Hothotレビュー

iPhone 15 Pro Max/Pro/Plusを3機種入手。まとめていろいろ比較してみた

左から「iPhone 15 Pro Max」(18万9,800円~)、「iPhone 15 Pro」(15万9,800円~)、「iPhone 15 Plus」(13万9,800円~)

 Appleは「iPhone 15 Pro Max」、「iPhone 15 Pro」、「iPhone 15 Plus」、「iPhone 15」の4モデルを9月12日に発表、9月22日より販売開始した。

 15 Pro Max/15 Proはボディにチタニウムを採用することで耐久性を向上させつつ軽量化を実現。またスマートフォン史上最速と謳う「A17 Proチップ」を採用し、カスタマイズ可能な「アクションボタン」を「着信/サイレントスイッチ」に代わり搭載した。さらに15 Pro Maxには光学5倍とiPhoneシリーズ最大の最長の望遠カメラが内蔵されている。

 15 Plus/15には、2つ目のディスプレイのように振る舞うパンチホール「Dynamic Island」と48MPメインカメラを、2022年のProモデルから継承。またSoCも2022年のProモデルに初採用された「A16 Bionicチップ」が搭載されている。光学望遠カメラは搭載されていないが、ほぼProモデルなスタンダードiPhoneだ。

 今回はAppleより15 Pro Max、15 Pro、15 Plusを同時に借用できたので、それぞれの進化点、パフォーマンス、カメラ機能についてレビューしていこう。

190億個のトランジスタで構成される「A17 Proチップ」をProモデルに採用

左から15 Pro Max、15 Pro、15 Plus(以下の写真は同じ並び)。15 Plusにも2つ目のディスプレイのように振る舞うパンチホール「Dynamic Island」が採用された

 まずはスペックについて解説していこう。SoCは、15 Pro Max/15 Proは「A17 Proチップ」、15 Plus/15は「A16 Bionicチップ」を採用している。

 A17 Proチップは3nmプロセスで製造された初めての量産型SoC。190億個のトランジスタで構成されており、性能コアは最大10%の高速化、効率コアは競合製品の3倍に相当するワットパフォーマンス(Performance Per Watt)、GPUコアは最大20%の高速化、Neural Engineは最大2倍の高速化を実現していると謳われている。

 A16 Bionicチップは2022年発売の14 Pro Max/14 Proで初採用されたSoCで、160億個のトランジスタで構成されている。14 Plus/14は「A15 Bionicチップ」を搭載していたので、15 Plus/15は1世代新しいSoCが採用されたわけだ。

 メモリ容量は正式には公表されていないが、今回借用した端末のシステム情報をベンチマークソフトで確認したところ、15 Pro Maxと15 Proは8GB、15 Plusは6GBのメモリを搭載していた。14 Pro Maxと14 Proは6GBだったので、2023年モデルのProモデルはメモリを2GB増量したことになる。

 ストレージは15 Pro Maxに256GB/512GB/1TB、15 Proに128GB/256GB/512GB/1TB、15 Plus/15に128GB/256GB/512GBが用意されている。15 Pro Maxを求めるユーザーはより高いスペックを選ぶであろうから、128GBモデルを廃したわけだ。

3機種ともOLED「Super Retina XDRディスプレイ」を採用。輝度、コントラスト比、色域などのスペックは同じで、発色にも違いは感じられない。ただし最大120Hzのリフレッシュレート、ロック画面での常時表示は15 Plus/15では利用できない
15 Pro Maxはブラックチタニウム、15 Proはブルーチタニウム、15 Plusはブルーのモデルを借用した

 ディスプレイは、15 Pro Max/15 Proはスペック上の変更はないが、ベゼルを狭くすることでボディが小型化されている。15 Plus/15は小型化されたパンチホール「Dynamic Island」を採用した。

 また従来モデルと比べて最大輝度は800cd/平方mから1,000cd/平方m、ピーク輝度(HDR)は1,200cd/平方mから1,600cd/平方mと明るくなり、ピーク輝度(屋外)は2,000cd/平方mに対応した。最大120HzのProMotionテクノロジー、常時表示ディスプレイは利用できないが、そのほかのスペックは15 Pro Max/15 Proと並んでいる。

 カメラは、15 Pro Maxが48MPメイン、12MP超広角、12MP光学5倍望遠、12MPフロント。15 Proが48MPメイン、12MP超広角、12MP光学3倍望遠、12MPフロント。15 Plus/15が48MPメイン、12MP超広角、12MPフロントという構成だ。

 14 Pro Maxと14 Proはカメラ構成が同じだったが、15 Pro Maxは光を4回反射させる「テトラプリズム」を採用することでレンズとセンサーを離して、光学5倍望遠の焦点距離を実現している。

 15 Pro Maxと15 Proの奥行きは8.25mmと同じ。15 Proにも光学5倍望遠をぜひ搭載してほしかったところだ。

下から15 Pro Max、15 Pro、15 Plus
下面にはUSB-Cを装備。ただし15 Pro Max、15 ProはUSB 3、15 PlusはUSB 2とデータ通信速度が異なる
右側面にはサイドボタン、左側面にはアクションボタン(15 Plusは「着信/サイレントスイッチ」)、ボリュームボタン、Nano SIMカードトレイを配置

 有線インターフェイスの変更は2023年モデルの大きなトピック。ご存じの通り2022年モデルまではLightning端子が搭載されていたが、発表会で「USB-Cは広く受け入れられている規格」と語られ、ついに全モデルにUSB-C端子が採用された。

 ただし、A17 ProチップはUSB 3、A16 BionicチップはUSB 2と、USBコントローラがサポートしているUSB規格が異なる。最大10Gbpsの高速データ通信の恩恵を受けられるiPhoneは15 Pro Max/15 Proだけだ。

左が15 Pro Max、右が15 Pro。ディスプレイサイズを変えずにベゼルを狭くすることで、ボディを小型化。またエッジに丸みを持たせることで、14 Pro Max/14 Proよりも握りやすくなっている
実測重量は15 Pro Max(左上)が221g、15 Pro(右上)が187.1g、15 Plus(左下)が200.4g

 ボディについては、15 Pro Max/15 Proは外側にチタニウム、内側にアルミニウムと異なる金属を接合することで放熱と軽量化が図られている。また新しい構造フレームを採用することにより「テクスチャードマットガラス」の背面パネルの交換が容易となり、修理しやすくなっている。

 15 Plus/15はアルミニウムの筐体に、色を混ぜ込んだ「カラーインフューズドガラス」の背面パネルが組み合わされている。どちらも適度な摩擦感のあるマットな仕上げで、手触りがよく、しっかりと端末をホールドできる。

 サイズ/重量については下記の通り。15 Pro Max/15 Proは14 Pro Max/14 Proに対して、ベゼルを狭くすることで高さと幅を小さくしつつ、チタニウムとアルミニウムを接合した筐体により軽量化を実現している。ただし奥行きについては、15 Pro Max/15 Proのほうが大きくなっている点には留意してほしい。

サイズ/重量比較
高さ奥行き重量
15 Pro Max159.9mm76.7mm8.25mm221g
14 Pro Max160.7mm77.6mm7.85mm240g
15 Pro146.6mm70.6mm8.25mm187g
14 Pro147.5mm71.5mm7.85mm206g
15 Plus160.9mm77.8mm7.8mm201g
14 Plus160.8mm78.1mm7.8mm203g
15147.6mm71.6mm7.8mm171g
14146.7mm71.5mm7.8mm172g

 細かなスペックについては下記の表にまとめているので参照してほしい。

iPhone 15 Pro MaxとiPhone 15 Proのスペック
iPhone 15 Pro MaxiPhone 15 Pro
OSiOS 17iOS 17
CPUA17 ProチップA17 Proチップ
メモリ8GB(※ストレージ1TBモデルで確認)8GB(※ストレージ1TBモデルで確認)
ストレージ256GB、512GB、1TB128GB、256GB、512GB、1TB
ディスプレイSuper Retina XDRディスプレイ(6.7インチOLED、2,796×1,290ドット)tSuper Retina XDRディスプレイ(6.1インチOLED、2,556×1,179ドット)
通信Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3
WWAN5G(Sub6)5G(Sub6)
インターフェイスUSB-C(充電、DisplayPort、USB 3)USB-C(充電、DisplayPort、USB 3)
カメラメインカメラ(48MP、F1.78、24mm)
超広角カメラ(12MP、F2.2、13mm)
2倍望遠カメラ(12MP、F1.78、48mm)
5倍望遠カメラ(12MP、F2.8、120mm
フロントカメラ(12MP、F1.9)
メインカメラ(48MP、F1.78、24mm)
超広角カメラ(12MP、F2.2、13mm)
2倍望遠カメラ(12MP、F1.78、48mm)
3倍望遠カメラ(12MP、F2.8、77mm)
フロントカメラ(12MP、F1.9)
バッテリ駆動時間ビデオ再生:最大29時間
ビデオ再生(ストリーミング):最大25時間
オーディオ再生:最大95時間
ビデオ再生:最大23時間
ビデオ再生(ストリーミング):最大20時間
オーディオ再生:最大75時間
バッテリ充電時間約30分で最大50%(別売りの20W以上のUSB ACアダプタを使用)約30分で最大50%(別売りの20W以上のUSB ACアダプタを使用)
本体サイズ159.9×76.7×8.25mm146.6×70.6×8.25mm
重量221g187g
防水防塵性能IP68IP68
センサーFace ID、LiDARスキャナ、気圧計、ハイダイナミックレンジジャイロ、高重力加速度センサー、近接センサー、デュアル環境光センサーFace ID、LiDARスキャナ、気圧計、ハイダイナミックレンジジャイロ、高重力加速度センサー、近接センサー、デュアル環境光センサー
安全のための機能緊急SOS、衝突事故検出緊急SOS、衝突事故検出
セキュリティFace ID(顔認証)Face ID(顔認証)
カラーブラックチタニウム、ホワイトチタニウム、ブルーチタニウム、ナチュラルチタニウムブラックチタニウム、ホワイトチタニウム、ブルーチタニウム、ナチュラルチタニウム
発売時価格256GB版:18万9,800円
512GB版:21万9,800円
1TB版:24万9,800円
128GB版:15万9,800円
256GB版:17万4,800円
512GB版:20万4,800円
1TB版:23万4,800円
iPhone 15 PlusとiPhone 15のスペック
iPhone 15 PlusiPhone 15
OSiOS 17iOS 17
CPUA16 BionicチップA16 Bionicチップ
メモリ6GB(※ストレージ512GBモデルで確認)非公表
ストレージ128GB、256GB、512GB128GB、256GB、512GB
ディスプレイSuper Retina XDRディスプレイ(6.7インチOLED、2,796×1,290ドット)Super Retina XDRディスプレイ(6.1インチOLED、2,556×1,179ドット)
通信Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3
WWAN5G(Sub6)5G(Sub6)
インターフェイスUSB-C(充電、DisplayPort、USB 2)USB-C(充電、DisplayPort、USB 2)
カメラメインカメラ(48MP、F1.6、26mm)
超広角カメラ(12MP、F2.4、13mm)
2倍望遠カメラ(12MP、F1.6、52mm)
フロントカメラ(12MP、F1.9)
メインカメラ(48MP、F1.6、26mm)
超広角カメラ(12MP、F2.4、13mm)
2倍望遠カメラ(12MP、F1.6、52mm)
フロントカメラ(12MP、F1.9)
バッテリ駆動時間ビデオ再生:最大26時間
ビデオ再生(ストリーミング)最大20時間
オーディオ再生最大100時間
ビデオ再生最大20時間
ビデオ再生(ストリーミング)最大16時間
オーディオ再生最大80時間
バッテリ充電時間約30分で最大50%(別売りの20W以上のUSB ACアダプタを使用)約30分で最大50%(別売りの20W以上のUSB ACアダプタを使用)
本体サイズ160.9×77.8×7.80mm147.6×71.6×7.80mm
重量201g171g
防水防塵性能IP68IP68
センサーFace ID、気圧計、ハイダイナミックレンジジャイロ、高重力加速度センサー、近接センサー、デュアル環境光センサーFace ID、気圧計、ハイダイナミックレンジジャイロ、高重力加速度センサー、近接センサー、デュアル環境光センサー
安全のための機能緊急SOS、衝突事故検出緊急SOS、衝突事故検出
セキュリティFace ID(顔認証)Face ID(顔認証)
カラーブラック、ブルー、グリーン、イエロー、ピンクブラック、ブルー、グリーン、イエロー、ピンク
発売時価格128GB版:13万9,800円
256GB版:15万4,800円
512GB版:18万4,800円
128GB版:12万4,800円
256GB版:13万9,800円
512GB版:16万9,800円

USB 3対応USB-Cと、アクションボタンは使い勝手を大きく変える

 USB-C端子はLighnting端子と同じく、充電、DisplayPort、データ通信に利用可能。特にUSB 3に対応する15 Pro Max/15 Proでは、MacやWindows PCに接続した際のデータ通信が高速化される。

 さらに、本体のみではProRes 4K/30fpsが上限だが、外部ストレージを接続することでProRes 4K/60fpsのビデオ撮影が可能となる。外部ストレージに直接保存していればMacやWindows PCへのデータ移行も容易なのも大きなメリットだ。

 もちろんUSB 2止まりの15 Plus/15でも携帯するケーブルを1本減らせるという大きなメリットがある。しかし、写真や動画を高速にほかのデバイスとやり取りしたいのであれば、購入する機種は慎重に選ぼう。

15 Pro Max/15 Proを含め、iPhoneに同梱されている「USB-C充電ケーブル(1m) 」はUSB 2対応。USB 3対応機器を接続する際にはUSB 3対応ケーブルが必要となる
今回はexFAT形式でフォーマットしたUSB 3.2 Gen2対応ポータブルストレージ「SSD-PH1.0U3-BA」を接続してみた
USB-C経由で接続した外部ストレージは「ファイル」アプリでアクセス可能
外部ストレージを接続するとProRes 4K/60fpsを設定可能となる

 15 Pro Max/15 Proのもう1つの大きな特徴がカスタマイズ可能な「アクションボタン」。このボタンには、消音モード、集中モード、カメラ、フラッシュライト、ボイスメモ、拡大鏡、ショートカット、アクセシビリティ、無効化(アクションなし)などを設定可能。

 ショートカットには複数の手順を登録・実行可能で、設定も容易。カスタムボタン自体は珍しいものではないが、iPhoneの使い勝手を大きく向上させる新機能であることは間違いない。

15 Proは「着信/サイレントスイッチ」をカスタマイズ可能な「アクションボタン」に変更
アクションボタンには、消音モード、集中モード、カメラ、フラッシュライト、ボイスメモ、拡大鏡、ショートカット、アクセシビリティ、無効化(アクションなし)を設定できる

CPUスコアは微増、GPUスコアは理論値上限のパフォーマンスを発揮

 ベンチマークは15 Pro Max、15 Pro、15 Plusに加えて、14 Proでも実施した。ただし、14 Proは筆者が日常的に利用している端末であり、ほかの3機種よりも多くのアプリをインストールしている。そのため14 Proのスコアはあくまでに参考に留めてほしい。

 さて前述の通り、A17 Proチップの性能コアは最大10%の高速化、効率コアは競合製品の3倍に相当するワットパフォーマンス、GPUコアは最大20%の高速化、Neural Engineは最大2倍の高速化と謳われている。それを踏まえてベンチマーク結果を見ていこう。

 CPU性能を15 Pro Maxと14 Proで比較すると、AnTuTu BenchmarkのCPUは103%相当、Geekbench 6のSingle-Core Scoreは107%相当、Multi-Core Scoreは101%相当に留まっている。AnTuTu BenchmarkのCPUとGeekbench 6のMulti-Core Scoreは性能コアと効率コアを合わせた総合性能を示している。「性能コアは最大10%の高速化」とされているが、性能コアは2つ、効率コアは4つということから、CPUコア全体の総合性能では伸び幅は小さくなっているものと思われる。

これは「AnTuTu Benchmark V10.0.2」実行後の画面。今回のベンチマークは3回計測して、最も高かったスコアを採用している
AnTuTu Benchmark V10.0.2
Geekbench 6.2.0

 一方GPU性能を15 Pro Maxと14 Proで比較すると、Geekbench 6のGPU Metal Scoreで119%相当、3DMark Wild Life Extremeで121%相当、BASEMARK METALで113%相当を記録している。GPUコアは最大20%の高速化とされているので、ほぼ理論値上限のパフォーマンスが発揮されているわけだ。

 ここでちょっと気になったのが15 Plusと14 Proのスコア差。CPUベンチマークも含めて振り返ると、15 Plusは14 Proに対して、AnTuTu BenchmarkのCPUで90%相当、Geekbench 6のMulti-Core Scoreで91%相当、Geekbench 6のGPU Metal Scoreで99%相当、 3DMark Wild Life Extremeで90%相当、BASEMARK METALで95%相当と、同じSoCを搭載しているにも関わらずスコアが低くなっている。実際に使っていて体感できるほどの差ではないが、15 Plusと14 Proには性能差があることは間違いなさそうだ。

3DMark Wild Life Extreme
BASEMARK METAL

【お詫びと訂正】初出時に、Neural Engineの性能を比較するGeekbench MLのベンチマークにおいて、誤った項目を参照していたので、該当部分を削除しました。お詫びして訂正させていただきます。

 ストレージ速度についてはほぼ横並びの結果となったが、15 PlusのSequential Writeだけ飛び抜けて高いスコアを記録した。3回の計測では1,514.79MB/s、1,514.79MB/s、1,508.88MB/sとなっているので、1回だけ異常値を記録したわけではない。今回のベンチマークでは15 Plusのみストレージ容量が512GB。それがなんらかの影響をおよぼしたのかもしれない。

Jazz Disk

 バッテリ駆動時間については、今回は簡易計測とさせていただいた。ディスプレイ輝度50%、ボリューム50%という条件で、「YouTube」アプリで動画を2時間連続再生したところ、15 Pro Maxはフル充電から93%、15 Proは89%、15 Plusは94%へとバッテリ残量が減っていた。

 あくまでも「単純計算」となるが、バッテリ残量0%までであれば、15 Pro Maxは28時間34分、15 Proは18時間10分、15 Plusは33時間20分動作することになる。今回の簡易計測の結果では、15 Plusが最も長時間利用できることになる。

 最後に気になったのが本体の発熱。「GFXBench Metal」を連続で10分間実行したあとに裏面の表面温度を計測したところ、15 Pro Maxが45.8℃、15 Proが44.8℃、15 Plusが44.2℃、14 Proが42.1℃と、15 Pro Maxが突出して高温だった(室温24.2℃で測定)。ボディが大きいほうが放熱では有利と思われるが、15 Proよりも15 Pro Maxのほうが1℃高い。

 実はベンチマークにおいても、AnTuTu Benchmark の総合、GPU、MEM、Geekbench 6のMulti-Core Score、GPU Metal Score、BASEMARK METALで15 Pro Maxよりも15 Proのほうが高いスコアを記録していた。差は少ないがこれだけ結果が偏るのは、偶然とは言えない。

 15 Pro Maxのほうが筐体は大きいが、そのぶん大容量のバッテリを内蔵している。今回のベンチマークスコアと、サーモグラフィーカメラによる表面温度を見てみると、15 Pro Maxは発熱により15 Proより処理性能が低くなっている可能性がある。

「GFXBench Metal」実行中の裏面の最大温度は15 Pro Max (左)が45.8℃、15 Pro(右)が44.8℃(室温24.2℃で測定)
裏面の最大温度は15 Plus(左)が44.2℃、14 Pro(右)が42.1℃(室温24.2℃で測定)

15 Pro Max はこれまでiPhoneで撮れなかった領域の撮影が可能に

 最後にカメラ画質をチェックしてみよう。こちらも15 Pro Max、15 Pro、15 Plus、14 Proでテスト撮影を実施している。まずはそれぞれの「カメラ」アプリの画面下部に出てくる倍率設定に加えて、デジタルズームの最大倍率で撮影してみたが、十分な光量がある状況ではメイン、超広角カメラにおいては今回の4機種で差を感じることはなかった。iPhoneに限らず、現在のスマートフォンのカメラが非常に高いレベルにあるのだろう。

 もちろん、15 Pro Maxの25倍デジタルズームと、15 Plusの10倍デジタルズームでは被写体を引き寄せる力と解像感はまったく異なる。Androidでは光学10倍の望遠カメラを搭載している機種も存在するが、15 Pro Max はこれまでiPhoneで撮れなかった領域の撮影が可能になっている。そのことは素直に歓迎したい。

作例
15 Pro Maxで撮影(0.5倍)
15 Pro Maxで撮影(1倍)
15 Pro Maxで撮影(2倍)
15 Pro Maxで撮影(5倍)
15 Pro Maxで撮影(25倍)
15 Proで撮影(0.5倍)
15 Proで撮影(1倍)
15 Proで撮影(2倍)
15 Proで撮影(3倍)
15 Proで撮影(15倍)
15 Plusで撮影(0.5倍)
15 Plusで撮影(1倍)
15 Plusで撮影(2倍)
15 Plusで撮影(10倍)
14 Proで撮影(0.5倍)
14 Proで撮影(1倍)
14 Proで撮影(2倍)
14 Proで撮影(3倍)
14 Proで撮影(15倍)

 ちょっと変わった撮影テストのために、藪の深いサバイバルゲームフィールドに15 Pro Maxと15 Proを持ち込んでみた。友人に迷彩服「ギリースーツ」を着て立ってもらったが、1倍ではまったく位置が分からないものの、デジタルズーム25倍(15 Pro Max)とデジタルズーム15倍(15 Pro)で撮影すると、クッキリと姿が映る。藪の下にいるが露出が適正に調整され、藪の質感も細かく記録されている。

 しっかり「エアガン」に固定して、BB弾が被弾しても壊れないようなケースや保護ガラスを装着すれば、高倍率かつ高画質な「ガンカメラ」としても活用できそうだ。

15 Pro Maxで撮影(1倍)
15 Pro Maxで撮影(デジタルズーム25倍)
15 Proで撮影(デジタルズーム15倍)

 カメラ機能を重視したiPhoneを選ぶ際に大きなポイントとなるのがマクロ撮影機能。15 Pro Max、15 Pro、14 Proではカメラを被写体に近づけるだけで、ピントが正確に合ったマクロ撮影が可能だ。

 一方、15 Plusではマクロ撮影機能がそもそも搭載されていない。昆虫やフィギュアなど小さな被写体を撮影する機会が多いのなら、15 Pro Max、15 Proを選択することを強くおすすめする。

15 Pro Maxで撮影(マクロ)
15 Proで撮影(マクロ)
15 Plusで撮影(※ピントを合わせることが出来ない)
14 Proで撮影(マクロ)

 最後にナイトモードを試してみたが、日中の撮影と同じく今回の4機種で明確な違いはないように思う。明部も暗部もバランスよく描写されており、夜空にもノイズや不自然なグラデーションは発生していない。

 4つのピクセルを大きなピクセルにまとめる「ピクセルビニング」と、複数の画像から最適化された画像を生成する「コンピュテーショナルフォトグラフィ」により、ナイトモードのクオリティーも向上している。正直、15 Pro Max/15 Proと15 Plus/15で違いが見られなかったのは予想外だった。

 しかし、その一方で看板などの強い光源の白飛びが気になった。個人的にはAndroidスマートフォンのように、白飛びをもっと強力に抑え込んだナイトモードのほうが好みだ。

15 Pro Maxで撮影(1倍、ナイトモード)
15 Proで撮影(1倍、ナイトモード)
15 Plusで撮影(1倍、ナイトモード)
14 Proで撮影(1倍、ナイトモード)

今年のiPhoneの進化点は多岐に渡る、満足度の高いニューモデル

 ほかのスマートフォンメーカーもAppleとしのぎを削っているだけに、すべての機能が業界初というわけではない。しかし、どれも洗練された操作性、デザイン、機能性で実装している。

 「カメラ」アプリは詳細設定がシステム設定の中に含まれているので、すぐに操作できなくてもどかしく思うこともあるが、そのぶん「カメラ」アプリの使用方法は単純明快で直感的だ。このような実装方法はOSを作っているAppleの十八番と言えよう。

 個人的に期待しているのは、年末までにアップデートで提供される予定の「空間ビデオ(Spatial video)」撮影機能。15 Pro Max/15 Proの超広角カメラとメインカメラを使用し、3Dビデオを撮影することが可能となる。

 ヘッドセット「Apple Vision Pro」で鑑賞することを想定して提供される機能だが、動画配信プラットフォームにアップすればほかのヘッドセットでも見られるのではないかと楽しみにしている。

 A17 Proチップは主にGPU性能の向上が目立っていたが、ハードウェアアクセラレーションのレイトレーシング機能も搭載されており、3Dゲームで光の挙動や環境の反射を正確に表現可能だ。

 A17 Proチップの機能、性能を生かした「ディビジョン リサージェンス」は2024年初旬、「バイオハザード ヴィレッジ」と「バイオハザード4」は年末までに、「アサシンクリード」最新作「ミラージュ」は2024年初旬にリリースされる予定。ゲーム専用機、PC、Macに匹敵するモバイルゲーム機としての展開にも期待したい。

 15 Pro Maxと15 Proは高価だ。飛び抜けた個性についてはAndroidに後塵を拝することもあるが、汎用性の高さや、アプリケーションの豊富さ、そして洗練されたデザイン性は上回っていると思う。

 15 Plus/15は2022年のProモデルの先進機能を貪欲に採り入れ、またProモデルと差別化したカジュアルでポップなスタイルが魅力だ。今年も、購入して満足度の高いニューモデルに仕上がっていると言えよう。