山田祥平のRe:config.sys
Windowsデスクトップとモニター表示のズーム倍率
2023年4月29日 06:21
Windowsは96dpiで表示ができることを前提に設計されている。もはやこれはどうしようもない事実だ。その上で、さまざまなソリューションが提供されている。コロナ禍からも解放され、ノートPCを持ち出す機会も増えようとしている今、もういちど、愛用PCの画面表示について見直してみよう。
画素密度でスケーリングを決める
dpiというのはドット・パー・インチを意味し、1インチあたりにいくつのドットを表示できるかを示す指標だ。96dpiでは1インチに96個のドットが並ぶ。日本語では画素密度と訳される。解像度の高いディスプレイであればあるほど画素密度もが高くなる。
多くの場合、ディスプレイのスペックをチェックすれば、その画素密度が記されているが、わからない場合も計算で算出することができる。ディスプレイのインチ数はその対角線の長さを示している。
また、解像度は、縦方向と横方向にいくつのドットを表示できるかを示す。つまり、横の寸法で横のドット数を割ればdpiが分かる。横方向の寸法をインチ目盛りのあるメジャーで測ってもいいし、三平方の定理で導き出してもいい。具体的には縦と横のドット数が分かっているのだから、対角線方向に並ぶドット数は、縦ドット数の二乗と横ドット数の和の平方根として計算できる。その値をインチ数で割ればdpiが分かる。
代表的なモニターと解像度での画素密度の例を示しておこう。
サイズ | 解像度 | アスペクト比 | dpi | 対96dpi密度 |
---|---|---|---|---|
12.4型 | 1,920×1,280ドット | 3:2 | 186dpi | 194% |
13型 | 2,980×1,920ドット | 3:2 | 267dpi | 278% |
13.3型 | 1,920×1,080ドット | 16:9 | 166dpi | 173% |
14型 | 1,920×1,200ドット | 16:10 | 162dpi | 169% |
15.6型 | 1,920×1,080ドット | 16:9 | 141dpi | 147% |
15.6型 | 1,920×1,200ドット | 16:10 | 145dpi | 151% |
23型 | 1,920×1,080ドット | 16:9 | 96dpi | 100% |
23.8型 | 1,920×1,080ドット | 16:9 | 93dpi | 97% |
27型 | 3,840×2,160ドット | 16:9 | 163dpi | 170% |
31.5型 | 3,840×2,160ドット | 16:9 | 140dpi | 146% |
42.5型 | 3,840×2,160ドット | 16:9 | 104dpi | 108% |
50型 | 3,840×2,160ドット | 16:9 | 88dpi | 92% |
といったところだろうか。最後の%値は、96dpiと同等サイズでの表示に必要な倍率だ。仮にこの値をWindowsのカスタムスケーリングで指定すれば、どのディスプレイでもほぼ同じサイズでの表示になる。
ただ、カスタムスケーリングでの設定は、マルチディスプレイ対応で、異なるサイズのモニタを接続したときに個別にスケーリングを設定できないことや、最悪の場合、Windowsを再インストールしなければならなくなるなどで、お勧めはできない。Microsoftも推奨はしていない。
設定は奥深くにもぐり「必要な場合以外は、これらの設定を変更しないでください。テキストやアプリを読み取ることができなくなる可能性があります。すべてのディスプレイは、入力したカスタムスケーリングサイズに設定され、元の設定に戻すことが困難になる場合があります」と明記されている。
ただし、Windowsでの基本機能としては、拡大は25%刻み、100%未満の縮小ができない。従って、100%、125%、150%、175%、200%あたりのどれかで使うことになる。たとえば、13.3型の1,920×1,080ドットであれば、173%にしたいところだが、175%で使うか、少し小さくなるのをガマンして推奨値の150%で使うといった具合だ。このため1,920×1,080ドット解像度であれば23型、3,840×2,160ドット解像度であれば46型を大きく上回るモニターは想定以上のサイズでの表示になる。
Windowsの画面表示の拡大縮小率は簡単に変更できる。設定アプリを使って「システム-ディスプレイ」で設定できるし、デスクトップを右クリックして、ショートカットメニューから「ディスプレイ設定」を開けばダイレクトに設定画面が開く。これができることを知らないで、小さな文字に難儀しているユーザーがそれなりの確率でいるそうなので、そんなユーザーを見かけたら、相談に乗ってあげてほしい。
横長画面を縦に使うと困ることが増える
異なるサイズのモニターに、ほぼ同じサイズで文字などを表示する場合、1画面に表示できる情報の量はモニターのサイズに依存する。また、モニターサイズごとに、瞳からの距離は異なるかもしれない。42.5型と13.3型のモニターを、文字サイズが同じだからといって同じ距離で見るとは限らない。
大きなサイズのモニターは、ある程度の距離を確保しないと、視野から両脇がこぼれてしまい、デスクトップ全体を見渡すことができなくなってしまうが、小さなサイズのモニタはその心配がないから、文字を小さくして近距離で眺めてもいいという判断もできる。ただ、それでは困ることもあるだろう。そのことを想定しているのかどうか、Windowsは、50型の3,840×2,160ドットのTVに接続すると、300%に拡大することを推奨する。
ノートPC程度のサイズ感ではこういう感じだが、スマホはもっと小さい。たとえばiPhone 14は、6.1型の2,532×1,170なので460dpiとなる。もはや異次元だが、これも適切な文字サイズを設定しておかないと、日常的な利用にも不便を感じるかもしれない。アプリによってはiOSのDynamic Typeに非対応で、文字サイズ設定を無視することもあるのでたちが悪い。
ただ、スマホにしても、PCにしても拡大率を高めた結果、1画面に各種UI要素を表示しきれないようなことが起こり、ボタンが押せないなどの弊害がある。個人的には、そうした場面に遭遇したときには、そのときだけ画面ズームや文字サイズを数段階落として操作し、そのあとは元に戻すようにしている。
いずれにしても、自分の視力等にマッチしない表示で電子機器の表示を毎日眺めていることで、視力の低下や目の疲労などにつながっていくことは回避したい。操作ミスや情報の見落としの可能性もある。
Windowsに限らず、PC用OSでは基本的にランドスケープと呼ばれる横長の画面で使うことを想定しているのに、そのUI要素はどうにも縦方向を費やすように仕向けられている。OSもそうならアプリもそうだ。このあたりのことは、将来的な改善を望みたいところだ。
13.3型1,920×1,080ドットの典型的なモバイルノートPCを175%表示で使うと、UI要素の画面占有率が高すぎて実用度が著しく下がってしまうことはやってみればすぐに分かる。Webブラウザを使うときなどは、F11で全画面表示にするクセがついてしまったくらいだ。全画面表示にすれば、一時的にブラウザのタブやアドレスバー、ブックマークバー、そして、Windowsのタスクバーなどが非表示になってサイトの情報表示のエリアが拡がってくれる。
大きければモビリティが、小さければ操作性が犠牲になる
モバイルノートは大きすぎるとモビリティが犠牲になる。小さいことは歓迎する要素ではあっても、小さすぎると表示の点で困ることが増える。限られた作業しかしないと割り切るのであれば、いろいろと工夫することで画面サイズの小ささをカバーすることができるが、複雑な作業をする場合は、ある程度の大きさの表示領域は確保できたほうがいい。
個人的には13.3型の1,920×1,080ドットのディスプレイを持つビジネスモバイルノートPC 1台で、ブラウザで調べ物をしながらWordやExcel、PowerPointを使ってドキュメントを作成するといったことをするのは、もはや職人芸だと思う。できないわけではないが、そういうことができるようになるために努力するなら、もっと他に努力すべきことがある。
モニターを追加する(数万円)、傍らのTVにPCをつなぐ(数百円)など、予算の多寡に応じていろいろな方法がある。飛行機内や電車の中、ビジネスホテルの狭い客室にある小さなデスク、自宅の食卓テーブルといった作業に制限があるような場所での作業以外は、表示環境をリッチにすることを考えよう。
昨今のビジネスホテルは大型のTVを部屋に設置していることも多く、そんな時のためにカバンにHDMIケーブルを用意しておくと役にたつことがあるかもしれない。そこまでしなくても、ホテル近隣の100均で簡単に入手できるし、場合によってはフロントで借りられるだろう。TVへの接続時、オーバースキャンで周辺がけられてしまい、画面全体を表示しきれない可能性もあるが、それこそ運用でカバーしてほしい。
いずれにしても不便を人間の無理で解消するのはよくないことだ。