■山田祥平のRe:config.sys■
2日目の基調講演のステージに立つIntel コーポレーション主席副社長 兼 Intelアーキテクチャー事業本部長のデイービッド(ダディ)・パルムッター氏 |
PCはいつでも使いたいときに使えてこそのデバイスだ。だから人はPCを常に持ち運びたいと思う。そう思っているユーザーは、全体からしてみれば、まだまだ少数派ではあっても、やがて、それが当たり前となる。そういう意味では携帯電話に通じるものもある。小さければいいというものでもないし、かといって、大きく重いPCは持ち運びができない。そして、ユーザーごとに軽薄短小の定義は異なる。そのすべての要望に応えられるだけのプラットフォームラインナップを用意するのも、Intelの考えるContinuumだ。
●Intelのロードマップを見れば賢い買い物ができる今回のIDFでは、Clarksfield、すなわち、モバイル版Core i7の発表に注目が集まっているが、個人的には、もう少しカジュアルなモバイルPCに搭載される製品のことが気になっている。つまり、Calpellaプラットフォームで稼働する32nmのグラフィックス統合版デュアルコアプロセッサ、Arrandaleだ。32nmのデュアルコアClarkdaleも気になるが、毎日持ち運びするモバイルPC用と考えるとちょっと二の足を踏んでしまう。
Arrandaleは、どうやら来年の第1四半期には出荷が開始されるようだが、ノートPCの来春の新製品発売に間に合うかどうか。でも、もし今、使っているモバイルPCを買い換えるとしたら、そのタイミングだろうなと思っている。その次は、当然、SandyBridgeが待っているわけだが、かなり先の話になるだろうから、それまで、今使っているMontevinaノートを使い続けようとは思わない。
もはや、記憶するのは無理というくらいにコードネームがあふれているが、Intelのロードマップを注意深く観察していれば、自分のPCの買い換えタイミングの計画を立てやすい。2009年はWindows 7の出荷開始という一大イベントが秋にあり、当然のことながら、それがIntelのロードマップと完全に同期しているわけではなく、年末商戦のノートPCの新製品がどのような感じで出てくるのかは気になるところだが、やっぱり、自分の愛機は長く使いたいもので、そのためには、新しいプラットフォームへの登場にあわせて新調を考えるのが得策だ。
●すべてのデバイスに共通のルック&フィールをさて、IDFの2日目は、Intel コーポレーション主席副社長 兼 Intelアーキテクチャー事業本部長のデイービッド(ダディ)・パルムッター氏によるモビリティ関連の基調講演で始まった。
パルムッター氏は、ステージに登場するやいなや、モバイルはクールだと宣言する。自分自身がギーク、つまり、オタクの一員なので、いつももっとカッコよくなりたいと思っているとパルムッター氏。でも、カッコよくなるために、いつも、いくつかの障害が立ちはだかり、悲しくなってしまうという。
ある人にとってカッコよいものが、ほかの人にとってはカッコよくないこともある。だから、Intelは、ネットブック、ウルトラシン、パフォーマンスラップトップというすべてのプラットフォームを用意する。これをパルムッター氏は、グッド、ベター、ベストと表現した。
モバイルPCはこうあってほしい | モバイルPCのここが困る |
前回のこのコラムで、Intelの動向として、ConvergenceからContinuumへの移行についてふれ、業界再編の兆しを感じたことにふれたが、パルムッター氏は、いかにもあっさりと、Continuumについて、すべてのラインナップを完璧に連続させて、ユーザーの選択肢として並べることだとする。でも、それぞれのプラットフォームから、最適なものを最初に選ぶのは、エンドユーザーではなく、それを最終製品として出荷するPCやデバイスのベンダーであり、それが業界再編につながっていくことは間違いない。
パルムッター氏は、ネットブックは確かにカッコよく、インターネットを楽しんだりするには最適だし、廉価だからプレゼントにもいい、追加で購入するn台目のコンピュータとしてもふさわしいという。でも、ユーザーごとに最適のプラットフォームは異なるのだから、用途を最初に考える必要がある。ただし、例えプラットフォームが違ったとしても、Cotinuumを重視し、できる限りルック&フィールが同じでなければならないというのが氏の主張であり、Intelの考え方だ。携帯電話にIAが入る日も近いことを考えれば、この発言は興味深い。
●IAのメリットはコンパチビリティこの10年間、Intelは、モバイルをクールなものにするために、さまざまな努力をしてきた。だが、基本的にはパフォーマンスが重要であるというのがパルムッター氏の考えだ。新しい使い方が高いパフォーマンスのプロセッサを求めるのは当たり前で、たとえば、将来は、手のひらに収まるような端末で、リアルタイムの言語翻訳などが求められるようになるだろう。モバイルということを前提にすれば、どんなデバイスでも性能が必要になり、今後も、Intelはプロセスルールを縮小しながら、できる限り高いパフォーマンスを各プラットフォームで提供していくのだといいう。
IAのメリットは、そのコンパチビリティにある。つまり、すべてのデバイスで同じOSを使えることにある。このパルムッター氏の考えには共感できる。1台のノートPCは、15台のスマートフォン、45台の音声電話端末に匹敵するデータトラフィックを抱えるというが、そのデータトラフィックを処理し、目の前にテキスト、そして、ムービーやグラフィックスやサウンドとしてアレンジするのはプロセッサだ。MIDでWindowsを使うことなど無意味だと考える論調も多いのだが、個人的にはそうは思わない。似ているのに異なるものを使うことに感じるストレスの方がずっと大きいからだ。
もちろん、IntelはMicrosoftではないので、すべてのIAデバイスにWindowsをとはいわない。でも、MenlowプラットフォームからMoorestownへの移行で、ネットブックは50倍の改善が見込まれ、さらに、32nmプロセスが、デバイスそのもののサイズにも貢献するはずだとパルムッター氏。Intelは軽量OSとしてMoblinの普及にも熱心だが、やはり、それもContiuumの一環だ。MIDだけではなく、ネットブックでもMoblinを使うようなことも視野に入れているのではないか。こうして、テクノロジーが、ファッショナブルなデバイスに組み込まれ、エンドユーザーの手に渡っていく。
身振り手振りを交えてモバイルを語るモバイル・プラットフォーム事業本部長のムーリー・エデン氏 |
同日に行なわれた、モバイル・プラットフォーム事業本部長のムーリー・エデン氏とのラウンドテーブルでも興味深い話が聞けた。この人もモバイルをわかっている。
今回、Intelは、新製品として、モバイル版Core i7を発表したわけだが、モバイル前提のPCに、そんなプロセッサを入れるのは非現実的だという。バッテリ稼働時にデュアルコア、AC電源時にクワッドコアになるような設計を聞いても、熱処理のためにそんなに分厚くなったノートPCは使いたくないだろうと一喝された。やはり、モバイルでは、冒頭に書いたようにArrandaleが本命のようだ。エデン氏によれば、通常電圧版以外に、低電圧版、超低電圧版が提供される可能性は高いという。
いずれにしても、一般のコンシューマが、複数台のIAデバイスを、その日の予定に応じて使い分ける時代はほどなくやってくる。Intelは、その日のための準備を着々と進めているのだと確信した。