつはバッテリ駆動時の最大の電力消費デバイスはディスプレイなのだ。

 というのも、PCがバッテリで動いている時のほとんどの時間はアイドル状態にあるからだ。OSがアイドル時にあるときには、CPUはアイドルモードに入り、消費電力は少なくなる。それに対してディスプレイはずっとついているので、時間軸も加味してならしてみると、ディスプレイが最多のデバイスなのだ。それが10%減ったというのは、バッテリ駆動時間に与えるいい影響はひじょうに大きいと言える。

 では具体的に何をやっているのかと言えば、1つには液晶トランジスタの素材見直しだ。山崎氏によれば「従来の液晶では光を通すガラス面に塗布するシリコンはアモルファスシリコンだったが、今回モデルでは電子移動度100倍以上になる低温ポリシリコンに変更されている。トランジスタを小型化しながら開口率を2倍にしているため、同じ明るさなら消費電力が低くなっている」と理由の1つを挙げた。

 そしてもう1つは、Intelが提供するPSR2(Panel Self Refresh 2)に対応したことだという。PSR2は近年のIntelの内蔵GPUが対応している、ビデオメモリ(内蔵GPUの場合はメインメモリの一部)からパネルの回路に送られるデータ量を減らす技術だ。

 通常、ビデオメモリからはリフレッシュレートに応じて画像データがつねに送られている(この画像データを更新することをリフレッシュと呼んでいる)。たとえば、リフレッシュレートが60Hzであれば、1秒間に60回データがビデオメモリからパネルに送信されている計算になる。

 PSRはそうしたリフレッシュをできるだけ減らすことで、パネルやシステム全体の消費電力を下げる技術だ。今回のThinkPad X1 Carbon/Yogaで採用されたのは、たとえばウインドウで動画再生している場合には、動画以外の部分は動いていないので、その動画のウインドウだけを切り出してビデオメモリからパネルへ送信することで送信するデータを少なくすることで、消費電力を下げるアプローチになる。

 米国での発表時のスペック表にはフルHD+にも、UHD+にも「Low Power」という表現があったが、これはUHD+がIntelが規定するLow Power Display Technologyに対応したというわけではなく、あくまでLenovoの前世代と比較して低消費電力になっているという意味だという。したがって、UHD+がLPDTのフルHD並に1W程度とされる平均消費電力になったということではない。

 それを受けてか、LenovoのグローバルなPCのスペックを公開するWebサイト(PSREF)では、UHD+のディスプレイからLow Powerという表現は消えている。山崎氏によれば「FHD+とUHD+の消費電力の差は液晶ベンダーにもよるがおおむね2倍」という、従来の構図から大きくは変わっていないとのことだ。

 ただし、もともと消費電力が大きなUHD+の方も10%下がるということなので、その差は従来よりも縮まっていると言える。DCI-P3のカバー率が100%(従来モデルでは90%だった)になったことも今回の製品のUHD+の魅力で、バッテリ駆動時間はさほど気にしないというユーザーであれば、UHD+を選ぶのはありだろう。

システムボードを「魔の9度」の側面に入れるために、片側のUSB端子はコネクタで後付けできるようにする

内部設計の最適化

 山崎氏によれば、首下のシステム側の設計も完全に見直されているという。「従来モデルと比較してシステムボードやCPUファンの形状やレイアウトを見直すことで最適化を進めた、その結果システムに必要なサイズを1%削減することに成功し、さらに5G用のアンテナ4つを入れることやバッテリの大容量化に成功した」とのこと。最適な配置を実現することで、WWAN用のアンテナスペースを増やし、かつバッテリの容量を51Wから57Wへと約12%増やすことに成功しているのだ。

 ユニークなのは基板のかたちで、ファンが置かれる中央部分が切り掛かれており、左右の基板がM.2ソケットの部分で繋がれるようなかたちになっている。

バッテリの容量は57Whへと約12%増えている

 「サブ基板をできるだけ採用したくなかったが、左右にコネクタを置く場合にはどうしてもサブ基板にしなければならなくなり、信号の品質が落ちたりする可能性があった。そこで、中央をM.2の部分で繋ぐようにして1枚の基板にすることで、サブ基板を使わなくても左右にUSBなどの端子を出せるようにした」(山崎氏)とのことで、システムの基板の品質を維持しながら左右にコネクタを置ける設計にしているという。

ThinkPad X1 Carbon Gen 9の内部、裏蓋のネジを外すだけでここまでアクセスできるメンテナンス性の良さは引き継がされている
こちらはThinkPad X1 Yoga Gen 9の内部、ほぼCarbonと同じになっている

 ただ、ThinkPad X1 Carbon/Yogaはデザインを重視しているため、底面カバーとなるDカバー側面は9度ほど角度がついている。Lenovoのエンジニアからは「魔の9度」と呼ばれているそうだが、その9度の角度がついているために、組立時にそのままシステムボードを左右のコネクタを付けたまま取り付けることができない。

 そこで、クラムシェル型として使う場合に、右側面にくるUSB Type-A端子、オーディオ端子などを取り外せるような設計にし、工場での組立時にはまずシステムボードを組み付けた後で、USB-A端子などを組み付けるという工夫が加えられているという。

 率直に言えば、筆者が工場の担当者なら断固拒否したい設計だが、そこまでしてでもその「魔の9度」のデザインが重要だとLenovoのデザイナーが考えているということの裏返しだ。

通常なら考えられない外せるコネクタ、左右の側面のタブの角度である「魔の9度」をクリアするため、ほかに選択肢はなかったという。もちろん特注品だ

 CPUは開発コードネームTiger Lakeの第11世代Coreプロセッサになっている。採用されているパッケージはUP3で、Core i7-1185G7、Core i7-1165G7、Core i5-1145G7、Core i5-1135G7という4つのSKUから選べる(直販CTOモデルの場合)。

 注目は最大メモリの搭載量が32GBに強化されたことで、ハイエンドユーザーには嬉しいニュースだ。なお、メモリは基板直付けにしか対応していないLPDDR4x-4266になっているので、メモリ増設はできないので、大容量メモリが必要な場合には購入時にCTOなどで選択しておきたい。

 なお、ストレージはM.2 2280 シングルサイドでの実装になっており、PCI Express Gen 4のSSDとPCI Express Gen 3のSSDが用意されている。PCI Express Gen 4に対応したSSDはインターフェイスだけでなく、そもそもSSDの素子自体の性能も上がっていることが多いので、性能重視のユーザーであればPCI Express Gen 4に対応したSSDを選びたい。

新しいお団子ファンや後方排気を採用することで熱設計も改良

お団子ファンとワンバーヒンジの採用

 今回熱設計も見直されており、従来は大型のファン1つという構成になっていたが、今回の新製品は同社が「お団子ファン」と呼んでいる小さな2つのファンが採用されている。ファンの直径が24mmと小さくなっていることで、システム内部でスペースの効率利用が進んだ。

 山崎氏によれば「2つのファンを並べると共鳴があるのではという不安は当初はあった。しかし、設計していくなかで、ブレードの形状を調整することで、周波数帯をずらすとそういうことは防げるとわかってきた」とし、とくに2つのファンにしたからといってデメリットはなかったそうだ。

お団子ファン

 しかも、従来製品では底面から吸って右側面に排気するというデザインなっていた。そうしたノートPCは少なくないのだが、弱点は熱が直接ユーザーがマウスを使う手に直撃することだ。多くのユーザーはノートPCの右にマウスを置いて使っていることが多いので、なおさらだろう。前世代ではそうした設計になっていたのが、今回の製品ではそれを防ぐために、底面から吸って後方に排気するようになっている。

上が従来モデルのThinkPad X1 Yoga Gen 5で右側面に排気口が確認できる。下が新しいThinkPad X1 Yoga Gen 6で左側面に排気口がないことがわかる
隠されている排気口。下に見える底面のスリットから空気を吸って、中央に見える6つの排気口から排気する仕組み
ワンルーバー。なかにWi-FiとBluetoothのアンテナ(中央に見える緑のモジュール)が入っている

 ThinkPad X1 Yoga Gen 6では後面に用意されている排気口から排気される仕組みになっているが、ThinkPad X1 Carbon Gen 9はLenovoが「ワンバーヒンジ」と呼んでいるヒンジに当てて、上と下に排気するというユニークな構造を採用している。このワンバーヒンジは、液晶ディスプレイの下部についているカバーで、そのなかにはWi-Fi/Bluetoothのアンテナが入っており、そうしたスペースの有効活用とデザイン性の両立を狙っている。

 また、このワンバーヒンジを採用することで、ディスプレイを180度開くことが可能になっており、たとえば会議中にちょっとだけ相手に資料を見せたいというときなどにそのまま180度倒すという使い方が可能だ。

 このワンバーヒンジと本体側の間に、排気口が用意されており、その排気口から出た熱風はワンバーヒンジに当たり、上方と下方に分散されて送り出される。ただ、そのまま上に出すと、熱風が液晶に当たってしまい液晶の劣化を進めることになるので、そうならないように形状に工夫を加えているとのことだった。

 こうしたことを工夫した結果、5G用の新しいアンテナ(5GではMIMO用に4つのアンテナが必要になる)2つと、バッテリの容量を約12%増やすことが可能になったのだ。

そのほかの強化ポイント

 なお、このほかにも、テレワーク向けにPCとしてははじめてDolby Voiceに対応することでマイクの音声高音質化を実現したり、タッチパッドの大型化(左右方向に10mm大きくなっている)、ThinkPad X1 Nano(別記事「薄くて軽い「ThinkPad X1 Nano」、大和研の開発者は性能にも大きな自信」参照)で初めて搭載された人感検知機能などが搭載されている。

バッテリ駆動時間は大幅に伸び、真の「All Dayバッテリ」の実現へ

 こうした設計の結果、大幅なバッテリ駆動時間の向上を実現した。公式スペックによれば、ThinkPad X1 Carbon Gen 8、ThinkPad X1 Carbon Gen 9のバッテリ駆動時間は以下のようになっている。とくに記載はないが、この結果はフルHD+での結果だと考えることができる(つまり液晶パネルの消費電力が倍になるUHD+だともっと短くなる)。

ThinkPad X1 CarbonGen 8(1.09kg~)Gen 9(1.133kg~)
MobileMark 201419.5時間21.3時間
MobileMark 201813.8時間16.7時間
JEITA測定法2.019.8時間26.0時間

 ベンチマークによる違いはあるが、どのテストでも大幅にバッテリ駆動時間が延びている。57Whのバッテリにしたことで、たしかに最低重量は43g増えているが、それでもこれだけのバッテリ駆動時間の向上があると考えれば、その分は十分以上に取り返している。

 だいたい筆者の実感だとJEITA測定法 2.0ではその半分程度が実利用時間だが、10時間から13時間に伸びたと考えられる。よって、かなり「All Day」に近いバッテリ駆動時間だということができるだろう。

 このように、新しいThinkPad X1 Carbon/Yogaはプラットフォームが完全に一新され、ディスプレイも、それに伴う外観も、そして内部の設計も完全新設計となっている。そして、システム設計の見直しによりバッテリ容量が増え、ディスプレイの消費電力が減ったことでバッテリ駆動時間が大幅に伸びている。

 一都三県に出されていた緊急事態宣言も解除され、ワクチンの接種も進んでいくことで、今後はテレワーク、リモートワークが自宅で作業だけでなく、客先を訪問してミーティングという例も増えていくと可能性が高い。そうした時にはやはりバッテリ駆動時間は重要になると考えられるので、第11世代Coreプロセッサのような最新のCPUを搭載したThinkPadへのリプレースを考えているなら、このThinkPad X1 Carbon Gen 9、ThinkPad X1 Yoga Gen 6は選択肢に入れるだけの価値があると、今回の取材を通じて感じた。