山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

USB Type-Cで注目の「iPhone 15 Pro Max」。電子書籍ユースでの利点とは?

「iPhone 15 Pro Max」。実売価格は18万9,800円から

 Appleの「iPhone 15 Pro Max」は、6.7型の大画面を備えたスマートフォンだ。USB Type-Cを新たに搭載したiPhone 15シリーズの中でフラグシップにあたる製品で、A17 Proチップを搭載し、光学5倍のカメラなどを搭載することが特徴だ。

 今回は筆者が購入した実機をもとに、電子書籍ユースを中心とした使い勝手を、従来モデル「iPhone 14 Pro Max」との違いを中心に紹介する。

ボディはわずかに小型化。直近5モデルでは最軽量

 まずは従来モデルであるiPhone 14 Pro Maxとの比較から。

【表】iPhone 15 Pro MaxとiPhone 14 Pro Maxのスペック
iPhone 15 Pro MaxiPhone 14 Pro Max
発売年月2023年9月2022年9月
サイズ(幅×奥行き×高さ)76.7x159.9x8.25mm77.6x160.7x7.85mm
重量221g240g
CPUA17 Proチップ
2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した新しい6コアCPU
新しい6コアGPU
新しい16コアNeural Engine
A16 Bionicチップ
2つの高性能コアと4つの高効率コアを搭載した6コアCPU
5コアGPU
16コアNeural Engine
RAM8GB6GB
ストレージ256GB/512GB/1TB128GB/256GB/512GB/1TB
画面サイズ/解像度6.7型/2,796×1,290ドット(460ppi)6.7型/2,796×1,290ドット(460ppi)
Wi-FiIEEE 802.11ax(Wi‑Fi 6E)IEEE 802.11ax(Wi‑Fi6)
コネクタUSB-CLightning
防水防塵IP68IP68
生体認証Face IDFace ID
駆動時間/バッテリ容量ビデオ再生:最大29時間
ビデオ再生(ストリーミング):最大25時間
オーディオ再生:最大95時間
ビデオ再生:最大29時間
ビデオ再生(ストリーミング):最大25時間
オーディオ再生:最大95時間
備考MagSafe対応MagSafe対応

 USB Type-Cの搭載と5倍光学ズームが話題の本製品だが、それ以外にも従来モデルから変更になっている箇所は多くある。

 1つはボディサイズの小型化で、ベゼルがスリムになったことで、画面サイズを維持しつつ、ボディの高さと幅がわずかにコンパクトになっている。厚みはやや増しているので、全体としてはプラスもあればマイナスもあるのだが、手には収まりやすくなった印象だ。

左が本製品、右が従来のiPhone 14 Pro Max。ボディはわずかに小さくなっているが、見た目にはほぼそっくりだ
背面。カメラのサイズはミリ以下の違いはあるものの、こちらもやはりそっくりだ
左側面。音量ボタンの上に、従来の着信/消音スイッチに代えて、新たにアクションボタンが搭載された
右側面。寸法がわずかに変更になっており、ボディサイズが違うのと合わせて、従来の保護ケースは流用できない
上が本製品、下が従来モデル。LightningがUSB Type-Cに改められている
ベゼルの幅を比較すると、本製品(左)は、ベゼルおよびその外周の金属部、それぞれがわずかにスリムになっていることが分かる

 電子書籍ユースにも関係する大きな利点の1つが、ボディの軽量化だ。ステンレススチールからチタンへの素材変更などにより、重量が221gへと軽量化されている。従来モデル(240g)より軽いのはもちろん、iPhone 13 Pro Max(238g)iPhone 12 Pro Max(226g)iPhone 11 Pro Max(226g)と、直近の5世代の中で最軽量ということになる。

 この重量については、同じiPhone 15シリーズのもう1つの6.7型モデルであるiPhone 15 Plusは203gなのでそれよりは分は悪いが、モデルチェンジを重ねるたびに重くなる昨今のスマホ事情を考えると、これだけの軽量化を成し遂げたのは評価されるべきだろう。

重量は実測222g
従来モデルは実測243gだったので、20g以上軽量化されたことになる

 性能面では、A17 Proチップが採用され、主にGPUまわりが強化されているほか、メモリが従来の6GBから8GBへと増量されている(ベンチマークについては後述)。このほかWi-Fiは従来はWi-Fi 6だったのが、Wi-Fi 6Eに対応している。

 生体認証は顔認証(Face ID)のみ。コロナ禍でマスクの着用が多かった頃は指紋認証の復活を求める声も多く、筆者も待望しているユーザーの1人だったのだが、Face IDがマスク着用時にも対応できるようになったこともあり、あまり論点にされなくなった印象だ。

 なおラインナップでは、128GBのオプションがなくなり、最小容量は256GBからとなっている。256GBは18万9,800円と、ギリギリ20万円の大台を切っているが、これだけで尻込みしてしまう人も少なくないだろう。

画面上部のダイナミックアイランド部は健在だ

デザインは秀逸だがやや滑りやすいボディ。ベンチは約10%向上

 実機を手に持ってまず感じるのが、ボディの形状の相違だ。従来のホテルは、側面の角度が尖っていたのに対して、本製品は若干丸まった形状になっている。かつてのiPhone 11 Pro Maxのようなラウンドフォルムとまではいかないが、両者の中間の、ちょうどよい塩梅に落ち着いた印象だ。

背面は微妙なマット感があり手に馴染みやすい。また指紋がつきにくいメリットもある
素材の変更で側面は指紋がつきにくくなった。左側面中央やや下のSIMカードスロットはわずかに位置が下寄りに移動している
右側面は電源ボタンのみという仕様はこれまでと変わっていない
側面の加工の比較。本製品(左)が従来よりも丸みを帯びているのが分かる

 一方で使っていて少々気になるのが、持ち上げようとして掴みそこねる頻度がそこそこ高いことだ。本製品の表面はマット感があり、手触り自体はかなりよい部類に入るのだが、側面の丸みのせいで、掴みそこねて落としそうになることもしばしばだ。

 これは直近2世代ほどのiPhoneの、側面が完全に垂直にカットされたボディで、エッジに指をかけるような持ち方に慣れていた場合に起こる現象と考えられる。背面から側面へ、そして側面から正面へと流れるラインは非常に美しく、デザインにもまとまりがあるのだが、直近2世代のモデルから乗り換える場合は注意したほうがよいかもしれない。

カメラ部の突起は従来と変わらないとは言え、その厚みは相当なものだ

 ベンチマークについては、各種ベンチマークアプリでは、平均して10%前後の伸びが見られた。従来モデルは数%程度の伸びだったことを考えると、パフォーマンスの上がり幅は大きい。もっとも実際に使っていて体感的に分かる差ではないので、あくまでも数値上の話ということになる。

Google Octaneでの比較は「88264」。従来モデルの「78167」に対して29%増
3DMark Wild Life Extremeでの比較は「3691」。従来モデルの「3353」に対して10%増
Geekbench 6での比較は、シングルコアが「2911」、マルチコアが「7279」。従来モデルの「2635」「6878」に対してそれぞれ5%増、6%増
Geekbench 6(Metal)での比較は「27254」。従来モデルの「22882」に対して19%増

表示まわりの性能は従来モデルとまったく同一

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。

 解像度は460ppiということで、表示性能は文句のつけようがない。画面が縦長であるため、コミックなどを表示した時は天地に大きな余白ができるが、これは昨今のスマートフォンはどれも変わらない。むしろiOSの「ブック」アプリは、この余白をオプションなどの表示に割り当てているので、まだ有効活用できている部類に入る。

 なおこれらの見え方は、従来のiPhone 14 Pro Maxとまったく同一。画面上部のダイナミックアイランド部が初搭載されたiPhone 14 Pro Maxは、見え方にどのような影響をおよぼすかが発表直後には注目を集めたものだが、そこから1世代経ち、もはや当たり前となった現在では新鮮味はなく、実際に見え方の違いもない。画面幅も71mmと同一だ。

コミックを表示した状態。ここだけ見ると天地の余白がややもったいない印象を受ける
従来モデルとの比較。見た目はまったく同様だ
設定画面は上下の余白部をうまく生かしたレイアウトだ
ページのサムネイル表示に対応するのはAppleの「ブック」の1つの特徴
「ブック」アプリは、本稿執筆時点のバージョンでは、コンテンツを開く時にまず見開きで表示される場合がある。ページをダブルタップすれば単ページ表示に切り替わる
ページ幅は71mmで、従来モデルと変わらない
テキストコンテンツは縦長の画面を活用したレイアウトに対応する
オプションの項目は右下から呼び出せる
テーマの設定画面。ここから文字サイズなどを切り替えられる
さらに深い階層には、行間や文字間隔、単語間隔などを設定できるカスタマイズメニューがある

外部出力機能やアクションボタンなどの機能は便利?

 ところで従来のLightningに替えてUSB Type-Cを採用した本製品は、DisplayPort Alt Modeに対応しており、USB Type-Cケーブルを用いての外部ディスプレイへのミラーリング出力が行なえる。ディスプレイの入力端子がUSB Type-Cならば、USB Type-Cケーブル1本を用意するだけで済む。

 これを使えば、表示中の電子書籍のページを、そのまま大画面で閲覧できる。ディスプレイをアームで固定し、ベッドサイドで寝転がったまま、手元の本製品をコントローラ代わりにしてページをめくりながら大画面で読書するのもお手のものだ。

USB Type-Cのディスプレイにケーブルで接続することでiPhoneの画面をディスプレイに表示し、スワイプによるページ送りや拡大縮小を行なっている様子。遅延はまったくなくスムーズな操作が可能だ

 この方法、実は従来モデルでもAirPlayを使えば同じことが(しかもワイヤレスで)できてしまうのだが、Apple TVを所有していることが前提となるので、ケーブル1本でできる本製品のほうが圧倒的に手軽だ。電子書籍とは関係ないが、動画配信アプリは著作権保護の関係でAirPlay経由では出力できない場合があるのに対し、ケーブル接続ではそれらの制限も比較的緩い。

 ただし本製品に標準添付されているUSB Type-Cケーブルは、こうした映像信号の伝送に対応しないので、別途それらに対応したUSB Type-Cケーブルを用意する必要がある。またUSB Type-Cケーブルはそのほとんどが全長1m以下で、映像信号の伝送に対応しつつ、長さが1.5mや2mの製品ともなると、やや割高になるケースが多い。その点さえ許容できれば、これまでなかった使い方が可能になるはずだ。

今回はThunderbolt 3ケーブルを使用した

 もう1つ、本製品ならではの機能である、アクションボタンについてはどうだろうか。音量ボタンの上に配置されるこのボタンは、さまざまな機能やアプリの起動を割り当てられるため、任意の電子書籍アプリを割り当てておけば、すばやい起動が可能になる。

 もっともこのアクションボタン、割り当てられる機能はたった1つだけなので、いかに電子書籍アプリの利用頻度が高くても、そのためだけにボタン1つを占有してよいのかは考えものだ。仮にページめくりのような、常用する機能を割り当てられたとしても、ボタンの位置が上すぎて、頻繁に操作するには向かない。

 こうしたことから、結局は消音モードなど、一般的な機能の割当先にならざるを得ないのではないかというのが、使い始めて間もない現時点での感想だ。スライドスイッチではなくなったことで、ほかのボタンと指先で違いを判別しづらくなっており、メリットばかりかと言われると少々違う。

 とは言えカスタマイズ性が向上したのは事実なので、今後さまざまな活用方法が編み出されることに期待したい。

アクションボタン。従来の着信/消音スイッチから差し替えられた
アクションボタンを設定するには設定画面から「アクションボタン」を選択(画面左)、ショートカットの「ブックを開く」を選択(画面右)
設定が完了すると、アクションボタンの長押しで機能の説明が表示されるようになる(画面左)設定画面はこのほかにもさまざまな機能が用意されている(画面右)

従来よりもおすすめ度は向上

 以上のように、表示まわりは従来のiPhone 14 Pro Maxから劇的に変わった点はなく、電子書籍ユースに大きな影響があるのは軽量化と言って差し支えないと思う。というのもひとたび再生を始めれば手で操作する必要のない動画アプリと違い、電子書籍アプリは常時手に持って操作する必要があり、わずかな軽量化であっても、長期的には負担は大きく軽減されるからだ。

 特に今回のiPhone 15シリーズでは、もう1つの6.7型モデルであるiPhone 15 Plusは、従来のiPhone 14 Plusに比べてそれほど軽くなっておらず(203g→201g)、240gから221gへと軽量化された本製品は、インパクトがより大きい。

 なお一方で、6.1型のiPhone 15 Proは、従来の206gから187gへと、こちらも大幅に軽量化されている。どのみち電子書籍の見開き表示に非対応なのであれば、6.1型も6.7型もそれほど変わらないと割り切れる人であれば、こちらをチョイスするのも1つの選択肢だろう。本製品の比較対象となるのはiPhone 15 Plusよりむしろこちらかもしれない。

 実売価格は、もっとも容量が少ない256GBモデルでも18万9,800円と、なかなかのハイエンドぶりだが、iPhone 14 Pro Maxの価格を基準に、追加された機能の内容を勘案しつつ、さらに円安などの事情を考慮すると、妥当という気はする。待望のUSB Type-Cが搭載されたことで、しばらく買い控えをしていたユーザーにも、注目の製品と言えそうだ。