山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
6.8型見開き表示が可能な2画面スマホ「M Z-01K」は電子書籍に向くのか
2018年3月19日 12:18
「M Z-01K」は、ZTEとNTTドコモの共同開発による、2画面搭載のAndroidスマートフォンだ。5.2型の画面を左右に2つ並べた構造になっており、2つに折り畳んで持ち歩けることが最大の特徴だ。
広げた状態の画面サイズは約6.8型となる本製品、中央で折り畳める構造は本に近く、それゆえ電子書籍端末としての用途に期待がかかる。なかでもコミックの見開き表示に関しては、本製品との相性はよいと考えられる。
もっとも特殊な製品ゆえ、どのくらいの実用性を備えているのかは気になるところ。今回はNTTドコモより機材を借用できたので、電子書籍端末としての利用にフォーカスして、レビューをお届けする。
見開き状態で6.8型、アスペクト比は正方形に近い9:8
まずは仕様をざっとチェックしておこう。
メーカー | ZTE |
---|---|
SoC | Snapdragon 821(2.2GHz×2+1.6GHz×2、クアッドコア) |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 64GB |
ディスプレイ | 5.2型TFT液晶(×2) |
解像度 | 1,080×1,920ドット(×2) |
OS | Android 7.1.2 |
バッテリ容量 | 2930mAh |
インターフェイス | USB Type-C |
カードリーダ | microSD |
SIMスロット | Nano SIM |
通信機能 | IEEE 802.11ac、Bluetooth 4.2 |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 約151×72×12.1mm |
重量 | 約226g |
価格(2018/3/18現在) | 92,664円(新規一括) |
本製品は5.2型の画面が左右に並んだレイアウトとなっており、対角線のサイズは約6.8型となる。左右それぞれがフルHD(1,920×1,080ドット)あるため、計算上は425ppiと、解像度は同等サイズのタブレットと比べても高い。ちなみにアスペクト比は正方形に近い9:8であるため、7型ワイドサイズのタブレットを横に寝かせた状態よりも、天地のサイズは圧倒的に大きい。
重量は226gと、スマートフォンとしては相当なヘビー級だが、一般的な7型クラスのタブレットが250gを切るか否かであることを考えると十分に軽い。折りたたんだ状態のボディサイズも、同じ5.2型のスマートフォンと比べて上下はやや長いものの、左右ベゼルがスリムなことから横幅はむしろスリムに感じる。
OSはAndroid 7.1.2で、将来的にAndroid 8.0対応予定とされている。CPUはSnapdragon 821(クアッドコア)、メモリは4GBと、スマートフォンとしてはいずれも十分だが、なにせ特殊な製品だけに、これで十分かどうかは判断しづらい。ちなみに容量は64GBで、microSDによる増設も可能だ。
グローバル展開を意識した仕様であり、防水防塵性能のほか、おサイフケータイやワンセグなどは搭載していない。他機種からの買い換えにあたっては、考慮しておく必要がありそうだ。また一般的なスマートフォンと異なる仕様として、背面カメラがなく、撮影時は前面カメラのモードを切り替えて行なうことも、知っておいたほうがよさそうだ。
画面を内側にではなく外側に向かって折りたたむ構造
まずは基本的な開閉ギミックをチェックしておこう。本製品は中央にヒンジがあり、左右2つの画面を折りたたむことができる。折りたたんだ状態では、一般的な5.2型のスマートフォンと大きく見た目は変わらない。違いと言えば、やや厚みがあること、および右側面にヒンジがあることくらいだ。
おもしろいのが、折りたたむ方向が内側ではなく、外側だということだ。画面が外側に来る格好になるので、本の閉じ方とはまったくの反対方向となる。そのため読書にあたっても、紙の本のようにやや閉じ気味にして読むことはできない。このあたり、過去の2画面タイプの読書端末、たとえば「ΣBook」などとは異なっている。
またボディの左右で厚みが異なるため、180度開いても背面はフラットにならず段差ができる。紙の本も左右の厚みは違うのが普通なのでおかしくはないのだが、手に持ったさいの左右の重量バランスが異なるため、持ち方は一工夫が必要だ。これについてはのちほど詳しく考察する。
ちなみに左右それぞれの画面で視野角や色味などに差はなく、ストレスは感じない。見る限り、ディスプレイは同じ部材を用いていると見られる。このあたりはさすがに配慮されているようだ。
コミック表示時のページサイズは7型と8型のほぼ中間
さて、2つの画面があると言っても、PCのマルチディスプレイと同様、表示モードはさまざまだ。本製品は4つの表示モードがあるので、あらかじめおさらいしておこう。
1つは「大画面モード」。メインとサブの画面をひとつなぎで使う方法で、さながら6.8型のタブレットという外観になる。電子書籍ユースでは、このモードでの利用がもっとも多くなるだろう。
もう1つの「2画面モード」では、メインとサブでそれぞれ異なるアプリを利用できる。電子書籍であれば、本のページを表示しながらウェブやSNSを参照したり、メモを取ったりという使い方が考えられる。
このほか、メインとサブで同じ画面を操作する「ミラーモード」も用意されているが、電子書籍ユースではほぼ出番はないだろう。むしろメインのみを使う「通常モード」のほうが、画面を広げずに使う場合などにニーズがありそうだ。
これら4つのモードのうち、電子書籍ユースでは全画面表示が可能な「大画面モード」が主になると考えられるが、実際にどのくらいの大きさで表示できるのだろうか。実測してみたかぎりでは、7型ワイドのタブレットを横向きにした状態よりはわずかに大きいが、8型ワイドのタブレットを横向きにした状態よりも小さい。
そもそも、5.2型の画面が左右に2つ並んだからといって、1ページの大きさが変わるわけではない。見開き表示を前提に描かれたコミックが快適に読めるようになるというだけだ。言い方を変えると、5.2型だと細かすぎて読めないという人は、本製品を使っても同じ思いをすることになるので、そこは誤解がないようにしたい。
コミックは快適、テキストはストアによってやや問題あり
ではコミック、テキスト本それぞれを表示した場合の、基本的な使い勝手を見ていこう。電子書籍ストアアプリは特に断りのないかぎり、プリインストールされているKindleアプリを利用している。表示モードは前述の「大画面モード」に設定している。
まずコミックだが、表紙だけは2画面の中央にまたがった形で表示されるが、2ページ目以降は見開き状態で問題なく表示および閲覧が可能だ。ページめくりの操作は通常と同様、タップもしくはスワイプ、および音量調節ボタンの3択が使える。通常の使い勝手とまったく同じだ。
もし「大画面モード」で本を表示している状態で、端末を閉じるとどうなるだろうか。この場合、サブ画面が消灯したのち、自動的にメイン画面だけで表示する「通常モード」に切り替わる。再び端末を開くと、ワンテンポ間を置いてから「大画面モード」に復帰する。わざわざ手動でモードを変更しなくてよいので、使い勝手は良好だ。
といった具合にコミックはまったく問題ないのだが、やや難があるのがテキスト本だ。ページめくりやテキストサイズなどの変更は問題なく行なえるのだが、縦書きのテキストを表示した場合、ページの区切りに行が重なってしまうことがある。文字が縦に一刀両断されたような状態で、左右のページにまたがって表示されてしまうのだ。
行間隔を調整するか、もしくはフォントサイズを変えることで、行が分断されないようにずらすことはできるが、本ごとに毎回調整を行なうとなると、ストレスの要因になりがちだ。まったく読めないわけではないものの、こうした問題を抱えていることは、知っておいたほうがよいだろう。
ちなみに、こうした問題が発生しない電子書籍ストアもある。たとえばBOOK☆WALKERは、テキストを見開き表示にしたさいにページ中央(ノドにあたる部分)にもともと余白ができる仕様であるため、こうした問題は起こらない。テキスト本を快適に読むのであれば、こうしたストアを選ぶという方法もある。
右手持ちでの読書に欠かせないワザとは
ところで、本製品で電子書籍を長時間読むさいに欠かせないのが、天地を反転させての右手持ちだ。
本製品は向かって左側にスマートフォンの機能が集約されており、実測8.5mmの厚みがある。一方で右側はあくまでサブ画面で、厚みはわずか3.1mmだ。そのため重量は左側のほうが重く、通常は本製品の左側を、左手で持つことになる。ボディ右側を持つのはバランスも悪い上、ヒンジに負担がかからないかも心配だ。
もっとも、長時間読書していると、左手が疲れてきて、もう一方の手、すなわち右手で持ちたくなることがある。そのような場合はどうすればよいかというと、本体を180度回転させて持つのがベターだ。カメラや側面ボタンは上下逆になるが、ボディデザインからして見た目の違和感はない。
ここで問題になるのが、上の画面の向きを維持しようと本体設定で画面の向きを固定すると、元の状態、つまり左手持ちを前提とした向きに戻ってしまうことだ。かといって自動回転のままだと、就寝時など寝転がって横を向いた瞬間に、画面が90度回転してしまう。これでは読書にならない。
そのような場合、本体の設定とは別に、電子書籍アプリ側の回転ロック機能を利用するとよい。たとえばKindleアプリは、本体側の画面の向きが「自由回転」だと、ページの右下に鍵マークのアイコンが出現し、それをタップすることで向きをロックできる。
こうすれば、右手持ちにふさわしい状態で、画面の向きを固定できるので、快適な読書が楽しめる。筆者が確認した限りでは、Kindle以外ではebiReaderでも、この「端末側は自動回転のままでページの向きだけを固定できる機能」が実装されているので、ぜひ試してみてほしい。
一部の電子書籍ストアアプリでストア画面などが90度回転する症状
といった具合で、読書そのものは大きな問題はなく、ページめくりなどの挙動もきびきびしているのだが、Kindleにおいて少々困りものなのが、ホームやライブラリ、ストア画面の表示だ。というのも、本を閉じてこれらの画面を表示すると、本体側での向き設定に関わらず、画面がもれなく90度回転してしまうのだ。
同様の問題は、筆者が知るかぎりファーウェイのタブレットなどでも発生する問題で、Kindleアプリ側に問題があると思われる。なかなか一筋縄ではいかなさそうだが、Kindleは本製品にプリインストールされている電子書籍アプリでもあり、早期の解決を望みたいところだ。
ちなみにKindle以外で同種の問題が発生する電子書籍ストアアプリがないか調べた限りでは、マンガボックスのストア画面でも同様の問題が発生する。こちらは不具合なのか仕様なのか判断しかねる部分もあるのだが、いずれにせよ現段階ではこうした問題のない電子書籍ストアのほうが、快適に読書を楽しめるだろう。
想像以上に“使える”読書デバイス
以上、数日ほど試用してみたが、最大の利点はやはり、読みやすさと可搬性を両立できていることだ。ページサイズだけを比較すれば7型ワイドのタブレットを横向きに使うのと大差ないが、これだと本体が横長すぎて表示のバランスも悪く、またポケットに入れるには大きすぎる。本製品はこうした問題点への解を提示してくれている。
電子書籍ユースを前提にあえて要望を挙げるならば、もうひとまわり大きければさらによかった、ということだろうか。5.2型でフルHDの画面は、細部まで再現できても、絶対的な画面サイズはやや小ぶりだ。もうひとまわり大きいサイズ、たとえば6~6.5型の画面が並んだ二つ折り端末ならば、読書用としてかなり理想的だ。
もっとも、この画面サイズさえ気にならなければ、非常によくできた製品だ。細かい問題点はあるとはいえ、たとば2画面並べたのに見開き表示が有効にならないとか、画面が不自然に引き伸ばされて縦横比がおかしくなるといった、読書体験そのものを阻害する致命的な要因はない。
事実、本製品のような独自性の高いデバイスは、使い勝手を根本から揺さぶるレベルの問題が実際に使ってみて初めて発覚することもめずらしくないので、今回は読書用途でしかチェックしていない点はもちろん差し引く必要はあるが、現段階では大いに評価したい。
本製品の購入にあたっておそらく最大の障壁となるのは新規一括9万円台という価格だろうが、少なくとも電子書籍ユースで十分に実用的なだけに、何かもう1~2つ「これ」という用途を見つけられれば、ガジェット好きはもちろんそうでないユーザーにとっても、十分に元が取れる体験を得られるはずだ。