山田祥平のRe:config.sys

大きなモニターを並べて論より証拠、バーチャルよりリアル

 手軽に入手できる大画面モニターといえば、なんといってもTVだ。コストパフォーマンスは抜群だ。HDMIケーブルさえあれば確実にPC映像を映し出せるので汎用性は高い。しかも最近は放送を受信できないチューナーレスTVが人気だという。すでにモニターとTVは同義に近い存在だ。

Windows 96dpiの呪縛

 PCに複数のモニターを接続すれば作業効率は高くなる。個人的に何十年も前からやってきたことだから、この有用性については賭けてもいいが、そのモニターサイズの大小については未だに迷いがある。できるだけ大きいモニター1枚がいいのか、小さいモニターを複数枚のほうがいいのかが難しい。これは永遠のテーマだ。

 今、この原稿を書いている仕事場環境では、ここ数年42.5型1枚と、27型、28型を1枚ずつの3枚体制でやってきた。すべて4Kモニターで正面に42.5型を設置し、その左側にこちらに向かうように// ̄のレイアウトで28型と、その上方にアームを使って27型を並べて置いていた。いわばなんちゃって湾曲環境だ。

 今回は、この環境に手を入れて、42.5型モニターをもう1台追加した。つまり、正面の42.5型に加えて、/ ̄のイメージで左側に同じサイズのモニターを置いてみたのだ。28型モニターはいったん待避させたが、アームに取り付けた27型は正面の42.5型モニターの上方に移動させ2面の大画面と1面のサブという3台モニターの環境を構築してみた。

 Windowsは画面表示が96dpiであると想定して設計されている。フルHD解像度の映像を23型モニターに100%表示したときの表示イメージだ。たとえばノートPCのモニターはこれよりも小さい。仮にフルHDを15.6型のモニターに表示する場合は147%に拡大したときに画面上のオブジェクトを同じサイズで表示できる。Windowsの拡大機能は25%単位なので、150%表示に設定するのがいい。

 4Kモニターを3,840×2,160ドット表示で使う場合、46型のモニターに100%表示したときに96dpi相当となる。だから本当は46型のモニターがあればいいのだが、あまりポピュラーなサイズではないようで、リーズナブルな製品が見つからない。それに、数年42.5型のモニターを目の前に置いて作業してきた経験上、42.5型を超えるサイズは、画面全体を視野にいれるのが難しいなど、PC作業の距離感を前提とするとちょっとした支障があるようにも思う。まして、46型がないから50型超で代用するなんてのは無謀だ。

 なので42.5型はちょうどいいといえばちょうどいい。本当は108%表示を指定できればいいのだが、接続された全モニターに影響するので、カスタムスケーリングを使うわけにもいかず、125%表示で使う。人によっては100%表示でちょうどいいと判断するかもしれない。ちょっとうらやましい。

 今、こうして42.5型を並べてみても、メインは正面のモニターで、左側に設置したもう一台のモニター画面全体は通常の視野に入ってこない。まして、正面上方の27型は、日常的に表示しておきたいメッセージや新着メールの受信トレイなどのための常夜灯のようなもので、常にまなざしを向けて凝視しているものではない。

 42.5型のモニターはベゼルレスの場合、本体の横幅は1m弱だ。今、使っている作業机の横幅は2mあるので、その気になれば2台を直線状に並べて設置できる。だが、メインのモニターを正面において座り、その左側にもう1台を並べたとき、左端側の表示はものすごく遠くなって文字表示などの視認性が低くなってしまう。そこで、左側のモニターを少し内側に向けて設置することで視野に入りやすいようにした。なんちゃって湾曲とはそういうことだ。モニター本体の裏側に机上のスペース的に無駄な部分ができてしまうが、そこは視界に入れたくないモノの置き場として使うなどで納得している。

TV受像機はPCのモニターとして常用できるか

 以前から、一般のTVをモニターとしてPCにつないでみようとは考えていた。でも、なかなか行動に移せなかった。躊躇していた要因の筆頭は、TVあるあるで、画面の光沢処理が視認性に影響を与えるように感じたからだ。天井の灯りや窓からの日差しが反射して視認性を落とす。白っぽい画面ではそれほどでもないが、黒っぽい画面では自分の顔が写ってしまったりもする。静止している画面を凝視する時間が長いPC作業用のモニターとしてはちょっと抵抗がある。

 今回、「Xiaomi TV A Pro」を使わせてもらえることになり、TV的なデバイスをモニターとして常用することができるかどうかを試すことができている。TVといっても、この製品は、放送波を受信するチューナー非搭載のGoogle TVだ。いわゆるチューナーレスTVで、Google TV対応の各種アプリによるコンテンツ表示に加え、HDMI×3、そして、AVコンポジット入力の計4系統の外部入力ができるというものだ。

 接続性の点では、これらのほかに有線/無線LAN、光デジタル音声出力ポート、USB 2.0×2、Bluetoothなどの各種ポートを装備する。当たり前の話だが、チューナーレスなので、地上波/BS等のアンテナ入力端子はない。Wi-Fiを使うことを前提とすれば、PC1台の接続に際して本体から生えるケーブルは電源と映像信号線だけだ。シンプルそのもので設置場所の自由度も高い。スピーカーを内蔵し、電源も内蔵するので電源アダプタはいらない。かさばらないメガネプラグの2PケーブルでAC100Vを供給するようになっている。

 また、赤外線リモコンが同梱され、電源のオン/オフ、Google TVの操作関連ボタン、Netflix、prime video、YouTube、他Appsのためのダイレクト呼び出しボタンが装備されている。各種設定もこのリモコンでできる。とても便利だ。

 ラインナップとして32型、43型、55型、65型の各サイズがあるが、4K対応しているのは43型以上のモデルのみだ。Windowsは表示の拡大はできても縮小はできないので、32型で4K非対応では使いにくい。一方、大画面の55型、65型を設置しても目に余るというか視野の確保が難しそうなので、現状のモニターと同じサイズのもので試してみることにした。その方が比較もたやすい。43型となっているが、実際のモニターサイズは42.5型だ。同じサイズの大画面2台を並べて使ってみる。

 本体は付属のシングルタイプスタンドを中央部に取り付けて自立させる。高さやチルトの調整はできない。だからノートPCを手前に置くと、そのディスプレイで画面が蹴られてしまう。首振りもできないが、台座がプレートではなくフレームになっていて大仰な感じがない。こんなライトな台座で大丈夫かとも思うが、本体の重量は6.84kgとかなり軽い。それを130gのスタンドで支えれば十分ということなのだろう。軽量なので台座ごと角度をずらすのもたやすい。この軽さもあって設置は一人での作業でも実にラクにできた。この導入のたやすさは特筆しておきたい。

 この製品、au Online Shopでの扱いだ。TVのような製品を通販、しかも、携帯電話のauのオンラインショップでという施策には驚く。価格は5万4,780円で、4K対応の43型モニターとしてはかなりリーズナブルだ。PC用の4K対応42.5型モニターは、USB Type-CによるDP Alt入力対応やUSB PD対応、ハブ機能などの付加価値も高いし、画面の非光沢処理の点でも優れているが10万円前後の価格を見るとちょっと手を出しにくい。

Google TV、その外部入力の使い勝手

 HDMIケーブルでPCと接続し、既存の42.5型と並べて見ると、ちょっと色温度が高すぎるように感じた。色温度のプリセットは寒色、中寒色、標準、中暖色、暖色とあるが、暖色にしてもまだ青い。カスタム設定で青のゲインをデフォルト値の1,024から800まで下げ、明るさとコントラストをなんとなく既存モニターと同じくらいになるように目視で設定したら、並べて設置しても違和感がない程度の色温度で表示されるようになった。厳密には違うのだがガマンできる範囲だ。表示品位についても概ね満足できる。冒頭の写真は設置した様子で、左がXiaomi TV A Proだ。写真にしてしまうと色味はもう少し追い込んだ方がよさそうだと感じてしまう。

 昼間の写真なので、カーテンの外の日差しが映り込んでいるのが分かる。懸念していた画面表面の光沢処理による反射なのだが、やはり、PCモニター専用機の既存モニターとはずいぶん違う。天井の灯りや窓外の日差しが反射して視認性を落とす。白っぽい画面ではそれほど気にならないが、黒っぽい画面では自分の顔が写ってしまうという点にはある程度の妥協が必要だ。

 本当は、この画面に貼り付ける非光沢の保護シートのようなものがあればいいのかもしれない。ちょっと探せばいろいろ市場にあるようだが1万円前後と本体価格の2割近い価格なのだ。ダメモトで気軽に購入できる価格ではない。

 運用上、困ったことがあるとすれば、この製品には無信号オフの機能がない点だ。たとえば、Windows + LキーなどでPCをロックすると、Windowsはしばらくロック画面を表示したあと、画面出力を無信号にする。それを検知したモニターは、ほとんどの製品で無信号オフとなって画面がスタンバイ状態に落ちる。

 だが、この製品にはその機能がない。画面に「信号なし」と表示されたままになる。実際には無操作時画面OFFの機能は省エネツールとして提供されてはいるのだが、最短15分後で、しかも、この機能が働くのはGoogle TVの操作画面時のみで外部入力選択時には機能しないようだ。

 だから、作業机を離れるときには手動で電源をオフにするように気をつけるしかない。リモコンが同梱されているのでそれほど手間ではないのだが、それを忘れると、他のモニターの画面はオフになっているのに、このモニターだけがオンのままで、画面に「信号なし」と表示されているという間抜けな状態になってしまう。ここはファームウェアなどでなんとか対応してほしいものだ。少なくとも次機種ではなんとかしてほしい。

 ちなみに、リビングルームで使っているGoogle TV内蔵のTVには、この機能が装備されている。ただし、設定できるのは無信号オフから最短1分後の画面オフで、信号オフ即座にオフにはできない。

 さて、設置はできた。実際に使ってみて、画質にも大きな不満を感じない。リフレッシュレートは60Hzまでだが、ヘビーゲーマーではないので問題ない。5万円ちょっとで手に入る環境としては十分に納得できるものだと思う。

 次回は、42.5型モニターを2台並べた環境下でのPC作業について話を進めよう。