福田昭のセミコン業界最前線
世界半導体市場、2023年の2ケタ減から2024年の2ケタ増へ急回復
2024年2月13日 06:08
10%前後のマイナス成長となった2023年の半導体市場
昨年(2023年)の世界半導体市場(販売額)は10%前後のマイナス成長となったもようだ。ハイテク分野の市場調査会社として知られるGartnerは2023年12月19日(米国時間)に、同年の世界半導体市場は前年比11.0%減の5,330億ドルになる見込みだと発表した。
また半導体の市場統計を算出している業界団体WSTSは同年11月28日(日本時間)に、2023年の世界市場は前年比9.4%減の5,201億2,600万ドルになるとの見込み(1月~9月は実績、10月~12月は予測)を公表した。
3割減~4割減となったメモリが2桁マイナスの主因
製品分野別に2023年の市場動向を見ていくと、メモリ分野の落ち込みが目立つ。Gartnerの推定(2024年1月16日付け公表資料)によると2023年にメモリ市場の規模(金額)は前年比37%減と4割近く縮小した。
メモリのほとんどを占めるのはDRAMとNANDフラッシュメモリである。DRAMは前年比38.5%減の484億ドル、NANDフラッシュメモリは同37.5%減の362億ドルになったとGartnerは推定する。一方、メモリ以外の製品分野は前年比3.0%減とわずかなマイナスにとどまった。
WSTSの推定(2023年11月28日付け公表資料)でも、製品分野別ではメモリ市場のマイナスが群を抜いて大きい。前年比31.0%減である。
そのほかの製品分野はマイナス成長ながら、その比率はかなり低い。アナログ(ミックスドシグナル)市場が前年比8.9%減、マイクロ(マイクロプロセッサやマイクロコントローラ、DSPなど)市場が同3.2%減、ロジック(特定用途向けLSI(ASSP)、ASIC、FPGAなど)市場が同0.9%減である。
地域別ではアジア太平洋(日本を除く)の不調が続く
WSTSは地域別(米州(北米と南米)、欧州(EMEA)、日本、アジア太平洋(日本を除く)の半導体市場(販売額)も公表してきた。WSTSが2023年11月28日(日本時間)に発表した直近のデータによると、2023年の地域別市場(見込み)は米州が前年比6.1%減、欧州が同5.9%増、日本が同2.0%減、アジア太平洋が同14.4%減となった。
金額では米州が1,325億3,600万ドル、欧州が570億4,800万ドル、日本が472億900万ドル、アジア太平洋が2,833億3,300万ドルである。アジア太平洋地域が世界全体(5,201億2,600万ドル)に占める比率は54.4%と半分を超える。同地域が世界全体の市場規模と成長率を大きく左右していることが分かる。
米州と欧州、日本、アジア太平洋の4地域の中でアジア太平洋地域だけが2年連続のマイナス成長とふるわない。一昨年(2022年)は前年比3.5%減である。2022年はアジア太平洋以外の地域はすべて2桁成長したにもかかわらず、世界全体の成長率は3.3%にとどまった。
2023年3月に前月比が増加に戻し、11月には前年同月比が増加に転じる
ここからは世界市場の月別実績を見ていこう。米国半導体工業会(SIA)は、WSTSが集計した毎月の世界市場販売額(過去3カ月の移動平均)を公表している。
販売額は2021年に急激に拡大し、2022年に入ると伸びが鈍化し始めた。月別実績が前月を下回ったのは、2022年6月のことだ。同年5月の前月比1.8%増から、同年6月の同1.9%減と減少に転じた、以降も減少傾向は止まらず、2022年9月には前年同月比でも3.0%減とマイナスに転じる。
前月比がマイナスからプラスに転換したのは、2023年3月である。同年2月の前月比4.0%減から、同年3月の同0.3%増と上向いた。同月の前年同月比は21.3%減とすでにかなりの落ち込みを見せていた。
前月比は4月以降も増加し、2023年11月には前年同月比が5.3%増とようやく成長軌道に乗り始めた。同年10月の前年同月比は0.7%減だった。前年同月比のマイナスは2022年9月から2023年10月までの13カ月間、続いたことになる。
そして2024年2月7日にSIAは、WSTSの2023年12月の実績と2023年の通年実績を発表した。WSTSが昨年(2023年)11月28日に発表した成長率(見込み値)のマイナス9.4%からは1.2ポイント上昇し、2023年の通年実績値はマイナス8.2%となった。2023年11月時点の見込み値(同年第3四半期までは実績、第4四半期のみ予測)よりも、2023年第4四半期の販売額が高かったことがうかがえる。
2024年の世界半導体市場は13%~20%成長へ
2023年第4四半期(10月~12月期)に回復が鮮明になったことを受け、2024年に入っても回復基調は続くと予測する市場アナリストが多い。同年の半導体市場は世界全体で2桁成長すると予測されている。市場調査会社IDCとGartner、IC Insights(TechInsights傘下)、業界団体WSTSの予測値は、13%~20.2%とかなり高い。
製品分野別では、半導体メモリの成長率(予測)が特に高く、全体を牽引する。2023年11月末から12月初頭に公表された予測値をまず説明しよう。
WSTSが予測する半導体メモリ市場の成長率は44.8%(2023年11月28日時点)である。そのほかはアナログ市場が3.7%、マイクロ市場が7.0%、ロジック市場が9.6%成長となっており、いずれも1桁成長にとどまる。
Gartnerが予測する半導体メモリ市場の成長率は66.6%(2023年12月4日時点)に達する。その内訳はDRAMの成長率が2倍近い88.0%、NANDフラッシュメモリの成長率が49.6%である。
Gartnerは2024年1月23日には、半導体メモリ市場の成長率予測を73.2%に上方修正した。メモリ市場の回復が前年12月の予測よりも力強いことがうかがえる。なお、非メモリ市場の成長率予測は7.0%とやや低い。
円ベースで15年ぶりに過去最大を更新した日本の半導体市場
最後は日本の半導体市場に注目したい。すでに述べたように、WSTSは2023年11月28日の発表で日本市場の成長率をマイナス2.0%と見込んでいる。ただしこれはドルベースの数値で、円ベースでは前年比4.2%増と拡大する。様相がかなり違う。
日本の半導体市場は2007年に5兆7,497億円(前年比6.4%増)でピークを迎えてから、2009年~2016年まで3兆5,000億円前後で推移してきた。ゼロ成長時代が続いた。2017年~2020年には4兆円前後に拡大するものの、2007年のピークにはまだ遠かった。
ところが2021年に日本の半導体市場は4兆8,038億円(前年比23.4%増)と急拡大する。急激な拡大は翌2022年も続き、市場規模は6兆3,264億円(同31.7%増)と過去のピークだった2007年を15年振りに更新した。
2023年もプラス成長が確実で、過去最大を2年連続で更新する見込みだ。2024年は前年比8.0%増の7兆1,221億円に達するとWSTSは予測する。3年連続で過去最大を更新し、初めて7兆円を超える。
なおドルベースでは、2007年が過去のピークで市場規模は488億4,500万ドル(前年比5.2%増)である。2023年もドルベースでは2007年を超えられない。WSTSは2024年に日本市場(ドルベース)は前年比4.4%増の492億7,500万ドルに拡大すると予測する。予測に近い成長が達成されれば、ドルベースでも過去最大を更新することになる。