山田祥平のRe:config.sys

モバイルディスプレイの余計な幸せ

 在宅勤務はもちろん、コワーキングスペースやホテルのプランを利用したテレワーク環境のために2台目のモバイルディスプレイがあると作業効率は大幅に高まる。今回は、そのサイズ感と機動性、そして解像度について考えてみる。

いつでもどこでもモバイルディスプレイ

 このコラムを愛読していただいている方なら、ぼくがWindowsの等倍厨で、こともあろうに据置型の24型ディスプレイをモバイルディスプレイと称して出張に持ち歩いていたことをご存じかもしれない。

 上記の記事で紹介しているスーツケースにピタリと収まる24型ディスプレイ「P2419HC」は、本当に出張先のホテルで大活躍だった。しかし、この1年はコロナ禍の影響で、一度も持ち出されることなくスーツケースのなかに格納されたまま押し入れに眠っている。

 ただ、さすがにこの環境を万人にすすめるのはためらわれる。自宅で据え置くにしても、作業が終わるたびに毎日片付けが必要な場合は億劫だし、持ち出すにしても、スーツケースをゴロゴロというのはちょっとおおがかりだ。

 だが、ようやく世のなかが追いついてきて、モバイルディスプレイが注目されるようになった。これは喜ばしいかぎりだ。ディスプレイの追加による作業領域の拡張で作業効率がおおいに高まることが認知されてきているということだ。

 今回試したのはGMKの「Xpanel--14 inch 4K UHD Portable Touchscreen Monitor」だ。PC Watchでも過去に紹介されている。

 AmazonなどのECサイトで容易に入手が可能で、価格はクーポン等の適用で3万円程度となっている。

 14型の16:9縦横比のIPSパネルを使ったディスプレイで、タッチ対応、Adobe RGB 100%の色域とHDR対応、そしてなんと言っても4K解像度というのが、ほかの同様の製品に対するアドバンテージだ。スピーカーも内蔵し、サウンド再生にも不便はない。その付加価値によって、有象無象のモバイルディスプレイよりは、多少高価だ。

タッチ対応4K解像度の14型モバイルディスプレイで作業環境を差異化

 本体重量は実測で811g。カタログ値では780gなので、手元の個体はちょっと重いことになる。いずれにしても、それほど軽量というわけではないのだが、本体にキックスタンドが装備されているのがいい。

 一般的なモバイルディスプレイの多くは専用のカバーが付属していて、それを使ってスタンド代わりにして立てかけることが多いのだが、このカバーが重く、せっかくの軽快さが台なしになってしまっていることを考えれば、許せる重量ではないだろうか。

 そして、このキックスタンドが、サッと出してサッと使う機動性を確保するために役にたつ。画面は光沢なので、天井の灯りの映り込みなどを防止するには、設置の微妙な角度調整が必要なのだが、キックスタンドのおかげでそれもたやすい。

 キックスタンド部の左側面にはUSB Type-Cポートが2つとMini HDMIポートが1つ装備されている。また、右側面にはイヤフォンジャック、そしてMicro USBポート、オンスクリーンメニュー起動ボタンがある。

 Micro USBポートは電力の供給に使える以外にOTGポートとして、各種のUSBデバイスを接続することができる。これによって、通常のUSBデバイスを含むドッキングステーション的な利用ができる。

 2つのType-CポートはDisplayPort Alternate Modeによる映像入力ができる。2つのポートはどちらも同じ機能だが切り替えて使うことはできない。

 また、片方に電源を供給すれば、もう片方のポートに接続されたケーブルにチャージパススルー(パススルー)で電力を供給する。つまり、「USB PDアダプタ → ディスプレイ → PC」と2本のケーブルで3つのデバイスを接続するだけで、PC本体の充電、映像出力が完結する。

 欲を言えばType-Cポートは左右に1つずつ欲しかった。そのほうがノートPCと並べるときのケーブルの引き回しなどの点でレイアウトの自由度が高まるからだ。

 タッチに対応していることで、直感的な操作ができる。2画面を使う場合、画面ごとの役割分担のようなものを自分なりに想定するのだが、ノートPCに追加したこのディスプレイに細々とした操作がほぼ必要のないアプリのウィンドウを表示しておけば、サッと手を伸ばして指先で操作できるので使い勝手がいい。オンライン会議用アプリなどをフルスクリーン表示するというのも悪くない。

小さくても読めて目の疲れも少ない

 このディスプレイの最たる特徴は、その解像度が4Kであるという点だ。3,840×2,160というのは、フルHD解像度に対して4倍の情報量を持つ。

 もちろん、パネルは14型なので、等倍で表示したところで文字などの情報は判別できないくらいに小さく、そのような使い方は実用性には乏しい。4K解像度を100%表示で使うには、本当なら46型のディスプレイが必要になる。

 同じ縦横比の場合、対角線の長さがn倍になると面積はn^2倍になる。画面サイズのインチは対角線の長さに相当する。つまり、16:9の縦横比同士で比較すると、一般的なモバイルノートPCの13.3型に対して、14型では対角線の長さが1.05倍になるので、その二乗は約1.1だ。すなわち面積は1割増しとなる。

 その広くなった面積に映し出される映像だが、ご存じのとおり、Windowsは96dpiを想定して設計されているので、それに合致する23型フルHD解像度のディスプレイに100%表示するとちょうどいい。

 14型4K解像度の場合、それと同じサイズで各種オブジェクトを表示するには、328%に拡大する必要がある。Windowsのスケーリングは25%刻みなので、この半端な28%を切り上げて350%とするか、少し小さくなるのをがまんして300%で使うかという選択になる。

 ところがだ、4Kディスプレイは、同じサイズのフルHDディスプレイよりも画素ピッチが小さい。そのことが功を奏して、さらに拡大率を下げても見やすいのだ。具体的には250%表示でも十分に実用性があると感じた。

 人によって視力が異なるのでなんとも言えないが、もっと小さくても大丈夫という場合もあるだろう。ちょっと読みにくいと思ったら、サッと手を伸ばしてピンチ操作すればズーム比率が直感的に変えられるのもタッチ対応の魅力だ。そんなの「Ctrl+プラス」やタッチパッドのピンチ操作でいいでしょうと言われればそれまでだが、気軽さは全然違う。

 通常のフルHDディスプレイよりも拡大率を下げても使えるということは、それだけデスクトップの作業領域が広がるということでもある。アプリごとのズーム機能も併用すれば、作業環境は大きく改善されるに違いない。たとえ同じ文字サイズで表示したとしても、画素ピッチが小さければ見やすくて目も疲れない。

 大画面のディスプレイを用意できないなら、4K解像度は宝の持ち腐れ的な印象を持つかもしれないが、決してそうではない。画面サイズの大小にかかわらず、解像度が高いに越したことはない。

 これは、自分のなかでのちょっとした発見でもあった。かつては高嶺の花だった4Kが、だんだん身近な解像度となりつつあり、コスト的にもこなれてきているのはうれしい。

 在宅勤務やテレワークなどで、PCのディスプレイに向かう時間が以前より長くなった方は多いだろう。当然、長時間のPC利用は目を酷使することになるわけで、できるだけ、目に優しい環境での作業ができるような配慮が必要だ。4K解像度を手に入れることは、ちょっとした贅沢ではあるが、得られるメリットは大きい。