山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

6.9型へと大型化した「iPhone 16 Pro Max」は、電子書籍に何をもたらすのか?

「iPhone 16 Pro Max」。実売価格は18万9,800円から

 Appleの「iPhone 16 Pro Max」は、6.9型の大画面を備えたスマートフォンだ。プロセッサにA18 Proチップを搭載し、光学5倍のカメラを搭載するなど、iPhone 16シリーズの中でフラグシップにあたる製品だ。

 近年のiPhoneは、モデルチェンジにあたってもそれほど劇的な変更はなく、従来モデルに当たる「iPhone 15 Pro Max」にしても、LightningがUSB Type-Cに変更になったことを除けば、ハード的な大きな変更は、アクションボタンが追加されたことくらいしかなかった。その点、今回のiPhone 16 Pro Maxがどうなのかは気になるところだ。

 今回は、筆者が購入した実機をもとに、電子書籍ユースを中心とした使い勝手を、従来の「iPhone 15 Pro Max」および「iPhone 14 Pro Max」と比較しつつチェックする。

画面サイズがわずかに大型化。バッテリ持続時間も延長

 まずは従来モデルであるiPhone 15 Pro Maxとの比較から。

iPhone 16 Pro MaxiPhone 15 Pro Max
発売年月2024年9月2023年9月
サイズ(幅×奥行き×高さ)77.6x163x8.25mm76.7x159.9x8.25mm
重量227g221g
CPUA18 Proチップ
6コアCPU
6コアGPU
16コアNeural Engine
A17 Proチップ
6コアCPU
6コアGPU
16コアNeural Engine
RAM8GB8GB
ストレージ256/512GB/1TB256/512GB/1TB
画面サイズ/解像度6.9型/2,868×1,320ドット(460ppi)6.7型/2,796×1,290ドット(460ppi)
Wi-FiWi-Fi 7(802.11be)Wi-Fi 6E(802.11ax)
コネクタUSB Type-CUSB Type-C
側面ボタンサイドボタン
音量ボタン
アクションボタン
カメラコントロール
サイドボタン
音量ボタン
アクションボタン
防水防塵IP68IP68
生体認証Face IDFace ID
駆動時間/バッテリ容量ビデオ再生:最大33時間
ビデオ再生(ストリーミング):最大29時間
オーディオ再生:最大105時間
ビデオ再生:最大29時間
ビデオ再生(ストリーミング):最大25時間
オーディオ再生:最大95時間
備考MagSafe対応MagSafe対応

 CPUのアップグレード(A17 Pro→A18 Pro)やWi-Fiの新規格への対応(Wi-Fi 6E→Wi-Fi 7)など、新モデルでは恒例となっているスペックアップを除き、本製品で目に付く進化は大きく分けて3つある。

 1つは画面の大型化(6.7型→6.9型)と、それに伴う筐体サイズの肥大化だ。中でも全長は従来より約3mmも大きくなるなど、近年の変化の中ではかなり目立つ部類に入る。またこれと並行して、従来モデルで20g近く軽くなった筐体が、再び増加へと転じているのは、あまり好ましくない傾向だ。

 もう1つは、バッテリの持ちがよくなったことだ。ビデオ再生時間では従来モデルよりもプラス4時間、オーディオ再生時間に至ってはプラス10時間と、かなりの差が見られる。2018年発売の「iPhone XS Max」は、ビデオ再生時間はたったの15時間だったので、6年経って2倍以上になったことになる。

 本体の右側面にカメラコントロールが追加されたのも目玉だ。押し込むとカメラが起動してシャッターボタンとして利用できるほか、スワイプすることでズームの倍率を切り替えるなどの用途に利用できるが、ほかの機能を割り当てることはできない。

 このあたり、スワイプによって電子書籍のページをめくれるような設定ができれば面白かったのだが、そうした汎用性は一切ない。左側面にあるアクションボタンとの差別化の意味もあるのだろう。

左が本製品、右が従来のiPhone 15 Pro Max。従来モデルでわずかに小さくなった筐体が今回また大きくなった格好だ。特に天地は明らかに伸びている
背面。カメラの配置は従来と変わっていない
左側面。従来モデルと同じく、音量ボタンの上にアクションボタンが搭載されている
右側面。新たにカメラコントロールが追加された
上が本製品、下が従来のiPhone 15 Pro Max。横幅は本製品のほうがわずかに広いことが分かる。ポートはUSB Type-C
厚みの比較。まったく同一だ

筐体サイズは大型化もあまり影響なし

 セットアップの流れは従来と大きな違いはないが、本製品はプリインストールされているのがiOS 18ということで、ホーム画面のアイコンが左上から詰めることなく自由に配置できるようになっている。電子書籍関連のアプリだけをまとめた画面を作っておき、指が届きやすい範囲にそれらのアイコンを配置するといった工夫もできるだろう。

iOS 18ではホーム画面のアイコンは任意の場所に配置できるようになった。利用頻度の高いアプリは指の届きやすいところに配置すると使いやすくなる

 さて筐体の大型化および重量の増加は、どのくらい気になるのだろうか。結論から言ってしまうと、実際に使っている限りでは、あまり気にならない。ボディは大型化したといっても縦に伸びたのが主で、横幅はほとんど変わっていないので、持ちやすさが損なわれたわけでもない。ベゼル幅を極限まで細くするなどの工夫が功を奏している格好だ。

 また重量についても、従来モデルとの違いは6gと、保護ケースの選び方1つで逆転しかねない差なので、あまり気にしなくてよいだろう。特に比較対象がiPhone 15 Pro Maxならばまだしも、iPhone 14 Pro MaxやiPhone 13 Pro Maxであれば本製品のほうが軽いのでなおさらだ。ひとまず今後のモデルで極端に増加しないよう祈るばかりだ。

従来モデルよりも全長は伸びているが、使っている限りは意識することはほぼない
ベゼル幅の比較。左が本製品、右が従来のiPhone 15 Pro Max。わずかに幅が狭くなっているが、こうして実物を並べて比較しなければ分からない
重量は実測228g(SIMカード込)

 一方で、本製品から新たに搭載されたカメラコントロールは、表面が凹んでいることから、指が引っかかってストレスを感じることもない。たとえ使わなくても邪魔にならないのは、ユーザーにとっては重要なポイントだ。

 反面、背面カメラのレンズの突出ぶりは相変わらずで、ポケットなどに入れる時にもひっかかりやすいほか、日常の利用時でも傷がつかないか気を使う。保護ケースを用いて段差を減らすにしても限界があるので難しい。

 ちなみに従来のiPhone 15 Pro Maxから搭載されたUSB Type-Cポートは、本製品も変わらず搭載している。Lightningが廃止になったと大騒ぎしたのも今は昔、すっかり当たり前になってしまい、話題にもならなくなった格好だ。

 なおこのProモデルはUSB 3.2 Gen 2対応なので、転送速度も速い。電子書籍ユースでは特に関係してこないだろうが、動画など大容量データを転送する場合には利点となる。

カメラコントロールは表面が凹んでいるため、指が引っかかってストレスになることもない
カメラ部の突起はやはり気になるところ
従来モデルから搭載されたUSB Type-Cポートは本モデルでも健在だ

 ベンチマークについては順当に、十数%程度のスコアの向上が見られる。電子書籍ユースではこれだけの性能を生かせる機会はあまりないだろうが、そのほかの用途も含め、ハイエンドな端末を求めている人には魅力的だろう。ちなみにiPhone 14 Pro Max→iPhone 15 Pro Maxへの進化に比べると、スコアの向上幅は若干ながら大きいようだ。

ベンチマーク比較。左から本製品、iPhone 15 Pro Max、iPhone 14 Pro Max(以下同じ)。Google Octaneでの比較は「93,188」。従来モデルに対して8.5%増
3DMark Wild Life Extremeでの比較は「4,442」。従来モデルに対して17.1%増
Geekbench 6での比較は、シングルコアが「3,369」、マルチコアが「8,356」。従来モデルに対してそれぞれ15.7%増、17.6%増
Geekbench 6(Metal)での比較は「33,065」。従来モデルに対して17.5%増

画面幅は72.5mmとスマホとしては最大級

 では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最終号を使用している。

 解像度は458ppiであり、電子書籍の表示に使う各種デバイスの中でも、表示性能は最高峰といっていいレベル。一般的なコンテンツはもちろんのこと、雑誌のように判型の大きいコンテンツを縮小表示しても、細かい注釈までしっかり読み取れる。

 画面サイズは、従来の6.7型→6.9型と大型化しているが、アスペクト比はほぼ同一なので、これによって見開き表示が可能になるなどの変化はない。あくまでも単ページ表示で、一回り大きく表示できるようになっただけだ。

 とはいえこの表示サイズはスマホとしては最大級に当たり、一般的なサイズのスマホでは表示サイズが小さすぎるという理由で買い替えを考えている人にとっては、プラスであることは間違いない。用いる電子書籍アプリにもよるが、画面上部に生じる余白も、メニューやサムネイルを表示する時には有効活用されており、間延びした印象もそれほどない。

コミックを表示した状態。設定を表示した時には天地の余白部分にメニューやサムネイルが表示される
従来モデル(右)との比較。ページサイズがわずかに大きくなっていることが分かる
従来モデルは画面の横幅が71mmだったが……
本製品は72.5mmと、スマホとしては最大級だ。ちなみに先日紹介した「Pixel 9 Pro XL」は70mmなのでかなり差がある
テキストコンテンツを表示したところ。天地が伸びたため1行に表示できる文字数がわずかに増えている
雑誌コンテンツは大幅に縮小されてしまうためさすがに実用的ではない
とはいえ解像度が高いことから、縮小したままでも注釈のような細かい文字が潰れずに読み取れてしまう

 ほかのスマホと比較した場合にもう1つ強みになるのは、従来モデルで新たに追加された本体左側面のアクションボタンだ。任意の機能を割り当てられるこのボタンに電子書籍アプリの起動を割り当てておけば、どの画面からでも電子書籍の一発表示が可能になる。

 他社のスマホでもこうした拡張ボタンを持つ製品がないわけではないが、電子書籍ジャンキーと言っていいほど起動回数が多い人は、便利に使えるかもしれない。プリセットされているショートカット一覧にはApple純正の「ブック」があるが、単にアプリを起動するだけならば、ほかの電子書籍アプリも問題なく指定できる。

左側面に3つ並ぶボタンのいちばん上がアクションボタン。iPhone 16シリーズ全モデルに搭載されている
アクションボタンには任意のショートカットを割り当てられる。Apple純正アプリは専用のショートカットが用意されていることが多い(左)「ブック」アプリでは「現在のブックを読む」というショートカットが用意されており、これを割り当てておくとアクションボタン一発で本の続きを表示できる(右)
「ブック」に限らず任意の電子書籍アプリを登録しておける。ここではKindleを指定したうえで「電子書籍を開く」というラベルを付けた(左)アクションボタンを長押しするとこのショートカットが起動する(右)

よい意味で普通に使えるモデル

 以上のように、ハードウェア面ではカメラコントロールボタンが追加されたり、バッテリ寿命が伸びたりといった変化があるが、電子書籍ユースに与える影響は軽微だ。重量がやや増したのはマイナスだが、トータルではよい意味で普通に使えるモデルという評価になる。あとは今後追加されるApple Intelligenceなどによっても、評価は変わってくるだろう。

 本製品の競合となるのは、画面サイズがひとまわり小さい6.7型の「iPhone 16 Plus」で、重量は199g、また価格は(容量こそ少ないものの)13万9,800円からとかなりの差がある。Proモデルほどのパフォーマンスは求めず、望遠レンズも不要で、むしろ予算に上限がある場合は、よい選択肢になるだろう。従来のiPhone 15 Plusと違ってアクションボタンも搭載している。

 一方、本製品の小型版にあたる6.3型の「iPhone 16 Pro」は、性能面では本製品と同等だが、重量は前出のiPhone 16 Plusと同じ199gということで、電子書籍ユースにおける手への負担を考えた時は、やや躊躇してしまう。もちろん用途ありきとはいえ、画面の大きいiPhone 16 Plusや、さらに大画面で性能面でも同等の本製品のほうが、こと電子書籍に限れば、推せる要因は多いと言えそうだ。