福田昭のセミコン業界最前線

NVIDIAのGPU向けストレージやIBMの自律AI向けファイルシステムなどがFMS 2026を賑わす

FMS 2026のアプリ(スマートフォンおよびPC)画面。筆者の登録画面を抜粋したもの

 半導体メモリとストレージに関する8月の恒例イベント「FMS(the Future of Memory and Storage)」が2026年8月4日から6日に米国カリフォルニア州シリコンバレーの会議場「サンタクララコンベンションセンター(SCCC)」で開催される。FMSは半導体メモリとストレージに関する世界最大のイベントとして知られる。2006年の第1回以降、急速に発展し、規模を拡大してきた。

一般講演のセッション数は3日間で53本と過去最大に

 今年(2026年)のFMSでは、講演会の一般講演セッションが3日間で53本と過去最大に達した。3日間のセッション数としてはかなり多い。半導体の大規模な国際学会でも技術講演のセッション数は3日間で35本前後なので、FMSのセッション数は学会を超えるともいえよう。

FMS 2026の基本スケジュール。公式Webサイトから筆者が作成したもの

 もちろん、講演セッション数、言い換えると講演発表数が多くなる理由は存在する。たとえば国際学会と違い、FMSの一般講演は応募後の選考がほぼないとみられる。また講演スライド(パワーポイント形式のファイル)は当然ながら必要であるものの、論文を執筆する必要がない。講演スライド自体もゼロから作成する必要はなく、過去に著者が使用した講演スライドを流用することも可能だ。つまり、国際学会での論文発表講演に比べると、発表に要する作業負荷が軽い。

一般講演セッションの概要を日付順に紹介

 重要なのが、制約が低い一般講演は「玉石混交」かつ「多種多様」であり、独特の輝きを放っていることだ。講演題目とその要約を1件ずつ眺めていくだけでも、飽きることがない。技術的な課題とその対策技術、市場分析と予測、技術ベンチャーによる独自技術の訴求、業界団体による標準規格(メモリ、ストレージ、インターフェイス)の将来像、メモリとストレージの将来像、データセキュリティ、持続可能性(サステナビリティ)など、多岐にわたる。

 本コラムの前回では、FMS 2026の基本スケジュールと基調講演の一覧、一般講演のセッション一覧などをご説明した。今回からは、一般講演セッションの概要を時間順(および日付順)にご紹介する。始めは8月4日の一般講演セッションを取り上げる。

8月4日主なスケジュール。FMS 2026の公式ページ(FMS At A Glance)をGoogle翻訳によって日本語化したもの。一般講演セッションは午前中のみとなる。なお「ネットワーキング」は展示会を意味する

 ご紹介する概要は、講演タイトルと講演者(所属組織)のセッション別一覧、それからパネル討論会の場合はパネリストの所属組織一覧である。また非常に興味深いセッションの発表講演には、補足となる説明を追加した。

8月4日午前は8本のフルセッションと2本のハーフセッションを実施

 本コラムの前回でもご紹介したように、8月4日午前の一般講演セッションは午前8時30分から始まる前半と、午前9時45分から始まる後半に分かれている。大半のセッションは前半と後半で連続している。このようなセッションを「フルセッション」と呼ぶことにしよう。一部には、8時30分からの前半だけ、9時45分からの後半だけ、というセッションがある。このようなセッションは「ハーフセッション」と呼ぶことにする。

 全体としては9本の講演セッションが同時並列に進行する。内訳はフルセッションが8本、ハーフセッションが2本(前半1本、後半1本)である。ハーフセッションは前半と後半で同じ会議室(ボールルーム)を使う。

8月4日午前(前半)の一般講演セッション(午前8時30分開始)と会議室。公式Webサイトから筆者が作成したもの
8月4日午前(後半)の一般講演セッション(午前9時45分開始)と会議室。公式Webサイトから筆者が作成したもの

KVキャッシュの大容量化と階層化による課題を解決へ

 それでは講演分野別に、発表予定の講演題目を説明していこう。始めは「AI & ML Applications(人工知能と機械学習)」分野のセッションである。フルセッションであり、全体では8件の講演を予定する。

「AI & ML Applications(人工知能と機械学習)」分野の講演題目一覧。公式Webサイトと公式アプリから筆者が作成したもの

 前半の4件はすべて、KVキャッシュ(Key-Value Cache)に関する発表である。大規模言語モデル(LLM)を扱う生成AIの高速化には、KVキャッシュが欠かせない。しかし最近はKVキャッシュが必要とする記憶容量が巨大化しており、HBMモジュールに収容しきれない状況が現れてきた。

 始めにSandiskが「Hierarchical Span Indexing for Generalized KV Cache Reuse in Edge LLM Serving(エッジの大規模言語モデルサービスにおける、生成KVキャッシュの再利用に向けた階層構成のスパンインデックス作成)」と題して講演する。

 続いてMicron Technologyが、「Optimizing KV Cache Offload for Scalable, Cost-Efficient AI Inference(拡張可能でコスト効率の高いAI推論に向けたKVキャッシュオフロードの最適化)」と題して推論処理におけるKVキャッシュの扱いを論じる。

 それからSupermicro Computerが「Reinventing Storage for Long-Context LLMs: Tiered KV Cache from HBM to NVMe(長いコンテキストの大規模言語モデルに向けたストレージの再構築: HBMからNVMeまでを階層化したKVキャッシュ)」と題して階層構成のKVキャッシュ設計を提唱する。

 続く前半の最後ではPenguin Solutionsが「Unlocking AI Performance with CXL-Powered KV Cache(CXLのKVキャッシュがAI処理性能の制約を解消)」と題して講演する。

GPU直接アクセスSSDとストレージサーバーの将来像

 休憩を挟んで9時45分には「AI & ML Applications(人工知能と機械学習)」分野の後半セッションが始まる。始めにKIOXIA Americaが、「GPU Direct Access to Storage SCADA(SCADAストレージに対するGPUの直接アクセス)」と題して講演する。GPUによるSSDへの直接アクセスを進化させた「SCADA(Scaled Accelerated Data Access)」が、SSDの入出力速度(ランダム読み書き速度)を著しく向上させることを示す。

 次にSK hynixが、「Why, What, How HBF?(なぜHBFなのか、HBFとは何か、HBFをどのように扱うか)」と題して広帯域フラッシュメモリモジュール「HBF(High Bandwidth Flash)」を解説する。

 続いてEmBestor Technologyが「Why Industrial AI Will Not Follow the Hyperscale Playbook -- and the Role of the Memory & Storage(産業用AIはなぜハイパースケールの定石に合わないのか、メモリとストレージの役割)」と題して産業用AIシステムに求められる仕様を述べる。

 最後にNVIDIAが「Storage ecosystem for emerging AI applications(次世代AI向けストレージエコシステム)」と題してストレージサーバーのあるべき姿を論じる。

自動運転とAIロボットの安全を担保するストレージ設計

 再び午前8時30分に時間を戻す。ここからは「Automotive Applications(自動車)」分野の講演題目をご紹介しよう。ハーフセッションなので発表件数は3件と少ない。

「Automotive Applications(自動車)」分野の講演題目一覧。公式Webサイトと公式アプリから筆者が作成したもの

 始めにSilicon Motionが「How Physical AI Is Reshaping Automotive Storage Architectures(物理AIは自動車ストレージの構造をどのようにして整えるか)」と題して講演する。

 続いてSamsung Electronicsが「Designing Functional Safety and Cybersecurity for Flash Storage in AV and Robotics with AI Agent(エージェントAI(自律型AI)を利用する自動運転車両(AV)とロボットのフラッシュストレージに向けた、機能安全とサイバーセキュリティの設計)」と題する発表を実施する。

 最後にSilicon Motionが「Unbricking the Unreachable: Firmware Recovery for Inaccessible Storage Devices(届かない煉瓦を取り除く: アクセス不可能なストレージデバイスのファームウェア復旧)」と題し、物理的にアクセスできないストレージの障害をファームウェアによって復旧させる手法を提案する。

誤り訂正能力と512Byte入出力速度を両立させるSSDアーキテクチャ

 同じ8時30分には、「SSD Technology(SSD技術)」分野の講演セッションが並行して始まる。フルセッションである。前半に5件、後半に4件と数多くの発表を予定する。

「SSD Technology(SSD技術)」分野の講演題目一覧。公式Webサイトと公式アプリから筆者が作成したもの

 前半では最初にMicrochip Technologyが「SSD Error Correction Optimization for AI workloads(AI処理の作業に向けたSSD誤り訂正の最適化)」と題して講演する。読み出し遅延を短くしつつ、誤り訂正能力を維持する、AI処理向けのデータブロック構造を提案する。

 続いてPhison Technologyが「Enabling Ultra-High-IOPS Storage-Next SSDs with AI-Enhanced LDPC(極めて高い入出力速度を実現する「Storage-Next」SSD、AI支援のLDPC誤り訂正機能を搭載)」と題してNVIDIAの「Storage-Next」アーキテクチャに準拠する超高速入出力SSDに必要な誤り訂正技術を説明する。ニューラルネットワーク(NN)を活用したLDPC誤り訂正の強化が有効だとする。

 それからSandiskが「Enhancing Enterprise Drive Reliability by Joint LDPC & XOR Decoding(LDPC復号とXOR復号の統合によるエンタープライズ向けドライブの信頼性強化)」のタイトルで冗長度を上げることなく訂正可能なビット誤り率の高さを最大で2.5倍に拡大する手法を報告する。

 続いてSilicon Motionが「Fine Grain ECC Chunk for Fine Grain (512B+) IOs(512Byte単位の入出力に向けたECC処理単位の微粒化)」と題して「512Byte単位でのランダム読み出し速度1億IOPS」をSSDで達成するための課題を述べる。

 最後にMacronix Internationalが「A Dual-tier SSD Controller Architecture for Latency-sensitive Workloads(遅延の影響が大きな負荷に向けたデュアル階層化SSDコントローラのアーキテクチャ)」と題し、同じドライブ内部で容量と性能の階層(2階層)をユーザーが定義可能なコントローラを報告する。

PCIe準拠SSDはGen7世代で性能の制約要因が大きく変化

 休憩を挟んで9時45分には「SSD Technology(SSD技術)」分野の講演セッション後半が始まる。

 最初にScaleFluxが「When AI Meets NAND: Rethinking SSD Controller Design for Heterogeneous Inference State(AIがNANDと出会うとき: 異なる推論処理が混在するときのSSDコントローラ設計を考え直す)」と題して講演する。

 AI推論では、異なるデータと異なる種類の処理を複数かつ並行して扱う。このようなAI推論に適したSSDコントローラのあるべき姿を述べる。続いてMarvell Semiconductorが「Data Storage Innovations for Scalable AI Infrastructure(拡張可能なAIインフラに向けたデータストレージの革新)」と題してストレージ技術およびSSD技術の進化がどのようにしてAIインフラの拡張性を維持しながら性能を高めているかを説明する。

 それからMicron Technologyが「PCIe Gen7 SSDs: When Bandwidth Stops Being the Limiter(PCIe Gen7準拠SSD: 帯域幅による制限がなくなるとき)」と題してPCIe準拠SSDではGen7になると性能を制約する要因が従来の帯域幅制限から、電力効率やNANDフラッシュ利用率などへと移行することを指摘する。

 最後にKIOXIA Americaが「A Case for Leveraging CMB to Access Underutilized SSD DRAM Memory Bandwidth(SSDのDRAMバッファ入出力帯域における未使用部分をホストから利用する)」と題し、SSDのDRAMバッファ入出力帯域に余裕がある場合にホストのアプリケーションが未使用のDRAMバッファ帯域を活用することを提案する。現状ではたとえばDDR5 DRAMバッファだとSSDの内部処理だけではDRAMバッファ帯域の半分近くが使われていないとする。

NVM Express(NVMe)規格の最新機能を解説

 次は「Industry Association(業界団体)」分野の講演セッションを説明しよう。午前8時30分からの前半は、光ファイバ伝送規格の業界団体「Fibre Channel Industry Association」についてHewlett Packard Enterpriseが解説する。午前9時45分からの後半は、PCIeベースのSSDをホストから制御するホストコントローラ規格「NVM Express(NVMe)」に関する3件の講演を予定する。

「Industry Association(業界団体)」分野の講演題目一覧。公式Webサイトと公式アプリから筆者が作成したもの

 ここでは後半の3件(NVMe関連)を紹介する。始めにSamsung Semiconductorが「NVM Express Completes the Live Migration Story(NVM Expressによるライブマイグレーションの完成まで)」と題して講演する。ハイパーバイザがハードウェアの抽象化を管理する従来の仮想マシン(VM)のマイグレーションと、SSDがハードウェアの抽象化を管理してVMにAdmin Queue(管理キュー)への直接アクセスを可能にする新しいVMマイグレーションの仕組みについて解説する。

 続いてMicron Technologyが「Inside the Rails: Power & Voltage Telemetry for Next Gen SSDs(SSDの電力と電圧を遠隔監視する共通仕様の提案)」と題してNVMe規格の提案2件(TP4210(デバイス電圧監視)とTP4199(ドライブ電力の自動報告))を説明する。

 最後にSandiskが「Enhancing NVMe Power Management with Power Limit Configuration(NVMeストレージの電力管理を強化へ、ホストによる電力制限機能「Power Limit Config」)」と題してNVMeの新機能「Power Limit Config」を紹介する。この機能は、ホストシステムがNVMeデバイス(ストレージ)の消費電力に厳しい上限を設けることを可能にする。

認知機能を備えたファイルシステムが自律型AIのデータ利用を効率化

 ここからは「Computational Storage(演算機能付きストレージ)」分野の講演セッションを詳しく紹介する。午前8時30分から始まるこのセッション(フルセッション)では前半に3件、後半に3件の講演を予定する。

「Computational Storage(演算機能付きストレージ)」分野の講演題目一覧。公式Webサイトと公式アプリから筆者が作成したもの

 前半では始めにIBMが「Cognitive File System(認知機能を備えたファイルシステム、ファイル名の付与が不要のデータ保存を実現)」と題して講演する。「Cognitive File System(コグニティブ・ファイルシステム)」ではファイルシステムがデータストリームに含まれる反復的なパターンや関係性を「認知」する。ユーザー(人間あるいは自律型AI)はファイル名を付与せずに、データをストリームやファイルとして保存できる。データの利用主体が人間から自律型AIに移行しつつある現在、「コグニティブ・ファイルシステム」によって自律型AIはデータのやり取りをより効率的に実行可能になるとする。

 続いてKIOXIA Americaが「Fixed Function Compute Standardization(SSDが備える演算機能を共通利用するためのSNIAによる標準化作業)」と題し、ストレージの業界団体SNIA(スニア)が取り組んでいるプロジェクトを解説する。

 このプロジェクトでは、SSDの演算リソースやメモリリソースを活用し、ストレージ関連の演算処理をオフロード(肩代わり)する手法を定義する。それからGlobalFoundriesが「Enabling high-efficiency solutions for Physical AI platforms that require data management and near-memory compute(物理AIプラットフォームに向けた高効率ソリューションの実現には、データ管理とニアメモリ計算が必要)」と題して講演する。

分身を仮想空間で動かすパーソナルAIツインで個人情報を隔離

 午前9時45分から始まる後半では、最初にPhison Technologyが「Personal AI Twins: Beyond Storage with Privacy-First, Hardware-Accelerated Vector SSDs(パーソナルAIツイン: プライバシー優先かつ、ベクトルハードウェアアクセラレイテッドなSSDがストレージを超える)」と題して講演する。仮想空間に自分自身の分身(エージェント)を設定する「パーソナルAIツイン」は需要が高まりつつあるものの、複数のトレードオフを抱える。そこで、オンデバイス埋め込み生成、ベクトル検索、大規模言語モデル(LLM)推論の機能を同じ暗号化ハードウェアモジュール(SSD)に統合することで、個人情報を隔離するとともにベクトル検索などの処理を高速化する「パーソナルAIツイン」アーキテクチャを提案する。

 次にIBMが「Deduplication Offloads in an SSD(SSDにおける重複排除のオフロード化)」と題し、IBMのSSD内蔵演算回路「FCM(FlashCore Module)」の追加機能である重複排除とその利点を報告する。最後にSamsung Electronicsが「Accelerating Vector Search via NVMe Computational Storage(NVMe計算ストレージを通じた高次ベクトル探索の高速化)」と題して1,000次元を超えるベクトルの「大規模近似近傍探索(ANN)」における距離計算をNVMeストレージで実行する設計手法を提案する。

CXLの市場予測とCXLによるAI推論の高速化

 次は「CXL(Compute Express Link)」分野をテーマとする講演セッション(フルセッション)を説明する。前半に4件、後半に4件の講演を予定する。

「CXL(Compute Express Link)」分野の講演題目一覧。公式Webサイトと公式アプリから筆者が作成したもの

 午前8時30分に始まる前半では、最初にObjective Analysisが「CXL Looks for the Perfect Home(CXLが見据える「パーフェクト・ホーム」: CXL市場の展望)」と題してCXLの市場規模予測を説明する。

 続いてIntelが「Predominant use cases for CXL in the marketplace today(今日の市場におけるCXLの主要な利用事例)」と題してCXLの導入事例を報告する。それからMetaが「CXL in Hyperscale Environment(ハイパースケール環境におけるCXL)」と題して講演する。

 前半の最後は、Astera Labsが「Securing PCIe & CXL based Composable Memory & Storage Fabrics(PCIeおよびCXLをベースとするコンポーザブルなメモリおよびストレージのファブリックでセキュリティを確保)」のタイトルで講演する。

 午前9時45分から始まる後半では、最初にKIOXIA Americaが「Advancing Tiered Memory Solutions with DAMON Enhancements for CXL Attached Flash(CXLフラッシュメモリ追加に向けたDAMONの強化を通じて階層メモリソリューションを進化させる)」と題し、CXL接続フラッシュメモリのアクセスパターンの監視・管理能力を高める「DAMON(Data Access MONitor)」の機能強化と「CXL Hotness Monitoring Unit(ホットネス監視ユニット)」用perfドライバの拡張を報告する。

 続いてMicron Technologyが「Accelerating HPC and AI Work-loads using Disaggregated Memory Systems(ディスアグリゲーテッドメモリシステムを利用したHPCとAI作業負荷の処理高速化)」と題し、CXLベースのメモリ分離技術によって大規模AI推論処理を高速化する手法を述べる。

 それからSamsung Electronicsが「AI-Based Predictive Hot Page Placement in CXL Memory Systems(CXLメモリシステムにおけるAIベースのホットページ予測配置)」と題し、メモリアクセスの頻度を予測してホットページ(頻繁にアクセスされるページ)を早期にCXLメモリからDRAMに移すことで遅延時間の短縮とスループットの向上を図る手法を解説する。

 最後にScaleFluxが、「Reinventing CXL Memory for RAS and TCO(RASとTCOの向上を両立させるCXLメモリの再構築)」と題して講演する。

NANDフラッシュの限界を超えるコントローラとメモリ

 ここからは「Flash Technology(フラッシュメモリ技術)」分野の講演セッションを説明しよう。フルセッションであり、前半は3件の講演、後半は1件のパネル討論会で構成される。

「Flash Technology(フラッシュメモリ技術)」分野の講演題目一覧。公式Webサイトと公式アプリから筆者が作成したもの

 前半の始めは、キオクシアが「DNN-based Read Flow for NAND Flash Memory Controllers(NANDフラッシュメモリのコントローラに向けた深層ニューラルネットベースの読み出しフロー)」と題し、並列読み出し回数の制限下でフラッシュストレージの読み出し性能を向上させる、DNN(ディープニューラルネットワーク)ベースの読み出しフローを提案する。コンパクトなDNN推定器を用いて各行(row)の最適な閾値をリアルタイムで決定し、読み出しリトライ率の低減とスループットの向上を図る。

 続いてSEMRON GmbHが「Beyond HBM and HBF: CapRAM as the new computing paradigm for scalable AI(HBMとHBFを超える: 拡張可能なAIに向けたインメモリコンピューティング技術「CapRAM」)」と題し、インメモリコンピューティング技術「3D CapRAM」を提案する。

 前半の最後には、National Yang-Ming Chiao-Tung Universityが「FinFET-based Versatile 3D Resistive-Gate Memory with QLC capability for NOR/NAND Applications(QLC記憶可能なNOR/NANDフラッシュメモリに向けたFinFETベースの3次元抵抗性ゲートメモリ)」と題してMIM(金属-絶縁体-金属)抵抗体とFinFETによる高密度多値メモリ技術について述べる。

 午前9時45分からは「The Open Flash Platform (OFP): Building the Flash Architecture AI Demands(OFPイニシアチブがAIの要求に応えるフラッシュアーキテクチャを構築)」と題するパネル討論を予定する。「OFPイニシアチブ」は次世代のフラッシュストレージ標準を策定している業界団体である。Samsung Electronics、Hammerspace、Los Alamos National Lab、Xsight Labs、Metaの代表者がOFPの現状と課題、将来性を議論する。

PCIe 6.0準拠SSDの低電力モード「L0p」を解説

 ここからは「Testing & Performance(検査と性能評価)」分野の講演セッションを紹介しよう。午前8時30分に始まる前半で4件、午前9時45分に始まる後半に3件の講演を予定する。

「Testing & Performance(検査と性能評価)」分野の講演題目一覧。公式Webサイトと公式アプリから筆者が作成したもの

 前半(午前8時30分開始)では始めに、Solidigmが「High‑Density SSD Design and Validation Practices in Supply‑Constrained Deployments(品不足を前提にした高密度SSDの設計と検証の取り組み)」と題して講演する。NANDフラッシュメモリとDRAMの供給不足が続くことを前提としたSSDの評価指標と検証手法を述べる。

 続いてSamsung Semiconductorが「Leveraging Exceedance Plots to Debug and Optimize SSD Performance(「Exceedance Plots(超過プロット)」を活用したSSD性能のデバッグと最適化)」と題し、発生頻度は低いものの遅延時間が大幅に長くなるイベントを可視化するツール「Exceedance Plots(超過プロット)」を紹介する。このツールをSSDの性能把握とデバッグに活用した事例と有効性を報告する。

 それからKIOXIA Americaが「High IOPS SSD Emulation(高い入出力速度を備えたSSDのエミュレーション)」と題して高速デバイスエミュレータのアーキテクチャと実装の概要、NVIDIAのSCADAフレームワークを用いたテストの初期結果について解説する。前半の最後はQuarch Technologyが「PCIe L0p Explained: Basics and Practical Power Analysis(PCIe 6.0規格で導入された低電力モード「L0p」の解説: 基礎と実用的な電力解析)」のタイトルで低電力モード「L0p」の概要を解説する。

データセンターの障害発生をテレメトリと分析によって予測

 セッションの後半(午前9時45分開始)では最初にSandiskが「Sample Estimation for Reliability Demonstration Test using Gam-ma distribution with Kerman neutral prior(カーマン事前中立によるガンマ分布を使用した信頼性実証試験のサンプル推定)」と題し、試験期間の短縮、あるいは試験サンプル数の抑制を実現する信頼性実証試験(RDT: Reliability Demonstration Test)手法を提案する。

 次の講演もSandiskが担う。タイトルは「Predicting the SSD Reliability During End of Product Life Cycle(SSDの信頼性予測、製品のライフサイクル完了まで)」である。製品寿命の末期(摩耗故障期)にSSDに生じる挙動を再現するモデルをストレス別に構築し、寿命を決めるストレスをシミュレーションによって特定する。さらに、フィールドにおける使用事例と重ねて予測の精度を検証する。

 後半の最後はMonolithic Power Systemsが「Data Center Telemetry – Applying AI to Predict Failures(データセンターの遠隔監視: AIを障害予測に応用する)」と題して講演する。テレメトリ(遠隔計測・監視)によって収集したさまざまなデータを分析することで、障害発生を未然に予測する試みについて述べる。

AI時代のメモリ市場とその構造変化を展望

 ここからは、「Business Strategies & Memory Markets(事業戦略とメモリ市場)」分野の講演セッションを説明する。前半(午前8時30分開始)に3件、後半(午前9時45分開始)に4件の講演を実施する。

、「Business Strategies & Memory Markets(事業戦略とメモリ市場)」分野の講演題目一覧。公式Webサイトと公式アプリから筆者が作成したもの

 前半では始めに、Yole Groupが2件の講演を予定する。最初の講演は「AI Demand and Memory Shortage Impact(AIによる需要とメモリの不足が与えるインパクト)」のタイトルでメモリ不足の影響を論じる。次の講演は「Memory Markets in the AI Era(AI時代のメモリ市場)」のタイトルでAI需要によるメモリ市場の将来を展望する。それからIDCが前半の最後を担う。なおIDCの講演タイトルは未定である。

 後半では最初に、TrendForceが「The Memory Supercycle 2026–2028: Bridging the Structural Gap from Consumer to AI Dominance(2026年から2028年のメモリスーパーサイクル: 民生優先からAI優先への構造的なギャップをつなぐ)」と題してメモリ市場の構造変化について述べる。

 続いてYole Groupが「The Rhythm of Memory Market: Cycles, Inflection Points, and What Comes Next(メモリ市場のリズム: サイクルと転換点、そして次に到来するのは何か)」のタイトルで講演する。

 それからObjective Analysisが「What Happens When Hyperscalers Slow Their AI Spending?(ハイパースケーラによるAI消費(メモリとストレージの消費拡大)が鈍化したとき、何が起こるのか)」と題してAI特需が陰りを見せたときの市場動向を分析する。最後にMoody'sが「De-Risking Supply Chains in a New Era of Uncertainty(新たな不確実性の時代におけるサプライチェーンのリスク軽減)」と題し、メモリとストレージの不足と高騰という状況にどのように対応すべきかを論じる。

「ネオクラウド経済」対「ハイパースケール管理」

 ここからは午前の後半だけに実施される講演セッション(ハーフセッション)「Data Center Storage & Memory(データセンターのストレージとメモリ)」を紹介する。「Panel Discussion – Storage as a Service: Neo-Cloud Economics vs Hyperscale Control(パネル討論: サービスとしてのストレージ: ネオクラウド経済対ハイパースケール管理)」というテーマでパネル討論会を予定する。

 登壇者(予定、敬称略)は以下の通りだ。Nilesh Shah(ZeroPoint Technologies)、Samantha Clarke(VDURA)、Andrea Huels(BluSkyAI Data Centers)、Wendell Wenjen,(Supermicro Computer)の各氏である。

「Data Center Storage & Memory(データセンターのストレージとメモリ)」分野の講演セッション(ハーフセッション)。公式Webサイトと公式アプリから筆者が作成したもの

 ここまで、8月4日の一般講演セッションを紹介してきた。8月5日以降の講演セッションについては、本コラムの次回以降で説明したい。興味深い講演が5日以降も続出する。ご期待されたい。