Hothotレビュー

税別2万円を切る7型UMPC、ドン・キホーテ「情熱価格プラス NANOTE」

~テレワーク端末として使えるのかを検証

ドン・キホーテ「情熱価格プラス NANOTE」

 株式会社ドン・キホーテは、プライベートブランド「情熱価格プラス」の新モデルとなる、7型2in1モバイルPC「NANOTE」を、5月1日に発売した。これまでも、同社は安価なPCを発売してきているが、そちらと同様にNANOTEも税別価格が19,800円と、非常に安価な点が大きな特徴となっている。しかも、近年多くの製品が登場し話題となっている、小型ディスプレイ搭載のUMPCというカテゴリの製品である点も注目度が高い。今回、実際にNANOTEを購入したので、ハード面や使い勝手を紹介したいと思う。

UMPCとしてオーソドックスな外観

 ではまず、NANOTEの外観からチェックしていこう。非常に安価な製品ということで、外観の品質はそれほど期待できないと思っていたが、実際の製品を見ると、思ったほど安っぽい印象は受けない。筐体は樹脂製なので高級感は感じられないものの、シルバーで塗装された筐体からは一見して樹脂とわかるようなチープさは感じられない。デザインもUMPCとして比較的オーソドックスではあるが、天板などにロゴなど目立つ装飾が施されていない部分も好感が持てる。

 また、本体の剛性も十分で、やや強い力でひねってみても本体がゆがむといったことはなかった。公称のスペックとして堅牢性についての言及はないが、これなら外にも安心して持ち出せそうだ。

ディスプレイを開いて正面から見た様子。チープさは感じられない
天板。本体カラーはシルバーで、一切装飾がなくシンプルな印象
正面
左側面
背面
右側面
底面

 ただ、底面のフタは側面付近がわずかに盛り上がっていたり、底面の足4個が同時に接地せずがたつくといったように、細かなところを見るといろいろと粗い部分が見えてくる。こういった部分は安価な製品らしいとも言えるが、できれば細かな部分にも気を配ってもらいたい。

 サイズは181×113.6×19.6mm(幅×奥行き×高さ)。7型UMPCとしては標準的なサイズで、十分にコンパクト。両手で持って使う場合でも、横幅が大きすぎてキーボードに指が届かないといったこともない。

 重量は公称で約520gだが、実測では540.5gと、公称よりも20gほど重かった。7型UMPCとしてはほぼ標準的な重さではあるが、実際に本体を手に持つとやや重いという印象を受ける。とは言え、許容範囲内だろう。

フットプリントは181×113.6mm(幅×奥行き)とUMPCらしいコンパクトさだ
両手で持って問題なくキーボードが扱える
右側面の裏蓋はやや盛り上がっており、側面とフィットしていない
こちらは左側面。こちらは裏蓋が盛り上がっておらず、側面とフィットしている
重量は実測で540.5g。実際に手にすると、サイズが小さいこともあってややずっしり重く感じる

タッチ対応7型WUXGA液晶を搭載

 ディスプレイは、WUXGA(1,920×1,200ドット)表示対応の7型液晶を採用。10点マルチタッチ対応のタッチパネルも搭載しており、タッチ操作が可能となっている。また、ディスプレイは360度開閉可能となっており、クラムシェルスタイル、テントスタイル、スタンドスタイル、タブレットスタイルと4種類の形状で利用可能だ。ヒンジはややトルクがきついが、まずまずスムーズに開閉できる。クラムシェルスタイルで利用する場合でも、ぐらつきはほとんど感じない。

1,920×1,200ドット表示対応の7型液晶を採用。視野角は十分広いが、光沢液晶のため映り込みは気になる。また10点マルチタッチ対応のタッチパネルも搭載する
ディスプレイは360度開閉するため、クラムシェルスタイル、テントスタイル、スタンドスタイル、タブレットスタイルの4形状で利用可能

 液晶パネルの種類は非公開だが、TNパネルのような視野角の狭さは感じられず、VAパネルやIPSパネルに近い広視野角が確保されている。発色は、このクラスとしてはじゅうぶん。特別鮮やかというわけではないものの、写真や動画も申し分ない品質で表示できる。

ディスプレイの発色はまずまず鮮やかで、写真や動画の視聴も問題ない

 ただ、ディスプレイ表面は光沢処理となっており、外光の映り込みがやや気になる。加えて、ディスプレイ表面には標準で保護シートが貼られているが、この保護シートは指紋がつきやすく、タッチ操作を行なっていると指紋の痕が気になる。

 7型で1,920×1,200ドット表示対応ということで、気になるのが文字の小ささだろう。標準設定では文字サイズが200%に設定されているため、とくに文字が見づらいと感じることはなかったが、それでは表示領域の狭さがかなり気になる。逆に文字サイズを100%に設定すると、アイコンの文字は1mmを下回る小ささとなり、非常に見づらくなる。このあたりは個人差もあるので、好みに応じて設定すればいいと思うが、個人的には150%以上で使いたいと感じた。

等倍表示ではアイコンの文字サイズが1mmに満たず、拡大表示は不可欠という印象

キーボードは配列が非常に変則的で慣れが必要

 本体の外観やディスプレイまわりに関しては、細かく気になる部分はあるものの、特別大きな問題は感じなかった。しかし、キーボードに関しては大きく印象が変わる。

 NANOTEのキーボードは、アルファベットキーにかぎっては、キーピッチが約16mmと比較的大きく取られており、ストロークも十分な深さがあり、クリック感もしっかりしているため、タイピングもまずまず快適という印象だ。

 しかし、そのほかの部分はかなり気になる部分が多い。絶対的なキーの数が少ないため仕方がない部分もある。とは言え、右下カーソルキー付近やEnterまわりのキー配列がかなり変則的なものとなっていたり、多くのキーがFnキー併用となっているなど、かなり扱いづらく感じる。

 配列の問題は、もともとキー数の少ないUMPCのキーボードでは変則的な仕様のものも少なくないし、最終的には慣れでどうにかなるものなので、まだがまんできるかもしれない。しかし、Fnキーとの併用についてはかなり残念な部分がある。それは、無変換キーがFn+Altキーに、TabキーがFn+Qキーにそれぞれ割り当てられている点だ。これによって、Alt+Tabの操作が行なえなくなっている。筆者はウィンドウ操作にAlt+Tabを多用しているので、この点はかなり気になった。

 もし快適なタイピングを行ないたいなら、外付けキーボードの用意は必須で、本体のキーボードは外出時などで外付けキーボードが利用できない場合のみ利用する、といった割り切りが必要だろう。

キーボードは非常に変則的な配列で、操作には慣れが必要
アルファベットキーはキープッチが約16mmと、本体サイズを考えるとまずまずゆったり
ストロークも十分深く、クリック感もしっかりしている
Enter付近やカーソル周辺のキー配列はかなり変則的で、操作に戸惑う場面が多い
Fnキーとの併用となるキーも非常に多く、その点でも扱いづらい

 ポインティングデバイスは、光学式ポインティングデバイスを採用。スペースキーを2分割するように配置されており、手前には物理クリックボタンも用意。この光学式ポインティングデバイスでのカーソル操作はなかなか軽快で、キーボードのような不満はない。もちろんNANOTEのディスプレイはタッチ操作対応のため、タッチ操作との併用でさらに操作性を高められるのもうれしい。

スペースキー下部に光学式ポインティングデバイスを搭載。独立クリックボタンも用意され、こちらは見た目以上に扱いやすい印象だ

スペックは価格相応

 NANOTEの搭載CPUは、開発コードネーム”Cherry Trail”ことAtom x5-Z8350。低価格タブレットPCやスティックPCなどで採用例の多いCPUで、性能的にもそれなり、ということになる。メモリは標準で4GBのLPDDR3メモリを搭載しており、増設は不可。メモリ容量も必要最小限といったところだ。内蔵ストレージは64GBのeMMCを採用している。

 無線機能は、IEEE 802.11b/g/n準拠無線LANと、Bluetooth 4.0を搭載。Bluetoothはともかく、無線LANはせめて5GHz対応のIEEE 802.11a/b/g/nにしてもらいたかったように思うが、この点も価格相応と言っていいだろう。

 外部ポートは、右側面にmicroSDカードスロット、ヘッドフォン端子、Micro HDMI、USB 3.0、USB Type-Cを用意。USB Type-Cは電源ポートにもなっており、付属ACアダプタを接続することで給電および内蔵バッテリの充電が可能。また、汎用のUSB ACアダプタを利用しての充電も可能だ。付属ACアダプタの出力は5V/3Aとなっており、試したかぎりでは5V/2A出力対応の汎用USB ACアダプタも問題なく利用できた。ただし、USB Type-CはUSB 2.0対応となっており、映像出力は非対応だ。

右側面にmicroSDカードスロット、ヘッドフォン端子、Micro HDMI、USB 3.0、USB Type-C(USB 2.0準拠)の各ポートを用意
付属ACアダプタは出力が5V/3A
ACアダプタはUSB Type-Cに接続して利用する
汎用のUSB ACアダプタを利用しても給電および内蔵バッテリの充電が可能だった

 キーボード右上の電源ボタンは指紋認証センサー一体型のように見えるが、生体認証機能は非搭載。このほか、ディスプレイ左側面ベゼル部に約30万画素のWebカメラを搭載している。

ディスプレイ左側面に30万画素のWebカメラを搭載
キーボード右上の電源ボタンは指紋認証センサー一体型のように見えるが、単なる電源ボタンで生体認証機能は非搭載

 付属品は、ACアダプタとUSB Type A-Cケーブル、Micro HDMI-HDMI変換アダプタが同梱となる。ただし、Micro HDMI-HDMI変換アダプタは横幅が大きく、隣のUSBポートと干渉してしまうため、HDMI出力とUSBを同時に利用したい場合には別途Micro HDMIケーブルを用意したほうがいいだろう。

ACアダプタ以外に、USB Type A-CケーブルとMicro HDMI変換アダプタを同梱
Micro HDMI変換アダプタは横幅が大きく、隣のUSBポートと干渉するので注意

さすがに性能に多くを望めない

 では、ベンチマークテストの結果を紹介しよう。今回は、UL LLCの「PCMark 10 v2.1.2177」、「PCMark 8 v2.8.704」、Maxonの「CINEBENCH R20.060」、「CIHENEBCH R15.0」の4種類だ。

【表1】ベンチマーク結果
NANOTE
CPUAtom x5-Z8350(1.44/1.92GHz)
チップセット
ビデオチップIntel HD Graphics
メモリLPDDR3 SDRAM 4GB
ストレージ64GB eMMC
OSWindows 10 Home 64bit
PCMark 10 v2.1.2177
PCMark 10 Score853
Essentials2648
App Start-up Score2309
Video Conferencing Score3426
Web Browsing Score2348
Productivity1099
Spreadsheets Score957
Writing Score1263
Digital Content Creation580
Photo Editing Score695
Rendering and Visualization Score326
Video Editting Score863
PCMark 8v2.8.704
Home Accelarated 3.01399
Creative accelarated 3.01543
Work accelarated 2.0エラーで計測できず
Storage4313
CINEBENCH R20.060
CPU197
CPU (Single Core)63
CINEBENCH R15.0
OpenGL(fps)8.07
CPU96
CPU (Single Core)30

 結果を見ると、さすがに性能面はかなり厳しいと言える。もちろんこれでスペック相応だが、現在主流のPCとは比較にならないほど性能は低い。とは言え、これ以上の性能を求めるとしたら、2万円未満という価格は実現不可能なのも間違いない。そもそもこういったものであると考えるしかない。

 ベンチマーク結果はともかく、実際の使用感はどうなのか。まず、OSの起動に関してだが、こちらは思ったほど時間がかからないという印象だ。

 それに対し、アプリはやや動作がもっさりしているという印象で、ブラウザでも起動だけでもかなり待たされる印象だ。ただ、起動してしまえばそれほど不満なく利用できる。通常のホームページの閲覧は大きな不満はなく、YouTubeのフルHDストリーミング動画もデータを読み込んでしまえば問題なく再生できる。

 このほか、別途インストールしたWordやExcelなどのOfficeアプリは、思った以上に問題なく利用できた。マクロを活用して大容量データを処理するという場合にはかなり厳しいかもしれないが、テキストベースでの入力や簡単な編集などであれば、問題なくこなせるだろう。

 ところで、利用していてホームページやストリーミング動画のデータ読み込みの遅さがかなり気になったので通信速度を計測してみたところ、通常は上り下りとも300~500Mbpsの速度が出ているが、NANOTEの無線LAN経由では下り3~5Mbps、上りは3Mbps前後しか速度が出ない。これは内蔵無線LANが2.4GHz帯域にしか対応しないためとも思ったが、それにしてもあまりにも遅い。

 試しに手持ちのIEEE 802.11ac準拠のUSB無線LANアダプタを利用してみたところ、下り106Mbps、上り94Mbpsとまずまずの速度が発揮された。また、ホームページの表示速度やYouTubeなどのストリーミング動画の読み込み速度も大きく改善した。そのため、Webまわりの快適度を高めたいなら、5GHz帯域対応のUSB無線LANアダプタを利用するなどの工夫をおすすめしたい。

 続いてバッテリ駆動時間だ。NANOTEは公称の駆動時間は公表されていないが、今回Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%に設定し、キーボードバックライトをオフ、無線LANとWWANをいずれも有効にした状態で、PCMark 10のBatteryテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」を利用して計測したところ、5時間14分を記録した。UMPCとしてはもう少し持ってくれるとうれしいが、まずまずといったところではないだろうか。

テレワーク用のPCとして活用してみた

 現在、新型コロナウイルスの影響で、多くの企業がテレワークを推奨している。そのため、テレワーク用のPCを急遽購入しようと考えている人も多いと思う。そこで、NANOTEをテレワーク用のPCとして活用できるか試してみた。

 まず、テレワークを行なうということは、なるべく快適な作業環境を確保する必要がある。はっきり言って、NANOTEは性能面はともかく、ディスプレイサイズが小さくキーボードは変則的な配列と、快適な作業をこなすにはあまりにも厳しい。しかし、NANOTEにはMicro HDMI出力があるため外部ディスプレイを使えるし、USB接続やBluetooth接続のキーボードとマウスも利用できる。つまり、NANOTEを小型デスクトップPC相当として利用してしまおうというわけだ。

 今回は、24型フルHD液晶ディスプレイに、Bluetooth接続の高級キーボード「Happy Hacking Keyboard Professional HYBRID Type-S」と、日本マイクロソフトのBluetoothマウス「Microsoft Precision Mouse」を用意し接続してみた。もちろん、これらを接続したからといって性能が向上するわけではないが、文字の視認性はもちろん、キーボード入力やマウスの操作性が大幅に向上したことで、かなり快適な利用が可能となった。

 先に紹介しているように、ExcelやWordなどのOfficeアプリは、ややもたつく場面もあるが、そこそこ快適に利用できるため、外部ディスプレイとキーボード、マウスの用意だけで快適性が大幅に高まり、NANOTEに対する印象が大きく改善された。

NANOTEに外部ディスプレイ、Bluetoothキーボード、Bluetoothマウスを接続し、テレワーク用PCとして利用できるか無理やり検証。キーボードとマウスで操作性は格段に向上し、外部ディスプレイで視認性も高まったが、さすがにデスクトップ並の性能は期待できない

 また、Web会議ツールのZoomも利用してみたが、こちらも思っていたよりも問題なく利用可能だった。Zoomの内蔵Webカメラは画角が狭いのでやや遠目に本体を置く必要があるのと、解像度が低いという欠点はあるが、利用できないことはない。それでも全体的な性能の低さは気になる。

メインマシンとしてはやはり厳しく、2台目や3台目のホビーマシンとして扱いたい

 今回、テレワーク用のPCとして無理やり使ってみたものの、かなり無理があるというのが正直な感想だ。NANOTEに加えて、外部ディスプレイに外付けキーボードやマウスを用意するのであれば、それらのトータルコストでもっと扱いやすいノートPCを購入できるだろう。そのため、はっきり言うが、テレワーク用のPCとしてはまったく推奨できない。もちろんNANOTEを1台目のメインマシンとして利用することも一切おすすめしない。

 NANOTEを楽しむには、ある程度のPCの知識が必要なのはもちろん、忍耐力も要求される。ただ、低スペックPCなりの楽しみ方でいろいろ楽しめるUMPCとして考えると、価格も含めて非常に魅力的な存在であることも確かだ。そういう意味で、決して万人におすすめできるPCではないが、低スペックPCでいろいろ遊びたいと考えている人や、2台目、3代目のホビー用PCとして活用したいという人におすすめしたい。