山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

6.8型見開き表示が可能な2画面スマホ「M Z-01K」は電子書籍に向くのか

NTTドコモ「M Z-01K」

 「M Z-01K」は、ZTEとNTTドコモの共同開発による、2画面搭載のAndroidスマートフォンだ。5.2型の画面を左右に2つ並べた構造になっており、2つに折り畳んで持ち歩けることが最大の特徴だ。

 広げた状態の画面サイズは約6.8型となる本製品、中央で折り畳める構造は本に近く、それゆえ電子書籍端末としての用途に期待がかかる。なかでもコミックの見開き表示に関しては、本製品との相性はよいと考えられる。

 もっとも特殊な製品ゆえ、どのくらいの実用性を備えているのかは気になるところ。今回はNTTドコモより機材を借用できたので、電子書籍端末としての利用にフォーカスして、レビューをお届けする。

見開き状態で6.8型、アスペクト比は正方形に近い9:8

 まずは仕様をざっとチェックしておこう。

【表】M Z-01Kのおもな仕様
メーカーZTE
SoCSnapdragon 821(2.2GHz×2+1.6GHz×2、クアッドコア)
メモリ4GB
ストレージ64GB
ディスプレイ5.2型TFT液晶(×2)
解像度1,080×1,920ドット(×2)
OSAndroid 7.1.2
バッテリ容量2930mAh
インターフェイスUSB Type-C
カードリーダmicroSD
SIMスロットNano SIM
通信機能IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.2
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)約151×72×12.1mm
重量約226g
価格(2018/3/18現在)92,664円(新規一括)

 本製品は5.2型の画面が左右に並んだレイアウトとなっており、対角線のサイズは約6.8型となる。左右それぞれがフルHD(1,920×1,080ドット)あるため、計算上は425ppiと、解像度は同等サイズのタブレットと比べても高い。ちなみにアスペクト比は正方形に近い9:8であるため、7型ワイドサイズのタブレットを横に寝かせた状態よりも、天地のサイズは圧倒的に大きい。

 重量は226gと、スマートフォンとしては相当なヘビー級だが、一般的な7型クラスのタブレットが250gを切るか否かであることを考えると十分に軽い。折りたたんだ状態のボディサイズも、同じ5.2型のスマートフォンと比べて上下はやや長いものの、左右ベゼルがスリムなことから横幅はむしろスリムに感じる。

 OSはAndroid 7.1.2で、将来的にAndroid 8.0対応予定とされている。CPUはSnapdragon 821(クアッドコア)、メモリは4GBと、スマートフォンとしてはいずれも十分だが、なにせ特殊な製品だけに、これで十分かどうかは判断しづらい。ちなみに容量は64GBで、microSDによる増設も可能だ。

 グローバル展開を意識した仕様であり、防水防塵性能のほか、おサイフケータイやワンセグなどは搭載していない。他機種からの買い換えにあたっては、考慮しておく必要がありそうだ。また一般的なスマートフォンと異なる仕様として、背面カメラがなく、撮影時は前面カメラのモードを切り替えて行なうことも、知っておいたほうがよさそうだ。

折りたたんだ状態で、同じ5.2型のNuAns NEO [Reloaded](右)と比較したところ。これだけ見ると至って普通のスマートフォンだ
広げると5.2型の画面が左右に2つ並んだ状態になる。これは初期設定の状態だが、壁紙を含むデザインまで変わるのがおもしろい。連結部分のベゼル幅も最小限に留められている
本体上部。イヤフォンジャックを備える
本体左側面。SIMカードスロット、音量ボタン、指紋認証を備えた電源ボタン、ファンクションキーを備える。SIMカードはNano SIMサイズ
本体下部。USB Type-Cポート、スピーカーを備える
本体右側面。こちらはヒンジのみでボタンやポート類はない。写真奥のほうにdocomoロゴがある
広げた状態での本体背面。後述するように背面同士を合わせるように折りたたむ構造

画面を内側にではなく外側に向かって折りたたむ構造

 まずは基本的な開閉ギミックをチェックしておこう。本製品は中央にヒンジがあり、左右2つの画面を折りたたむことができる。折りたたんだ状態では、一般的な5.2型のスマートフォンと大きく見た目は変わらない。違いと言えば、やや厚みがあること、および右側面にヒンジがあることくらいだ。

 おもしろいのが、折りたたむ方向が内側ではなく、外側だということだ。画面が外側に来る格好になるので、本の閉じ方とはまったくの反対方向となる。そのため読書にあたっても、紙の本のようにやや閉じ気味にして読むことはできない。このあたり、過去の2画面タイプの読書端末、たとえば「ΣBook」などとは異なっている。

 またボディの左右で厚みが異なるため、180度開いても背面はフラットにならず段差ができる。紙の本も左右の厚みは違うのが普通なのでおかしくはないのだが、手に持ったさいの左右の重量バランスが異なるため、持ち方は一工夫が必要だ。これについてはのちほど詳しく考察する。

 ちなみに左右それぞれの画面で視野角や色味などに差はなく、ストレスは感じない。見る限り、ディスプレイは同じ部材を用いていると見られる。このあたりはさすがに配慮されているようだ。

左右のディスプレイを内側にではなく外側に折りたたむ。ちなみに写真の角度が、両方の画面をオンにしていられるほぼギリギリの角度
さらに折りたたもうとすると右側の画面はオフになり、後述する「通常モード」へと切り替わる
同じ2画面端末でも、かつてのΣBook(シグマブック、写真奥)とは折りたたむ方向が異なる。本体を閉じ気味にして読むことは不可能だ
開いた状態ではボディの左右はかなり厚みが異なる
裏側から見た状態。厚みは実測で、ボディ側が8.5mm、サブ側が3.1mmと差があり、当然ながら重量も差がある

コミック表示時のページサイズは7型と8型のほぼ中間

 さて、2つの画面があると言っても、PCのマルチディスプレイと同様、表示モードはさまざまだ。本製品は4つの表示モードがあるので、あらかじめおさらいしておこう。

 1つは「大画面モード」。メインとサブの画面をひとつなぎで使う方法で、さながら6.8型のタブレットという外観になる。電子書籍ユースでは、このモードでの利用がもっとも多くなるだろう。

 もう1つの「2画面モード」では、メインとサブでそれぞれ異なるアプリを利用できる。電子書籍であれば、本のページを表示しながらウェブやSNSを参照したり、メモを取ったりという使い方が考えられる。

 このほか、メインとサブで同じ画面を操作する「ミラーモード」も用意されているが、電子書籍ユースではほぼ出番はないだろう。むしろメインのみを使う「通常モード」のほうが、画面を広げずに使う場合などにニーズがありそうだ。

ホームボタン右端に表示されている「M」のアイコンをタップすると、表示モードを変更するためのメニューが最下段に表示される
左右の画面を連結して表示する「大画面モード」。このようにスクリーンショットを撮っても左右が連結した1画面で出力される。なお言うまでもないが実際の画面では中央にベゼルによる区切りが入る
左右で別のアプリや画面を表示できる「2画面モード」。ここでは左画面にホーム、右画面にアプリのドロワーを表示させている
メインとサブで同じ画面を操作する「ミラーモード」。画面を折りたたんで両側から同じ画面を見る用途を想定しているようだが、電子書籍ユースではまず使い道はないだろう
通常の1画面スマートフォンと同様に使える「標準モード」。本製品を完全にフラットな状態から約45度折りたたむと、自動的にこの「通常モード」に切り替わる

 これら4つのモードのうち、電子書籍ユースでは全画面表示が可能な「大画面モード」が主になると考えられるが、実際にどのくらいの大きさで表示できるのだろうか。実測してみたかぎりでは、7型ワイドのタブレットを横向きにした状態よりはわずかに大きいが、8型ワイドのタブレットを横向きにした状態よりも小さい。

 そもそも、5.2型の画面が左右に2つ並んだからといって、1ページの大きさが変わるわけではない。見開き表示を前提に描かれたコミックが快適に読めるようになるというだけだ。言い方を変えると、5.2型だと細かすぎて読めないという人は、本製品を使っても同じ思いをすることになるので、そこは誤解がないようにしたい。

iPad mini 4(右)とのページサイズ比較。さすがにアスペクト比4:3の7.9型であるiPad mini 4とのサイズの差は歴然だ。ただし解像度は本製品のほうが上回っている
前回紹介したレノボの8型ワイドタブレット、Lenovo TAB4 8 Plus(右)との比較。こちらも1ページあたりのサイズは本体品のほうがふたまわりは小さい
意外に感じられるが、7型のKindle Oasis 第2世代モデルを横向きにした状態よりもまだ本製品のほうが小さい
7型ワイドのFire 7との比較。これでぎりぎり本製品のほうがページサイズが上回った状態。実質的に「7型ワイドタブレットを見開きにしたのと同じ状態」と言って差し支えないようだ

コミックは快適、テキストはストアによってやや問題あり

 ではコミック、テキスト本それぞれを表示した場合の、基本的な使い勝手を見ていこう。電子書籍ストアアプリは特に断りのないかぎり、プリインストールされているKindleアプリを利用している。表示モードは前述の「大画面モード」に設定している。

 まずコミックだが、表紙だけは2画面の中央にまたがった形で表示されるが、2ページ目以降は見開き状態で問題なく表示および閲覧が可能だ。ページめくりの操作は通常と同様、タップもしくはスワイプ、および音量調節ボタンの3択が使える。通常の使い勝手とまったく同じだ。

 もし「大画面モード」で本を表示している状態で、端末を閉じるとどうなるだろうか。この場合、サブ画面が消灯したのち、自動的にメイン画面だけで表示する「通常モード」に切り替わる。再び端末を開くと、ワンテンポ間を置いてから「大画面モード」に復帰する。わざわざ手動でモードを変更しなくてよいので、使い勝手は良好だ。

大画面モードの状態で、Kindleでうめ著「大東京トイボックス 1巻」を表示したところ。とくに何もしなくとも見開きで表示される。挙動もとくに問題はない
折りたたむと標準モードへと自動的に切り替わる。こちらもとくに挙動に問題はない
大画面モードのままページを自動回転させると、単ページで拡大表示できる。ページをいちばん大きく表示できることから、雑誌などの図版を表示したい場合などで使い道があるかもしれない
2画面(大画面モード)を折りたたんで1画面(通常モード)へと切り替え、そこからさらに2画面(大画面モード)へと戻す様子。1画面時にページをめくったことで見開きの右側に来るべき画面が左側に来ていても、2画面に復帰したさいにきちんと1ページずれ、正しい見開きに戻る

 といった具合にコミックはまったく問題ないのだが、やや難があるのがテキスト本だ。ページめくりやテキストサイズなどの変更は問題なく行なえるのだが、縦書きのテキストを表示した場合、ページの区切りに行が重なってしまうことがある。文字が縦に一刀両断されたような状態で、左右のページにまたがって表示されてしまうのだ。

 行間隔を調整するか、もしくはフォントサイズを変えることで、行が分断されないようにずらすことはできるが、本ごとに毎回調整を行なうとなると、ストレスの要因になりがちだ。まったく読めないわけではないものの、こうした問題を抱えていることは、知っておいたほうがよいだろう。

 ちなみに、こうした問題が発生しない電子書籍ストアもある。たとえばBOOK☆WALKERは、テキストを見開き表示にしたさいにページ中央(ノドにあたる部分)にもともと余白ができる仕様であるため、こうした問題は起こらない。テキスト本を快適に読むのであれば、こうしたストアを選ぶという方法もある。

太宰治著「グッド・バイ」を表示したところ。区切りの位置にある行が左右に分割されてしまっている
文字サイズや行間隔を調整すれば区切りにかからないようにもできるが、あらゆる本で通用するとは限らず、実用性はあまり高くない
BOOK☆WALKERのように、横向きの画面に表示した際も中央に余白がある電子書籍ストアは、結果的にこの問題をクリアできる

右手持ちでの読書に欠かせないワザとは

 ところで、本製品で電子書籍を長時間読むさいに欠かせないのが、天地を反転させての右手持ちだ。

 本製品は向かって左側にスマートフォンの機能が集約されており、実測8.5mmの厚みがある。一方で右側はあくまでサブ画面で、厚みはわずか3.1mmだ。そのため重量は左側のほうが重く、通常は本製品の左側を、左手で持つことになる。ボディ右側を持つのはバランスも悪い上、ヒンジに負担がかからないかも心配だ。

 もっとも、長時間読書していると、左手が疲れてきて、もう一方の手、すなわち右手で持ちたくなることがある。そのような場合はどうすればよいかというと、本体を180度回転させて持つのがベターだ。カメラや側面ボタンは上下逆になるが、ボディデザインからして見た目の違和感はない。

通常はこのように、厚みのある本体部分(左側)を、左手で持つことになる
厚みの違いからも分かるように重量差があるので、長時間の読書時は右手に持ち替えたくなるが、本体右側を直接持つのは強度的にもややはばかられる
そのような場合は天地を180度回転させるとよい。画面自体は「自動回転」にしておけば自動的に天地逆になる

 ここで問題になるのが、上の画面の向きを維持しようと本体設定で画面の向きを固定すると、元の状態、つまり左手持ちを前提とした向きに戻ってしまうことだ。かといって自動回転のままだと、就寝時など寝転がって横を向いた瞬間に、画面が90度回転してしまう。これでは読書にならない。

 そのような場合、本体の設定とは別に、電子書籍アプリ側の回転ロック機能を利用するとよい。たとえばKindleアプリは、本体側の画面の向きが「自由回転」だと、ページの右下に鍵マークのアイコンが出現し、それをタップすることで向きをロックできる。

 こうすれば、右手持ちにふさわしい状態で、画面の向きを固定できるので、快適な読書が楽しめる。筆者が確認した限りでは、Kindle以外ではebiReaderでも、この「端末側は自動回転のままでページの向きだけを固定できる機能」が実装されているので、ぜひ試してみてほしい。

横向きに寝転がった場合に画面を自動回転させたくなければ、Kindleの画面の右下をタップすると表示される鍵マークをロックし、画面の向きを固定する
鍵マークをロックしておけば、天地反転させた状態で本体を傾けても、画面の向きは固定されたままとなる
Kindle以外ではebiReaderにも同様に、端末側は「自動回転」のままビューアの向きを固定できる機能がある

一部の電子書籍ストアアプリでストア画面などが90度回転する症状

 といった具合で、読書そのものは大きな問題はなく、ページめくりなどの挙動もきびきびしているのだが、Kindleにおいて少々困りものなのが、ホームやライブラリ、ストア画面の表示だ。というのも、本を閉じてこれらの画面を表示すると、本体側での向き設定に関わらず、画面がもれなく90度回転してしまうのだ。

 同様の問題は、筆者が知るかぎりファーウェイのタブレットなどでも発生する問題で、Kindleアプリ側に問題があると思われる。なかなか一筋縄ではいかなさそうだが、Kindleは本製品にプリインストールされている電子書籍アプリでもあり、早期の解決を望みたいところだ。

 ちなみにKindle以外で同種の問題が発生する電子書籍ストアアプリがないか調べた限りでは、マンガボックスのストア画面でも同様の問題が発生する。こちらは不具合なのか仕様なのか判断しかねる部分もあるのだが、いずれにせよ現段階ではこうした問題のない電子書籍ストアのほうが、快適に読書を楽しめるだろう。

本を閉じてライブラリ画面に戻ると、ライブラリがなぜか90度回転した状態で表示される
ストアも同様の状態。端末側の画面回転オプションを自動回転にしていてもこの方向にしかならない
同様の症状はマンガボックスでも発生する。ホーム画面は問題ないのだが……
ストアに切り替えると90度回転してしまう。ちなみにマンガボックスは、ほかのタブレットでもこの症状が起こることがある

想像以上に“使える”読書デバイス

 以上、数日ほど試用してみたが、最大の利点はやはり、読みやすさと可搬性を両立できていることだ。ページサイズだけを比較すれば7型ワイドのタブレットを横向きに使うのと大差ないが、これだと本体が横長すぎて表示のバランスも悪く、またポケットに入れるには大きすぎる。本製品はこうした問題点への解を提示してくれている。

本製品(上)と7型のFire 7(下)の比較。ページサイズはおおむね同等だが、端末の横幅は圧倒的に本製品がコンパクトで、かつ持ち歩く際は折り畳める
dマガジンのトップページ。天地のサイズがあるため雑誌を探すのも快適だ。雑誌の本文ページを読むには拡大表示が欠かせないが、これはサイズからしてやむを得ないだろう

 電子書籍ユースを前提にあえて要望を挙げるならば、もうひとまわり大きければさらによかった、ということだろうか。5.2型でフルHDの画面は、細部まで再現できても、絶対的な画面サイズはやや小ぶりだ。もうひとまわり大きいサイズ、たとえば6~6.5型の画面が並んだ二つ折り端末ならば、読書用としてかなり理想的だ。

 もっとも、この画面サイズさえ気にならなければ、非常によくできた製品だ。細かい問題点はあるとはいえ、たとば2画面並べたのに見開き表示が有効にならないとか、画面が不自然に引き伸ばされて縦横比がおかしくなるといった、読書体験そのものを阻害する致命的な要因はない。

 事実、本製品のような独自性の高いデバイスは、使い勝手を根本から揺さぶるレベルの問題が実際に使ってみて初めて発覚することもめずらしくないので、今回は読書用途でしかチェックしていない点はもちろん差し引く必要はあるが、現段階では大いに評価したい。

 本製品の購入にあたっておそらく最大の障壁となるのは新規一括9万円台という価格だろうが、少なくとも電子書籍ユースで十分に実用的なだけに、何かもう1~2つ「これ」という用途を見つけられれば、ガジェット好きはもちろんそうでないユーザーにとっても、十分に元が取れる体験を得られるはずだ。