西川和久の不定期コラム

32GBメモリで実用性↑。Ryzen 9搭載のパワフルなミニPC「GMKtec NucBox M7 Pro」

 前回はRyzen 7 PRO 6850H搭載の「NucBox M7」をご紹介したが、上位モデルに相当する「NucBox M7 Pro」も同時に送られてきたので試用レポートをお届けしたい。どれだけ違うのか興味津々と言ったところ。

M7 ProとM7はRyzen 9とRyzen 7の違いのみ

 前回、Ryzen 7 PRO 6850H搭載の「NucBox M7」をご紹介したが、今回はRyzen 9 PRO 6950H搭載機となる。プロセッサ的には、クロックが3.2〜4.7GHzか3.3〜4.9GHzかが主な違い程度。若干Ryzen 9 PRO 6950Hの方が高い。ベンチマークテストの結果もクロック比分+α的な感じとなる。

 ただ、メモリとストレージが倍。これでAmazonだと1万9,600円の差となる。微妙な感じだが主な仕様は以下の通り。プロセッサ、メモリ、ストレージ以外はM7と同じだ。

GMKtec「NucBox M7 Pro」の仕様
プロセッサ Ryzen 9 PRO 6950H(8コア/16スレッド、クロック3.3〜4.9GHz/キャッシュ 16MB/L3、TDP 45W)
メモリ32GB(16GB/DDR5-4800×2/SO-DIMM最大64GB)
ストレージM.2 2280 SSD 1TB/PCIe 3.0(M.2スロット×2、1つ空き)
OSWindows 11 Pro(23H2)
グラフィックスRadeon 680M(12 core)/DisplayPort、HDMI 2.1、Type-C×2
ネットワーク2.5Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2
インターフェイスUSB 4×2、USB 3.2 Gen 2×2、USB 2.0×2、3.5mmジャック、OCuLink
サイズ/重量123×112×43.2mm、(実測)636g
価格8万3,580円

 プロセッサはZen 3+アーキテクチャのRyzen 9 PRO 6950H。8コア16スレッド、クロック3.3〜4.9GHz、キャッシュ 16MB、L3、TDP 45W。Cinebench R23のマルチコアがM7/Ryzen 7 PRO 6850Hの13,140よりさらに上がり13,321となる。

 メモリは16GB/DDR5-4800×2の計32GB。最大64GBまで対応するが、特に増設する必要もないだろう。前回8GB×2で16GBだったこともあり、この点は経済的だ。

 ストレージはM.2 2280 SSD 1TB/PCIe 3.0。M.2 2280スロット自体は2つあるのでもう1基追加できる。もちろんM.2はPCIe 4.0にも対応。さらにに速いSSDも使用可能だ。OSはWindows 11 Pro。23H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適応し評価した。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 680M(12コア)。外部出力用にDisplayPort、HDMI 2.1、USB Type-C(USB4)×2を装備する。

 ネットワークは2.5Gigabit Ethernet×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、USB 4×2、USB 3.2 Type-A×2、USB 2.0×2、3.5mmジャック、OCuLink。後ほどご紹介するが、OCuLinkがあるので、外付けで強力なGPUを接続可能。ミニPCだからと諦める必要はなく、ゲームやAIが楽しめる。

 サイズ123×112×43.2mm、重量(実測)636g。つまり、本当nプロセッサとメモリとSSD容量の違いがM7とM7 Proとなる。

 価格は8万3,580円(Amazon調べ)。Ryzen 7と9で後者の方が強うそうだが、ベンチマークテストを見る限り少し速い程度だ。これらならM7でも……っと思ってしまう。PCに限らず、性能と価格はリニアに比例しないので、その少しの差がという話もあるにはある(笑)。

前面。OCuLink、USB4、USB 3.2 Gen 2×2、3.5mmジャック、電源ボタン
USB 2.0×2、DisplayPort、HDMI、2.5Gigabit Ethernet×2、USB4、電源入力
裏面とiPhone 13 Pro。四隅にゴム足。VESAマウンタ用のネジ穴がある。ミニPCとしては少し大きめ
付属品。ACアダプタ(サイズ約133×55×33mm/重量412g/出力19V/6.32A)、HDMIケーブル、VESAマウンタ
BIOS / Main。起動時[DEL]キーで表示
BIOS / Advanced
重量は実測で636g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB4があるのでType-Cケーブル1本で接続可能。前面側でも背面側でもOK

 筐体はM7と同じものが使われており、2つ並べるとどっちがどっちか分からなくなる。そう言った意味では写真はM7のを流用可能だが、もちろんM7 Proでちゃんと撮影しなおしている(笑)。

 前面は、OCuLink、USB4、USB 3.2 Gen 2×2、3.5mmジャック、電源ボタン。背面は、USB 2.0×2、DisplayPort、HDMI、2.5Gigabit Ethernet×2、USB4、電源入力。コネクタの色でお分かりだとは思うが、前面側がUSB 3.2 Gen 2×2、背面側にUSB 2.0×2となっている。これは使い方によっては逆の方がいいかも知れない。またM7の時も書いたが、OCuLinkは背面にあった方がケーブルが邪魔にならないように思う。

 裏は4隅にゴム足と、中央辺りにVESAマウンタ用のネジ穴などが並ぶ。付属品はACアダプタ(サイズ約133×55×33mm/重量412g/出力19v, 6.32A)、HDMIケーブル、VESAマウンタ。電源は120W。ちなみに本機のUSB4はPD 100W+入力にも対応しており(M7も同様)、このACアダプタでなくても動きそうなのだが、さすがに120Wのアダプタは手持ちがなく試せていない。

 USB4があるので、いつものキーボード付きモバイルモニターへはType-Cケーブル1本で接続可能。BIOSは起動時[DEL]キーで表示する。

 内部へのアクセスはM7同様、トップカバーを左に回して外し、その下にネジ4本があるので外せばOK。M7と違い、メモリにCrucial製が使われている点。M.2 2280スロットは1つは左側、もう1つは中央にある。

天板を左へ回すとこんな感じで天板が外れる。下にネジが4本。これを外せば内部にアクセスできる
右側にSO-DIMMスロット×2、Crucial製だ。M7の8GB×2はCrucial製ではなかった。左側と中央にM.2 2280スロット×2

 ベンチマークテストなど負荷をかけると、少しファンの音が気になる。また背面から結構な暖かい空気も出る。この点はM7と少し違う。と言っても間近であればの話であり、通常の設置場所であれば気にならない範囲だろう。

Ryzen 7 PRO 6850HとRyzen 9 PRO 6950Hの差はわずか!?

 初期起動時、壁紙の変更やアプリのプリインストールなどは特になく、Windows 11 Proの標準のまま。これだけのスペックなので遅いはずがなく、快適に作動する。

 M.2 2280 1TB SSDは「ZETTASTONE CP200 1024GB」。ここによると、シーケンシャルリード3,500MB/s、シーケンシャルライト3,100MB/s。CrystalDiskMarkの結果もそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで約952GBが割り当てられ空き895GB。

 2.5Gigabit EthernetのコントローラはIntel Ethernet Controller I226-V×2。Wi-FiはIntel Wi-Fi 6 AX200、そしてBluetoothもIntel製だ。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro標準
デバイスマネージャー/主要なデバイス。M.2 2280 1TB SSDは「ZETTASTONE CP200 1024GB」。2.5Gigabit EthernetはIntel Ethernet Controller I226-V×2。Wi-FiはIntel Wi-Fi 6 AX200、そしてBluetoothもIntel製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約952GBが割り当てられている
AMD Software: Adrenalin Edition

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。比較はもちろんRyzen 7 PRO 6850H搭載搭載のM7。

 ご覧のようにほぼ全てで上回っているが、僅差と言えば僅差。最大クロックの差分程度の違いとなる。性能だけ見ればM7の方がコストパフォーマンスがいいような気がしないでもないが、メモリとストレージが倍増しているので実用性では上。換装する手間やリスクを考えると、最初からM7 Proを選んもいいだろう。

PCMark 10の結果
3DMarkの結果
Cinebench R23の結果
CrystalDiskMark 8.0.5
[Read]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  3539.850 MB/s [   3375.9 IOPS] <  2367.20 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2558.929 MB/s [   2440.4 IOPS] <   409.48 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   605.525 MB/s [ 147833.3 IOPS] <   212.60 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):    70.713 MB/s [  17263.9 IOPS] <    57.82 us>

[Write]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  3154.584 MB/s [   3008.4 IOPS] <  2654.37 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2787.632 MB/s [   2658.5 IOPS] <   375.81 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   429.683 MB/s [ 104903.1 IOPS] <   304.78 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):   180.046 MB/s [  43956.5 IOPS] <    22.63 us>

 最後にせっかくOCuLinkがあるので、GeForce RTX 4060 Ti(16GB)を接続し、3DMarkのTime Spyを動かしてみた。CPU内蔵GPUの2,823に対して12,503と桁違いに速い。さすがにGPUだけで一般的なミニPCが買える価格(6万9,800円)なだけのことはある。

OCuLinkを使いGeForce RTX 4060 Ti(16GB)を接続。無事作動
3DMark / Time Spy。iGPUが2,823に対して12,503。さすがに速い

 外部GPUはUSB4でも接続可能であるが、OCuLinkより転送速度が遅く、加えて相性問題や突然認識しなくなったり機種や環境を選ぶ。この関係で、筆者は全てUSB4からOCuLinkへ切り替えたほどだ。

 OCuLinkはM.2の信号(PCI Express 4.0 x4)をそのまま引き出しているので、相性問題などはまず発生しない。ホットプラグができない欠点があるものの、ミニPCの運用形態を考えるとこの点は無視できるだろう。最近OCuLink対応のミニPCがメーカー問わず出ているが、流行り出しているのだろうか?


 以上のようにGMKtec「NucBox M7 Pro」は、Ryzen 9 PRO 6950H/32GB/1TBを搭載したミニPCだ。2.5Gigabit Ethernet、USB4、OCulinkに対応しミニPCとしては拡張性も十分ある。

 下位のM7と比較してパフォーマンスはわずかな向上だが、メモリとストレージが倍増している。当初よりアプリを複数立ち上げたり、大容量のアプリやデータを扱う使い方を視野に入れているなら、最初からM7 Proを選んだほうが安心できるだろう。そして「やっぱり強そうなRyzen 9!」というユーザーにお勧めしたい1台と言えよう。