西川和久の不定期コラム
まるでRyzenのバーゲンセールだな。5万円ちょいのOCuLink対応ミニPC「GMKtec NucBox M7」
2024年9月18日 06:18
GMKtecは、Ryzen 7 PRO 6850Hを搭載し、OCuLinkにも対応したミニPC「NucBox M7」を販売中だ。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。なお同時に届いた「NucBox M7 Pro」も続けて掲載予定なので、どこが違うか?などを注目してご覧いただければと思う。
Ryzen 7 PRO 6850Hを搭載しOCuLinkへも対応!
本連載の7月にRyzen 5 6600Hを搭載した同社の「NucBox M6」をご紹介したが、型番からも分かるように、本機はそのやや上位モデルに相当する。
大きな違いは搭載プロセッサとOCuLinkの有無。USB4が1つか2つか……という感じだろうか。ベアボーン、16GB/512GB、32GB/1TBの3モデルある中、16GB/512GBモデルが届いたのでご紹介したい。主な仕様は以下の通り。
GMKtec「NucBox M7」の仕様 | |
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プロセッサ | Ryzen 7 PRO 6850H(8コア16スレッド、クロック3.2〜4.7GHz/キャッシュ 16MB/L3、TDP 45W) |
メモリ | 16GB(8GB/DDR5-4800×2/SO-DIMM最大64GB) |
ストレージ | M.2 2280 SSD 512GB/PCIe 3.0(M.2スロット×2、1つ空き) |
OS | Windows 11 Pro(23H2) |
グラフィックス | Radeon 680M(12 core)/DisplayPort、HDMI 2.1、Type-C×2 |
ネットワーク | 2.5Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2 |
インターフェイス | USB 4×2、USB 3.2 Gen 2×2、USB 2.0×2、3.5mmジャック、OCuLink |
サイズ/重量 | 123×112×43.2mm、(実測)636g |
価格 | 6万3,980円(17日時点のクーポン利用で5万1,980円) |
プロセッサはZen 3+アーキテクチャ、TSMC 6nm FinFETプロセスのRyzen 7 PRO 6850H。8コア16スレッド、クロック3.2〜4.7GHz、キャッシュ 16MB/L3、TDP 45W。Cinebench R23のマルチコアが13,140と結構速い。
メモリはDDR5-4800の8GB×2で計16GB。最大64GBまで対応する。ストレージはPCIe 3.0のM.2 2280 SSD 512GB。M.2スロットは2つあり1つ空き。またスロット自体はPCIe 4.0対応だ。従って、さらに速いSSDも搭載可能となる。OSはWindows 11 Pro。23H2だったので、この範囲でWindows Updateを適応し、評価した。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 680M(12 core)、外部出力用としてDisplayPort、HDMI 2.1、USB Type-C×2の4ポートが用意されている。同社によると、その性能はGeForce GTX 1050 Tiに近いとしている。
ネットワークは、2.5Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2。その他のインターフェイスは、USB 4×2、USB 3.2 Gen 2 USB 3.2 Gen 2×2、USB 2.0×2、3.5mmジャック、そしてOCuLink。
筆者は以前から記事にしているが、OCuLinkがあると、強力なGPUを外部に接続可能となる。ミニPCでもハイエンドなゲームやAIなどが楽しめる。USB4はDisplayPort 1.4/PD 100W+入力、PD 15W出力に対応している。
サイズは123×112×43.2mm、重量(実測)636g。価格はAmazonで6万3,980円、クーポン利用で5万1,980円と、内容を考えると結構安い。安くて低性能では困るが、後半のベンチマークテストからも分かるようになかなかのハイパフォーマンス。お買い得ではないだろうか!?
筐体は基本グレー。天板だけ少し変わっており、スケルトンで中央にファンが見える。大きさはiPhone 13 Proとの比較からも分かるように、ミニPCとしては大きめ。重量は実測で636gだが、ACアダプタを加えると1kgを超える。
前面は、OCuLink、USB4、USB 3.2 Gen 2×2、3.5mmジャック、電源ボタン。リアは、USB 3.2 Gen 2×2、DisplayPort、HDMI、2.5Gigabit Ethernet×2、USB4、電源入力を配置。OCuLinkコネクタはケーブルが邪魔になるため、できれば背面側に装備してほしかった。
裏は四隅にゴム足とVESマウンタ用のネジ穴など。付属品は、ACアダプタ(サイズ約133×55×33mm/重量412g/出力19V, 6.32A)、HDMIケーブル、VESAマウンタとなる。
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続は、USB4があるのでType-Cケーブル一本で接続可能。USB4が2つあるのはなかなか良い。BIOSは起動時[DEL]キーで表示する。
内部へのアクセスは、まず透明の天板を左に回せば外れる。すると四隅にネジがあり、それを外せば内部にアクセス可能となる。この時、ファンの電源ケーブルが繋がっているので、強く引っ張らないよう、要注意!
内部は(写真)右側にSO-DIMMスロット×2。8GBが2つ入っている。パフォーマンス的にはうれしい配慮なのだが、32GBにする時は、どちらも外すこととなり、ちょっともったいない。16GB×1でも良かったのではないだろうか。左側にM.2 2280スロットが2つ。PCIe 3.0なので爆速ではなく、できればPCIe 4.0の物に入れ替えたい感じだ。
ノイズや振動はあるにはあるが、耳を近づければ……の範囲であり、机の上などへ普通に設置し、少し離れれば気にならないレベルとなる。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると主に背面から生ぬるい熱気が出る。とは言え、十分抑えられており、これも許容範囲だろう。
分解のし易さ、2.5Gigabit Ethernet×2、USB4×2、M.2 2280×2、OCuLinkなど、拡張性は十分以上、ご覧のように完成度も高く、なかなかのミニPCだ。
価格の割に強力なCPUとGPU!
初期起動時、壁紙の変更やアプリのプリインストールなどは特になし。Windows 11 Proの標準のまま。構成が構成なだけに普通の使い方ならサクサク動く。
M.2 2280 SSD 512GBは「ZETTASTONE CP200 512GB」。本連載では初めて見るSKUだが、どうやらこれのようだ。確かにPCIe 3.0 SSDとあり、シーケンシャルリード3,500MB/s、シーケンシャルライト3,100 MB/s。CrystalDiskMarkのスコアとほぼ一致する。C:ドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられ空き430GB。
2.5Gigabit EthernetはIntel Ethernet Controller I226-V×2、Wi-FiもIntel Wi-Fi 6 AX200、BluetoothもIntel製と、AMD搭載機にしては珍しくオールIntel構成になっている。これならほかのOSを動かす時も安心だろう。
ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。
7月に同社のRyzen 5 6600H搭載機、「NucBox M6」(約4万8,273円)をご紹介したが、GPUがRadeon 680MかRadeon 660Mかの違いだろうか、本機の方が明らかにパフォーマンスが高くなっている。
PCMark 10 v2.2.2701 | |
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PCMark 10 Score | 6,794 |
Essentials | 10,447 |
App Start-up Score | 14,454 |
Video Conferencing Score | 8,715 |
Web Browsing Score | 9,052 |
Productivity | 9,277 |
Spreadsheets Score | 11,425 |
Writing Score | 7,533 |
Digital Content Creation | 8,780 |
Photo Editing Score | 14,812 |
Rendering and Visualization Score | 9,009 |
Video Editting Score | 5,073 |
3DMark v2.29.8294 | |
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Time Spy | 2,651 |
Fire Strike Ultra | 1,813 |
Fire Strike Extreme | 3,349 |
Fire Strike | 6,564 |
Sky Diver | 23,250 |
Cloud Gate | 33,145 |
Ice Storm Extreme | 163,128 |
Ice Storm | 193,096 |
Cinebench R23 | |
---|---|
CPU | 13,140(4位) |
CPU(Single Core) | 1,533(1位) |
[Read]
SEQ 1MiB (Q= 8, T= 1): 3528.150 MB/s [ 3364.7 IOPS] < 2376.46 us>
SEQ 1MiB (Q= 1, T= 1): 2591.790 MB/s [ 2471.7 IOPS] < 404.31 us>
RND 4KiB (Q= 32, T= 1): 583.818 MB/s [ 142533.7 IOPS] < 222.48 us>
RND 4KiB (Q= 1, T= 1): 71.231 MB/s [ 17390.4 IOPS] < 57.40 us>
[Write]
SEQ 1MiB (Q= 8, T= 1): 3113.080 MB/s [ 2968.9 IOPS] < 2689.62 us>
SEQ 1MiB (Q= 1, T= 1): 2768.990 MB/s [ 2640.7 IOPS] < 378.34 us>
RND 4KiB (Q= 32, T= 1): 422.105 MB/s [ 103053.0 IOPS] < 310.18 us>
RND 4KiB (Q= 1, T= 1): 180.089 MB/s [ 43967.0 IOPS] < 22.61 us>
以上のようにGMKtec「NucBox M7」は、Ryzen 7 PRO 6850H/16GB/512GBを搭載したミニPCだ。パフォーマンスは上記の通りなかなか高く、加えて2.5Gigabit Ethernet×2、USB4×2、M.2 2280×2、OCuLinkと拡張性も高い。これだけ揃って5万円台から買えるのだからうれしい限りだ。
10万円は厳しいが、5万円+α程度でハイパフォーマンスなミニPC、そして後付けで強力なGPUを……っと思っているユーザーに、使ってほしい1台と言えよう。