福田昭のセミコン業界最前線
微増に終わった2022年の世界半導体市場、暗いトンネルの出口を探る展開へ
2023年1月26日 06:17
当初予測の2桁成長が、わずか1%増とゼロ成長近くに低迷
ハイテク分野の市場調査会社として知られるGartnerは1月17日(米国時間)に、2022年の世界半導体市場に関する金額ベースの速報値を発表した。発表によると、2022年の世界市場(速報値)は前年比1.1%増の6,016億9,400万ドルである。前年(2021年の同26.3%増)から成長率は大きく鈍り、ほぼ横ばいとなってしまった。
2022年9月21日付けの本コラムで述べたように、2022年の半導体市場は当初、10%前後の堅調な成長率が予測されていた。しかも2022年5月前後には、半導体不足がまだ解消していないことから、成長率は15%前後に上方修正すらされていた。
ところが2022年7月以降に半導体メモリ、すなわちDRAMとNANDフラッシュメモリの需給関係が急速に緩んでいく。供給能力の増加と需要の縮小が重なったことで、需給バランスは供給過剰へと一気に転じた。当然ながら、DRAMとNANDフラッシュの価格は急激に下降した。2022年6月にはすでに需給緩和の兆しが見えていたことから、業界団体WSTS(世界半導体市場統計)と市場調査会社Gartnerは同年7月~8月に成長率予測を10%前後へと下方修正した。
しかし供給過剰の状態は想定を超えて悪化し、成長率予測は再度の下方修正を余儀なくされた。2022年11月末時点の予測値は5%を割り込み、4%台にまで低下した。
そして1月発表の「実績値」は速報ベースで前年比1.1%増と、さらに下方修正されることとなった。
2022年5月をピークに世界市場は減少に転じた
2022年の世界半導体市場を地域別に見ていこう。WSTSが2022年11月29日公表した見込み値(1月~9月が実績、10~12月が予測)によると、米州、欧州、日本、アジア太平洋の4つの地域の中で2022年にマイナス成長となるのはアジア太平洋地域だけである。ほかの3つの地域はいずれも2桁成長しており、様相がかなり違う。
もう少し詳しく調べると、SIA(米国半導体工業会)が世界と地域別の半導体販売額(WSTSベースの数値)を2022年11月まで公表していた。この公表値(過去3カ月の移動平均)は、毎月の変化を良く示している。しかも毎月の公表値は地域別でアジア太平洋と中国を分けており(WSTSの11月29日発表予測は中国をアジア太平洋に含む)、中国市場における販売額の変動が分かる。
SIAによる毎月の世界半導体販売額は2021年から2022年にかけて急激に拡大していた。それが2022年前半に入ると、伸びが鈍り始める。前月比でマイナスに転じたのは2022年6月のことだ。同年5月の前月比1.8%増から、6月は前月比1.9%減へと成長のベクトルが反転した。前年同月比は5月が18.0%増、6月が13.3%増と前年からはまだ成長しているように見えた。
前月比のマイナスは6月以降、最新の公表月である11月まで連続した。前年同月比も増加が鈍り、2022年8月には1.0%増まで低下した。続く同年9月には、前年同月比がマイナス3.0%と減少に転じた。そして同年11月の前年同月比は、マイナス9.2%にまで下がっている。
地域別では中国とアジア太平洋の縮小が目立つ
2022年5月~11月のSIAによる販売金額の発表値を地域別に見ると、米国と欧州、日本はほぼ横ばいで推移したのに対し、中国とアジア太平洋の減少が目立つ。
2022年5月に中国市場の販売額は170億2,000万ドルで地域別のトップ、アジア太平洋地域の販売額は141億3,000万ドルで2位に付けていた。それが2022年11月には、中国が134億1,000万ドル、アジア太平洋地域が114億6,000万ドルにまで減少してしまう。この間に中国は21%減、アジア太平洋地域は19%減と市場がかなり縮小した。
一方、2022年5月~11月に米州市場は5月が122億ドル、11月が121億4,000万ドルでほとんど変わらない。欧州市場と日本市場も同様である。5月と11月でほぼ同じだ。
成長率では2022年5月以降、中国市場とアジア太平洋地域は11月まで6カ月連続で前月比のマイナスが続いた。金額の大きなこれらの地域によるマイナスが世界全体でも2022年6月以降、前月比で6カ月連続のマイナス成長をもたらした。
製品分野別のばらつきが大きかった2022年
製品分野別では、好不調のばらつきが大きかった。すでに述べたようにメモリが価格下落によって後半が厳しかった。前半の好調さが後半の不調さを補えず、金額ベースでは2022年全体で10%前後のマイナス成長となった。一方、アナログと特定用途向けロジック(特に5G通信関連)は好調を維持した。
市場調査会社のGartnerは2023年1月17日(米国時間)に公表した2022年世界半導体市場の実績速報で、製品別の増減にも言及した。全体の約4分の1を占める半導体メモリは、約10%のマイナス成長と推定した。
そのほかの半導体(非メモリ)は5.3%成長と推定した。自動車分野および産業分野の需要が強く、アナログは19%成長、ディスクリート(個別半導体)は15%成長と非メモリ分野を牽引した。
業界団体のWSTSは2022年11月29日(日本時間)に公表した半導体予測で、製品分野別の見込み値を報告した。2022年はメモリが前年比12.6%減、マイクロプロセッサとコントローラが同1.8%減と不調だったのに対し、ロジック(特定用途向け:ASSPとASIC、FPGA)が同14.8%増、アナログが同20.8%増と非常に好調だった。