福田昭のセミコン業界最前線

「フラッシュメモリサミット」に次世代のNANDフラッシュとストレージが集結

「フラッシュメモリサミット(FMS)」の会場となる「サンタクララコンベンションセンター」の建物。2019年のFMS開催時に筆者が撮影したもの

 NANDフラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS)」が今年(2023年)8月7日~10日に米国カリフォルニア州シリコンバレー地域の会議場「サンタクララコンベンションセンター(SCCC:Santa Clara Convention Center)」で開催される。

 今年のFMS(FMS 2023)は、リアルイベントとしては前年に続いて2年連続の開催となる。FMSは2006年に始まり、2019年まではSCCCで毎年夏に、リアルイベントとして開催されてきた。コロナ禍によって2020年はオンライン開催となり、2021年は中止となった。2022年にリアルイベントとして3年ぶりに復活した。なお、オンラインでの参加はできない。

FMSの基本スケジュール。公式Webサイトから筆者が作成した

 FMSは講演会と展示会で構成される。イベント事業としては展示会の収入(出展小間の売上)に大きく依存する。このため、オンライン開催にはあまり適していない。

 今年のFMSは基本的なスケジュールがコロナ禍以前に戻った。8月7日にプレイベントの技術講座(セミナー)が用意される。8月8日~10日にメインイベントである講演会と展示会を開催する。講演会には一般講演、招待講演、基調講演がある。基調講演の時間帯はほかの講演がない。いわゆる全体講演となる。一般講演と招待講演はテーマ別のセッションで実施する。最大で10本ものセッションが同時進行するというハードスケジュールだ。

8月7日に開催されるプレイベント(セミナー)のテーマとスケジュール。午前に3テーマ、午後に3テーマを予定する。午前のテーマはCXL、DRAM、エンタープライズストレージのサイバーセキュリティ、午後のテーマはUCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)、細分化されたメモリの実装、SSDコントローラである。公式Webサイトのプログラムから筆者が抜粋した

参加登録料は25ドルから2,295ドルと幅広い

 FMS 2023の参加登録料は最低が25ドル、最高が2,295ドルとメニューによる幅がかなり広い。最低料金の25ドルは、「Exhibits Plus」と呼ぶチケットで、展示会のほか、プログラムに「OPEN」と表記されたセッション、基調講演、レセプションに参加できる。なお25ドルは8月5日までの早期割引料金(オンライン登録料金)で、8月6日~8月10日(オンサイト登録のみ)は100ドルと4倍に値上がりする。

 最高料金の2,295ドルは、プレコンファレンスの2テーマとメインイベントすべての講演参加、3枚のランチチケットなどで構成される「All Access」と呼ぶチケットのオンサイト登録料金である。8月5日以前のオンライン登録は早期割引料金が適用されるので、1,995ドルと300ドルほど値下がりする。

 プレコンファレンスを除いた3日間のメインイベントに参加できる「3 Day Conference」と呼ぶチケットは、早期割引料金で1,665ドルである。3枚のランチチケットが含まれる。また1日間のチケット(ランチチケット1枚が含まれる)やプレコンファレンスだけのチケットも用意されている。

 なおランチは、過去の開催では肉類のサンド(肉は2種類)あるいはベジタブルサンドが選べるランチボックス(ドリンク1本を選べる)だったり、展示会場の1角に設けられたカフェテリアだったりした。

FMS 2023の参加登録メニューと料金。公式Webサイトから筆者が抜粋した
FMS 2023の参加登録メニューと料金(続き)。公式Webサイトから筆者が抜粋した

基調では次世代NANDフラッシュや次世代SSDなどの新情報に期待

 FMSで最も注目される基調講演は、8月8日と9日の2日間に実施される。講演テーマと講演者は、7月25日の時点では不明だ。

 8月8日は午前にキオクシアとSamsung(Samsung ElectronicsあるいはSamsung Semiconductor)、昼食休憩を挟んで午後にSK hynixとSolidigm、FADU、Microchip Technologyが講演を予定する。翌8月9日は、午前にMarvell Technology、NEO Semiconductor、午後にSilicon Motion、Western Digitalが基調講演に名前を連ねる。

基調講演のスケジュール。公式Webサイトから筆者が作成した

 基調講演企業の中でNANDフラッシュメモリの大手ベンダーはキオクシア、Samsung、SK hynix、Solidigm、Western Digitalである。Micron TechnologyとYMTCが基調講演には参加していない。フラッシュ大手ベンダーはSSDベンダーを兼ねる。基調講演では次世代3D NANDフラッシュメモリや次世代大容量SSDなどのアナウンスが期待される。

 FADU、Microchip Technology、Marvell TechnologyはSSDコントローラの大手ベンダー、NEO Semiconductorは次世代DRAMの開発ベンチャーである。

SSD技術やインターフェイス、次世代のストレージとメモリを扱う一般講演

 一般講演セッションは、フラッシュメモリそのものではなく、応用に関する発表が多い。SSDの要素技術、SSDインターフェイス、メモリインターフェイス、SSDコントローラ、自動車用SSD、航空宇宙用SSD、次世代不揮発性メモリ、次世代DRAM、SSDの誤り訂正技術、SSDのデータ復旧技術、メモリ市場動向、チップレット技術、SSDのフォームファクタ、計算機能を備えたストレージなどのテーマが挙がる。

 セッション形式は複数の講演で構成する一般的な形式のほか、パネル討論会、単独講演(招待講演を含む)がある。またコロナ禍以前からの「いつものこと」となっているのが、開催直前まで参加者が未定のセッションがいくつか存在することだ。パネル討論会では参加者が集められず、休止となることが珍しくない。日本の展示会兼講演会ではプログラムが早くからきっちりと決まっているのに比べると、いささか拍子抜けする。

初日の一般講演では10本のセッションが同時に進行

 それでは一般講演セッションを初日から公開順に紹介していこう。初日(8月8日)の一般講演は3つのスロットで順番に実施する。午前は8時30分開始のスロットと、9時45分開始のスロットがある。スロット間に短い休憩を挟むので、各スロットの持ち時間は65分となる。

 午前8時30分開始のスロットでは、10本のセッションが同時に進行する。メモリの動向、NVMeストレージのZNS(Zero Namespace)技術、自動車用SSDのパネル討論、コントローラ技術などのセッションが興味深い。

8月8日の一般講演セッション(午前8時30分開始)。公式Webサイトから筆者が作成した

 続いて午前9時45分開始のスロットでも、10本のセッションが同時に進む。このスロットは少し厄介だ。前のセッションのいくつかは、予定時刻をオーバーすることがある。終了を待っていては次のスロットに間に合わないどころか、人気のテーマでは入室前に満席となってしまう。

 またこのスロットの次が基調講演なので、セッションの終了を待っていると基調講演の良い席(講演スライド全体を見渡せる席)が埋まってしまう。早めの対応で視聴機会を逃さないようにしたい。

 話題をセッションのテーマに戻そう。このスロットでは、市場動向、3Dフラッシュ技術、自動車用SSDのパネル討論、ライブマイグレーション、データセンター向けコントローラなどに注目したい。

8月8日の一般講演セッション(午前9時45分開始)。公式Webサイトから筆者が作成した

 初日の基調講演が完了した後に、午後の一般講演セッションが始まる。開始予定時刻は午後3時20分である。このタイムスロットも、10本のセッションが同時に進行する。NVMeストレージのフレキシブルデータ配置(FDP:Flexible Data Placement)、抵抗変化メモリ、ソフトエラーの誤り訂正、などのセッションが興味深い。

8月8日の一般講演セッション(午後3時20分開始)。公式Webサイトから筆者が作成した

展示会ではNANDフラッシュやSSDなどの最新技術と最新製品を披露

 展示会は、8日の午後3時に開場する。展示会は、講演会とならぶイベントの柱だ。基調講演の企業はすべて大きめのブースを構え、パネルやディスプレイ、試作品、実物の動作、模型などを駆使しして技術や製品、サービスなどを顧客にアピールする。そのほか数多くのストレージ関連企業が出展しており、ハードウェアやソフトウェア、サービスなどをブースで展示する。

 展示会の開場時間は8日が午後3時~午後7時、9日が正午~午後7時、10日が午前10時~午後2時30分である。なお、展示会の入場は8日と9日を推奨したい。最終日(10日)は閉場時間を待たずに撤収するブースが少なくないからだ。

FMS 2023展示会場のレイアウト図面。公式Webサイトから筆者が抜粋した
2019年に開催されたFMS 2019の展示会場内部。Western Digitalのブース付近で筆者が撮影したもの

中日の一般講演も10本のセッションが同時に「進撃」

 中日(9日)の一般講演は、前日と同様に午前8時30分開始、午前9時45分開始、午後3時30分開始の3つのスロットで構成される。

 午前8時30分開始のスロットでは、前日と同じく10本の講演セッションが同時に進む。ここでは、計算能力を備えたストレージ、電気自動車向け次世代メモリ、JEDEC規格、持続可能な社会に向けたデータセンターのセッションに注目したい。

8月9日の一般講演セッション(午前8時30分開始)。公式Webサイトから筆者が作成した

 午前9時45分開始のスロットも、10本の講演セッションが同時に進行する。ここでは、市場調査会社のパネル討論、コールドストレージのパネル討論、フラッシュメモリを超える高密度メモリ、CXLのRAS(Reliability Availability Serviceability)などが興味深い。

8月9日の一般講演セッション(午前9時45分開始)。公式Webサイトから筆者が作成した

 基調講演の完了後、午後3時30分に始まるスロットも10本の講演セッションが同時並行で進む。ここではDRAM技術、QLC方式の高密度ストレージ、チップレットのセッションに注目したい。

8月9日の一般講演セッション(午後3時30分開始)。公式Webサイトから筆者が作成した

最終日の一般講演には4つのタイムスロットを用意

 最終日(10日)は基調講演がない。このため、一般講演は午前から午後にかけて4つのスロットで実施する。開始時刻は午前8時30分、午前9時45分、午前11時00分、午後0時10分である。また午後2時30分には、FMSのまとめとなるパネル討論を予定する。

 午前8時30分開始のスロットでは、8本の講演セッションが同時に進む。前日までの10本に比べると少ないものの、かなりの数だ。ここではSSDのデータ保全、SSDの最新フォームファクタ(パネル討論)などが興味深い。

 続く午前9時45分開始のスロットも8本の講演セッションが同時並行で進行する。ここではサイバーセキュリティの課題と対策、計算機能付きストレージのユースケース、EDSFF E3 SSDなどに注目したい。

8月10日の一般講演セッション(午前8時30分開始)。公式Webサイトから筆者が作成した
8月10日の一般講演セッション(午前9時45分開始)。公式Webサイトから筆者が作成した

 午前11時開始のスロットも8本の講演セッションが並行に進む。ここではDRAMの応用研究、エンタープライズストレージ、NANDフラッシュのデータ復旧技術、SSDのテスト技術動向などが興味深い。

 午後0時10開始のスロットも8本の講演セッションが同時進行する。ここではフラッシュメモリの応用研究、SSDのデータ隠蔽技術、計算機能付きストレージの将来、などに注目したい。

 そして午後2時30分からは、FMS 2023のまとめとなるパネル討論会を実施する。タイトルの「持ち帰るべき10の事柄(Top 10 FMS Takeaways)」は、FMSの最終セッションでは恒例となっている。

8月10日の一般講演セッション(午前11時開始)。公式Webサイトから筆者が作成した
8月9日の一般講演セッション(午後0時10分開始)。公式Webサイトから筆者が作成した
8月9日の一般講演セッション(午後2時30分開始)。公式Webサイトから筆者が作成した

 FMSは、日本国内の講演会兼展示会とはかなり違う。開催直前にならないと詳細が不明なセッションが少なくない。それどころか、開催中の時間変更や会場変更が珍しくない。「行ってみないと分からない」のがFMSの醍醐味とも言える。現地レポートにご期待されたい。