Hothotレビュー
実売1万5千円でCore i7と肩を並べるAMD「Ryzen 3 3300X」
2020年5月7日 22:00
AMDは、第3世代Ryzenのエントリーモデルである「Ryzen 3 3100」および「Ryzen 3 3300X」と、製造プロセスを12nmに変更した6コア12スレッドCPU「Ryzen 5 1600(AF)」の3製品について、5月中の発売を予定している。
今回、1万円前後の価格帯に投入されるこれら3製品について、発売に先立ってテストする機会が得られたので、ベンチマークテストを使ってその性能を確認してみた。
Zen 2ベースの4コア8スレッドCPUと、Zen+ベースの6コア12スレッドCPU
今回テストする3種類のCPUのうち、Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xは、Zen 2アーキテクチャを採用した第3世代Ryzenの4コア8スレッドCPUで、Ryzen 5 1600(AF)は12nmプロセスで製造されたZen+ベースの6コア12スレッドCPU。いずれもSocket AM4対応のCPUで、TDPは65W。
販売価格は、Ryzen 3 3100が99ドル、Ryzen 3 3300Xが120ドル。Ryzen 5 1600(AF)の販売価格についての公式情報は得られていないが、Ryzen 3 3100およびRyzen 3 3300Xとともに、1万円前後のエントリークラスに投入されるようだ。
【表1】AMD Ryzen 3 3100/3300XとRyzen 5 1600(AF)のおもな仕様 | |||
---|---|---|---|
モデルナンバー | Ryzen 3 3100 | Ryzen 3 3300X | Ryzen 5 1600 (AF) |
CPUアーキテクチャ | Zen 2 | Zen 2 | Zen+ |
製造プロセス | 7nm CPU + 12nm I/O | 7nm CPU + 12nm I/O | 12nm |
コア数 | 4 | 4 | 6 |
スレッド数 | 8 | 8 | 12 |
L2キャッシュ | 2MB | 2MB | 3MB |
L3キャッシュ | 16MB | 16MB | 16MB |
ベースクロック | 3.6GHz | 3.8GHz | 3.2GHz |
ブーストクロック | 3.9GHz | 4.3GHz | 3.6GHz |
対応メモリ | DDR4-3200 (2ch) | DDR4-3200 (2ch) | DDR4-2667 (2ch) |
PCI Express | PCIe 4.0 x24 | PCIe 4.0 x24 | PCIe 3.0 x24 |
TDP | 65W | 65W | 65W |
対応ソケット | Socket AM4 | Socket AM4 | Socket AM4 |
付属CPUクーラー | Wraith Stealth | Wraith Stealth | Wraith Stealth |
価格 | 99ドル | 120ドル | 不明 |
CCXの構成が異なるRyzen 3 3100とRyzen 3 3300X
第3世代RyzenであるRyzen 3 3100とRyzen 3 3300Xは、チップレットアーキテクチャに基づいて、7nmプロセスで製造されたCPUダイ(CCD)1個と、12nmプロセスで製造されたI/Oダイ(cIOD)1個という構成で、4コア8スレッドCPUを実現している。
チップレットの構成は同じRyzen 3 3100とRyzen 3 3300Xだが、CPUダイの内部構造であるCCXモジュールの構成は異なっている。
第3世代RyzenのCCXモジュールは、4基のCPUコアと16MBのL3キャッシュをまとめたもので、CPUダイはこれを2つ備えている。上位のRyzen 3 3300Xが、1つのCCXをフル活用して4コアと16MBキャッシュを確保する一方、下位のRyzen 3 3100は、2つのCCXでそれぞれ2コアと8MBのキャッシュを有効化することにより、4コアと16MBキャッシュを確保している。
AMDによれば、1つのCCX内で全CPUコアがL3キャッシュを共有できるRyzen 3 3300Xの方が、ゲームに適しているとしている。この内部構造の違いを意識しつつベンチマークテストの結果を確認してもらいたい。
Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xが備えるI/Oコアの機能は、既存のデスクトップ向け第3世代Ryzenと同等で、DDR4-3200メモリや合計24レーンのPCI Express 4.0をサポートしている。
製造プロセスが12nmに変更されたRyzen 5 1600(AF)
Ryzen 5 1600(AF)は、第1世代Ryzenの6コア12スレッドCPUであった「Ryzen 5 1600」のマイナーチェンジモデルという位置付けの製品だ。製品名の(AF)は、マイナーチェンジに伴って変更されたOPN(YD1600BBAE → YD1600BBAF)の末尾2文字とリンクしている。
Ryzen 5 1600(AF)で変更されたのは「製造プロセス」と「付属CPUクーラー」の2点。初代のRyzen 5 1600はZenアーキテクチャに基づいて14nmプロセスで製造されていたが、Ryzen 5 1600(AF)は12nmプロセスに変更されており、CPU-ZでもZen+を採用したPinnacle RidgeベースのCPUであると認識されている。
付属のCPUクーラーは、Wraith SpireからWraith Stealthに変更された。Wraith StealthはWraith Spireをそのまま低背化したようなCPUクーラーで、おもにTDP 65WクラスのCPUに採用されている。
先に紹介したRyzen 3 3100やRyzen 3 3300Xよりコア数は多いRyzen 5 1600(AF)だが、旧世代のアーキテクチャを採用した製品であるため、クロック当たりの処理性能で劣り、第3世代Ryzenで新採用のPCI Express 4.0も利用できない。それらを考慮した上で、価値を見出せるだけのマルチスレッド性能と価格であるのかが、このCPUを選択する際のポイントとなるだろう。
テスト機材
Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300X、およびRyzen 5 1600(AF)の検証は、AMD X570搭載マザーボード「ASUS TUF GAMING X570-PLUS (WI-FI)」に搭載して実施した。CPUクーラーには筆者が用意したRyzen 5 3600付属の「Wraith Stealth」を利用。メモリクロックは各CPUの定格最大値に調整している。
また、今回は比較用のCPUとしてSkylakeベースの4コア8スレッドCPU「Core i7-6700K」を用意した。これは、AMDが「Ryzen 3 3300XはCore i7-7700Kに勝利できる」とアピールしていることから用意したもので、本来は名指しされたCore i7-7700Kを用意したいところだが、都合がつかなかったため近い性能を持つCore i7-6700Kで代用した。
CPU | Ryzen 3 3100 | Ryzen 3 3300X | Ryzen 5 1600 (AF) | Core i7-6700K |
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コア数/スレッド数 | 4/8 | 4/8 | 6/12 | 4/8 |
CPUパワーリミット | PPT:88W、TDC:60A、EDC:90A | PL1:95W、PL2:118.75W、Tau:8秒 | ||
CPUクーラー | Wraith Stealth (ファンスピード=100%) | Intel TS15A (ファンスピード=100%) | ||
マザーボード | ASUS TUF GAMING X570-PLUS (WI-FI) [UEFI:1407] | ASUS Z170-A [UEFI: 3802] | ||
メモリ | DDR4-3200 16GB×2 (2ch、22-22-22-53、1.20V) | DDR4-2666 16GB×2 (2ch、19-19-19-43、1.20V) | DDR4-2133 16GB×2 (2ch、15-15-15-36、1.20V) | |
ビデオカード | ASUS ROG-STRIX-RTX2080-O8G-GAMING (GeForce RTX 2080 8GB) | |||
システム用SSD | CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 4.0 x4) | CORSAIR MP600 1TB (NVMe SSD/PCIe 3.0 x4) | ||
アプリケーション用SSD | SanDisk Ultra 3D SSD 1TB (SSD/6Gbps SATA) | |||
電源 | CORSAIR RM850 CP-9020196-JP (850W/80PLUS Gold) | |||
グラフィックスドライバ | GeForce Game Ready Driver 445.87 DCH (26.21.14.4587) | |||
OS | Windows 10 Pro 64bit (Ver 1909 / build 18363.815) | |||
電源プラン | AMD Ryzen Balanced | 高パフォーマンス | ||
室温 | 約25℃ |
ベンチマーク結果
それでは、ベンチマークテストの結果を紹介しよう。
今回実施したベンチマークテストは、「CINEBENCH R20(グラフ01)」、「CINEBENCH R15(グラフ02)」、「Blender Benchmark(グラフ03)」、「V-Ray Benchmark(グラフ04)」、「やねうら王(グラフ05)」、「HandBrake(グラフ06)」、「TMPGEnc Video Mastering Works 7(グラフ07~08)」、「PCMark 10(グラフ09)」、「SiSoftware Sandra(グラフ10~17)」、「3DMark(グラフ18~22)」、「VRMark(グラフ23~24)」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(グラフ25)」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(グラフ26)」、「Forza Horizon 4(グラフ27)」、「F1 2019(グラフ28)」、「フォートナイト(グラフ29)」、「レインボーシックス シージ(グラフ30)」、「モンスターハンターワールド : アイスボーン(グラフ31)」。
CINEBENCH
CPUの3DCGレンダリング性能を測定するCINEBENCH。今回は最新版のCINEBENCH R20と、旧バージョンのCINEBENCH R15でテストを実行した。
CINEBENCH R20において、全CPUコアを使ったマルチスレッドテスト(All Core)でトップに立ったのはRyzen 5 1600(AF)で、Ryzen 3 3300Xに約6%、Ryzen 3 3100に約16%、Core i7-6700Kには約25%の差をつけている。
シングルスレッドテスト(Single Core)でトップに立ったのはRyzen 3 3300Xで、2番手のRyzen 3 3100に約12%、Core i7-6700Kに約14%の差をつけた。マルチスレッドテストではトップだったRyzen 5 1600(AF)は最下位に沈んでおり、Ryzen 3 3300Xとの間には約33%もの差がついている。
CINEBENCH R15では、シングルスレッドテストでRyzen 3 3100とCore i7-6700Kの順位が入れ替わったり、Zen+アーキテクチャが苦手とするAVX命令を使わないため、Ryzen 5 1600(AF)がマルチスレッドテストでの差を広げたりしているものの、CINEBENCH R20に近い結果となっている。
Blender Benchmark
続いて紹介するのは、3DCGソフト「Blender」のオフィシャルベンチマークソフト「Blender Benchmark」の結果だ。
もっとも短時間で処理を完了しているのはRyzen 5 1600(AF)で、Ryzen 3 3300Xに約1~8%、Ryzen 3 3100に約14~19%、Core i7-6700Kに約20~25%の差をつけた。
Ryzen 3 3300Xはコア数差の割にRyzen 5 1600(AF)に食い下がっており、Ryzen 3 3100はすべてのテストでCore i7-6700Kを上回っている。6コア12スレッドCPUであるRyzen 5 1600(AF)が、マルチスレッド性能の高さを示した結果ではあるが、第3世代Ryzenの4コア8スレッドCPUの能力の高さも目立っている。
V-Ray Benchmark
レンダリングエンジンV-Rayのオフィシャルベンチマークソフト「V-Ray Benchmark」では、CPUを使用する「V-RAY」の実行結果を取得した。
ここでもトップに立ったのはRyzen 5 1600(AF)で、2番手のRyzen 3 3300Xに約11%、Core i7-6700Kに約26%、Ryzen 3 3100には約26%の差をつけた。
将棋ソフト「やねうら王」
将棋ソフトの「やねうら王」では、KPPT型とNNUE型の評価関数でそれぞれベンチマークコマンドを実行した。ベンチマークコマンド中の「nT」は、各CPUのスレッド数を入力している。
マルチスレッドテストでは、KPPT型ではRyzen 5 1600(AF)がRyzen 3 3300Xに約8%の差をつけてトップに立っているが、NNUE型ではスコアを落としてRyzen 3 3300Xに逆転され、約1%差の2番手となっている。
シングルスレッドテストでは、Core i7-6700KがKPPT型とNNUE型の両方でトップスコアを記録しており、Ryzen 3 3300Xに約6~12%、Ryzen 3 3100に約22~31%、Ryzen 5 1600(AF)に約48~51%の差をつけている。
動画エンコードソフト「HandBrake」
オープンソースの動画エンコードソフト「HandBrake」では、フルHD(1080p)と4K(2160p)の動画ソースをYouTube向けプリセットでエンコードするのに掛かった時間を測定した。
最速タイムを記録したのはRyzen 5 1600(AF)で、2番手のRyzen 3 3300Xに約10~12%、Ryzen 3 3100に約19~20%、Core i7-6700Kに約27~34%の差をつけている。
動画エンコードソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」
動画エンコードソフトのTMPGEnc Video Mastering Works 7では、フルHDと4Kのソース動画をH.264形式とH.265形式に変換するのに掛かった時間を測定した。
x264でのH.264形式への変換ではRyzen 5 1600(AF)が最速で、Ryzen 3 3300Xに約3~7%、Ryzen 3 3100に約9~13%、Core i7-6700Kに約26~28%の差をつけた。
一方、x265でのH.265形式への変換ではRyzen 3 3300Xが最速タイムを記録しており、2番手に後退したRyzen 5 1600(AF)に約7~9%、Ryzen 3 3100に約7~9%、Core i7-6700Kに約12~14%の差をつけている。
Ryzen 5 1600(AF)のH.265形式での失速は、エンコーダーのx265がAVX2命令を積極的に活用するため、同命令を苦手とするZen+アーキテクチャの弱点が露呈した結果だ。
PCMark 10
PCMark 10では、もっともテスト項目が多い「PCMark 10 Extended」を実行した。
総合スコアでトップに立ったのはRyzen 3 3300Xで、2番手のCore i7-6700Kに約5%、Ryzen 3 3100に約6%、Ryzen 5 1600(AF)に約12%の差をつけている。
Ryzen 3 3300Xは、アプリの起動時間やウェブブラウザのパフォーマンスを測定する「Essential」と、オフィスアプリのパフォーマンスなどを測定する「Productivity」で高いスコアを発揮しており、これらのテストではRyzen 5 1600(AF)に約18%の差をつけている。クロック当たりの処理性能に優れるZen 2ベースの高クロックCPUであるRyzen 3 3300Xの魅力が光る結果だ。
SiSoftware Sandra 20/20「CPUベンチマーク」
SiSoftware Sandra 20/20のCPUテストから、「Arithmetic」、「Multi-Media」、「Image Processing」の実行結果を紹介する。
CPUの演算性能を測定するArithmeticでは、全項目でRyzen 5 1600(AF)がトップのスコアを記録。整数演算性能を測定するDhrystoneでは、Ryzen 3 3300XとCore i7-6700Kが互角のパフォーマンスを発揮しているが、浮動小数点演算性能を測定するWhetstoneでは、Ryzen 3 3100がCore i7-6700Kを上回っている。
CPUのマルチメディア性能を測定するMulti-Mediaでは、6項目中4項目でRyzen 3 3300Xがトップスコアを記録する一方、AVX2命令が苦手なRyzen 5 1600(AF)は5項目で最下位に沈んだ。
画像処理性能を測定するImage Processingでは、実行する処理によって得手不得手が分かれている。ブラー(blur)やエッジ検出(Edge Detection)などではRyzen 3 3300Xが優勢な一方、ディフュージョン(Diffusion)やマーブリング(Marbling)ではCore i7-6700Kが突出した性能を示している。また、目立たないがノイズリダクションではRyzen 5 1600(AF)がトップスコアを記録している。
SiSoftware Sandra 20/20「メモリベンチマーク」
メモリ帯域幅を測定するMemory Bandwidthでは、DDR4-3200のデュアルチャネル動作に対応するRyzen 3 3100とRyzen 3 3300Xが37.5GB/s前後を記録。DDR4-2666メモリで32.3GB/sを記録したRyzen 5 1600(AF)を約16%、同じくDDR4-2666メモリで26.13GB/sだったCore i7-6700Kを約44%上回った。
Cache & Memory Latencyで測定したメモリレイテンシは、30.9nsを記録したCore i7-6700Kが最小で、Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xは約51%大きい47ns前後となっている。もっともレイテンシが大きかったRyzen 5 1600(AF)は69.1nsで、これはCore i7-6700Kの2倍以上の数値だ。
SiSoftware Sandra 20/20「キャッシュベンチマーク」
CPUが備えるキャッシュのパフォーマンスを測定できる「Cache & Memory Latency」と「Cache Bandwidth」の結果をグラフ化した。
レイテンシを測定するCache & Memory Latencyの結果をみると、Ryzen 3 3300Xが16MBブロックで6.3nsを記録しているのに対し、Ryzen 3 3100は同ブロックでのレイテンシが42.4nsに大幅増加していることが確認できる。
これは両CPUのCCX構成の違いによるもので、1つのCCX内で16MBのキャッシュを共有するRyzen 3 3300Xが低レイテンシでL3キャッシュにアクセスできる一方、8MBのキャッシュを共有するCCXを2個備えるRyzen 3 3100の場合、16MBブロックのテストではCCXを跨ぐ通信が必要となるためレイテンシが増大するというわけだ。
一方、キャッシュの帯域幅については、L1~L2領域では動作クロックで勝るRyzen 3 3300Xが大きいものの、L3にアクセスする4MB~16MBブロックではRyzen 3 3100の方が大きくなっている。この結果はRyzen 3 3100が、CCX毎に独立したL3キャッシュを持っているためであると考えられる。
3DMark
3DMarkでは、「Time Spy」、「Fire Strike」、「Night Raid」、「Sky Diver」、「Port Royal」の5テストを実行した。
DirectX 12テストのTime Spyでは、CPUコア数で勝るRyzen 5 1600(AF)がトップスコアを記録したが、Fire Strike、Night Raid、Sky DiverではRyzen 3 3300Xが総合スコアのトップに立っている。リアルタイムレイトレーシング性能を測定するPort Royalの結果は、全CPUがほぼ横並びとなっており有意な差はついていない。
VRMark
VRMarkでは、「Orange Room」、「Cyan Room」、「Blue Room」の3テストを実行した。
最もGPU負荷が軽く、CPUがボトルネックになりがちなOrange Roomでは、Ryzen 3 3300Xが2番手のRyzen 3 3100に約21%の大差をつけてトップに立った。以下、Core i7-6700Kに約33%、Ryzen 5 1600(AF)に約37%の差をつけている。
DirectX 12を用いるCyan Roomでトップスコアを記録したのはCore i7-6700Kで、Ryzen 3 3300XとRyzen 3 3100の差は約2%、Ryzen 5 1600(AF)との差は約7%だった。
GPU負荷が非常に高いBlue Roomについては、CPUを問わず80fps前後でほぼ横並びとなっており、スコア差も最大で約1%しかついていない。有意な差はついていないと言って良いだろう。
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク
ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークでは、描画品質を「最高品質」に設定し、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。
4K解像度では全CPUのスコアがほぼ横並びとなっており、有意な差がついたのは画面解像度がフルHDとWQHDの時で、この時トップスコアを記録したのはRyzen 3 3300Xだった。Ryzen 3 3300Xは2番手のCore i7-6700Kに約9~10%、Ryzen 3 3100に約14~16%、Ryzen 5 1600(AF)に約17~18%の差をつけた。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークでは、描画品質を「高品質」に設定し、フルHDから4Kまでの画面解像度でテストを実行した。
フルHDとWQHDではファイナルファンタジーXIVベンチマーク同様、Ryzen 3 3300Xがトップスコアを記録しているが、各CPUの差は小さくなっており、2番手のCore i7-6700Kに対するRyzen 3 3300Xのリードは約1~4となっている。
Forza Horizon 4
DirectX 12専用のオープンワールドレーシング「Forza Horizon 4」ではベンチマークモードを利用して、描画設定「ウルトラ」でフルHDから4Kまでの画面解像度をテストしたほか、高fps設定としてフルHD解像度で描画設定「ミディアム」の結果も測定した。
4K解像度の結果は全CPUで横並びとなっているが、それ以外の条件ではRyzen 3 3300Xが最高のフレームレートを記録している。とくに、CPUがボトルネックとなる高fps設定では、2番手のRyzen 3 3100に約19%、Core i7-6700Kにも約23%の差をつけている。
F1 2019
F1 2019ではベンチマークモードを利用して、描画設定「超高」でフルHDから4Kまでの画面解像度をテストした他、高fps設定としてフルHD解像度で描画設定「ミディアム」の結果も測定した。なお、グラフィックスAPIはDirectX 12を利用している。
WQHD解像度以上では各CPUのフレームレート差は小さくなっているが、GPU負荷の軽いフルHD解像度や高fps設定ではRyzen 3 3300Xがフレームレートを伸ばしており、Ryzen 3 3100もCore i7-6700Kに匹敵する数値を記録している。
フォートナイト
バトルロイヤルTPSの「フォートナイト」では、描画設定「最高」でフルHDから4Kまでの画面解像度をテストした他、高fps設定としてフルHD解像度で描画設定「中」の結果を測定した。なお、グラフィックスAPIはDirectX 11を利用し、3D解像度は常に100%に設定している。
描画設定「最高」では各CPUのフレームレート差は小さいものにとどまっており、フルHD解像度でRyzen 3 3300XとCore i7-6700Kがやや抜け出した格好となっている。しかし、高fps設定ではRyzen 3 3300XがCore i7-6700Kに15%差をつけて突き放しており、高フレームレート動作への適性を示している。
レインボーシックス シージ
レインボーシックス シージではベンチマークモードを使って、描画設定「最高」でフルHDから4Kまでの画面解像度をテストした他、高fps設定としてフルHD解像度で描画設定「中」の結果も取得した。なお、レンダリングのスケールは常に100%に設定している。
描画設定「最高」ではCore i7-6700Kが最高のフレームレートを記録しており、フルHD解像度では第3世代Ryzenの4コア8スレッドCPUがそれに続く格好となっている。しかし、高fps設定ではRyzen 3 3300XがCore i7-6700Kに約6%の差をつけて逆転しており、Ryzen 3 3100もCore i7-6700Kの3%差に迫っている。
消費電力とCPU温度
システム全体の消費電力をワットチェッカーで測定した結果を紹介する。測定したのはベンチマーク中のピーク消費電力とアイドル時消費電力で、CPUベンチマークと3Dベンチマークの結果を分けてグラフ化している。
アイドル時消費電力がもっとも低かったのはCore i7-6700Kの36Wで、次いでRyzen 5 1600(AF)の41W、Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xは46Wで最大値となっている。IntelとAMD環境ではマザーボードが異なり、Ryzen 5 1600(AF)と第3世代Ryzenでは、PCI Express 4.0やメモリクロックなどに違いもあるが、総じて第3世代Ryzenの方がアイドル時消費電力は高くなりがちのようだ。
すべてのCPUコアを活用するCPUベンチマークにおいて、ピーク消費電力がもっとも低いのはRyzen 3 3100の112~132Wで、次いでRyzen 3 3300Xの114~140W。Ryzen 5 1600(AF)とCore i7-6700Kはテストによって順位が入れ替わっているが、どちらも最大で150W前後となっている。
3Dベンチマーク実行中のピーク消費電力は、いずれのCPUでも350Wを超えない程度で、各CPUの差も10W前後にとどまっている。唯一の例外として、VRMarkのOrage Room実行時にRyzen 3 3300Xが他のCPUより40W近く高い消費電力を記録しているが、同テストではRyzen 3 3300Xが突出して高い数値を記録していたことから、CPUボトルネックの緩和によるGPU消費電力の増加が原因であると考えられる。
最後に、高負荷テスト実行中のCPU温度を測定した結果を紹介する。
負荷テストに用いたのはTMPGEnc Video Mastering Works 7のx264エンコードで、2160p→2160p変換を約10分間連続で実行する。CPU温度を含むモニタリングデータは「HWiNFO v6.24」で取得した。テスト時の室温は約25℃。
各CPUのモニタリングデータから、ファンコントロールに用いられるCPU温度(Tctl)について、最大値と最低値に加え、CPU使用率40%以上で動作中の平均CPU温度をまとめたものが以下のグラフだ。測定結果によれば、Ryzen 3 3100とRyzen 5 1600(AF)は75℃弱、Ryzen 3 3300Xが80℃弱で動作している。各CPUの最大温度は95℃なので、どのCPUも温度的には一定以上の余裕を確保できている。
各CPUのモニタリングデータを元に、CPU温度や動作クロック、消費電力(CPU PPT)などの変化をCPU毎にまとめたものが以下のグラフだ。
RyzenのTDP 65Wモデルでは、電力リミットであるPPTが88Wに設定されているため、Ryzen 5 1600(AF)はリミットに近い85W前後で動作している。一方、Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xは、テスト開始直後を除けば65W前後で推移している。電力リミット枠を使い切らずともブースト動作を実現できるのは、Zen 2のワットパフォーマンスの高さゆえだろう。
コストパフォーマンスが魅力のエントリークラスRyzen
Core i7-6700Kと互角以上の性能を発揮したRyzen 3 3300Xや、CGレンダリング性能などではそのRyzen 3 3300Xを上回ってみせたRyzen 5 1600(AF)の性能は印象的だ。1万円前後の価格帯に投入されるCPUの性能としては相当に優秀なものであり、とくにRyzen 3 3300XはゲーミングPCのCPUとして十分通用する実力を備えている。
今回の比較に用いたCore i7-6700Kは、2017年までIntelのデスクトップ向けCPUの頂点にあったCPUであり、それと同等以上の性能を持ったCPUが120ドルという価格で登場するのは衝撃的だ。6月16日発売予定のAMD B550チップセット搭載マザーボードとともに、コストパフォーマンスを重視するユーザーの注目を集めることになるだろう。