西川和久の不定期コラム

まるでRyzenのバーゲンセールだな。5万円ちょいのOCuLink対応ミニPC「GMKtec NucBox M7」

 GMKtecは、Ryzen 7 PRO 6850Hを搭載し、OCuLinkにも対応したミニPC「NucBox M7」を販売中だ。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。なお同時に届いた「NucBox M7 Pro」も続けて掲載予定なので、どこが違うか?などを注目してご覧いただければと思う。

Ryzen 7 PRO 6850Hを搭載しOCuLinkへも対応!

 本連載の7月にRyzen 5 6600Hを搭載した同社の「NucBox M6」をご紹介したが、型番からも分かるように、本機はそのやや上位モデルに相当する。

 大きな違いは搭載プロセッサとOCuLinkの有無。USB4が1つか2つか……という感じだろうか。ベアボーン、16GB/512GB、32GB/1TBの3モデルある中、16GB/512GBモデルが届いたのでご紹介したい。主な仕様は以下の通り。

GMKtec「NucBox M7」の仕様
プロセッサRyzen 7 PRO 6850H(8コア16スレッド、クロック3.2〜4.7GHz/キャッシュ 16MB/L3、TDP 45W)
メモリ16GB(8GB/DDR5-4800×2/SO-DIMM最大64GB)
ストレージM.2 2280 SSD 512GB/PCIe 3.0(M.2スロット×2、1つ空き)
OSWindows 11 Pro(23H2)
グラフィックスRadeon 680M(12 core)/DisplayPort、HDMI 2.1、Type-C×2
ネットワーク2.5Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB 4×2、USB 3.2 Gen 2×2、USB 2.0×2、3.5mmジャック、OCuLink
サイズ/重量123×112×43.2mm、(実測)636g
価格6万3,980円(17日時点のクーポン利用で5万1,980円)

 プロセッサはZen 3+アーキテクチャ、TSMC 6nm FinFETプロセスのRyzen 7 PRO 6850H。8コア16スレッド、クロック3.2〜4.7GHz、キャッシュ 16MB/L3、TDP 45W。Cinebench R23のマルチコアが13,140と結構速い。

 メモリはDDR5-4800の8GB×2で計16GB。最大64GBまで対応する。ストレージはPCIe 3.0のM.2 2280 SSD 512GB。M.2スロットは2つあり1つ空き。またスロット自体はPCIe 4.0対応だ。従って、さらに速いSSDも搭載可能となる。OSはWindows 11 Pro。23H2だったので、この範囲でWindows Updateを適応し、評価した。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 680M(12 core)、外部出力用としてDisplayPort、HDMI 2.1、USB Type-C×2の4ポートが用意されている。同社によると、その性能はGeForce GTX 1050 Tiに近いとしている。

 ネットワークは、2.5Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2。その他のインターフェイスは、USB 4×2、USB 3.2 Gen 2 USB 3.2 Gen 2×2、USB 2.0×2、3.5mmジャック、そしてOCuLink。

 筆者は以前から記事にしているが、OCuLinkがあると、強力なGPUを外部に接続可能となる。ミニPCでもハイエンドなゲームやAIなどが楽しめる。USB4はDisplayPort 1.4/PD 100W+入力、PD 15W出力に対応している。

 サイズは123×112×43.2mm、重量(実測)636g。価格はAmazonで6万3,980円、クーポン利用で5万1,980円と、内容を考えると結構安い。安くて低性能では困るが、後半のベンチマークテストからも分かるようになかなかのハイパフォーマンス。お買い得ではないだろうか!?

前面。OCuLink、USB4、USB 3.2 Gen 2×2、3.5mmジャック、電源ボタン
背面USB 3.2 Gen 2×2、DisplayPort、HDMI、2.5Gigabit Ethernet×2、USB4、電源入力
裏面とiPhone 13 Pro。四隅にゴム足とVESマウンタ用のネジ穴など。iPhone 13 Proとの比較からも分かるように、ミニPCとしては少し大きめ
付属品。ACアダプタ(サイズ約133×55×33mm/重量412g/出力19V、6.32A)、HDMIケーブル、VESAマウンタ
BIOS / Main。起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced
重量は実測で636g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB4があるのでUSB Type-Cケーブル1本で接続可能

 筐体は基本グレー。天板だけ少し変わっており、スケルトンで中央にファンが見える。大きさはiPhone 13 Proとの比較からも分かるように、ミニPCとしては大きめ。重量は実測で636gだが、ACアダプタを加えると1kgを超える。

 前面は、OCuLink、USB4、USB 3.2 Gen 2×2、3.5mmジャック、電源ボタン。リアは、USB 3.2 Gen 2×2、DisplayPort、HDMI、2.5Gigabit Ethernet×2、USB4、電源入力を配置。OCuLinkコネクタはケーブルが邪魔になるため、できれば背面側に装備してほしかった。

 裏は四隅にゴム足とVESマウンタ用のネジ穴など。付属品は、ACアダプタ(サイズ約133×55×33mm/重量412g/出力19V, 6.32A)、HDMIケーブル、VESAマウンタとなる。

 いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続は、USB4があるのでType-Cケーブル一本で接続可能。USB4が2つあるのはなかなか良い。BIOSは起動時[DEL]キーで表示する。

 内部へのアクセスは、まず透明の天板を左に回せば外れる。すると四隅にネジがあり、それを外せば内部にアクセス可能となる。この時、ファンの電源ケーブルが繋がっているので、強く引っ張らないよう、要注意!

 内部は(写真)右側にSO-DIMMスロット×2。8GBが2つ入っている。パフォーマンス的にはうれしい配慮なのだが、32GBにする時は、どちらも外すこととなり、ちょっともったいない。16GB×1でも良かったのではないだろうか。左側にM.2 2280スロットが2つ。PCIe 3.0なので爆速ではなく、できればPCIe 4.0の物に入れ替えたい感じだ。

天板を左へ回せば外れ、その下にネジが4本。これを外せば内部にアクセスできる
右側にSO-DIMMスロット×2、左側と中央にM.2 2280スロット×2

 ノイズや振動はあるにはあるが、耳を近づければ……の範囲であり、机の上などへ普通に設置し、少し離れれば気にならないレベルとなる。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると主に背面から生ぬるい熱気が出る。とは言え、十分抑えられており、これも許容範囲だろう。

 分解のし易さ、2.5Gigabit Ethernet×2、USB4×2、M.2 2280×2、OCuLinkなど、拡張性は十分以上、ご覧のように完成度も高く、なかなかのミニPCだ。

価格の割に強力なCPUとGPU!

 初期起動時、壁紙の変更やアプリのプリインストールなどは特になし。Windows 11 Proの標準のまま。構成が構成なだけに普通の使い方ならサクサク動く。

 M.2 2280 SSD 512GBは「ZETTASTONE CP200 512GB」。本連載では初めて見るSKUだが、どうやらこれのようだ。確かにPCIe 3.0 SSDとあり、シーケンシャルリード3,500MB/s、シーケンシャルライト3,100 MB/s。CrystalDiskMarkのスコアとほぼ一致する。C:ドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられ空き430GB。

 2.5Gigabit EthernetはIntel Ethernet Controller I226-V×2、Wi-FiもIntel Wi-Fi 6 AX200、BluetoothもIntel製と、AMD搭載機にしては珍しくオールIntel構成になっている。これならほかのOSを動かす時も安心だろう。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro標準
デバイスマネージャー/主要なデバイス。M.2 2280 SSD 512GBは「ZETTASTONE CP200 512GB」。2.5Gigabit EthernetはIntel Ethernet Controller I226-V×2、Wi-FiもIntel Wi-Fi 6 AX200、BluetoothもIntel製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約475GBが割り当てられている
AMD Software: Adrenalin Edition

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。

 7月に同社のRyzen 5 6600H搭載機、「NucBox M6」(約4万8,273円)をご紹介したが、GPUがRadeon 680MかRadeon 660Mかの違いだろうか、本機の方が明らかにパフォーマンスが高くなっている。

PCMark 10 v2.2.2701
PCMark 10 Score6,794
Essentials10,447
App Start-up Score14,454
Video Conferencing Score8,715
Web Browsing Score9,052
Productivity9,277
Spreadsheets Score11,425
Writing Score7,533
Digital Content Creation8,780
Photo Editing Score14,812
Rendering and Visualization Score9,009
Video Editting Score5,073
3DMark v2.29.8294
Time Spy2,651
Fire Strike Ultra1,813
Fire Strike Extreme3,349
Fire Strike6,564
Sky Diver23,250
Cloud Gate33,145
Ice Storm Extreme163,128
Ice Storm193,096
Cinebench R23
CPU13,140(4位)
CPU(Single Core)1,533(1位)
CrystalDiskMark 8.0.5
[Read]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  3528.150 MB/s [   3364.7 IOPS] <  2376.46 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2591.790 MB/s [   2471.7 IOPS] <   404.31 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   583.818 MB/s [ 142533.7 IOPS] <   222.48 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):    71.231 MB/s [  17390.4 IOPS] <    57.40 us>

[Write]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  3113.080 MB/s [   2968.9 IOPS] <  2689.62 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2768.990 MB/s [   2640.7 IOPS] <   378.34 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   422.105 MB/s [ 103053.0 IOPS] <   310.18 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):   180.089 MB/s [  43967.0 IOPS] <    22.61 us>

OCuLinkでGeForce RTX 4060Ti(16GB)を接続。問題なく動作した

 以上のようにGMKtec「NucBox M7」は、Ryzen 7 PRO 6850H/16GB/512GBを搭載したミニPCだ。パフォーマンスは上記の通りなかなか高く、加えて2.5Gigabit Ethernet×2、USB4×2、M.2 2280×2、OCuLinkと拡張性も高い。これだけ揃って5万円台から買えるのだからうれしい限りだ。

 10万円は厳しいが、5万円+α程度でハイパフォーマンスなミニPC、そして後付けで強力なGPUを……っと思っているユーザーに、使ってほしい1台と言えよう。