山田祥平のRe:config.sys
【特別編】あらゆる機器がつながるハブディスプレイを指向するデルの新製品
2020年4月27日 06:00
各社からテレワークや在宅勤務の急増に伴い需要が高まるディスプレイ製品の新製品が発表されている。デルもその1社として新製品を発表、高まるニーズに応える。企業向けだが個人でも購入できる。
今回は、新ディスプレイ製品の特徴について同社鈴木快林氏(クライアントソリューションズ統括本部クライアント製品本部フィールドマーケティングマネージャー)、小柳恵氏(APJ Display CoC 日本担当プロダクツ・ライン・マネージャー)に話を聞いた。
ハブとしてのディスプレイ
コンピュータベンダーとして知られるデルだが、ディスプレイについても出荷台数世界ナンバーワンを誇る。グローバルでは法人・個人ともに1位、日本では法人で2位、個人で3位の地位をキープしている。
今回、発表され4月24日に販売が開始されたのは、デルとしては初となる法人向け有線LAN端子内蔵のDisplayPort1.4対応USB Type-C Hubディスプレイで、27型WQHD(2,560×1,440)の「U2721DE」と、23.8型フルHD(1,920×1,080)の「U2421HE」の2機種だ。
両機の違いはサイズと解像度のみで、USB Type-CのPower Delivery(PD)による65Wの電力供給とDisplayPort Alternate ModeによるDisplayPort出力が可能となっている。
有線LAN端子としてのRJ-45(Gigabit Ethernet)のほか、4辺極薄ベゼルとしてのInfinity Edgeや、高さ調整や回転機能をもつコンパクトフットプリントのスタンドなどが両機共通の特徴だ。
入力はHDMI、DisplayPort、USB Type-Cの3系統で、別途、MST(Multi Stream Transport)対応のDisplayPort出力が装備され、さらにもう1台のDisplayPort搭載ディスプレイに対して、ケーブル1本でDisplayPort映像を出力するデイジーチェーンをサポートする。
デルの法人向けディスプレイは、エントリー向けの「Eシリーズ」、プロフェッショナル向けの「Pシリーズ」、デジタルハイエンド向けの「Uシリーズ」、UとPを兼ね備え、Premier Colorに対応する「UPシリーズ」、そして大画面の「Cシリーズ」があるが、今回の新製品はUからはじまる型番のデジタルハイエンドシリーズに位置する。
出荷時にsRGB99%、Delta-E 2未満に正確に補正され、製品にはカラーキャリブレーションファクトリーレポートが各種特性の出荷時値がわかる証明書として同梱される。
「色彩、画質、満足してもらえる製品として、クリエイティブ業界でも受け入れていただける製品です。Type-C対応機は、今年(2020年)の1月に新製品5モデルを販売開始していますが、その市場はかなり伸びています。今回は、それに加えて、有線で安定したネットワーク接続のニーズに応えようとRJ-45ポートを装備し、ハブディスプレイとして使っていただこうというわけです」(小柳氏)。
これまでの製品を見ればわかるが、デルはType-C接続対応にかなり熱心なベンダーだと言える。ケーブル1本で対応モバイルノートPCへの電源供給と、PCからの映像伝送に対応できることの利便性は高く、いかにケーブルを少なくできるかで、机のまわりをきれいにしたい、少しでも快適に使いたいというユーザーの願いを叶える。
「今回は、できるかぎりベゼルを狭くし、しかも4辺をほぼ均一に近くすることで、縦方向に回転させても違和感がないように工夫しています。もちろん複数台を使うマルチディスプレイでも境目があまり気になりません」(小柳氏)。
Type-Cディスプレイを求める企業ニーズ
企業ニーズとしては、ケーブル1本でディスプレイがつながるのなら、それに加えて安定したネットワークを使いたいという要望が多いそうだ。有線LANポートの搭載は、こうしたニーズに応えるものだ。現行では、LANポートのためだけに別途アダプタを使っているユーザーも多く、ノートPC本体には周辺機器をつながない環境が完全にはかなえられていないため、法人用途では不満の声も多かったという。
具体的には、ノートPC本体とディスプレイをType-Cケーブルで接続したときに、有線LAN機能としてRJ-45端子を使ってGigabit Ethernetが使えるようになる。法人向けを考慮し、MACアドレスパススルーやPXE Boot、Wake-On-LANにも対応する。
また、ディスプレイ本体には左側面に2つ、背面に2つ、合計4つのUSB Type-Aポートが装備されている。ノートPCにつなぎたい機器として、これだけのポートがあれば事足りるだろう。欲を言えば、Type-Cポートも1つくらい装備してほしかったところだ。
おそらく製品が企画されたころには、オフィスでの利用が想定されていたのだろうが、期せずしてコロナ騒動のまっただ中の発売となっている。
「じつは、ここのところUSBヘッドセットの売上がものすごいのです。ヘッドセットをつなぐだけにのためにノートPCのポートを1つ占有するというのお客さまの抵抗があるようです。外付けのキーボード、マウスなどもディスプレイ側に接続し、あくまでもノートを軽く、小さいままつかってすっきりさせたいというニーズが高いのです。とくに、昨今のモバイルノートPCは、USB接続端子が少なくなっていますから、それをディスプレイで補完しようというのがハブディスプレイという呼び方の由来です」(小柳氏)。
また、有線LAN対応については、企業内のオフィスのみならず、在宅勤務中の一般住居においても、ルーターとの間で有線での接続ができればネットワーク利用における不安定要素を排除することができる。
「昨今テレワークが当たり前になると、会議などでネットワークが不安定だとストレスになります。また、データセンターなどでは、ワイヤレスですべてを完結できない現場もあります。在宅勤務中の家庭内においても悩みは同じようで、お客さまの期待に応えられるのではないでしょうか。MACアドレスパススルーなので、リモートアクセス時の管理についても有利です」(鈴木氏)。
ちなみに、今回のディスプレイにはスピーカーがない。そのためディスプレイ単体でサウンドをサポートできない。ただ、仕様からはわかりにくいのだが、DACとしてのUSBサウンドをサポートしている。本体には音声ラインの出力ポートが装備され、そこにスピーカーを接続すればType-CやDisplayPortで接続された機器のサウンドが出力される。
デルによれば、ディスプレイですべてができることが求められている時代なのだという。Type-C対応ディスプレイのニーズは高まる一方で、さらに増加するトレンドにあるようだ。
同社の過去の実績では、22型近辺が売れ筋だったが、ちょっと大型化する傾向もあるという。在宅勤務の特性もあって、2月後半あたりからは急激にヘッドセットが売れるようになり、各企業からはあけてもくれてもヘッドセットのオーダーが入り、日本全国で欠品を起こす状況を招いた。それも、5月下旬から正常な状態に補充できる体制が整うという。そして、ディスプレイもまた引っ張りだこの状態だそうだ。
となると心配なのがディスプレイ製品の品薄傾向だ。一般企業に勤務する知り合いも在宅勤務に伴って、外付けディスプレイの購入を会社から許可されるなど、需要は高まっている。そんななかで供給が追いつかない状態が起こっては泣きっ面にはちだが、どうやら新製品が続々登場しているところを見るとその心配はなさそうだ。
これまでのディスプレイは、メーカーからの新しい提案をするというのが当たり前だったが、今はずいぶん違ってきたとも。できるかぎりのことをディスプレイ側に集約できないかという顧客からの要望が高まっているようだ。とにかくType-Cディスプレイを調達したいという企業も少なくないという。
コロナだけのせいではないが、ディスプレイに対する価値感が変わりつつあるようだ。