山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

この軽さで2万円切りが魅力。「Fire HD 10(第13世代)」

「Fire HD 10(第13世代)」。実売価格は1万9,980円

 「Fire HD 10(第13世代)」は、KindleストアやAmazonビデオなど、Amazonのデジタルコンテンツ向けの10.1型タブレットだ。同社のFireシリーズの中では、11型の「Fire Max 11」に次いで画面サイズが大きく、実売2万円を切るリーズナブルさが特徴だ。

 従来の第11世代モデルでは、メモリを4GBへと増量しつつワイヤレス充電にも対応した上位モデル「Fire HD 10 Plus」と、メモリ3GBの通常モデル「Fire HD 10」の2ラインナップだったが、今回の第13世代は、メモリは3GB、ワイヤレス充電には非対応という、従来の通常モデルにあたる1ラインナップのみとなっている。

 今回は、筆者が購入した実機をもとに、電子書籍ユースを中心とした使い勝手をチェックする。

400g台前半の軽量筐体。価格はややアップ

 まずは従来モデルとの比較から。今年6月に新しく登場した11型モデル「Fire Max 11」も併せて比較している。なおSoCなど一部表記には揺れがあるが、同社が公表している仕様をそのまま掲載している。

Fire HD 10(第13世代)Fire HD 10(第11世代)Fire HD 10 Plus(第11世代)Fire Max 11(第13世代)
発売2023年10月2021年5月2021年5月2023年6月
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部)246×164.8×8.6mm247×166×9.2mm247×166×9.2mm259.1×163.7×7.50mm
重量434g465g468g490g
SoCMediatek MT8186AMediaTek MT8183(64ビットオクタコア)MediaTek MT8183(64ビットオクタコア)Mediatek MT8186A
CPU2 x A76@2.05GHz、6x A55@2.0GHzMT8183、64ビットオクタコア(最大2GHz)MT8183、64ビットオクタコア(最大2GHz)2xA78@2.2GHz + 6xA55@2GHz
GPUARM G52MC22EE @1GHzARM Mali-G72 MP3 GPU(最大800MHz)ARM Mali-G72 MP3 GPU(最大800MHz)ARM G57 MC2@950MHz L2 512KB
メモリ3GB3GB4GB4GB
画面サイズ/解像度10.1型/1,920×1,200ドット(224ppi)10.1型/1,920×1,200ドット(224ppi)10.1型/1,920×1,200ドット(224ppi)11型/2,000×1,200ドット(213ppi)
通信方式802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n/ac/ax
生体認証---指紋認証
バッテリ持続時間(メーカー公称値)13時間12時間12時間14時間
端子USB Type-CUSB Type-CUSB Type-CUSB Type-C
microSDカードスロット○(最大1TB)○(最大1TB)○(最大1TB)○(最大1TB)
ワイヤレス充電---
発売時の価格(ストレージ)19,980円(32GB)
23,980円(64GB)
15,980円(32GB)
19,980円(64GB)
18,980円(32GB)
22,980円(64GB)
34,980円(64GB)
39,980円(128GB)

 本製品は、CPUやGPU周りのスペックが従来よりアップしているが、製品として目玉になるのは、どちらかというと筐体の軽量化だろう。最近の10~11型クラスのタブレットは400g台後半が一般的で、このクラスの中でかつては軽さを売りにしていたiPad Airも、現在はこのゾーンに落ち着いてしまっているのが現状である。

 そんな中、本製品は434gという、飛び抜けて軽量な筐体を実現している。かつて第7世代や第9世代は500gを超えていたことを考えると、隔世の感がある。手に持ってもはっきりと違いが分かるほどで、過去モデルからの買い替えにあたっては、大きなモチベーションになるだろう。

 一方で、ストレージや解像度、Wi-Fi、また周りの仕様は変わっていない。USB Type-Cを搭載していることと併せて、従来の第11世代で一定の水準に達しており、大きな変更は不要と判断されたのだろう。ただしWi-FiはIEEE 802.11ac止まりだったり、急速充電には非対応だったりと、割り切りも見られる。

 また今年発売された11型のフラグシップ「Fire Max 11」と比べると、指紋認証に対応していないなど、敢えて差をつけたように見える機能もある。「Fire Max 11」とは、同じストレージ容量で価格差が1万円以上あるなどグレードが異なるので、違いはあって当然なのだが、ワイヤレス充電が廃止されたことも含めて、機能が上回ることがないよううまくバランスを取っているように見える。

 注意したいのは価格で、1万9,980円という価格は、従来モデル比で4千円アップ、またワイヤレス充電に対応した従来のFire HD 10 Plusをも上回ってしまっている。要因は主に円安と考えられ、2万円の大台を切っているのはむしろ健闘しているとも言えるが、リーズナブルさが薄れつつあるのは多少なりとも気になるところだ。

筐体は横向きを前提としたデザインで、上部に前面カメラを搭載する
ベゼル幅は上下左右ともに均等なので縦向きの利用も支障はない
筐体はFire Max 11で採用されたアルミ筐体ではなく従来と同じ樹脂製
カメラが出っ張るようになったのは少々マイナスだ
右側面、向かって上に電源ボタン、その下に音量調整ボタンを搭載する
上面にはメモリカードスロットを備える。メモリカードは1TBまで対応する
電源ボタンや音量調整ボタン、USB Type-Cポート、イヤホンジャックは右側面に集中している。左側面には何もない
上面にはスピーカーを備える
重量は432gと、10型のFire HD 10としてはここ数年のモデルの中では最軽量だ
Fire HD 10 Plus(右)との比較。サイズはほぼ同一
ベゼル幅にも違いはないが、その外側にせりだしている筐体の幅は本製品のほうが若干スリムになっている
背面。カメラの出っ張りが目立つ。ほかはほぼ同一だ
こちらは11型のFire Max 11(右)との比較。幅はほぼ同じで高さに差がある
背面。アルミ筐体で薄型のFire Max 11と比べると樹脂製でややずんぐりしている
これら3製品はいずれも右側面にポートとボタンが集中しているが、それらの並び順は製品によってバラバラなのが面白い。上から順に、本製品、Fire HD 10 Plus、Fire Max 11

ベンチマークはFire HD 10 Plusより上、Fire Max 11より下

 同梱品は従来と同じく、USB充電器とケーブルのみ。本製品はUSB Type-Cポートを搭載しているものの、急速充電規格であるUSB PDには対応しておらず、付属のケーブルもUSB A-C仕様だ。

 ちなみに筐体が軽量化されているのは前述のとおりだが、内部の密度はまだまだ余裕があるようで、筐体を背面からコンコンと叩くと、内部に空洞があるのがよく分かる。とはいえ、製品の方向性からして、これらの密度を上げてさらに薄型化するといった進化は今後も望めないだろう。

オレンジを基調としたパッケージは従来どおり
付属品は充電アダプタとUSB A-Cケーブル、スタートガイド
充電器は従来と同じ「PS57CP」で、最大出力は9W。USB Type-Aゆえ急速充電には対応しない

 セットアップの手順は従来通りで、とくに奇をてらったフローはない。「Fire Max 11」と同様、スマホアプリを用いた簡単セットアップも用意されており、AmazonのAlexaアプリを使っているユーザーであれば、スピーディーなセットアップが行なえる。

セットアップ手順。まずは言語を選択
手動セットアップか、アプリによるセットアップかを選ぶ。ここではひとまず前者を選択
Wi-Fiのパスワードを入力。「アプリによるセットアップ」を選んだ場合はこの画面は省略される
続いてAmazonのアカウントを入力する。「アプリによるセットアップ」を選んだ場合はこの画面は省略される。このあと紹介ビデオが再生される
不要なオプション項目のチェックを外して次に進む
子ども用のプロフィールを作るか選択する
ロック画面を設定する。Fire Max 11と違って指紋認証は非搭載のため、PINかパスワードの2択となる
最後にAlexaまわりの設定を行なう

 画面構成は従来と同じく、「おすすめ」、「ホーム」、「ライブラリ」のタブを切り替える方式。ベースとなるFire OSは、Fire Max 11と同じFire OS 8へと改められている(従来はFire OS 7)ため、デザインの一部が変更になっている。

 また機能面では、Fire Max 11ではすでに実装されているミラーリング機能が新たに追加されているほか、表示サイズの変更機能も利用可能になっている。またこちらもFire Max 11と同様、手書きペンを利用するためのオプション項目が追加されていたりと、細かい変更がみられる。

セットアップが完了するとホーム画面が表示される。従来と同じく、上段に最近使ったコンテンツおよびおすすめコンテンツが表示され、下段にアプリが並ぶレイアウト
「おすすめ」画面。本や動画、アプリなどのおすすめが並ぶ。Kindle Unlimitedを契約しているか否かなどの条件によって表示項目は変化する
「ライブラリ」画面。Kindleだけでなくさまざまな購入済みコンテンツが並ぶ
通知領域。ミラーリングのオン・オフはここから切り替えられる
設定画面。アクセサリ関連のカテゴリが新たに追加されている
アクセサリカテゴリではオプションの手書きペンにまつわる設定が行える
手書きをテキストに変換する機能を搭載。ちなみにFire Max 11にも搭載されていた機能だ
新たにミラーリング機能が追加されている。これもFire Max 11に先行して搭載されていた機能の1つ
表示サイズの変更モードが搭載された(左が変更前、右が「小」への変更後)。アイコンや文字、さらにはナビゲーションバーのサイズを小さくして天地を広くできる

 ベンチマークについては、Fire HD 10 Plusよりも上、Fire Max 11よりも下、という序列になる。製品ページには「Fire HD 10 第11世代よりも最大25%パフォーマンスが改善」とされているが、その上位に当たるFire HD 10 Plusと比べても65%増、66%増、41%増といった値が当たり前のように出ている。

 もっとも最上位にあたるFire Max 11と比べると、体感的に分かるレベルで差があるので、このあたりはきちんとバランスを調整している印象を受ける。とはいえ本製品は、メモリ4GBのFire HD 10 PlusおよびFire Max 11と違ってメモリが3GBというハンデがあってなおこの値なので、ある意味で健闘していると言える。

Google Octane 2.0による比較。左から、本製品が「16,925」、Fire HD 10 Plusが「10,233」、Fire Max 11が「21,204」。Fire HD 10 Plusよりも65%増だが、Fire Max 11と比べると分が悪い
GeekBenchによる比較。シングルコアは本製品が「508」、Fire HD 10 Plusが「305」、Fire Max 11が「691」。マルチコアは本製品が「1453」、Fire HD 10 Plusが「1027」、Fire Max 11が「1949」。こちらもやはりFire HD 10 Plusと比べて66%増、41%増と伸びている

表示性能は変化なし。雑誌コンテンツ表示時は余白に注意

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。

 解像度は224ppiということで、表示性能はギリギリ及第点といったところ。もっともこの解像度は上位モデルに当たるFire Max 11(213ppi)よりもわずかながら上であり、Fire同士の比較ということであれば、特にハンデとなることはない。

 逆に言うと、今後Fireが高解像度化されることがあったとして、本製品よりもFire Max 11が優先されるはずで、本製品は今後もこの解像度が維持されると考えられる。

 ちなみに実際に使ってみると、画面の輝度が向上しているのがよく分かる。従来のFire HD 10 Plusと比較すると、違いは一目瞭然だ。Fireといえばホーム画面のデフォルトの配色もあいまって全体的に暗いイメージがあるだけに、画面が明るくなったことでくっきり色鮮やかに見えるようになったのはプラスだろう。

コミックを見開きで表示したところ。アスペクト比の関係で左右に余白ができるが、そこまで目立つことはない
Fire HD 10 Plus(下)とサイズは同一。画面の明るさが向上していることがよく分かる
Fire Max 11(下)は本製品よりひとまわり大きく表示されるものの、それ以上に左右の余白が大きく表示され、ややアンバランスな印象を受ける
左から、本製品、Fire HD 10 Plus、Fire Max 11。表現力はほぼ横並びだ

 画面のアスペクト比は16:10で、コミックを見開き表示にした場合は、画面の左右に大きな枠ができる。これについてはまだ許容できるのだが、本体を縦向きにして雑誌を単ページで表示すると、アスペクト比が4:3に近いiPadに比べ、ページのサイズが1回りどころか2回りは小さくなってしまう。雑誌がメインのユーザーは、製品選びにあたって留意したいポイントだ。

第10世代iPad(下)との比較。同じ10型クラスながら、アスペクト比の関係もあり、本製品よりも2回りほど大きい
雑誌を単ページで表示すると、第10世代iPad(右)のほうがアスペクト比の関係でかなり大きく表示される。雑誌をよく読むユーザーはiPadのほうが快適だろう

 ところで本製品をはじめとする現行のFireタブレットには、従来の第11世代モデルが発売された当時はあまり売りにならなかった利点がある。それは市販のタブレットの中でほぼ唯一、Kindleストア内で本が購入できることだ。

 かつてはAndroidデバイスも、Kindleアプリ内で本が購入できたが、2021年になって、Google Playストア経由で導入した電子書籍アプリは、原則として別途ブラウザでストアを開いて購入しなくてはならなくなった。iOSと同じく、購入にひと手間かかるようになったことで、Androidの利点が失われてしまった格好だ。

 その点、このFireは、Kindleストアに限定されるとはいえ、アプリ内で本を購入できる。サンプルを読み終えて購入したいとなった場合も、またコミックで続刊を購入したい場合も、わざわざブラウザに移動することなく、Kindleアプリ内で簡単にコンテンツを購入できる。いま読書用のタブレットとしてFireを選ぶ場合、このことは大きなメリットとなるだろう。

第9世代以前のモデルからの買い替えに適した製品

 以上のように本製品は、スペックの変化は緩やかで、表示性能についても進化は見られないが、筐体の軽量化が大きな特徴と言える。過去のモデルからの買い替えにあたっては、これが大きな動機になるはずだ。

 ただしそれはUSB Type-C非搭載だった第9世代よりも前に限った話で、従来の第11世代のモデルと比べると、筐体の軽量化はあるものの、そのほかの基本的な仕様は変わっておらず、また上位のプラスと比べると、ワイヤレス充電機能が省略されているなどの違いがある。

 こうしたことから、よほど軽量化に魅力を感じない限りは、2つ前、つまり第9世代以前のモデルからの買い替えに適した製品ということになるだろう。高スペックで生体認証に対応したFire Max 11か、標準的スペックで生体認証非搭載だが軽量で価格はリーズナブルな本製品かは、予算や使い方によっても最適解は変わってくるだろう。