山田祥平のRe:config.sys

4Kディスプレイの意義に異論は認めない

 コロナ禍で在宅勤務を余儀なくされた昨年(2020年)は、背に腹は代えられないと、とにかくすぐに入手することを最優先にして機材を揃えるケースが目立ったという。今、ほぼ1年が過ぎ、その見直しがはじまっているそうだ。今回は、そんななかから、ディスプレイ事情について考えてみる。

デルの27型4K Type-Cディスプレイを試して見た

 在宅勤務が求められるようになって、モバイルノートPCだけでは仕事をするには窮屈で、急遽、外付けのディスプレイを手に入れたという方は少なくないはずだ。在宅勤務用に従業員全員に外付けディスプレイを配布した企業もあるそうだ。

 そのくらいディスプレイは作業環境の改善に役立つ。しかも、その貢献度に対するコストがかなり低いデバイスであるのがうれしい。たぶん、3万円前後で得られるパフォーマンスとしては、これ以上のものはないのではないだろうか。何しろ、PCを使うほぼすべての時間、凝視されているのだ。キーボードやマウスも頻繁に使うかもしれないが、その比ではない。その改善がもたらす効果が大きいのは当たり前だ。

 デルに取材したところ、テレワークにおいてはハイエンド機種の需要が増えているそうだ。曲面ディスプレイやQHD 4K解像度のディスプレイの需要が増え、さらに今後の需要増も見込まれているらしい。遷移としてはローコストな製品と、ハイエンド製品の2極化が進んでいたが、この状況が長引くことから、どうせなら、しっかりしたものを備えようという流れで、ハイエンド製品の需要が増加するという流れになっているとのことだ。

 読者諸兄の中にも、今、まさに外付けディスプレイを物色している方がいるだろう。今回は、デルの4KディスプレイP2721Qを使う機会があったので、そのインプレッションを紹介したい。

 P2721Qは、27型の4Kディスプレイだ。デルのディスプレイはデジタルハイエンドのUP、Uシリーズ、プロフェッショナル向けのPシリーズ、エントリーのEシリーズがある。P2721Qは型番からもわかるようにPシリーズに属し、このシリーズとしてははじめて4K解像度に対応した、現時点ではシリーズなか、唯一の製品だ。

 解像度は3,840×2,160ドットで、画面の縦横比は16:9だ。画面の表面処理は非光沢で上左右の3辺が狭額縁となっている。下部は少し額が広いがそれほどでもない。U、UPシリーズのように最高クラスの画質や性能を誇るハイエンド製品ではないが、一般的なオフィス作業には十二分な性能を持つ製品だといえる。

 一般的な入力ポート以外に、USB Type-Cポートを持ち、DisplayPort Altモードでの映像入力に対応、また、そのUSB Type-Cポートから65WのUSB PDによる電力供給ができるのも、PCそのものよりもライフサイクルが長いであろうディスプレイとして望ましい。最新の対応ノートPCに接続する場合、ケーブルは1本だけですむのがいい。ディスプレイからPCに電源が供給されるので、パソコンに別途電源を接続する必要がない。また、デルのディスプレイのほとんどがそうなのだが、この製品も例外ではなく、ACアダプタを使わず、100V電源を直接入力できる。

 じつは、同クラスのディスプレイで4Kをあきらめるだけで30%程度のコストダウンができる。各種セールなどで価格変動が激しく比較が難しいのだが、この製品が3万円台なのに対して、23~24型のフルHDディスプレイなら2万円台で購入できる。ざっくりとその価格差は1万円程度だ。だが、その1万円の価格差以上の快適さが手に入ると感じた。3割増しの価格でも、その3割を遙かに超える快適さが得られる。

4Kの精細感なら表示倍率を低くしても実用になる

 まず、27型というサイズから考えてみる。A4縦の用紙を横に並べて上下左右の余裕がたっぷりのサイズだ。アプリのリボンやスクロールバー、ツールバーなどを表示しても、実寸で表示ができる。24型ディスプレイではA4用紙の縦方向が収まりきらない。

 縦横比が16:9の長方形として画面を考えたとき、その面積は対角線の長さの2乗倍になる。23型を1とした場合、面積は27型なら1.37倍になる。ちなみにモバイルノートPCで一般的な13.3型と比べると4.1倍の面積だ。

 ただし、Windowsの想定解像度96dpiを基準に考えると、23型に100%表示でほぼ96dpiとなり、それを超えるサイズのディスプレイはあまり意味がない。Windowsには表示を拡大する機能はあっても縮小する機能がないからだ。

 ところが、これはフルHD解像度の場合で、解像度が4Kになると話が違ってくる。27型画面に4K解像度を100%表示しても、その表示はとても実用にならないくらいに小さい。4K解像度を23型フルHDと同じサイズで表示するためには、本当は46型の画面が必要になる。27型の場合は170%に拡大することで約96dpi相当になる。つまり、高い解像度はWindowsの表示スケールを縮小方向に作用させる恩恵をもたらし、だからこそ23型超の画面サイズを有効に使えるようになる。

 ただ、Windowsの拡大機能は25%単位なので、175%にしてちょっと大きめで使うか、150%にしてちょっと小さめで使うかの選択肢となる。ちなみにWindowsは、150%表示を推奨拡大率として提案している。

 だが、試してみると、125%まで拡大率を落としても十分に使いものになる。もちろんアプリごとのズーム機能などを使って微調整は必要だが、いろいろ試していると150%まで拡大をしなくてもいいことがわかった。そしてそれは画素ピッチが影響していることに気がついた。

 27型4Kでは1インチあたりのピクセル数(ppi)は163ppiだ。23型フルHDは96ppiなので、同じ大きさで何かを表示したとき、約2.9倍近い数のピクセルを使ってそれを表示する。つまり、精細度が高いのだ。これは、ワープロアプリで単に文字を入力するということしかしていなくても、見やすさが全然違うなと感じる。多少表示が小さくても視認性は確保でき、作業していて目が疲れないことに気がついた。これまで小さな画面のディスプレイでの高解像度は意味がないと思ってきたが、決してそうじゃない。

 在宅勤務の日常化などで、オンライン会議が増えるなど、パソコンの画面を見ている時間が長くなればなるほどその恩恵は高まるはずだ。目の疲労は心配しすぎてしすぎることはない。理想的には、ノートPCなど、もっと小さな画面でも、より高い解像度が得られるのが理想だ。ノートPCは画面表示が小さいから疲れるのではなく、表示の精細度が低いから疲れるのだという可能性もありそうだ。

スタンドの可動範囲の広さでセッティングも柔軟

 デルのディスプレイには、スピーカーを内蔵している製品が少ない。このP2721Qもそうだ。つなぐのがノートPCなら、ノートのスピーカーから音を出せばいいのだが、もう少しリッチなサウンドを再生したいと思うこともあるかもしれない。オプションのDellスリム サウンドバー - SB521Aは、ディスプレイの下部にマグネットで取り付けられるUSBスピーカーだ。PCとディスプレイをUSB Type-Cケーブルで接続して映像を入力する場合、ディスプレイ本体に装備された各ポートがダウンストリームポートとして有効になる。そのうちの1つをサウンドバーに接続することで豊かなサウンドが再生されるようになる。

 さらに、この製品に付属するスタンドは、前後の傾きを調整するチルト、左右の回転のためのスイベルに対応、また、縦方向で使うために時計方向、反時計方向の回転ができる。

 特筆すべきは、垂直方向の高さ調整の幅だ。机上ギリギリから、画面下部を19cmの高さまで持ち上げることができる。この調整域の広さはうれしい。このくらい高くまで持ち上げられると13.3型程度の画面サイズを持つノートPCをディスプレイの手前に設置して操作しても、外付けディスプレイへの視野がけられることなく支障のない作業ができる。視線の移動や首の回転も最小限に抑えられる。つまりノートと外付けディスプレイの両方を正面に置くことができるのだ。

 冒頭の写真はこのディスプレイにA4サイズのPDFをほぼ実寸で表示し、その前に13.3型画面のデル製モバイルノートPC「Latitude 7320」を置いてみたものだ。ケーブル1本で接続するだけで映像が出力され、ディスプレイからは電源が供給され、すっきりとしたセッティングが完結している。

 オンライン会議などでは、どうしてもノート内蔵のカメラやマイクが必要となる。これらは別途外付けのものを調達してもいいが、ノート内蔵のものがそのまま使える手軽さは重宝する。

 各種の設定等の操作については、画面右下背面に、デルとしては初めてのジョイスティック式コントローラを装備する。これまでのデルディスプレイの多くは、ほぼ同じ位置に4つ、電源ボタンを入れれば5つのボタンが並んでいてブラインドで操作するにはちょっとつらかったが、新方式になって、その操作性が高まっている。

 さらに、無料で提供されているソフトウェア「Dell Display Manager」が秀逸だ。このユーティリティを使えば、画面の輝度やコントラスト、入力の切り替えなどがWindows上の操作でできる。そのおかげで、背面のジョイスティック式コントローラをさわらなければならない場面はほとんどない。ジョイスティック式コントローラとはいえ、画面を机上面に最も近づけた状態での操作は難しく、操作のためには本体を持ち上げる必要があるが、ユーティリティを使えば、そこでほとんどすべての設定ができる。

 ちょっと気になるのは、プリセットの画面モードとして「動画」、「ゲーム」、「ウォーム」、「クール」、「カスタムカラー」と、大雑把なものしか用意されていない点だ。せめて色温度でのもう少し細かい指定くらいはできればよかった。このあたりがU、UPシリーズと差別化されている要素なのだろう。「カスタムカラー」ではR、G、Bを調整して色を追い込むのだが、これはたいへんな作業だ。さらにもう一台の異なるディスプレイを接続したいケースでは、2台の色合わせに苦労するかもしれない。

目の疲れを抑える高解像度

 在宅勤務を強いられても、自宅には自分専用の仕事スペースを確保できないという場合は少なくないともいう。でも、なんとか工夫すれば23型を超える据置の外付けディスプレイを設定できるのなら、27型4Kというのは抜群の選択肢だ。ただし、24型を超えたらフルHD超、理想的には一足飛びに4K超の解像度を求めたい。そこは妥協してはならないし個人的には異論を認めない。

 ちなみにデルのディスプレイ製品のラインナップでは、4Kディスプレイの最小サイズが27型だ。そこがなんらかのしきい値なのだろう。今、もっとも選択肢が広い据置サイズのディスプレイは23.8型なのだが、ほんの少しの設置の工夫で27型4Kが使えるのなら、それで目の疲れを大幅に抑えることができ、2~3割増しの広さのの作業スペースが手に入る。事務作業においても画面の精細感を望む新しい当たり前を満喫しよう。