Hothotレビュー
8.4型2in1「OneMix 3 Pro プラチナエディション」は最強のウルトラモバイルPCだ
2020年5月11日 11:00
株式会社テックワンは5月1日、第10世代(Ambery Lake Y)の「Core i7-10510Y」を搭載したONE-NETBOOK Technology製の8.4型2in1「OneMix 3 Pro プラチナエディション」の販売を開始した。税別価格は139,000円。
このマシンはOneMix 3 Proシリーズの最上位モデル。2019年12月23日に発売したCore i5-10210Y搭載「OneMix 3 Pro」より上位のプロセッサを採用することで、さらなる性能の向上が図られている。
今回本製品を国内正規代理店のテックワンより借用したので、実機レビューをお届けしよう。ベンチマークテストはもちろん実施するが、筆者はOneMix 3 Proシリーズを試用するのは今回がはじめてなので、UMPCでもっとも重要なキーボードの使い勝手についてもじっくりとチェックしたい。
前モデルからメモリとストレージは据え置きでCPUのみアップグレード
「OneMix 3 Pro プラチナエディション」は、OSに「Windows 10 Home 64bit」、CPUに前述のとおり「Core i7-10510Y」(4コア8スレッド、1.2~4.5GHz)を採用。メモリは16GB(DDR3L-1600 SDRAM)、ストレージは512GB(PCIe NVMe SSD)が搭載されている。つまり前モデルの「OneMix 3 Pro」からメモリとストレージは据え置きで、プロセッサのみアップグレードしたわけだ。
ディスプレイは、8.4型IPS液晶(2,560×1,600ドット、358ppi、輝度非公表、色域非公表、光沢、タッチ対応、スタイラスペン対応、Gorilla Glass 4)を採用。Microsoft Pen Protocolに対応するスタイラスペンを利用可能だが本体には同梱されていない。
通信機能はIEEE 802.11ac(最大443Mbps)、Bluetooth 4.1をサポート。WWAN対応モデルは用意されていない。
バッテリ容量は8,600mAh。バッテリ駆動時間、バッテリ充電時間は公開されていない。バッテリ駆動時間についてはベンチマークの章で検証してみよう。
セキュリティ機能はWindows Hello対応指紋認証センサーを搭載している。キーボード面のかぎられたスペースを有効活用するなら電源ボタン一体型のほうが有利だが、おそらくコスト面などの理由から独立型指紋認証センサーを採用したのだろう。
「OneMix 3 Pro プラチナエディション」のカラーはグレーブラックの1色だが、真紅の筐体カラーに鯉をあしらった「OneMix 3 Pro Koi Limited Edition」も用意されている。税別143,000円とプラチナエディションより4,000円高いが、本体カラーと同色の「2,048段階筆圧検知ペン」が標準で付属する。「2,048段階筆圧検知ペン」の税別価格は2,800円なので、両者の実質的な価格差は1,200円とわずかだ。
【表1】OneMix 3 Pro プラチナエディションのスペック | |
---|---|
OS | Windows 10 Home 64bit バージョン1903 |
CPU | Core i7-10510Y(4コア8スレッド、1.20~4.50GHz) |
GPU | Intel UHD Graphics(300MHz~1.15GHz) |
メモリ | DDR3L-1600 SDRAM 16GB |
ストレージ | 512GB PCIe NVMe SSD |
ディスプレイ | 8.4型IPS液晶(2,560×1,600ドット、358ppi、輝度非公表、色域非公表、光沢、タッチ対応、スタイラス対応(Microsoft Pen Protocol)、ゴリラガラス4) |
通信 | IEEE 802.11ac(最大443Mbps)、Bluetooth 4.1 |
WWAN | - |
インターフェイス | USB 3.0 Type-C(USB Power Delivery 2.0対応)、USB 3.0 Type-A、Micro HDMI、3.5mmヘッドセットジャック、microSDカードスロット(最大256GB) |
カメラ | - |
バッテリ容量 | 8,600mAh |
バッテリ駆動時間 | 非公表 |
バッテリ充電時間 | 非公表 |
本体サイズ | 204×129×14.9mm(幅×奥行き×高さ) |
重量 | 約0.67kg |
セキュリティ | Windows Hello対応指紋認証センサー |
ビジネス統合アプリ | ー(WPS Officeダウンロード版を無償で追加可能) |
同梱品 | ACアダプタ、USB Type-Cケーブル、説明書 |
カラー | グレーブラック |
8.4型としては重量を感じるが構造を考えれば納得できるレベル
本製品の筐体はCNC削り出しのアルミニウムマグネシウム合金製。質感は非常に高い。加工精度も高く、パーツ同士の合わせ目もぴったり合っている。所有欲が満たされる高級感を実現していると太鼓判を押せる。
本体サイズは204×129×14.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約0.67kg。サイズが小さいぶんずっしりとした重量を感じる。しかし、360度回転型のヒンジ機構、8.4型としては大きな8600mAhバッテリ、そして剛性を確保するための肉厚などを考慮すれば納得できるレベルだ。
インターフェイスはUSB 3.0 Type-C(USB Power Delivery 2.0対応)、USB 3.0 Type-A、Micro HDMI、3.5mmヘッドセットジャック、microSDカードスロット(最大256GB)を用意。UMPCとしては標準的な仕様だ。Micro HDMIはやや使い勝手が悪いが、Micro HDMIからHDMIに変換するアダプタを用意すれば困ることはない。
個人的にうれしい装備がディスプレイ保護フィルム。Gorilla Glass 4でカバーされていたとしても、クリーニングクロスなどに硬いチリが付着していれば拭いたときに傷がつくことはある。タッチ操作、スタイラスに対応している本製品で画面を触る機会は多い。ディスプレイ保護フィルムが貼るのが苦手な方にはうれしい配慮だ。
日本語を日常的に入力する方が設計したキーボードに違いない!
筐体の剛性感、スムーズなヒンジの動きなど、ハードウェアとしての完成度にスキのない本製品だが、2in1としての使い勝手で1つだけ不満がある。それはタブレット状態に完全に変形しなければ、キーが反応してしまうこと。
一般的な360度ディスプレイ回転型2in1は180度以上開くと、キーが無効になる製品が多い。筐体の小さい本製品は、ディスプレイを回転させるさいにキーを触りがちだ。致命的な欠点ではないが、今後リリースされる新設計のモデルではぜひ改善してほしい。
キーボードについては個人的にかなり理想に近かった。キーピッチは実測約18.2mm、キーストロークは実測約1.3mmが確保されており、打鍵感は良好で、打鍵音も低め。なにより日本語キーボードのキー配列がお世辞抜きにすばらしい!
引き合いに出すのはちょっと気の毒だが、「GPD P2 Max」のように音引き「-」キーが独立していないキーボードでは、日本語をフルスピードで入力するのは正直厳しい。日本語を日常的に入力している方が設計した日本語キーボードではないかと筆者は推察している。
ディスプレイ品質は平均よりやや下、サウンドは8.4型筐体としては健闘
本製品には、8.4型IPS液晶(2,560×1,600ドット、358ppi、光沢、タッチ対応、スタイラス対応、Gorilla Glass 4)が搭載されている。輝度や色域は非公表だ。そこでディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で確認してみたところ、輝度242cd/平方m、sRGBカバー率92.6%、Adobe RGBカバー率68.9%という値が出た。ディスプレイの品質はモバイルノートPCとしては平均よりやや下というところだ。
一方、サウンド面については筐体が小さいためあまり期待していなかったが、意外にもボリュームは大きめで、音質も悪くない。薄型ノートPCにありがちなこもった音とは大違いだ。とは言っても最大ボリュームでは音が少し割れ気味。実際には80%ぐらいまでが実用的なボリュームだが、目の前に置いて聴くなら十分なボリュームで音楽などを楽しめると思う。
UMPCというカテゴリでは十二分な性能
さて最後にプロセッサをアップグレードした「OneMix 3 Pro プラチナエディション」の性能をチェックしてみよう。今回は下記のベンチマークを実施している。
- 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2165」
- バッテリベンチマーク「PCMark 10 Modern Office Battery Life」
- 3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.11.6866」
- CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」
- CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」
- 3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク」
- ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」
比較対象機種としてはちょっと変則的だが、「Core i5-1030NG7」を搭載する「13インチMacBook Air」のWindows 10環境と比較してみた。両者のカテゴリは大きく異なるが、「OneMix 3 Pro プラチナエディション」はTDP 7Wの「Core i7-10510Y」、「13インチMacBook Air」はTDP 10Wの「Core i5-1030NG7」と、どちらも低消費電力型のプロセッサを搭載している。両者のどちらを購入するか悩む方は少数だろうが、ベンチマークスコアを比較してみると興味深い結果となったので、異種格闘技戦の観客のようなスタンスでご覧いただきたい。
OneMix 3 Pro プラチナエディション | 13インチMacBook Air | |
---|---|---|
CPU | Core i7-10510Y(4コア8スレッド、1.2~4.5GHz) | Core i5-1030NG7(4コア8スレッド、1.1~3.5GHz) |
GPU | Intel UHD Graphics(300MHz~1.15GHz) | Intel Iris Plus Graphics(300MHz~1.05GHz) |
メモリ | DDR3L-1600 SDRAM 16GB | LPDDR4-3733 SDRAM 8GB |
ストレ-ジ | 512GB PCIe NVMe SSD | 512GB |
ディスプレイ | 8.4型、2,560×1,600ドット(358ppi) | 13型、1,920×1,080ドット(157ppi) |
TDP | 7W | 10W |
OS | Windows 10 Home 64bit バージョン1903 | macOS Catalina バ-ジョン10.15.4 |
サイズ(幅×奥行き×高さ) | 204×129×14.9mm | 304.1×212.4×4.1~16.1mm |
重量 | 約0.67kg | 約1.29kg |
OneMix 3 Pro プラチナエディション | 13インチMacBook Air | |
---|---|---|
PCMark 10 v2.0.2165 | ||
PCMark 10 Score | 3,404 | 2,215 |
Essentials | 7,380 | 5,608 |
App Start-up Score | 9,926 | 6,966 |
Video Conferencing Score | 6,347 | 4,532 |
Web Browsing Score | 6,381 | 5,587 |
Productivity | 5,909 | 2,732 |
Spreadsheets Score | 6,374 | 2,837 |
Writing Score | 5,479 | 2,631 |
Digital Content Creation | 2,455 | 1,926 |
Photo Editing Score | 3,150 | 2,703 |
Rendering and Visualization Score | 1,529 | 1,219 |
Video Editting Score | 3,073 | 2,170 |
PCMark 10 Modern Office Battery Life | 5時間34分 | 4時間41分 |
3DMark v2.11.6866 | ||
Time Spy | 373 | 387 |
Fire Strike | 974 | 960 |
CINEBENCH R15.0 | ||
OpenGL | 41.64 fps | 40.50 fps |
CPU | 444 cb | 353 cb |
CPU(Single Core) | 153 cb | 126 cb |
CINEBENCH R20.060 | ||
CPU | 958 pts | 844 pts |
CPU(Single Core) | 354 pts | 341 pts |
ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク | ||
1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC) | 1,981(設定変更を推奨) | 1,958(設定変更を推奨) |
SSDをCrystalDiskMark 7.0.0で計測 | ||
1M Q8T1 シーケンシャルリード | 1,457.989 MB/s | 1,515.964 MB/s |
1M Q8T1 シーケンシャルライト | 724.037 MB/s | 1,344.258 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルリード | 1,187.163 MB/s | 1,022.344 MB/s |
1M Q1T1 シーケンシャルライト | 490.809 MB/s | 1,361.044 MB/s |
4K Q32T16 ランダムリ-ド | 391.877 MB/s | 759.059 MB/s |
4K Q32T16 ランダムライト | 336.728 MB/s | 173.530 MB/s |
4K Q1T1 ランダムリ-ド | 43.982 MB/s | 14.596 MB/s |
4K Q1T1 ランダムライト | 42.780 MB/s | 28.768 MB/s |
まずCINEBENCHの結果から見ていこう。「OneMix 3 Pro プラチナエディション」は「13インチMacBook Air」に対して、CINEBENCH R15.0の「CPU」では約126%に相当する「444 cb」、CINEBENCH R20.060の「CPU」では約114%に相当する「958 pts」を記録している。とは言えWindows 10ではなくmacOS Catalina環境では、「13インチMacBook Air」がCINEBENCH R15.0の「CPU」で「476 cb」、CINEBENCH R20.060の「CPU」で「964 pts」を叩き出して逆転する。つまり本来のOS上でのスコアは「13インチMacBook Air」のほうが上だ。しかし、8.4型のUMPCが、Core i5とは言え「13インチMacBook Air」と抜きつ抜かれつのスコアを記録している評価に値する。
ただし、8.4型のUMPCの筐体で13型ノートブックと同等の性能を絞り出すために冷却が追いついていないようだ。CINEBENCH R20.060を3回実行したあとにサーモグラフィーカメラで計測したところ、底面温度は最大49.8度に達している。膝上で高負荷な処理を実行する際には雑誌やバックなどをはさむべきだろう。
バッテリ駆動時間については、ディスプレイ輝度50%でPCMark 10 Modern Office Battery Lifeを実行したところ5時間34分動作した。個人的にはちょっと物足りない結果だが、USB Power Delivery 2.0による充電をサポートしているので、対応モバイルバッテリやACアダプタを携帯すれば実用上問題ないだろう。
最高峰のUMPCが欲しい方に文句なしにすすめられる1台
UMPC市場は7型の「GPD Pocket」によって復活したが、現在の主戦場は8型に移っている。7型ではキーボードの配列、そしてサイズ的にフルスピードでタイピングすることが困難だし、必然的に文字も小さくなるので目も疲れやすい。UMPCは今後8型クラスがスタンダードとなると思う。
今回、「OneMix 3 Pro プラチナエディション」を試用してみて、ハードウェアの作り、性能、キーボードの使い勝手などスキのない仕上がりに正直欲しくなってしまった。明らかな欠点はWebカメラを搭載していないことだが、この点はスマートフォンを使えばカバーできる。
UMPCとして価格は高めだが、CPU、メモリ、ストレージのスペックを考えれば納得できる。最高峰のUMPCが欲しい方に文句なしにすすめられる1台だ。