山田祥平のRe:config.sys
もうモバイルじゃないとは言わせない
2017年10月20日 06:00
モバイルディスプレイがあれば出先での作業の効率が飛躍的に高まる。だからこそスーツケースにディスプレイを詰めてまでして出張に出かける。小さなモバイルPCの使い方テクニックを究めるのも方法の1つだが、それができたとしてもマルチディスプレイは便利で手放せない。
スーツケースに入ればモバイル
比較的長期の出張、とくに、スーツケースで荷物を持っていくような場合は、そのなかにモバイルディスプレイを忍ばせるようにしてきた。最初は、2013年の1月、CES取材のときだったから、もう4年近くになる(最強のモバイルルーター“iPad mini”とHPの24型スリムディスプレイが支える米国出張)。そのときは「HP x2401 24インチ スリムボードモニター」(B6R49AA) だったが、残念ながらすでに絶版だし、今から考えるとちょっと重かった。
その後、デルのディスプレイを経て、最終的にはLGの24MP88HV-Sに落ち着き、すでに2年間愛用している。その間、一度、壊れてしまったが、当然、修理して持ち歩きを続けている。
悲報。モバイルディスプレイが壊れている…。pic.twitter.com/4prIS8OMpz
— 山田祥平(syohei yamada) (@syohei)2017年1月3日
壊したときには、編集長による警告まで記事にされたり(24型液晶ディスプレイをモバイルしてはいけない)、コラム内でさりげなく取り上げたら編集部注を入れられる始末。それでもめげなかった(ケーブル一本さらしにまいて月が出ずとも抜き差し自在)。
モバイルディスプレイとはいえ、24型にこだわってきたのは、96dpiのWindowsが100%表示を想定する画面サイズが約24型だからだ。本当は16:10や3:2の比率が好きなのだが、24型なら16:9でもなんとか我慢できるというものだ。
便利なことがわかってくるとだんだん欲が出てくる。スーツケースを持たないででかける比較的短期の出張にもディスプレイがほしいと思うようになる。
追加のディスプレイをまた1つ
長期出張にはリモアのSALSA AIRというスーツケースを使っている。容量は105リットルのもっとも大きなサイズだ。スーツケースが壊れたときの修理期間中に代替品を使ったが、ひとまわり小さな91リットルのものでも大丈夫なことがわかっている。91リットルのものは、まさにピッタリ格納できるので、もう、24型ディスプレイを入れてと言わんばかりのサイズ感だ。
スーツケースを開いたときに、ハンドルがある側は内側が出っ張っているので収まりが悪い。反対側に段ボールを敷き、そこに緩衝材で保護したディスプレイを置き、その上から衣服類をかぶせる。動きにくいように、周りに小物を詰めてパッキングする。このスーツケースは開いた両側ともにファスナーでネットを閉められるので便利だ。
ほかに必要になるのは着脱式のスタンドと、電源アダプタ、ケーブル、そしてスタンドを脱着するときに使うドライバーくらいだ。総重量で3kgちょいといったところだろうか。いつも使っているANAのエコノミークラスでは、総重量23kg程度のスーツケースなら無料で預かってもらえるので、ディスプレイを格納しても、ほかの荷物は余裕でパッキングできる。2個まで無料だが、普通はスーツケース1個で用が足りている。
ただ、2泊3日程度の出張にスーツケースを持っていくのは大仰すぎる。短期の出張は荷物をコンパクトにしたいし、素早く行動できるように、荷物は機内持ち込みにしたい。となると24型ディスプレイは無理だ。
ファーウェイのMate 10シリーズ発表のために渡欧した今週のミュンヘン出張では、ASUSにお願いして巷で話題になっているASUSのポータブルUSB液晶ディスプレイ「ZenScreen MB16AC」を借りてみた。冒頭の写真はミュンヘンのホテルで撮影したものだ。
一番左がパナソニックのレッツノートXZ6で画面サイズは12型、真ん中が借用したMB16ACで15.6型、そして右側がLGの24型ディスプレイだ。
Windows 10ではディスプレイごとにスケーリングを別設定できるので、左から200%、150%、100%として使う。これでほぼ同じ感じのサイズでオブジェクトが表示される。
MB16ACは薄さ8mm、重量780g(実測したら772gだった)だ。製品にはスタンド兼用の保護ケースも添付されているのだが547gもあるので、今回はPC用のインナーケースに入れて本体だけを持参した。
本体に装備されているコネクタはUSB Type-Cポート1つだけだ。したがって接続はType-Cケーブル1本でいい。じつに簡単だ。なお、MB16ACは、片側がUSB Type-Aコネクタのケーブルも使えるようになっている。センサーで縦置き横置きを検知して自動回転する。本当は縦位置で使いたいところだが、16:9の150%表示ではあまり実用的ではない。横幅が足りないのだ。
本体の右端には小さな穴があいていて、そこに鉛筆やボールペンを差し込めば簡易スタンドになって自立する。こうした工夫で設置には時間がほとんどかからない。
レッツノートXZ6は着脱式の2in1で、タブレット単体で使える。Type-C端子が装備されているので、そこにASUSのディスプレイを接続すればいい。だが、今回は、自前の24型ディスプレイもある。だがタブレット側にはType-C端子1つしかない。
試しに、USBハブやHDMI出力があるType-Cのドックアダプタを使い、両ディスプレイを接続しようとしたがだめだった。ASUSのディスプレイだけを接続しても電源が入らない。ドックの消費電力とあわせると電力が足りないのかもしれない。
ちなみにディスプレイの消費電力はカタログスペックで8W以下となっている。仕方がないのでXZ6をキーボード部分とドッキングさせてそのHDMI端子にディスプレイを接続した。ただ、ドックのUSB Type-C端子にPD対応ACアダプタから電力を供給してもダメだったので、ハブ側にも問題があるかもしれない。
これはXZ6のみならず、PD対応USB Type-C端子つきのほかのPCでも同様の現象を確認している。今のところ、ディスプレイは自前で電力を調達し、余った分をPCなどに供給しつつ、PCからの映像出力を受けるという使い方が一般的なので、こうした使い方は想定外なのだろうか。
キーボードは別途PFUの「HHKB Professional BT」を携行しているので、レッツノートXZ6はできればタブレット状態で使いたかったのだがあきらめざるをえなかった。キーボードとドッキングすると縦位置で使うこともできないのも残念だ。
USB Type-CとPDとディスプレイ
そんなわけで、短い出張に使っているキャスターバッグに入れて重量的にも収納的にも負担にならない15.6型ディスプレイだ。これなら堂々とモバイルディスプレイといって許される。ちなみにASUSでは「ポータブルUSB液晶ディスプレイ」と呼んでいる。
視野角も輝度も申し分ない。もちろん隣の24型と比べれば、やはり物足りなくはあるのだが、この便利さを780gとケーブル1本に凝縮しているのは見事だ。願わくば、このシリーズで24型を、さらには、16:10や3:2に対応したものがあればうれしい。それで重量が倍以上になっても2kgを超えることはあるまい。
理想的には電源を確保するためにもう1つType-C端子を備えていてほしい。そうなっていれば大容量のPD対応ACアダプタでディスプレイに電力を供給し、その上で接続したPCを充電できて便利だ。
このあたり、今後はディスプレイのような製品は、たとえポータブルであってもパワーロールスワップにうまく対応していくことが求められそうだ。ある意味で過渡期の製品ではあるが、それでも現時点の解としては相当に優れたデバイスだと思う。