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8.4型2in1「OneMix 3 Pro プラチナエディション」は最強のウルトラモバイルPCだ

「OneMix 3 Pro プラチナエディション」。税別139,000円

 株式会社テックワンは5月1日、第10世代(Ambery Lake Y)の「Core i7-10510Y」を搭載したONE-NETBOOK Technology製の8.4型2in1「OneMix 3 Pro プラチナエディション」の販売を開始した。税別価格は139,000円。

 このマシンはOneMix 3 Proシリーズの最上位モデル。2019年12月23日に発売したCore i5-10210Y搭載「OneMix 3 Pro」より上位のプロセッサを採用することで、さらなる性能の向上が図られている。

 今回本製品を国内正規代理店のテックワンより借用したので、実機レビューをお届けしよう。ベンチマークテストはもちろん実施するが、筆者はOneMix 3 Proシリーズを試用するのは今回がはじめてなので、UMPCでもっとも重要なキーボードの使い勝手についてもじっくりとチェックしたい。

前モデルからメモリとストレージは据え置きでCPUのみアップグレード

 「OneMix 3 Pro プラチナエディション」は、OSに「Windows 10 Home 64bit」、CPUに前述のとおり「Core i7-10510Y」(4コア8スレッド、1.2~4.5GHz)を採用。メモリは16GB(DDR3L-1600 SDRAM)、ストレージは512GB(PCIe NVMe SSD)が搭載されている。つまり前モデルの「OneMix 3 Pro」からメモリとストレージは据え置きで、プロセッサのみアップグレードしたわけだ。

 ディスプレイは、8.4型IPS液晶(2,560×1,600ドット、358ppi、輝度非公表、色域非公表、光沢、タッチ対応、スタイラスペン対応、Gorilla Glass 4)を採用。Microsoft Pen Protocolに対応するスタイラスペンを利用可能だが本体には同梱されていない。

 通信機能はIEEE 802.11ac(最大443Mbps)、Bluetooth 4.1をサポート。WWAN対応モデルは用意されていない。

 バッテリ容量は8,600mAh。バッテリ駆動時間、バッテリ充電時間は公開されていない。バッテリ駆動時間についてはベンチマークの章で検証してみよう。

 セキュリティ機能はWindows Hello対応指紋認証センサーを搭載している。キーボード面のかぎられたスペースを有効活用するなら電源ボタン一体型のほうが有利だが、おそらくコスト面などの理由から独立型指紋認証センサーを採用したのだろう。

 「OneMix 3 Pro プラチナエディション」のカラーはグレーブラックの1色だが、真紅の筐体カラーに鯉をあしらった「OneMix 3 Pro Koi Limited Edition」も用意されている。税別143,000円とプラチナエディションより4,000円高いが、本体カラーと同色の「2,048段階筆圧検知ペン」が標準で付属する。「2,048段階筆圧検知ペン」の税別価格は2,800円なので、両者の実質的な価格差は1,200円とわずかだ。

【表1】OneMix 3 Pro プラチナエディションのスペック
OSWindows 10 Home 64bit バージョン1903
CPUCore i7-10510Y(4コア8スレッド、1.20~4.50GHz)
GPUIntel UHD Graphics(300MHz~1.15GHz)
メモリDDR3L-1600 SDRAM 16GB
ストレージ512GB PCIe NVMe SSD
ディスプレイ8.4型IPS液晶(2,560×1,600ドット、358ppi、輝度非公表、色域非公表、光沢、タッチ対応、スタイラス対応(Microsoft Pen Protocol)、ゴリラガラス4)
通信IEEE 802.11ac(最大443Mbps)、Bluetooth 4.1
WWAN
インターフェイスUSB 3.0 Type-C(USB Power Delivery 2.0対応)、USB 3.0 Type-A、Micro HDMI、3.5mmヘッドセットジャック、microSDカードスロット(最大256GB)
カメラ
バッテリ容量8,600mAh
バッテリ駆動時間非公表
バッテリ充電時間非公表
本体サイズ204×129×14.9mm(幅×奥行き×高さ)
重量約0.67kg
セキュリティWindows Hello対応指紋認証センサー
ビジネス統合アプリー(WPS Officeダウンロード版を無償で追加可能)
同梱品ACアダプタ、USB Type-Cケーブル、説明書
カラーグレーブラック
製品パッケージ表面
国内正規代理店テックワンの販売する製品パッケージには背面に仕様、認証情報、シリアルナンバーなどが記載されたシールが貼られている
パッケージには、本体、ACアダプタ、USB Type-Cケーブル、説明書類(お使いになる前に、保証書、ファーストステップガイド)が入っている

8.4型としては重量を感じるが構造を考えれば納得できるレベル

 本製品の筐体はCNC削り出しのアルミニウムマグネシウム合金製。質感は非常に高い。加工精度も高く、パーツ同士の合わせ目もぴったり合っている。所有欲が満たされる高級感を実現していると太鼓判を押せる。

 本体サイズは204×129×14.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約0.67kg。サイズが小さいぶんずっしりとした重量を感じる。しかし、360度回転型のヒンジ機構、8.4型としては大きな8600mAhバッテリ、そして剛性を確保するための肉厚などを考慮すれば納得できるレベルだ。

 インターフェイスはUSB 3.0 Type-C(USB Power Delivery 2.0対応)、USB 3.0 Type-A、Micro HDMI、3.5mmヘッドセットジャック、microSDカードスロット(最大256GB)を用意。UMPCとしては標準的な仕様だ。Micro HDMIはやや使い勝手が悪いが、Micro HDMIからHDMIに変換するアダプタを用意すれば困ることはない。

 個人的にうれしい装備がディスプレイ保護フィルム。Gorilla Glass 4でカバーされていたとしても、クリーニングクロスなどに硬いチリが付着していれば拭いたときに傷がつくことはある。タッチ操作、スタイラスに対応している本製品で画面を触る機会は多い。ディスプレイ保護フィルムが貼るのが苦手な方にはうれしい配慮だ。

本体天面。筐体はCNC削り出しのアルミニウムマグネシウム合金製で質感が高い
本体底面。ネジは一般的なプラス型で隠しネジもないので分解は容易。側面にはステレオスピーカーが内蔵されている
本体前面(上)と本体背面(下)。ディスプレイヒンジは180度まで上側だけが曲がるので、排気口をふさぐことはない。270度まで開くと天面が排気口をふさぐが、4mmほどのすき間が空いているので排気効率に影響はなさそうだ
右側面(上)にmicroSDメモリーカードスロット×1(最大256GB)、USB 3.0 Type-C×1(USB Power Delivery 2.0対応)、USB 3.0 Type-A×1が、左側面(下)にMicro HDMI×1、3.5mmヘッドセットジャック×1が用意されている
ディスプレイのスペックは8.4型IPS液晶(2,560×1,600ドット、358ppi、輝度非公表、色域非公表、光沢、タッチ対応、スタイラス対応(Microsoft Pen Protocol)、ゴリラガラス4)。Webカメラは搭載されていない
出荷時、ディスプレイには光沢(グレア)タイプの保護フィルムが貼られている
キーボードは67キーの日本語仕様。ポインティングデバイスは光学式だ
USB Type-Cケーブルの長さは実測約95cm
ACアダプタの仕様は入力100-240V~0.7A、出力5V 3A、9V 3A、12V 2.5A、15V 2A、20V 1.5A、容量30W。型番は「SOY-30W-261JP」
本体の実測重量は約680.5g
ACアダプタとUSB Type-Cケーブルの合計重量は実測約102.5g
システム情報
主要なデバイス
「powercfg /batteryreport」コマンドを実行したところ、DESIGN CAPACITY、FULL CHARGE CAPACITYともに43,000mWhと表示された

日本語を日常的に入力する方が設計したキーボードに違いない!

 筐体の剛性感、スムーズなヒンジの動きなど、ハードウェアとしての完成度にスキのない本製品だが、2in1としての使い勝手で1つだけ不満がある。それはタブレット状態に完全に変形しなければ、キーが反応してしまうこと。

 一般的な360度ディスプレイ回転型2in1は180度以上開くと、キーが無効になる製品が多い。筐体の小さい本製品は、ディスプレイを回転させるさいにキーを触りがちだ。致命的な欠点ではないが、今後リリースされる新設計のモデルではぜひ改善してほしい。

 キーボードについては個人的にかなり理想に近かった。キーピッチは実測約18.2mm、キーストロークは実測約1.3mmが確保されており、打鍵感は良好で、打鍵音も低め。なにより日本語キーボードのキー配列がお世辞抜きにすばらしい!

 引き合いに出すのはちょっと気の毒だが、「GPD P2 Max」のように音引き「-」キーが独立していないキーボードでは、日本語をフルスピードで入力するのは正直厳しい。日本語を日常的に入力している方が設計した日本語キーボードではないかと筆者は推察している。

ノートブック、スタンド、テント、タブレットモードの4つのスタイルに変形できる。ヒンジは剛性がしっかりと確保されており、片側を持って回転させても、ディスプレイが左右に傾くような不安感はない
ディスプレイはタッチ操作、スタイラス (Microsoft Pen Protocol)に対応している。別売りの2,048階調のスタイラスや、Microsoft Pen Protocolに対応した「Surfaceペン」などで描画可能だ
新型「Surfaceペン」で傾き検知が働くことを確認した。イラストを描くのに使いたいのであれば傾き検知に対応したスタイラスを用意しよう
キーピッチは実測約18.2mm
キーストロークは実測約1.3mm
8.4インチのUMPCとしては広いキーピッチ、深いキーストロークが確保され、また音引き「-」キーも独立して用意されているので非常に入力しやすい
キーボードバックライトは点灯と消灯の切り替えのみ可能。明るさは調整できない
指紋認証センサーはキーボード右上に配置されている
光学式ポインティングデバイスはデフォルトの設定でちょうどいい速度に感じた

ディスプレイ品質は平均よりやや下、サウンドは8.4型筐体としては健闘

 本製品には、8.4型IPS液晶(2,560×1,600ドット、358ppi、光沢、タッチ対応、スタイラス対応、Gorilla Glass 4)が搭載されている。輝度や色域は非公表だ。そこでディスプレイキャリブレーション機器「i1Display Pro」と色度図作成ソフト「ColorAC」で確認してみたところ、輝度242cd/平方m、sRGBカバー率92.6%、Adobe RGBカバー率68.9%という値が出た。ディスプレイの品質はモバイルノートPCとしては平均よりやや下というところだ。

 一方、サウンド面については筐体が小さいためあまり期待していなかったが、意外にもボリュームは大きめで、音質も悪くない。薄型ノートPCにありがちなこもった音とは大違いだ。とは言っても最大ボリュームでは音が少し割れ気味。実際には80%ぐらいまでが実用的なボリュームだが、目の前に置いて聴くなら十分なボリュームで音楽などを楽しめると思う。

広視野角はとくに謳われていないが、ほぼ真横からでもなにが表示されているのかわかる。セキュリティを重視するならプライバシーフィルタを貼ったほうがいい
実測したsRGBカバー率は92.6%、sRGB比は92.9%
実測したAdobe RGBカバー率は68.9%、Adobe RGB比は68.9%
実測した白色輝度は約242cd/平方m。光沢(グレア)の表面処理のおかげで、まずまず鮮やかな画像を楽しめる
YouTubeで公開されている「前前前世(movie ver.) RADWIMPS MV」を最大ボリュームで再生したさいの音圧レベルは最大80.6dB(50cmの距離で測定)

UMPCというカテゴリでは十二分な性能

 さて最後にプロセッサをアップグレードした「OneMix 3 Pro プラチナエディション」の性能をチェックしてみよう。今回は下記のベンチマークを実施している。

  • 総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.0.2165」
  • バッテリベンチマーク「PCMark 10 Modern Office Battery Life」
  • 3Dグラフィックベンチマーク「3DMark v2.11.6866」
  • CPU/OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」
  • CPUベンチマーク「CINEBENCH R20.060」
  • 3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク」
  • ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 7.0.0」

 比較対象機種としてはちょっと変則的だが、「Core i5-1030NG7」を搭載する「13インチMacBook Air」のWindows 10環境と比較してみた。両者のカテゴリは大きく異なるが、「OneMix 3 Pro プラチナエディション」はTDP 7Wの「Core i7-10510Y」、「13インチMacBook Air」はTDP 10Wの「Core i5-1030NG7」と、どちらも低消費電力型のプロセッサを搭載している。両者のどちらを購入するか悩む方は少数だろうが、ベンチマークスコアを比較してみると興味深い結果となったので、異種格闘技戦の観客のようなスタンスでご覧いただきたい。

【表2】検証機の仕様
OneMix 3 Pro プラチナエディション13インチMacBook Air
CPUCore i7-10510Y(4コア8スレッド、1.2~4.5GHz)Core i5-1030NG7(4コア8スレッド、1.1~3.5GHz)
GPUIntel UHD Graphics(300MHz~1.15GHz)Intel Iris Plus Graphics(300MHz~1.05GHz)
メモリDDR3L-1600 SDRAM 16GBLPDDR4-3733 SDRAM 8GB
ストレ-ジ512GB PCIe NVMe SSD512GB
ディスプレイ8.4型、2,560×1,600ドット(358ppi)13型、1,920×1,080ドット(157ppi)
TDP7W10W
OSWindows 10 Home 64bit バージョン1903macOS Catalina バ-ジョン10.15.4
サイズ(幅×奥行き×高さ)204×129×14.9mm304.1×212.4×4.1~16.1mm
重量約0.67kg約1.29kg
【表3】ベンチマ-ク結果
OneMix 3 Pro プラチナエディション13インチMacBook Air
PCMark 10 v2.0.2165
PCMark 10 Score3,4042,215
Essentials7,3805,608
App Start-up Score9,9266,966
Video Conferencing Score6,3474,532
Web Browsing Score6,3815,587
Productivity5,9092,732
Spreadsheets Score6,3742,837
Writing Score5,4792,631
Digital Content Creation2,4551,926
Photo Editing Score3,1502,703
Rendering and Visualization Score1,5291,219
Video Editting Score3,0732,170
PCMark 10 Modern Office Battery Life5時間34分4時間41分
3DMark v2.11.6866
Time Spy373387
Fire Strike974960
CINEBENCH R15.0
OpenGL41.64 fps40.50 fps
CPU444 cb353 cb
CPU(Single Core)153 cb126 cb
CINEBENCH R20.060
CPU958 pts844 pts
CPU(Single Core)354 pts341 pts
ファイナルファンタジ-XIV: 漆黒の反逆者 ベンチマ-ク
1,920×1,080ドット 標準品質(ノ-トPC)1,981(設定変更を推奨)1,958(設定変更を推奨)
SSDをCrystalDiskMark 7.0.0で計測
1M Q8T1 シーケンシャルリード1,457.989 MB/s1,515.964 MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト724.037 MB/s1,344.258 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード1,187.163 MB/s1,022.344 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト490.809 MB/s1,361.044 MB/s
4K Q32T16 ランダムリ-ド391.877 MB/s759.059 MB/s
4K Q32T16 ランダムライト336.728 MB/s173.530 MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド43.982 MB/s14.596 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト42.780 MB/s28.768 MB/s

 まずCINEBENCHの結果から見ていこう。「OneMix 3 Pro プラチナエディション」は「13インチMacBook Air」に対して、CINEBENCH R15.0の「CPU」では約126%に相当する「444 cb」、CINEBENCH R20.060の「CPU」では約114%に相当する「958 pts」を記録している。とは言えWindows 10ではなくmacOS Catalina環境では、「13インチMacBook Air」がCINEBENCH R15.0の「CPU」で「476 cb」、CINEBENCH R20.060の「CPU」で「964 pts」を叩き出して逆転する。つまり本来のOS上でのスコアは「13インチMacBook Air」のほうが上だ。しかし、8.4型のUMPCが、Core i5とは言え「13インチMacBook Air」と抜きつ抜かれつのスコアを記録している評価に値する。

 ただし、8.4型のUMPCの筐体で13型ノートブックと同等の性能を絞り出すために冷却が追いついていないようだ。CINEBENCH R20.060を3回実行したあとにサーモグラフィーカメラで計測したところ、底面温度は最大49.8度に達している。膝上で高負荷な処理を実行する際には雑誌やバックなどをはさむべきだろう。

 バッテリ駆動時間については、ディスプレイ輝度50%でPCMark 10 Modern Office Battery Lifeを実行したところ5時間34分動作した。個人的にはちょっと物足りない結果だが、USB Power Delivery 2.0による充電をサポートしているので、対応モバイルバッテリやACアダプタを携帯すれば実用上問題ないだろう。

室温23.7℃前後の部屋で、CINEBENCH R20.060を3回実行したあとの表面温度をサーモグラフィーカメラで計測した
キーボード面の最大温度は46.9℃
底面の最大温度は49.8℃
ACアダプタの最大温度は54.7℃

最高峰のUMPCが欲しい方に文句なしにすすめられる1台

 UMPC市場は7型の「GPD Pocket」によって復活したが、現在の主戦場は8型に移っている。7型ではキーボードの配列、そしてサイズ的にフルスピードでタイピングすることが困難だし、必然的に文字も小さくなるので目も疲れやすい。UMPCは今後8型クラスがスタンダードとなると思う。

 今回、「OneMix 3 Pro プラチナエディション」を試用してみて、ハードウェアの作り、性能、キーボードの使い勝手などスキのない仕上がりに正直欲しくなってしまった。明らかな欠点はWebカメラを搭載していないことだが、この点はスマートフォンを使えばカバーできる。

 UMPCとして価格は高めだが、CPU、メモリ、ストレージのスペックを考えれば納得できる。最高峰のUMPCが欲しい方に文句なしにすすめられる1台だ。